これってアリ? アリの不思議な行動

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Transcript これってアリ? アリの不思議な行動

青森市立浦町中学校科学部
2年 小山内貴之
2年 佐藤瑞祐
指導 弘前大学理工学部教授
稲村 隆夫
浦町中学校
目時郁代 藤井文子
・テレビでブーメランを投げるシーンを見
ていたら、投げた人の手元に正確に
戻ってきていて驚いた。ブーメランはな
ぜ元の位置に戻るのかその原理を調
べてみることにした。
また、実際に自分の手元に戻ってくる
ブーメランを作ってみたいと思い、ブー
メランづくりにも挑戦することにした。
【研究1】ブーメランはなぜ最初垂直に投げても
最後は水平になって戻ってくるのか。
【研究2】紙でつくったブーメランでもちゃんと
戻ってくるのか。また、紙ブーメランは
どのような飛び方をするのか。
【研究3】紙ブーメランの翼のいろいろな部分に
ビニールテープを巻いて重く してみる
と、何もつけない時と比べて飛び方は
どう変わるか。
【研究1】ブーメランはなぜ戻ってくるのか。
《方法》
(1)ブーメランの翼の正面から高速の風を当て、
表側と裏側で風の吹き方にどのような違いが
あるのかを調べる。
(2)実際に市販のブーメランを投げた時の翼が
上にきた時と下にきた時の速さを測定する。
(3)これらの結果がブーメランの運動にどのよう
な影響を及ぼすのかを調査する。
・翼の表側のカーブしている方を流れる風
 はどんどん速さを増していく。速さが増す
 結果、翼の表側の気圧は裏側の気圧よ
 りも小さくなる。
・ブーメランは立てて投げるので、揚力は水
平方向(内側)に向かう力となる。
市販のブーメランを投げた時、ブーメランの上
部と下部の翼の受ける速さは
上部:並進速度+回転速度
=37.5m/s
下部:並進速度-回転速度
=22.5m/s
上部と下部の翼では受ける速さに
37.5-22.5=15.0m/s
の差があり、この差がブーメランに働く2つ目の
揚力の差となり、ブーメランを倒そうとする力と
なって働く。
・ブーメランは回転運動をしているため、コ
マと同じような動きが生じる。
【研究2】紙でつくったブーメランでもちゃんと戻ってくる
のか、また、紙ブーメランはどのような飛び方をするの
か。
《方法》(1)縦目の厚紙、はさみ、ホッチキス、定規、分
度器を用意する。
(2)縦目の厚紙で18cm×5cmの長さの翼を3
枚つくる。
(3)紙の中央に2cmの切り込みを入れ、翼の
角度を120°に組み合わせたら、ホッチキス
で9カ所とめる。
(4)翼の先端をカーブさせないものとカーブさせ
たもので飛び方にどのような違いが生じる
のか調べる。
・紙でつくったブーメランも投げた人のところへちゃんと
戻ってきた。
・[翼を曲げないブーメランと曲げたブーメランの飛び方
の違い]
翼を曲げないブーメラン
翼を曲げたブーメラン
細長い楕円の軌道を描いて飛 円形に近い軌道を描いて飛ん
んだ。楕円の長い方の直径は だ。直径は約5.5mであった。
約3mであった。
《研究2の考察》
・同じ紙で同じようにつくったブーメランなのに、
翼を曲げただけでブーメランの軌道の直径が
2.5mも大きくなったことに驚いた。たった数
mmの違いがこんなにもブーメランの動きを
左右することになるので、飛行機やヘリコプ
ターをつくった人達はどれだけ実験を重ねた
のだろうと思った。
【研究3】紙ブーメランの翼のいろいろな部分にビ
ニールテープを巻いて重くしてみると、何
もつけない時と比べて飛び方はどう変
わるのか。
《方法》
(1)研究2でつくった紙ブー
メランのいろいろな部分
にビニールテープをまく。
(2)どのブーメランも20回
ずつ飛ばし、どのような
傾向で飛ぶのか調べる。
《研究3の結果》
・左前方で着地。ブーメ ・細長いだ円の軌道を
・全く戻ってこない。
ランの回転数はビニ
描いて飛んだ
左方向へスライディ
ールを巻かないとき
・軌道の直径は約7.8m
ングしていった。
よりも増えていた。
・軌道の直径は約5.7m
・翼の端の質量が増すと、ブーメランは全く戻っ
てこない。市販のブーメランも翼の端が若干薄
くなっているし、飛行機の翼も端が薄くなってい
ることもこの結果と関係がありそうだ。
・中央部の質量が増すと、ブーメランの回転数が
明らかに増すが、手元に戻る前に着地してしま
う。回転するためにエネルギーが多く使われて
しまうことと、質量が大きすぎて重力に負けて
しまうことの両方が関係しているのかもしれな
い。
・翼の真ん中の質量が増すと、何も巻いていない
ブーメランと同じように安定感のある飛び方をす
る。ただ、何も巻いていないブーメランの軌道の
直径は3mなのに対し、このブーメランの軌道の
直径は7.8mに達した。質量の大きさに比例す
るように、軌道の直径も大きくなるのかもしれな
い。
[研究1から]
・ブーメランの翼の表と裏を吹き抜ける風は、表側
の方が速いために「揚力」という力が生じること、
ブーメランの上部と下部で速さに著しい差が生じ
て第2の揚力差となり、ブーメランを倒そうとする力
が働くこと、コマと同様に回転している物体には倒
れようとする方向と90°ずれた方向に力を受ける
ことなど、多くの理由からブーメランは垂直に投げ
ても水平に戻ってくる。
(研究2から)
・紙ブーメランの翼をほんの5mm程度カーブ
させただけで、ブーメランの軌道の直径は
2m以上変化する。
(研究3から)
・紙ブーメランの翼の端の質量を増やすと、
ブーメランは戻ってこなくなる。また、中央部
の質量を増やすと、ブーメランは戻ろうとする
が早めに落下する。翼の真ん中の質量を増
やすと、何も巻いていないブーメランの飛び
方に近くなるが、軌道の直径が大きくなる。
今回の実験では、3枚翼のあるブーメラン
しかつくらなかった。4枚翼があるものやV
字などさまざまな形のブーメランを作って
飛ばしてみたい。また、紙以外の異なる素
材のブーメランをつくったり、質量の変化
を段階的にさせていくなどの工夫もしてみ
たい。さらにはおもりの位置をもっといろい
ろ変化させて実験したい。
ブーメランがなぜ元の位置に戻るのかを自分
たちだけで調べるのは本当に大変だったし、限
界を感じていたが、弘前大学理工学部の稲村
教授や学生さんたちの説明やアドバイスを受
けて、その原理をかなり理解できるようになっ
てうれしかった。ブーメランの実験はとても奥が
深いと感じているので、今後の課題で述べたこ
とを一つ一つ解明していきたいと思う。