Transcript lecture009

腹痛・腹部診察
消化器一般外科
天神和美,嶋田 仁,大坪毅人
目標
①3種類の腹痛を説明できるようになる.
②腹部診察の基本をおさらいする.
③腹部所見を適切に表現できるようになる.
腹痛
腹痛は原因によって,痛みの性状や部位,持続時間,
随伴症状など様々.
腹痛
内臓痛
障害部位
管腔臓器
実質臓器における被膜
の伸展
臓側腹膜
局在が不明瞭
痛みの特徴 周期的,間欠的
鈍痛
例
体性痛
関連痛
皮膚,骨,関節,筋肉等
の結合組織
内臓痛と同一レベルの
壁側腹膜
知覚神経
腸間膜
横隔膜
局在が明瞭
持続的
鋭い痛み
腸閉塞
腸炎
腹膜炎
膵癌による背部痛
骨転移
肝腫瘍内出血による腹痛
限局した疼痛
胆嚢炎で右肩痛
虫垂炎の心窩部痛
心筋梗塞の左肩痛
目標
①3種類の腹痛を説明できるようになる.
②腹部診察の基本をおさらいする.
③腹部所見を適切に表現できるようになる.
腹部診察
(1)視診
(2)聴診
ルール① 腹部を刺激しない順番で診察する.
(3)打診
(4)触診
何かおかしい・・・・?
ルール② 患者さんの右側に立ち診察.
③ 患者さんは仰臥位,両膝伸展位と屈曲位.
腹部診察
(1)視診
膨満は主観的な
表現!!
輪郭・形状;平坦,膨隆,陥凹
色調;着色斑,黄疸,静脈怒張,皮膚線条,
Mottled skin(斑状皮膚・・末梢臓器の循環不全)等
手術痕;上腹部〜鼠径部
腹部診察
(2)聴診
①腸蠕動音
頻度;亢進,正常,減弱,消失
性状;金属音
②血管雑音
 大動脈,腎動脈,左右の総腸骨動脈
イレウスでは蠕動音亢進?減弱?
<イレウス>
1) 機能性
減弱
 麻痺性イレウス ex.術直後,腹膜炎,薬剤
 痙攣性イレウス
2) 機械性
亢進
 単純性イレウス ex.癒着性イレウス
 絞扼性イレウス ex.軸捻転,腸重積,索状物
金属音とは・・・?
正常
イレウス
イレウスでは腸管が拡張し,腸管壁に高い圧がかかる.これは太鼓の膜がより
ぴーんと張った状態.膜がぴーんと張れば張るほど,中の腸液が動くとき高い音
となり金属音と呼ばれる.
腹部診察
(3)打診
①腹部全体 9ヶ所
鼓音,半濁音,濁音
②肝臓
 右鎖骨中線を頭側,尾側から打診
③脾臓
 Traubeの三角に濁音がないことを確認
④腎臓の叩打痛
 CVA(Cost-vertebral Angle)
腹部診察
(4)触診
①浅い触診
•
•
•
体位:仰臥位,両膝伸展位
順序:疼痛部位を最後
評価項目:軟 or 板状硬
Superficial tenderness
Superficial rebound
defence
の有無を評価
体性痛の1つである腹膜刺激症状を評価.
腹部診察
(4)触診
②深い触診
•
•
•
体位:仰臥位,両膝屈曲位
順序:疼痛部位を最後
評価項目:deep tenderness
deep rebound
の有無を評価
腹部診察
(4)触診
③疾患別触診所見
(A)虫垂炎
• Rovsing sign:左下腹部を尾側から頭側に圧迫すると右下腹部痛
が増強.
→腸管内のガスが回盲部へ集まるため
• Rosenstein sign:左側臥位でMcBurney点を圧迫すると圧痛増強.
→虫垂が圧迫しやすくなるため.
• Psoas sign:右股関節を伸展させると右下腹部痛が出現.
→虫垂が後腹膜側に存在する場合.
• Obturator sign:右股関節を内転すると疼痛増強.
→骨盤内腔の炎症.
腹部診察
(4)触診
③疾患別触診所見
(B)胆嚢炎
• Murphy 徴候:右季肋部を押さえながら深呼吸をすると,
痛みのために吸気が止まる徴候.
→吸気時に胆嚢が下降しより圧迫されるため.
目標
①3種類の腹痛を説明できるようになる.
②腹部診察の基本をおさらいする.
③腹部所見を適切に表現できるようになる.
問題① カタル性虫垂炎
腹部は平坦,軟
心窩部痛(内臓痛),
Deep
tenderness (-)
rebound
(-)
Superficial tenderness
rebound
(-)
(-)
問題② 蜂窩織炎性虫垂炎
腹部は平坦,軟
右下腹部に自発痛,
Deep
tenderness (+)
rebound
(±)
Superficial tenderness
rebound
(-)
(-)
問題③ 腹膜炎を伴う壊疽性虫垂炎
腹部は平坦
右下腹部に自発痛,
Deep
tenderness (+)
rebound
(+)
Superficial tenderness
rebound
筋性防御 (+)
(+)
(+)
腹部診察を
いっぱいして
病気を見抜こう!!