Transcript 資料組織概説 第14回
資料組織概説 第14回 書誌コントロールとメタデータ 2011年1月11日(火) 第4時限 R101教室 書誌コントロールという言葉(1) • 資料組織におけるキーワードの一つ • Bibliographic control の訳語 – Bibliography=書誌 • 書誌とは – 図書のすべて、特に体裁・材料・成立事情 などについての解説・記述 – ある題目・人物に関する書物・文献の目録 (広辞苑第5版) 書誌コントロールという言葉(2) • 1940年代後半、米国議会図書館(LC)内部 の報告書にbibliographical controlという用 語が使われる • ユネスコとLCの国際的な書誌活動で用い られて広まる cf. 『図書館情報学ハンドブック 第2版』1999(丸善) • 日本でも盛んに使われるようになったが、 人によっては意味内容が異なる場合も 書誌コントロールの定義(1) • ヨーロッパでドキュメンテーションと呼ばれる ものに対してアメリカで出て来た専門用語 • 記録情報の総体から、特定の仕事に関係 する部分を最高のスピードと経済性をもって 取り出すことに知的エネルギーを振り向け るのに用いられる仕組み – Margaret E. Egan, Jesse H. Shera “Prolegomena to bibliographic control” Journal of cataloging and classification, v.5 n.2, 1949, p.17 書誌コントロールの定義(2) • すべてのタイプの印刷された図書館資料やそれ 以外のタイプの図書館資料の生産に対応した完 全な記録化 • 図書館および他の資料保存施設におけるこれら の資料の組織的な収集 • 総合目録、総合リスト、および類似の方法による 資料の所在表示 • すべての領域における主題書誌の提供 Robert Downs “Problems of bibliographic control,” Library Trends, v.2 n.4, 1954, p.501 書誌コントロールの定義(3) 以下のような書誌的活動を包含する用語 • 刊行資料の完全な書誌レコード化 • 書誌記述の標準化 • 資料自体へのアクセスの提供(コンソーシアム、 ネットワーク、その他の共同事業を通して) • 書誌情報アクセスの提供(総合目録や主題別書 誌の編纂と頒布、および書誌情報サービスセン ターを通して) “The ALA Glossary of Library and Information Science” (1983) 書誌コントロールの定義(4) • 資料を識別同定し、記録して、利用可能な 状態を作り出すための手法の総称 • 図書館で行われる目録作業や分類作業は、 書誌コントロールの最も基本的な方法 • 各館における資料組織化処理から始まっ て、国家や国際的な規模で標準的な書誌 的記録を作成し、共同利用するための仕組 みに至るまでの全体を書誌コントロールと いう 『図書館情報学用語辞典 第3版』(丸善, 2007) 書誌コントロールと資料組織 • すなわち、書誌コントロールとは資料組織の 上位概念(より意味範囲が広い) • 書誌コントロール – 図書館における資料組織 • 目録(記述目録法) • 分類(主題目録法) – 抄録・索引作成など 書誌コントロールに関する混乱 • 日本では「書誌コントロール(書誌調整)」 が本来とは異なる意味で使われる場合も あるので注意 – 「書誌コントロール」と「主題コントロール」とを 対比させる(書誌という語からくる誤解?) – 総合目録データベース中の重複書誌レコード の調整の意味で用いる(調整という語からくる 誤解?) 書誌コントロールの歴史(1) • 書誌コントロールという言葉に相当する活動 は古くから行われている • ピナケス(Pinakes) – 古代アレクサンドリア図書館のカリマコスによる 文献目録 – 現存せず、断片や引用が伝わる • 『叙録』および『別録』 – 漢の成帝が劉向に作らせた全国書誌 書誌コントロールの歴史(2) • トリテミウス『聖職者著作目録』 – Trithemius “Liber Scriptorius Ecclesiasitici” – 1494年ドイツで編纂 – カトリック聖職者の約1,000名、7,000点の著作 を収録 • コンラッド・ゲスナー『世界書誌』(1545) – Conrad Gesner “Bibliotheca Universalis” – ラテン語、ギリシャ語、ヘブライ語の著作を集め た書誌 書誌コントロールの歴史(3) • 国際書誌協会(Institut International de Bibliographie) – 1895年、オトレ(Paul Otlet)とラ・フォンテーヌ (Henri La Fontaine)がベルギーで設立 – 15世紀以来の全世界の文献を記録しようとす る試み – 1千万枚を超えるカード目録 – 1930年代に挫折 20世紀の動き • 国際図書館連盟(IFLA)の設立(1927) • UNESCO「書誌サービス改善に関する国際会議」 UNESCO Conference on the Improvement of Bibliographic Services (1950) – 国内書誌コントロール機関の設立および全国書誌の整 備を勧告 • 