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CTA 大口径望遠鏡の分割鏡の開発(3) 茨城大学大学院理工学研究科 加賀谷 美佳 奥村曉F 片桐秀明A 北本兼続E 﨏中良介E 周小溪E 田中駿也A 千川道幸E 手嶋政廣B,C 中嶋大輔C 野里明香E 林田将明G 柳田昭平A 山本常夏D 吉田龍生A R.KrobotI 他 CTA-Japan consortium 茨城大理A 東大宇宙線研B Max-Pkanck-Inst. Fuer PhysC 甲南大理工D 近畿大理E 名大STE研F 京都大理G University ErlangenH 1 Cherenkov Telescope Array (CTA) 大口径望遠鏡 大口径望遠鏡( LST ) 中口径望遠鏡( MST ) 小口径望遠鏡( SST ) 20 GeV~1 TeV 100 GeV~1 0 TeV 1 TeV~100 TeV以上 口径23 m 1510 mm 回転放物面型 焦点距離:28 m F値:1.2( 28 m/23 m ) 曲率半径:56.2 m 反射率:> 90 % (400 nm) >85% (300 – 600 nm) スポットサイズ:0.03 ° 重量:40 kg/枚 反射率経年変化 <1 % /yr (10年の耐久性) 2 分割鏡の製作と評価 分割鏡はCold Slump 法で成型、スパッタリングで多層膜コー ティングを施している ( 2011年9月天文学会 ) 多層膜コーティングにより保護層が形成され、表面の強度が 向上 ( 2012年3月天文学会 ) *耐候性の評価* ・外の環境に常にさらされている チェレンコフ望遠鏡 ・鏡が雨風の影響を受けて劣化 CTAでは約20 年間の観測を予定 1台あたり200 枚もの分割鏡のメンテナンスが必要 メンテナンスのコストや時間がかかる。 *反射率の低下を<1 %/年程度に抑える 10 年の耐久性をもつ鏡の開発 ⇒耐候性評価 3 *より高精度かつ効率の良い分割鏡の形状評価方法が必要 ⇒形状測定装置の開発 耐候性評価 腐食加速試験 目的 腐食加速試験における浸漬時間と望遠鏡設置候補地の年間降水時間を比較 して、10年後の鏡の反射率を見積もる。(10 年で10 %以下の低下量を目指す) 方法 望遠鏡設置候補地の雨の成分から疑似酸性雨を調整。 各溶液にサンプル鏡を浸し、腐食を加速させる。 劣化の度合いを表面の反射率を測定することで評価。 試験条件 反射率測定 Cr,Al,SiO2,HfO2,SiO2 5 層コーティング サンプル鏡を数日ごとに溶液から取り出 し、表面の水分を取り除いたあと、反射率 測定器を使用して反射率を測定する。 NaCl 0.1 %,0.01 %,0.001 % HNO3( 雨と同程度濃度,100 倍濃い濃度 ) H2SO4 ( 雨と同程度濃度,100 倍濃い濃度 ) 水戸の雨( 浸漬、暴露 ) サンプル鏡 蒸留水 (5cm×5cm ) 腐食試験の様子 受光器 反射率測定器の上に 試料を乗せ、積分球を 照明 使って試料をあらゆる 方向から均等に照明し、 試料 受光した反射光を分光、 各波長での反射率を測定する。 r=8°±5° 積分球 4 ©コニカミノルタ 耐候性評価 10年後の見積り 望遠鏡設置候補地の年間降水時間⇒355 時間/年 腐食加速試験における浸漬時間⇒3336 時間⇒約9 年半の暴露に相当 2年 4年 6年 8年 10年 R[%]=85.83 x[t/日]-0.004 R[%]:反射率 [t/日]:経過日数 経過時間[日] 水戸の雨を用いた腐食加速試験結果 各測定日に16 箇所の反射率を測定し、平均値をプロット 試験前の反射率⇒88.36 % 10 年後の見積りは約84.13 % 反射率の低下量⇒-4.23 % 腐食加速試験(浸漬)では 要求を満たしているといえる。 