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分類学
はじめに
あなたの周りの
身近な世界をもっと知ろう!
www.bionet-intl.org | [email protected]
このプレゼンテーションはBioNET (Posa Skelton &
Kornelia Rassmann)が、この方々からの
情報提供を元に作成したものです。
Henrik Enghoff
デンマーク自然史博物館
Ulf Gärdenfors
ArtDatabanken, スウェーデン種生物情報
センター
Fabian Haas
国際昆虫生理生態学研究センター
Chris Lyal
ロンドン自然史博物館
Yves Samyn
1
ベルギー王立自然史博物館
Translated into Japanese by Haruko Okusu, UNEP
Ensifera ensifera (Boissonneau, 1840)
絵: Ernst Haeckel
はじめに
私は誰でしょう?
答えを知りたかったら?
分類学者に聞こう
またはこのリンクをクリック…
2
© Stuart Wynne
分類学とは…
分類学とは
サイエンス(科学)の分野です
生物を
発見すること
名前をつけること
記載すること
分類すること
を通して 生物の多様性 (など色々なこと…)を理解
するのが目的です
分類学(Taxonomy)のギリシャ語の語源:
3
taxis = 分ける/整理する; nomos = 法
分類学とは
発見すること
Dracula fish (ドラキュラ・フィッシュ)
Danionella dracula
4
ビルマで発見
2009年に新種記載
© Ralf Britz | Natural History Museum, London
分類学の第1歩は新しい
生物を発見することにあり
ます。
沢山の分類学者が世界各
地を探検したり、生物のサ
ンプルを分析する新しい
機材が開発されたりするこ
とによって、毎年、世界中
で新発見があるのです。
名前をつけること
分類学とは
Electrolux addisoni
(Compagno & Heemstra, 2007)
なぜ名前は大事なの?
学名は、どの生物も全て
何者か分かるようにつけ
られた、パスポートの役
目を果たしています。
写真: Phil Heemstra |
Wikimedia Commons
5
名前はエレクトロラックスといっても掃除機とはかなり違いますね!
記載すること
このプロセスでは、発見された生
物が新種なのか、ある程度似て
いる種の生物と見比べながら確
認していきます。
分類学とは
上まぶた
背面
仙骨
鼻腔
脇腹
目
距
口
鼓膜
腋窩
水かき
6
鼠径部
大腿部
尺骨
Hypsiboas calcaratus (Troschel, 1848) | 写真: P. J. R. Kok
脛部
分類学とは
分類すること
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界 – Animalia (動物界)
門 – Chordata (脊椎動物門)
網 – Mammalia (哺乳網)
下網 – Eutheria (真獣下綱 )
目– Artiodactyla (ウシ目)
科 – Bovidae (ウシ科)
亜科 – Caprinae (ヤギ亜科)
属 – Ovis (ヒツジ属)
種 – Ovis aries (ヒツジ)
私の
名前は
Dollyよ!
分類 は私たちの生活の中でも
名前は大切です
重要です
分類は私たちの毎日
の生活にも役立ってい
ます。
たとえば、スーパーの在
庫整理のような状況で、
品物を配置するのに必要
です。
乳製品を買うのに、家庭
用洗剤の隣を探すなんて
ことはしませんよね?
8
Photo: G. R. South
名前 は私たちの生活の中でも
名前は大切です
重要です
9
写真: Sergio Kaminski | Wikimedia commons
画: Peter Aertsen
?
人間や物に名前
が無かったらどう
なるでしょう…
写真: Wikimedia commons | public domain
名前は大切です
名前 はコミュニケーションのために
必要です
Muis
Ratón
ねずみ
Ποντίκι
Souris
쥐
Мышь
Mouse
Mus
Maus
10
© Kornelia Rassmann
‫فأس‬
老鼠
俗称や通俗名は、
私たちの普段の
コミュニケーションには
大変便利ですが、
場所や言語によって
使える状況が
限られてしまいます
名前は大切です
学名 は世界の共通語です
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Alternanthera philoxeroides
Bursaphelenchus xylophilus
写真: Gary Buckingham
写真: L.D. Dwinell
USDA Agricultural Research Service,
United States | forestryimages.org
USDA Forest Service,
United States | forestryimages.org
Pseudophilotes sinaicus
学名は、
場所や言語に関係なく
同じ生物のことを
コミュニケーションできる
ようになっているのです
写真: BioNET-NAFRINET
名前は大切です
正しい学名が分かると
- お金の節約になる
写真: Oliver Spalt | Wikimedia commons
Scotinophara lurida
Photo: Natasha Wright, Florida Department of
Agriculture and Consumer Services, Bugwood.org
フィリピンでは、分類学を使って24種類の「黒い虫」を正しく分類することができました。
このうちの2種がイネを食べる害虫だということが判明し、害虫に合った殺虫剤を効果的に使うことに
よって何百万ドルもの節約と、環境の保護に役立ったのです。
12
参照
ケーススタディ no. 39
名前は大切です
学名 を 知らないと
- 死の危険も!