目録法原則国際会議(ICCP: International Conference on Cataloguing Principles)(1961) – 諸原則に関する声明(Statement of Principles)通称 「パリ原則」を採択 世界的な書誌コントロール(1) UBC: Universal Bibliographic Control • 1973年にIFLAが提案・議決 • 国レベルでの書誌コントロールのシステムや標準 の開発および国際的な書誌データ交換の調整・支 援が目的 • 1974年、英国図書館内に国際書誌調整事務局 (IFLA International Office for UBC)設置 • 国際標準書誌記述(ISBD: International Standard Bibliographic Description)の制定(1974-) – パリ原則(1961)、コペンハーゲンの目録専門家国際会 議(1969)を受けて制定 – G: General(一般)、M: Monograph(単行書)、S: Serials(逐次刊行物)など資料種別ごとに規定 世界的な書誌コントロール(2) UBC: Universal Bibliographic Control • 全国書誌国際会議の開催 – UNESCO/IFLA International Congress on National Bibliographies(1977) – International Conference on National Bibliographic Services (ICNBS), Copenhagen (1998) • UNIMARC (Universal MARC) formatの制定 (1977) • IFLA Universal Bibliographic Control and International MARC Core Activity (UBCIM) は 2003年活動終了 • 新たにIFLA-CDNL Alliance for Bibliographic Standards (ICABS)が発足 全国書誌(1) national bibliography • 特定の国で出版された文献の書誌。ひいては、 当該国に関する文献、または当該国の言語で 書かれた文献の書誌 『ALA図書館情報学辞典』 • 印刷形態(及び(または)カード目録、機械可読 テープのような他の形態)で定期的かつできる 限りすみやかに発行される、国内出版物につ いての典拠となる、しかも網羅的な記録の集積 IFLA「全国書誌作成機関及び全国書誌のための ガイドライン」 全国書誌(2) national bibliography • 各国の国立図書館が作成、冊子体として 刊行→Web版に移行 – 日本全国書誌、British National Bibliography(英国)、 Bibliographie nationale francaise(フランス)、 Deutsche Bibliographie(ドイツ) など • MARCによるデータ蓄積 – JAPAN /MARC, MARC21(米英), UKMARC(英・過 去), INTERMARC (フランス), MAB1 (ドイツ) など • 蔵書目録のインターネットによる公開 – NDL-OPAC, LC Online Catalog, BL Integrated Catalogue, BnF catalogue général など 出版物の入手支援 • 書誌データだけあっても、出版物が入手でき なければ意味がない • IFLAは1979年からUAP (Universal Availability of Publications) という活動で、 国際的な相互貸借・複写を支援 – 標準の申込用紙(IFLA Loan/photocopy request form)、料金支払いの仲立ち(IFLA Voucher Scheme)など • 2003年UAPは終了するが、ILL事業は継続 メタデータ • 情報資源(データ)に関するデータ • 情報資源を検索や管理するための情報 – 広い意味では図書館の目録情報もメタデータ • ダブリン・コア – 多様な情報資源すべてに共通する、核(コア)と なる要素を定めた国際標準 – title, creator, subject, descriptionなど15の基 本要素 • ネット上の情報資源の組織化への貢献が期 待されるが、不要論も←Google Googleの野望 • Google の使命は、世界中の情報を整理し、 世界中の人々がアクセスできて使えるように することです Google 会社情報:会社概要 より – 国際書誌協会が挫折した夢に挑戦(?) • 人手による組織化(メタデータ)に頼らない • “完璧な検索エンジン”開発をめざす • さまざまな先進的サービスの実験 第14回のまとめ • 書誌コントロール(bibliographic control)とは、資 料を検索・利用可能にするための方法で、図書 館の資料組織を含む概念 • ピナケスなど古代の資料目録 • 国際書誌協会による世界書誌の試みと挫折 • 各国の国立図書館は全国書誌を作成 • IFLAを中心とした国際的な書誌コントロール – MARCデータの流通、ISBD制定、ILL • インターネット情報資源を記述するメタデータ – ダブリン・コア • Googleはまた別のアプローチ