擬態語は動きや状態、そのほかの感覚を表現することができる

Download Report

Transcript 擬態語は動きや状態、そのほかの感覚を表現することができる

認知発達:子供はどのように概
念を学び、ことばを学ぶのか
今井むつみ
問題提起
– 子供は白紙状態でうまれてくるのか?
– 認知発達の道筋は生得的に決まっているのか?
– 人間の子どもが学習するようなコンピュータをつく
るためには?
認知発達に対する考え方
• 行動主義
• ピアジェ
• 最近の発達心理学者
赤ちゃんの認知能力を測る
•
•
•
•
おしゃぶりの圧力測定法
選好振り向き法
馴化・脱馴化法
選好注視法
おしゃぶり測定法
• 赤ちゃんは自分が聴きたい聴覚インプットが流れて
くると激しくおしゃぶりを吸い、興味のないインプット
が流れてくるとおしゃぶりが緩慢になる
馴化脱馴化法
• 赤ちゃんは同じものを見つづけるとあきてしま
い、刺激を見なくなる
• 飽きたものでなく、別の新しいもの、あるいは
予想を裏切るものが提示されると注意が回復
する
赤ちゃんの持つ豊かな知識
• 物体に関する知識
• 言語に関する知識
物体の基本的原理の理解
(3)物体は世界に永続的に存在するものであり、
視界から隠されてもその存在は消えない
(object permanence)
→Baillargeon(1987)の実験
Figure 3.14 Schematic representation of the habituation and test events used in
Baillargeon (1987b). In (1b) a white object sits behind the track, and thus does not
interfere with the movement of the locomotive in (1c). In (2b) the object has been shifted
forward slightly and sits on the track, making the locomotive’s reappearance in (2c)
impossible.
物体についての基本的原理の理解
(4)物体は堅固なものであり、ひとつの物体が別の物体を
通りぬけることはできない
(物体に穴があいていない限り)
スペルキー
生後2カ月の乳児がこの知識を持つことを示す。
Experimental
Familiarization
Consistent
Inconsistent
Control
Familiarization
Test a
Test b
生物・非生物の区別に関する知識
• 生物→自発的な運動が可能
• 非生物→自発的な運動はできない
外からの力が必要
Inanimate Object Condition
Habituation event
Person Condition
Habituation event
Contact test event
Contact test event
No-contact test event
No-contact event
Fig.3.7 Schematic depiction of the events for a study of infants’ inferences about the
contact relations between inanimate objects or people.(After Woodward et al. 1993.)
子どもはことばをどのように
おぼえるか
• 親が教えてそれを模倣する?
• ほめられようとしてことばを覚える?
• 何度も何度も繰り返し教えられてはじめて覚
える?
• 何度も間違いを直されて覚える?
ことばの意味の二側面
• 「内包」と「外延」
• 外延:当該のことばの指示対象の集合
内包によって決定される
• 内包:当該のことばが指示する概念
外延と内包の関係
• 内包は外延の成員の共通性から帰納される
• 外延は内包によって決定される
ことばの学習のパラドックス
• ことばの内包をもたず、状況中のてがかりの
みからことばの指示対象を同定し、その外延
範囲を決定することは論理的には不可能
• それにもかかわらず子供はことばの一事例
あるいは少数の限られた事例を与えられただ
けで即座にことばに意味付与をしているよう
にみえる。
カテゴリーの推論
「リンゴ」
「どれがリンゴ?」
こどもはどのように初めて遭遇す
ることばの意味の推論をしている
のだろうか?
子供が語に意味付与をするため
にしなければならないこと
• ことばが発せられた状況下でことばの指示対
象を正しく同定する
• 覚えたことばを他の事物に般用できる。(他
のどの事物にそのことばが適用でき、どの事
物に適用できないかを正しく判断することが
できる。)
指示対象を同定し、般用するため
には…
• まず、当該の語がどのような種類(品詞)の語
であるかどうか決定できなければならない
• 各々の品詞がイベント中のどの要素に対応