Boletus aurantiacus | 写真: Wikimedia commons | public domain
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食べるべきか、食べざるべきか?
キノコの分類学者 (菌学者)に聞きましょう!
名前は大切です
リンネ
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「もの名前が
分からないのであれば
そのものに関する
知識自体も無用である」
Critica Botanica 1737
カール・フォン・リンネ
(またはリンネウス)は
「分類学の父」と呼ばれ、
動植物の種の命名を体系
づけて近代的分類学の基
礎を作った人です。
Carl von Linné, 1707-1778
画: AMNH Library
リンネは、分類学において一貫性
と正確性を追求しました。その結
果彼の貢献は、生物多様性の研
究、産物貿易、農業の種子売買、
害虫駆除など、 私たちの生活の
あらゆる分野で必要不可欠となっ
たのです。
生物多様性との関連
分類学 – 利点
© A. De Kesel
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分類学は、
生物多様性に関わる
多様な分野に
役立っています。
輸出入の貿易、
食料安全保障、
医療・公衆衛生、
気候変動、バイオ
セキュリティー、
農業、園芸業、
漁業、獣医学、
鉱業、観光業
などの分野から、
家庭の台所仕事に
いたるまで、
色々なところで
生物世界の知識が
必要とされて
いるのです。
分類学は、私達の世界の生物多様性への理解を深めてくれます。
分類学 – 利点
生物世界に対する理解
16
© Kornelia Rassmann
多様性によって、私た
ちの生活は複雑なも
のになっています。
それを助けてくれるの
が分類学。生物世界
を簡潔な単位ごとに整
理、位置づけることで
多様性を分かりやすく
してくれます。
分類学は人類の幸せに
分類学 – 利点
貢献しています
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Photo:
Photo:Bigstockphoto.com
???
Photo: Posa A. Skelton
分類学は人間の関心分野に無く
てはならない基本的な情報を提
供しています。たとえば、
生物多様性の保存,
気候変動への適応,
バイオセキュリティー
,
農業, 漁業,
健康, 観光, 貿易,
などなど。
分類学 は世界的な重要性を
分類学 – 利点
持っています
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政策や法律機関による、十分な情報を得た上での意思決定
を助け、様々な産業で隠れつつも中枢的な役割を果たし
(例:農業、薬学)、ミレニアム開発目標 における貧困緩和、
病気根絶への闘い、そして持続可能な環境のための基礎的
な枠組みを提供しています。
© Kornelia Rassmann
ほかの科学分野への
分類学 – 利点
知識の基盤提供
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Photo: G. R. South
Photo: BioNET-MESOAMERINET
分類学は
保全科学, 進化学,
バイオディスカバリー,
環境学, 生物地理学,
医療 など
ほかにも沢山の科学分野を
サポートしています。
生物多様性 の保全
分類学 – 利点
私たちの周りの生物の
多様性についてもっと知
ることで、よりよい保全と
持続可能な利用を促す
ことが出来ます。
たとえば:
世界各地に点在する
自然保護区は、希少
な種が発見されたり、
すでに絶滅していたと
思われた種が再発見
されたときに設立され
ています。
© Posa A. Skelton
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Brachylophus bulabula –
新たに発見されたフィジー固有の種
分類学 – 利点
気候変動に対する適応
気候変動の影響のひとつに、
種の地理的分布の変化が
懸念されています。
分類学上の収蔵品
は、
歴史上の種の分布の記録として
重要な情報を提供してくれます。
この情報を元に種の絶滅や
有害生物・疫病の流行を予測したり、
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生態系の適応対策を考慮したりすること
が出来るのです。
© Gert Brovad
侵入生物種&有害生物
分類学 – 利点
を制御する
甲虫の Cyrtobagous salviniae は、水
中有害生物の雑草 Salvinia molesta
を生物学的に制御するのに役立ちます。
侵入生物種の問題は、世界の生態
系のほとんどで確認
されており、生物多様性の
大きな脅威となっています。
侵入生物のリスクを制御
するためには、その種に関する
情報や侵入生物を素早く
見極めるための技術を正しく
関係者や社会全体に提供
出来る経験・知識が必要
とされています。
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写真: Katherine Parys, Louisiana State University, United States
参照
ケーススタディー no. 27
分類学 – 利点
政策・意思決定
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ワシントン条約(CITES)の付属書 は、動植物の過度
の乱獲・乱用を防ぐため、段階的に区分けされた保
護規制を盛り込んだ種の一覧表です。
政策や法律の枠組みを
作るにあたって、
分類学の情報はとても重要な
サポートの役目を
果たしています。
たとえば:
ワシントン条約(CITES )は、
ランのように脆弱な
種の貿易をきちんと
規制するため、分類学の
情報に大きく依存して
いるのです。
