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2014年度P4前期実験
「α弾性散乱の微分断面積」
伊藤誠人 澤田涼 武智大喜 七村拓野
水野賢利 森本貴博 吉田聡太
実験の動機
「遷移強度」・・・ある二つの状態間遷移の確率の大きさを表す物理量
遷移強度を測定するための広く使われてきた実験手法の1つ
「α非弾性散乱」
• D.T.Khoa他
12C標的のα非弾性散乱をDWBA
or CC計算で解析。電子散乱と比較。
2+1状態(44.4 MeV) →電子散乱と一致。
0+2状態(7.65 MeV) →電子散乱より数倍小さい。
Khoaら「この遷移強度の不一致の原因がHoyle 状態の特異的な構造にある」
• Kadoya他
12C, 16O, 24Mg, 28Si, 40Ca, 58Ni
を標的としα非弾性散乱を測定し、遷移強度を決定。
「Khoa らが観測した遷移強度の不一致は、構造の特異性に依るものではなく、
あらゆる△J = 0+ 遷移において普遍的に観測される現象の可能性がある」
Kadoyaの解析:DWBA計算で遷移強度を計算
– DWBA計算における歪曲ポテンシャルは、弾性散乱の光学ポテンシャルを用いた。
• 弾性散乱の光学ポテンシャルU(r) と非弾性散乱の遷移ポテンシャルδU(r)
⇒ Single folding model に基づき、基底状態の密度分布と一粒子遷移密度をα-N 相互作
用で畳み込む。
𝑈(𝑟) =
𝛿𝑈λ 𝑟 =
•
𝑑𝒓′𝜌 𝑜 (𝒓′ )𝑉 (|𝒓 − 𝒓′|, 𝜌 𝑜 (𝒓′))
𝑑𝒓′ 𝜌𝐽𝑓𝜆,𝐽𝑖 (𝑟 ′ , 𝐸𝑥 )
𝑉( 𝒓 −
𝒓′
, 𝜌𝑜
𝑟′
+ 𝜌𝑜
(𝑟 ′ )
𝜕𝑉( 𝒓 − 𝒓′ , 𝜌𝑜 𝑟 ′ )
𝜕𝜌𝑜 (𝑟 ′ )
有効相互作用には、密度依存性のあるガウス型有効相互作用を用いる。
⇒ α-N 有効相互作用のもつ5つのパラメータを決定したい
どう有効相互作用を決定するか
⇒ 光学ポテンシャルを通じて弾性散乱実験を再現するよう決定。
• 相互作用のパラメータ のうちV, W, αV , αWについて
電子散乱の実験から分かっている基底状態の密度分布をα-N 有効相互作用で畳み
込んだ光学ポテンシャルが、弾性散乱の微分断面積を再現するように決定。
• 有効相互作用の密度依存性 β
Single folding model によって弾性散乱を解析する際、後方角度で微分断面積を再現するため
に必要。
① 非弾性散乱の解析には慣習的に β = -1.9 に固定して解析
②比較のため、密度依存性を無視し、β = 0 でも解析
Kadoyaの結果→我々の実験へ
二つの相互作用(β=0 ,-1.9)の計算は、
•
データがある前方角度ではほぼ同じ計算結果を与え、実験データを良く再現。
一方、データのない後方角度では・・・
→ “deep or shallow problem”… 前方角度における微分断面積から光学ポテンシャルを決定しよう
とすると、浅いポテンシャルと深いポテンシャルの二つの解が得られてしまう。
後方角度についての実験データ→不定性を取り除ける!?
