Transcript 花岡 庸一郎
白色光コロナの高S/N観測 花岡 庸一郎(国立天文台) 1. 太陽コロナとその現象 2. 日食で見えるコロナ 3. 我々の目指す観測 1. 太陽コロナとその現象 コロナとは そもそも皆既日食で発見された – たまたま月と太陽の視直径がほぼ同じ 外見的特徴 – 太陽表面より外側での物質の存在 – 筋状(ストリーマー、ループ)構造が卓越 実体は希薄な高温(>100万度)プラズマ – 熱的放射はX線領域 太陽コロナと光 球(X線・可視 光) (ISAS) 1. 太陽コロナとその現象 コロナでは磁場が主役 磁場がエネルギーを担う世界 – プラズマは磁場に支配される – コロナの特徴(高温、筋状構造)の理由 磁気ループの形状を示すコロナの観測と、 磁場ベクトルを示す光球の観測(TRACE及びMeudon天文台) 1. 太陽コロナとその現象 コロナ中のプラズマ現象:フレア ・フレアはコロナ磁場の起こすエネルギー解放現象 ・磁気エネルギー蓄積による不安定性の成長と解放 彩層におけるフレア movie(J. Werne) コロナにおけるフレア movie(TRACE衛星) 1. 太陽コロナとその現象 コロナ中のプラズマ現象:コロナの質量放出 コロナ中の磁気エネルギー解放により、コロ ナ物質が太陽系空間へ放出される SOHO/LASCOにより観測されたCoronal Mass Ejection 1. 太陽コロナとその現象 コロナ中のプラズマ現象:コロナループ の振動現象 フレア等と関連したコロナループの振動は数多くと らえられている – 周期は数分程度など Alfven波検出の報告もある(Tomczyk et al. 2007) TRACE衛星による観測 コロナの研究は、太陽物理においても、プラズマ物 理においても、惑星間空間物理においても重要 1. 太陽コロナとその現象 科学的観測はスペースが主流 (X線、極端紫外線) 1990年代以降衛星によるデータが常時入手可 いろいろな波長での観測が常時可能 – 温度によってコロナの異なる構造が見える Fe IX 171Å(90万度) Fe XII 195Å (120万度) Fe XV 284Å (250万度) TRACE衛星によるコロナの紫外線輝線画像 1. 太陽コロナとその現象 X線・紫外線観測の盲点 いろいろな温度のコロナが見える ⇔ 全体を 見ることができない コロナ輝度はcolumn emission measureで決 まる(ne2l) ⇔ コロナ物質の量はわからない 衛星で見えるのは特定 の温度のコロナの量 2. 皆既日食で見えるコロナ 可視光コロナの成分 コロナ – だいたい白色だが、3 つの成分からなる – Kコロナ 太陽本体の光の電子 によるトムソン散乱光 – Eコロナ コロナ輝線 – Fコロナ ダストの散乱による連 続光、長波長側 輝度 太陽 本体 K E F 太陽表面 太陽中心からの距離 コロナの成分ごとの輝度分布 (現代の天文学「太陽」より) 2. 皆既日食で見えるコロナ 白色光コロナ(Kコロナ) 観測の意義 コロナ全体を見ることができるのが白色光 観測 トムソン散乱はコロナの温度によらない – コロナの明るさは電子数に比例する コロナの明るさを測ればelectron column density(nel)が、すなわちコロナの総物質量 (基本物理量)がわかる – X線・紫外線観測と相補的 2. 皆既日食で見えるコロナ 白色光コロナ観測における日食の意義 日食外の白色光コロナ観測:コロナグラフ – 太陽表面近くは見えない – しかし重要な現象は表面近くで起こる 皆既日食は、太陽表面近くの白色光コロ ナを観測する唯一の方法 – 皆既日食の白色光観測は今でも(むしろ以前 より)科学的価値を持つ – 表面近くではKコロナの寄与が大きくFコロナ は小さい 2. 皆既日食で見えるコロナ 参考:Eコロナとは? フラッシュスペクトル (皆既時のスリットレ ススペクトル) – コロナ輝線が見える – 1940年代に高階電離 元素の禁制線である ことが判明→コロナ は希薄で高温(>100 万度) Fe XIV 5303Å (Green line) Fe X 6374Å (Red line) (現代の天文学「太陽」より) コロナ輝線のフィ ルター画像の例 – 特にFe X 6374(約100万度) は細いループ構 造が見える – 現代の観測装置 であればちゃんと した撮像で衛星 で観測しているよ うな微細構造が 見えるか?(要高 感度) Hanaoka et al. 1988 3. 我々の目指す観測 皆既日食の白色光データ 白色光観測の高S/Nデータは、衛星のデー タ(最高分解能0.5”、詳細なループ構造)と 比較可能か? 3. 我々の目指す観測 2008年の日食の画像の例 小型望遠鏡と一眼レフカメラで撮影、約20枚を積分 簡単な撮影 (小型望遠鏡+デジタル一眼レフ)に よる画像がきわめて多くの情報を持っている すなわち高S/N観測が可能 – コロナの微細構造とコロナプラズマ量の関係を知るこ とができる – 複数の観測点が得られれば時間変化の観測も可能 (振動現象など) – アマチュアでも可能な観測(較正データ取得は必要) そこで我々はネットワーク観測を企画 – 晴天の観測点の確保と、多点観測によるコロナの追 跡 3. 我々の目指す観測 今回の日食:白色光コロナのネット ワーク観測 鹿児島大学練習船航海 研究者による他の観測点でも白色光コロナ観 測を実施 – 中国、ツアー等 アマチュアにも参加呼びかけ – 日食情報センター、国立天文台広報(検討中)か ら – 較正データも取ってもらう 3. 我々の目指す観測 かごしま丸船上での観測 小型望遠鏡1~3台+カメラ2~4台の組み合わせ – 経緯台でよいがバランスを取る – 較正データを注意して取る 内部コロナは明るいので短い露出(1/500~ 1/1000秒)も可(船が揺れてもよい) – 実際のデータ取得は、何段階かの露出でひたすら撮 像する コロナ輝度の広いダイナミックレンジをカバーするとともに、 積分によりS/Nを上げる 3名参加(実際のメンバーは京都大学から) – ひとりはタイムキーパー・コマンダー?