殆どのランの種はワシントン条約の規制下にあります。そ
の多数は付属書IIに記載されており、現在絶滅の危機に
は無いが貿易を綿密に規制しなければ将来危機に陥る可
能性が高い種に区分けされています。
© Martin Voggenreiter
時計回りに: Ophrys fusca, Orchis italica,
Cypripedium calceolus, Ophrys lutea
分類学 – 利点
バイオディスカバリー
(生物学的発見)と 健康
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© Posa Skelton - Morinda citrifolia
© Stuart Wynne - Niphates digitalis
薬草の重要性は世界各地で
認められており、
果物のノニのように
私たちの健康に役立つ植物の
識別を可能にしてくれるのが
分類学です。
海綿は沢山の有効成分を含み、
薬品・食品など様々な
商業化可能物質を
備え持っています。
分類学はその様な物質の
発見や識別を
可能にしているのです。
分類学 – 利点
バイオセキュリティーと貿易
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農産物の輸送品に未知の昆虫が見つかると、貿易が世界レベルで減
速し、識別が完了するまで輸送品を保管するための多大な出費がかさ
むことになります。
早急な分類学の対応はコストを最低限に抑える働きがあるのです。
オーストラリアから出荷されたコムギ
にカビの一種であるKarnal bunt病
がみつかり、パキスタンで輸入拒否
が起こった事があります。
その際、分類学のお陰で、実は無侵
略性の同類の菌であることが判明し、
40億ドルにも及ぶ輸出貿易が無事
再開されたのでした。
その他のケーススタディーは
ケース no. 8
Tilletia indica|写真: Ruben Durán, Washington
State University, Bugwood.org
貧困削減 と
分類学 – 利点
食糧安全保障
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© bluerain | Dreamstime.de
貧困削減や食糧安全保障、生物多様性の保護は
互いに密接に関わりあっています。
世界的に見ると、生物多様性の消失が
特に顕著な地域で貧困と食糧不安が
頻繁に起きていることが指摘されています。
分類学の知識は、途上国での健全な生態系
の維持を助けることで、地球上でも特に
生態物多様性が高い一方、その消失の
危機にさらされている途上国の
農村低所得民の生活向上に貢献しています。
© imagedirekt.de
未来への挑戦
私たちの知識を
進展させる分類学
18,500 種もの生物が
2007年に新種として登録
今日までにおよそ
180万 種もの生物が
確認されてきました。
しかし、世界には全部で
500-5000万種もの生物が
存在していると考えられて
います。
例えば:
オーストラリアでは、500種
のコオロギを調査した結果、
そのうち76%が新種として
認められました。
参照 Otte, D., and R. D. Alexander.
27
Unka boreena (Otte & Alexander) | 写真: Davi d Rentz
1983. The Australian Crickets
(Orthoptera: Gryllidae). Academy of
Natural Sciences of Philadelphia.
大きい&可愛い ものだけが
未来への挑戦
大切なのではありません
分類学は、ジャイアントパンダやシロナガス
クジラ、ホッキョクグマなど、誰もが良く知っ
ているカリスマ性の高い動物だけに使われ
るわけではありません。
© Tatiana Goydenko | Dreamstime.com
© Josef Szasz–Fabian | Dreamstime.com
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私たちの生態系の動力となっている
小さい生物にも関連しているのです。
このように小さな生物は私たちの生活に
多くの利益(例えばイースト菌)や、
害(例えばマラリア蚊など!)を
もたらしています。
未来への挑戦
なんて
私たちの地球は様々な驚きや喜び
を秘めています – 毎日のように新
たな種が発見されているにも関わ
らず、その多くは ホモ・サピエンス
には気づかれていないのです。
Hippocampus satomiae | © Rudie Kuiter
ここに見られる種-2008年に
初記載-は、全長平均13.8mm、
身長が約11.5mmという
世界で最も小さな
タツノオトシゴです。
© John Sear
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すばらしい世界
もっと詳しく知りたい方は
30
分類学に興味が
わいてきましたか?
詳しい情報はこちらから ...
分類学
世界分類学イニシアティブ (GTI, 国連生物多様性条約)|
ヨーロッパ分類学分散学会(EDIT) |ロンドン自然史博物館 (英国) |ベルギー王立自然史博
物館 | BioNET-International
生物種
エンサイクロピーディア・オブ・ライフ (EoL) |ウィキスピーシーズ(分類学ウィキ) | ARKive
|IUCN レッドリスト |新種発見トップ10 生物種探査国際研究所 (IIES) | 生命の樹ウェブプ
ロジェクト | 海洋生物のセンサス (CoML) | カタログ・オブ・ライフ (ITIS, Species2000) |
地球規模生物多様性情報機構 (GBIF)
分類学、種、生物多様性の重要性
BioNET ケーススタディー |GTI 分類学&気候変動ケーススタディー |
国連生物多様性条約 – 2010年 国際生物多様性年間
写真: BioNET-SAFRINET, BioNET ANDINONET, BioNET-EAFRINET, BioNET-NAFRINET