【本研究の目的】
京都大学の角谷らのE369 実験において測定できなかった後方角度における
弾性散乱の微分断面積を測定し、解析において深刻な問題として残る有効相
互作用についての不定性を取り除く。
実験
実験場所
大阪大学核物理研究センター(RCNP) 西実験室
・ビームは130Mevのαビームを使用
高分解能磁気スぺクトロメーター
Grand Raiden
• Q1-SX-Q2-D1-MPD2-DSRという構成。
(Q:四重極、S:六重
極、D:双極、M:多
重極)
• 高い運動量分解能
を持つ。
散乱槽
• AVFサイクロトロンで
加速されたαビームが
中心に設置された
ターゲットにより散乱
される。
Grand Raidenへ
散乱ビーム
ファラデーカップ
θ
通過ビーム
ターゲット
• 散乱されず通過した
粒子はターゲット後方
のファラデーカップに
捕獲される。
ターゲット
•
標的
厚さ
(mg/𝐜𝐦𝟐 )
C
2.2
SiO2
7.05
16
Oに対するイベント
数は、SiO2 とSiの引き
算によって求める。
24
Mg
2.5
Si
1.92
Ca
1.63
Ni
4.0
回路と検出器
CAMAC
信号
二枚のシンチレータ(幅120cm)の
両端にPMTがとりつけてある
一枚目と二枚目の両方から
信号が来た事象をトリガーにする
QDC・・・PMTの信号の大きさのデータを得る
TDC・・・トリガーがかかってからの時間のデータを得る
左右の時間差から検出位置がわかる。
TDCのデータからの位置の決定(1)
シンチレータの中心から右側にx[cm]の位置で粒子を検出
120cm
x
𝑛
⇒PMTの信号の時間差Δtは、∆𝑡 = 𝑐 ∙
60 + 𝑥 − 60 − 𝑥
=
2𝑛𝑥
𝑐
線源をシンチレータの中心から0, ±20, ±40 [cm]のところにおく
一枚目
-40 -20 0 20
40
左側TDC-右側TDC
二枚目
-40 -20
0
20 40
左側TDC-右側TDC
TDCのデータからの位置の決定(1)
ピーク位置のTDCの値の差と粒子の検出位置の間に
線形関係があるとしてキャリブレーションする
一枚目
Δ ch +60.5
posi[cm]=
,
2.5
分解能Δx=3.32 [cm]
二枚目
Δ ch +24.3
posi[cm]=
,
2.63
分解能Δx=2.06 [cm]
QDCのデータについて(1)
シンチレーション光強度は検出位置とPMTの距離が大きくなるごとに減衰
𝐼 = 𝐼0 𝑒
𝑥
𝜆
−
: (x:検出位置とPMTの距離 λ:平均自由行程)
したがって、信号の大きさも減衰する。
左側のシンチレータの信号の波高
右側のシンチレータの信号の波高
粒子の検出位置
粒子の検出位置
左側
右側
左側
右側
QDCのデータについて(2)
そこで、左右のQDCの値の相乗平均を取れば、
geo= 𝑄𝐷𝐶𝐿 ∙ 𝑄𝐷𝐶𝑅 ∝ 𝐼0 𝑒
𝐿
𝜆
−
となり、シンチレーション光強度にのみ比例する量になる
検出位置に対するgeoの値
粒子の検出位置
すなわち、粒子のエネルギーロスに関連した量が得られる
粒子の識別(1)
α-N散乱の反応後に検出器まで飛んでくる粒子としては、
α(弾性散乱、非弾性散乱), p, d, t, 3He
が考えられるが、その中でα弾性散乱粒子に興味がある。
(a)力学的考察
Grand Raidenでは散乱粒子を磁場で曲げる。
120MeV α粒子の軌道
弾性散乱α粒子がシンチレータの中心付近に来る。
ρ=3 [m]
B~500[mT]
他の粒子が同じ軌道を描くよう
運動エネルギーの条件を考える。
(b)エネルギーロスからの考察
(a)の結果とBethe-Blochの式を用いて、
1枚目、2枚目での各粒子のエネルギーロス(EL)を計算する。
それとエネルギーロスに関係する量
を比較することでイベントを識別する。
