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図書館概論 第6回
図書館と出版
2013年5月21日(火)
第4時限
R001教室
前回の復習
1. 司書資格取得に必要な科目を定めた文
部科学省令は何か?
2. 「図書館員の倫理綱領」と表裏一体の関
係にあるとされる文書は?
3. 「図書館員の倫理綱領」では、職務遂行
のよりどころは「社会の期待」と何だとして
いるか?
4. 日本の出版業界が定めた倫理綱領を二
つあげよ。
出版とは(1)
• 出版 publication, publishing
– 印刷技術を用い、文章や写真等の著作物を図
書や雑誌などとして複製し、広く社会に公表す
る行為、またこの行為の概念
– 電子式手段により複製されたCD-ROMやネット
ワーク上にのみ掲載される電子的な情報など
についても、電子出版という用語が使用されて
いる
『図書館情報学用語辞典』第3版 丸善, 2007 より
*下線は引用者による
出版とは(2)
• 一般に出版社が営利を目的に図書・雑誌
等を発行・販売する行為(商業出版)
• 出版権
– 著作権法で規定(第79~88条)
– 著作権者と出版社の契約により、著作物を独
占的に出版・販売できる権利
• 著者自身が出版費用を負担する自費出版
もある
近年の出版状況(1)
• 新刊点数は増加しているが、売上額は減少
傾向
– データは『出版年鑑』、『出版指標・年報』などか
ら得られる
• 少数のベストセラーと大部分の売れない本
• 活字離れ
– 売れるのは漫画、ゲーム攻略本、受験参考書
近年の出版状況(2)
• 大型書店、郊外型書店、コンビニでの売上が増え
る陰で、消えて行く街中の書店
– cf. 山田淳夫『消える本屋 : 出版流通に何が起きている
か』アルメディア, 1996 など
• 書店に魅力がない、読みたい本が手に入らない、
という不満も
– cf. 佐野真一『だれが「本」を殺すのか』プレジデント社,
2001 など
• 無料誌の出現
– 財源は広告収入
ITによる新しいサービス(1)
• オンライン書店
– Webサイトでほしい本を検索して発注
• Amazon.comが先駆者として有名。今では多数の書
店が参画
– 注文した本は宅配便で届けられる
• オンデマンド出版
– 本の中身は電子形態で保管しておき、注文に応
じて印刷・製本して届ける
– 当然、価格は高めになる
– Espresso Book Machineのような機械も
ITによる新しいサービス(2)
• 電子出版、電子書籍(ブック)
– コンピュータを通して読む
– パッケージ系(CD/DVD-ROMなど)からネット
ワーク系(インターネットからダウンロード)へ
– 専用のリーダー(読書端末)
• AmazonのKindle、Barnes & NobleのNook、Sonyの
Reader (cf. リブリエ)、楽天のkobo
– 2010年は電子書籍元年(?)
• iPadの大ヒット
– 学術雑誌はすでに電子ジャーナルが主流
日本の出版流通の特徴(1)
• 再販売価格維持契約制度(再販制)
– 商品の製造業者が販売業者に対して指定し
た価格で販売することを義務付ける契約
– 本来、独占禁止法で禁止されている行為だ
が、公正取引委員会が指定する特定の商
品に限って認められてきた
• かつては化粧品、医薬品なども指定
• 現在は書籍、雑誌、新聞、音楽(CDなど)
– 1990年代、規制緩和の流れの中で制度撤
廃が検討される
日本の出版流通の特徴(2)
• 出版物の再販制をめぐる議論
– 出版業界は制度存続を強く主張
• 出版文化、言論の自由を守る
• 出版物を全国同一価格で提供する(地域格差を
生まない)
– 公取委では制度撤廃の意見も強かったが、
結局、当面存続するという結論になった(2001
年3月)
日本の出版流通の特徴(3)
• 委託販売
– 書店は本を預かって販売
– 一定期間内であれば返品が可能。ただし注文品は
返品不可
– 岩波書店など、買い切りが必要な出版社も
• 取次による配本
– 日販、トーハンなど大手による寡占が進む
– コンピュータ化により流通システム整備
cf. 柴野京子『書棚と平台:出版流通とメディア』弘文
堂, 2009
図書館と出版業界
• 出版業界にとって図書館は本を買ってくれ
るお客さん
• しかし、図書館のベストセラー大量購入が
売れ行きを損なっているとの批判も
• 図書館側の反論
– ベストセラーの複本購入数はそれほど多くは
ない
– 図書館の貸出と売れ行きは無関係
– 住民のニーズに応えるのは図書館として当然
公共貸与権(公貸権)制度
• 図書館の貸出数に応じて国の基金から著
作者に補償金を支払う仕組み
• イギリス、ドイツ、デンマーク等で実施
– 法律、対象、配分方法などは各国で異なる
• 日本ではビデオの貸出に対して図書館が
補償金を支払うことが著作権法38条で規
定されており、これに似ている
• 日本では導入の是非をめぐり論争中
図書館の資料提供のあり方をめぐって
• 日本の公共図書館では、1970年代以降、市民
の要求に応じた資料を提供すべきという考え
方が広まる
– 『市民の図書館』という本の影響
– 良書の押し付けはやめる
– 利用数を伸ばした実績
• 要求論―ベストセラー大量購入の論拠
• 出版後数か月だけでも貸出を控えてほしいと
要望する作家も←応じる図書館は少ない
– 樋口毅宏『雑司ヶ谷R.I.P.』と高崎市立図書館
第6回のまとめ
• 出版とは、印刷技術を用い、文章や写真等
の著作物を図書や雑誌などとして複製し、
広く社会に公表する行為
• 最近は電子出版も盛ん
• 日本の出版流通の特徴は、再販制、委託
販売、取次による配本
• 図書館のベストセラー大量購入問題と公共
貸与権をめぐる議論