するのかがわからなければならない
• 何に基づいて般用がされるのかがわからな
ければならない
日本語における名詞学習の問題
• 日本語の場合、名詞の中の種類が文法的に
指標されない
→固有名詞対普通名詞、物質名詞対物体名
詞が形態としては区別されない
• 文法的手がかりの欠如は日本人幼児の名詞
の語意推論に影響を与えるのか?(つまり欧
米の子どもに比べ、日本人の子どもは名詞
の学習が困難なのか?)
知らない人工物についた
新しいことば
知らない動物についた
新しいことば
こどもは動詞について「メタ知識」を
持っているのか
• そもそも子どもは動詞と名詞の般用について
の基礎的な「メタ知識」を持っているのか
Example of a Standard scene
Two test stimuli
名詞条件、動詞条件で「動作が同
じ」ビデオを選んだ割合
(%)
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
noun
verb
3-year-olds
5-year-olds
なぜ動詞の語意学習は
むずかしいのか
• 動詞の意味を理解するためにはイベントを分
解し、ある特定の部分(つまり行為)のみの類
似性に注目し、変数(事物)の類似性は無視
しなければならないから
動詞学習には手助けが必要
• 養育者がしていること
– 擬態語の多用
擬態語(gitaigo /mimetic word)
擬音語・擬声語(onomatopoeia)
人・動物の声や音を真似た言語
例)わんわん ざあざあ びゅうびゅう
擬態語(mimetic word)
視覚・触覚など聴覚以外の感覚印象を言葉で表現した語
例) ふわふわ ふらふら ひりひり にこにこ
Gitaigo≠onomatopeia
擬態語は動きや状態、そのほかの感覚を表現することができ
る。
擬態語は実際の音に依存しない
実際には音のしない感覚や動きを擬した言語音を使用する。
仮説
・動きを表現した擬態語は動詞の使用の移行を助ける
橋渡し的役割を担っているのではないか?
・擬態語のもつ音表象が動きの特徴を表現していて語
意味推論を助けているのでは?
⇒ 動詞般用課題を用いて擬態語と動詞を比較
動詞学習における擬態語の役割を考察する。
刺激作成
• 予備調査結果(24語)
→コントラストの大きい12語を抽出
その語にあわせて動画作成
↓
動画から連想される擬態語表出 (成人15名)
最頻出擬態語を既存マッチ擬態語とする
↓
変換を加えてマッチ擬態語を作成
↓
マッチ擬態語と作成した動画のマッチ度評定(成人8名)
↓
マッチ度高:マッチ擬態語動詞
マッチ度低;ノンマッチ擬態語動詞 とする
マッチング課題結果
% matching action selected
(Imai et al., Cognition, in press)
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
J adults
E adults
J 25m-olds
J 42m-olds
25ヶ月児、日本語を知らない英語話者も「正しい」アクションに
新奇擬態語をマッピングできる
音象徴性は新奇動詞学習を
助ける?
新奇動詞学習課題
• 被験者: 日本人3歳児(各条件16人ずつ)
• 条件:
– 音マッチ新奇擬態語条件
– 音象徴性なし新奇動詞条件
– コントロール:音ノンマッチ新奇擬態語条件
動詞学習での音象徴性の効果
(Imai, Kita et al., Cognition, in press)
*
100
90
*
3-yr-olds
**
ns
80
70
ns
ns
60
50
40
30
20
10
0
match mimetics
non-match verb
nonmatch mimetics
英語児にも同じ効果(Kita, Imai et al.,
in prep)
*
音象徴性はプロトランゲージ?
• 伝統的な言語学の考え方
⇒「言語と対称の関係は恣意的である」
(ソシュール)
• 言語と対称の関係はすべて恣意的でない
• 言語は音象徴性から始まり進化した可能性
(ラマチャンドラン)
脳イメージング研究からの音象徴性
プロトランゲージ仮説への示唆(Imai et
al., 2008, In prep.)
• 擬態語は他の音象徴性の低い語と異なる脳
内処理をされる
– 右半球の活動(c.f., Sign Language)
– 運動知覚、運動制御や自然音の処理などの部位
の活動
⇒普通の動詞や副詞より、感覚経験に直結した
処理がなされる
ちょこちょこ
(choko-choko)
Participants rated how well the word matched the action in the video by
pressing a bottom (1-5)
STS/STG
MT
視覚野と聴覚野の統合野
右STS:自然音(環境音)の処理
動作、運動に関連
(Hashimoto et al, 2006 ; Thierry et al, 2003)