geo= 𝑄𝐷𝐶𝐿 ∙ 𝑄𝐷𝐶𝑅 ∝ 𝐼0 𝑒
𝐿
−𝜆
粒子の識別(2)
粒子の種類
(a) 運動エネルギーの条件[MeV]
(b) 1枚目のEL[MeV]
α
120
40
80
p
114
3
10
d
60
10
50
t
40
23
17
3He
158>130→×
geo1 vs geo2
(b) 2枚目のEL[MeV]
12C-αのα粒子散乱イベント
dのイベント
非弾性散乱
(4.44MeV)
αのイベント
二
枚
目
一枚目
左側
粒子の検出位置
弾性散乱ピーク
(もっとも右側)
右側
散乱断面積
𝑑𝜎
𝑁
𝑅
=
∙
𝑑Ω 𝑁𝑖𝑛 Δ𝑥𝑛 𝑑Ω 𝐴
N:散乱した粒子数(弾性散乱ピークを積分して得る)
Nin: 全入射粒子数
Δx: 標的の厚さ, n:標的粒子数密度
R: リクエスト(トリガーがかかった回数)
A:アクセプト(データを取った事象数)
から散乱断面積を得る。
実験結果
解析
Kadoyaとのずれを合わせる
• Kadoyaに比べてP4の
データが全体的に小
さい
• 原因として考えられ
るのはカウント漏れ
など
• P4のデータに一定倍
率(factor)をかけて、
Kadoyaのデータと滑
らかにつながるよう
にした
Kadoyaとのずれを合わせる
• Kadoyaに比べてP4の
データが全体的に小
さい
• 原因として考えられ
るのはカウント漏れ
など
• P4のデータに一定倍
率(factor)をかけて、
Kadoyaのデータと滑
らかにつながるよう
にした
Kadoyaの式のαV、αW、β、V、Wを求めたい
• ポテンシャルは下のたたみ込みモデルを使う:
𝑈 𝑟 =
𝜌 𝑟′ 𝑣(𝑟 − 𝑟 ′ ) 𝑑𝑟 ′
光学ポテンシャル
核子分布
電子散乱で求めた原子核の電荷分布を
用いて、下の式のたたみ込みをほどいて
核子分布を求める:
𝜌𝑐ℎ (𝑟) =
5つのパラメータ
(αV、αW、β、V、W)
を持つ相互作用項
𝜌𝑝 𝑟′ 𝜌𝑝𝑐ℎ 𝑟 − 𝑟 ′ 𝑑𝑟′
電荷分布
核子分布 陽子内の電荷分布
(厳密には陽子分布)
求められたρ(r)と5つのパラメータがあれば、光学
ポテンシャルが求められ、断面積も計算できる!
Kadoyaの式のαV、αW、β、V、Wを求めたい
求められる
ρ(r)
αV αW
β V W
求められる
光学ポテン
シャル
U(r)
フィードバック
散乱断面積
実験値と
比較
5つのパラメータを適当に決めて断面積を計算する、
ということを繰り返して、断面積が最も実験に合うよ
うな5つのパラメータの組み合わせを探す
解析時の自由度について
• パラメータは5つ(αV、αW、β、V、W)だが、そ
のうちβは密度依存性を表す。
β=0:密度非依存(DI)、β=-1.9:密度依存(DD)
の2通りについてそれぞれ解析
• 他の4つについては、αV=αWという条件を加
えたもの(実質3自由度)と、そうでないもの
(4自由度)の解析結果を比較
αの自由度についての検証
V,W凡例 ▲:3para ■:4para
↓DI列
→
V
100
100
80
80
60
60
40
40
20
20
0
0
0
→
W
10
20
30
40
50
60
0
70
50
50
40
40
30
30
20
20
10
10
0
10
20
30
40
50
60
70
0
0
→
α
↓DD列
10
20
30
40
50
60
70
12
10
10
8
8
0
10
20
30
40
50
60
70
0
10
20
30
40
50
60
70
6
6
4
4
2
2
0
0
0
10
20
30
40
50
60
70
α凡例 黄:α(3para) 青:αw(4para) 赤:αv(4para)
散乱断面積
光学ポテンシャル
結論→今後の展望
Kadoya実験と比較すると、
光学ポテンシャルの不定性が解消
Kadoya論文における
非弾性散乱の解析の再検討