今後 7 層コーティングを施したサン プル鏡を用いてサイクル試験 5 を行い、より暴露環境に近い 腐食加速試験を行う。 CTA-Japan 形状測定システム Phase Measuring Deflectometry (PMD) 法 PMD法は位相シフト法、ステレオカメラ測量を組み合わせた 鏡面形状測定システム。鏡面各点の勾配、法線ベクトルを 求め、対象物の形状を高い精度で測定する。 測定結果の位置座 標 レイトレースでスポット サイズを求める 測定動作は2f法同様シンプルである。 直接鏡面の情報 (勾配、座標、法線) が得られる。 装置をコンパクトにできる。 6 形状測定システム 現在、装置が完成し、キャリブレーショ ン作業、試験運用を行っている。 (茨城大学 M1 馬場) 3120 mm スクリーン台 CCDカメラ台 2820 mm 7120 mm 現在の測定結果 キャリブレーション • スクリーンキャリブレーション • カメラキャリブレーション • 装置全体のキャリブレーション これら3つのキャリブレーションにより、 コンポーネントによる画像の歪みを補正 する。 左図:三鷹光器によるレーザー測量 曲率半径のフィッティング 32.70 mm 右図:PMD法による測定 曲率半径のフィッティング 32.73 mm 7 500mm 500mm 500 mm×500 mmの球面鏡の サンプルを測定した。 まとめ <耐候性の評価> 雨の成分による鏡面劣化を評価するために腐食加速試験を行っ た。 試験結果から10年後の反射率を見積もることができ(10年で約 4%)、現在の段階では要求を満たす結果が得られている。 今後、さらにコーティングの強度を高めた分割鏡をより厳しい条件 の環境で試験を行うことを検討している。 <形状測定システムの開発> 大量生産するLST分割球面鏡を高精度かつ効率よく評価のため にPMD法の装置開発を行った。 PMD法は位相シフト法及びステレオカメラ測量を用いた評価方法 で、大量生産のされた鏡の評価に対して有効な評価方法である。 現在、装置自体は完成し、高精度の測定に向けて調整を行ってい る。 8 9 測定原理 ① ② qは一致し てしまう 高さ 方 向 高さが 違う 光をCCDから出る1本の光線と考えた場合 ①のように水平面からαだけ傾いた鏡面を反射するとき、反射角は水平面の場 合に対して2αだけずれ、縞模様のスクリーン上でφだけずれる。 φ=d・tan2α つまりCCDからはd、α(勾配)に依存した縞模様のずれが観測できる。これをも とに鏡面の勾配を計算する。 →しかし鏡面の場合は②のように、高さが唯一に決まらない ステレオカメラで撮影することによって、高さを決める。 10 日本でのPMD法装置製作 LST用分割鏡を日本で生産するため、日本でPMD法による分割鏡の評 価ができるようになることが望ましい。 <使用機材> ・アルミフレーム ・CCDカメラ×4 ・60インチ液晶テレビ <製作過程における重要点> ・MST分割鏡(1200mm)用をLST 分割鏡(1510mm)用に拡張 ・コンパクトなスペースでの測 定を可能にする ・十分なoverlap部分を作りつつ、 1510mmの分割鏡全体を4台 のCCDカメラで撮影する CCD1視 野 CCD2視 野 overlap CCD3視 野 CCD4視 野 4つのCCD視野と分割鏡 11 補足:ステレオ測量 対象物のすべての場所で勾配または法線ベクトルを求め、1次元×2方 向に積分し形状を測定する ② ① 座標 平面鏡を使い、点sに対して以下を定義する。 ①ステレオに設置したカメラレンズの座標点[c1,c2]とカメラ焦点面上の点sに対 応した座標点[p1,p2]を結んだ視線ベクトル[v1,v2] ②それぞれのカメラが捕える、点sに対応した位相の座標点[q1,q2] ①,②(添え字1,2をそれぞれ)を法線ベクトル[n]が唯一に決まるように対応させ る。 12 実際に曲率をもった鏡面を測定するとき、この対応を使い、それぞれの点座標 とその点における法線ベクトルを求める。 補足:分割鏡によってできるスクリーン虚 像を使い、それぞれの配置を決定する 条件を満たすCCD の位置 スクリーン 分割鏡を映しこむのに必 要な有効視野 スクリーンの虚像 13 SANKO MIRROR #01 MEASUREMENTS AT ERLANGEN 14 鏡面の形状測定 南北に8台の大口径望遠鏡を設置予定 分割鏡の総数は1650枚 より高精度かつ効率の良い分割鏡の評価方法が必要 これまでの測定方法 ⇒ 2f法 曲率半径の中心に光源と検出器を置き、直接スポットサイズ を測る方法 mirror 光源 検出器 2f メリット 仕組みがシンプル デメリット 曲率半径分の距離が必要 (装置の巨大化) 高精度の測定には、広範囲 の遮光が必要 15 酸性溶液腐食の加速実験1 濃度0.1MOL/L(PH=1)の溶液で鏡コーティングを短時間で溶かす 蒸着コーティング 約1.5日(2000mins) で溶けた スパッタリング5層 セット・アップ: LED光源、DC電源、 カメラ・システム:3分間おきに撮影 コーティング約4日 16 (5700mins)で溶けた 酸性溶液腐食の加速実験2 1.3mm 濃度0.1mol/L(pH=1)の溶液 7層スパッタリング・コーティングは、 測定期間内では有意な変化が見られなかった。 15日経ち、透過光(全層を貫通するpinhole)なし 顕微鏡で観察、表面に穴が現れた。 倍率×100 穴の直径を統計し、 ヒスグラフで分布 の推移を表す 穴の 数 8 7 6 5 13日 15日 10日 4 3 2 1 17 0 1 6 2 3 12 4 18 5 6 24 7 穴の直径 (0.01mm) 8 30 9 36 10 塩水腐食の加速実験 光学鏡表面コーティングの評価方法(ISO)による 沸騰塩水(45g/L)、沸騰塩水+常温水サイクルの加速試験を行う ピンホール数ー時間 ピンホール数ーサイクル数 ピンホール数の時間変化 ピンホール数のサイクルあたりの変化 サンプルを沸騰水と沸騰塩水に入れ 5、10、 15、 25 分おきに撮影 1サイクル:沸騰塩水(2mins)+常温水(1min) 1 サイクルに一回撮影 18 こすり実験:コーティングを砂消しゴムで擦り、傷の本数で評価 Ⅰ、一定の力で鏡表面を擦り Ⅱ、傷の本数(abrasion)—擦り回数(strokes)の関係より傾きを求める Ⅲ、異なる力で Ⅰ と Ⅱ を繰り返す Ⅳ、平均の傷の本数(abrasion)--力(force)の関係を表す 200 180 蒸着コーティング 160 140 傷の 数 ( 本 ) 120 傷の本数 100 (傾き) 列 G 列 H 80 60 スパッタリング・コーティング 40 顕微鏡の透過光で見た鏡表面(真実幅1mm) 20 0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 力 (N) 3.5 4 4.5 5 5.5 19 こすり実験:コーティングを砂消しゴムで擦り、傷の本数で評価 160 200 180 140 160 120 140 120 80 列 B 列 C 列 D 60 傷の 数 ( 本 ) 傷の 本数 100 100 列 G 列 H 80 60 40 40 20 20 0 0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 擦り 回数 3.5 4 4.5 5 5.5 0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5 4 4.5 5 5.5 力 (N) 7層スパッタリング・コーティングの1N(上),3N( 蒸着コーティング(下図)と7層スパッタリ ング・コーティング(上図)の擦った表面 中),5N(下)の力で擦った表面状態の比較 状態の比較 20