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最新の原子核乾板解析 技術 東邦大学 福田 努 特定領域「フレーバー物理の新展開」研究会 2011年7月1日 湯ノ山温泉 鹿の湯 1 原子核乾板解析 原子核乾板解析はノイズとの戦いである。 原子核乾板は蓄積型の検出器ゆえに環境か らの自然放射線に伴う低エネルギー電子が 主なノイズとなる。 特にOPERAはこれまでの最長2年だった検 出器製作から検出器設置の期間が~7,8年と 極めて長く、解析によってノイズ除去を行うこ とが極めて重要となる。 2 OPERA実験で使用する原子核乾板 OPERA-film 75.4mm 125mm OPERA film 8.3kg 10X0 Neutrino Beam Lead plate : 1mm 100mm Emulsion Cloud Chamber (ECC) 5 mm n 50 μm Resolution of 0.3 μm Microscopic Image ECC brick CS 3 低エネルギー電子の写真 乳剤層 300m プラスチック ベース層 50μm OPERA-film断面図 Sub-MeV~数MeVの電子は原子核との多重電磁散乱によりくにゃくにゃと曲がった 軌道を辿る。一方、Sub-GeV以上の高エネルギー荷電粒子は乳剤層を真っ直ぐ貫く。 4 飛跡の自動認識アルゴリズム 重ね合わせの原理 高エネルギー荷電粒子 自動飛跡読取装置 S-UTS 低エネルギー電子 《基本的な考え方》 乳剤層を16層の断層映像として 取り込む。 画像を二値化する。 各層をズラしながら重ね合わせ ることで、任意の角度の飛跡を 認識する。 5 大量のノイズ飛跡 ● 一層の乳剤層 検出効率 vs ノイズ量 ● コインシデンスをとった後、肉眼観察で判定する。 検出効率 (%) ノイズ量 (/cm2) ノイズ量 (/cm2) ノイズ量 (/cm2) ~108本/film 検出効率 (%) 検出効率 6 (%) OPERAで開発したノイズ除去技術 1: Compton alignment 接している乳剤層に渡って記録された低エネルギー電子を用いて精密にアライメントをとる。 アライメント精度 OPERA-CS Δx~ 5.5 μm Δy~ 7.6 μm Δx~ 2.0 μm Δy~ 2.0 μm ノイズである低エネルギー電子をアライメントに逆利用。 OPERA-film 2枚の位置合わせの精度向上によりChance coincidence BGを~1/10に低減。 7 OPERAで開発したノイズ除去技術 2: Navigation 自動飛跡読取装置 人間の目は最良の測定器。高いS/Nで高エネルギー粒子と 低エネルギー電子の識別ができる。 肉眼観察は専用の測定器で行う。 自動飛跡読み取り装置が検出した飛跡はどれか?? 飛跡がすぐに見つからない場合、数分程度探すことになる。 ハードウェア間の移動 肉眼観察専用機 データを送って パターンマッチ 自動飛跡読取装置で 取得した飛跡データ 目的の飛跡の周りの数視野 の飛跡データを再度取得 (低エネルギー電子の飛跡) パターンマッチ後の飛跡の位置再現性 肉眼観察専用機 ∆x=0.74μm ∆y=0.99μm 肉眼観察時の判定速度の向上 8 160μm 9 OPERAで開発したノイズ除去技術 3: Track Ranking トラックデータの直線性と各層の飛跡の濃さから高エネルギー粒子らしさを評価する。 肉眼観察不要 高エネルギー粒子 要・肉眼観察 肉眼観察不要 低エネルギー電子の Chance coincidence Signal data Noise data 濃さ情報 (R) ① VPH(濃さ) ×4層 ② 角度差(Micro Track-Base Track)×4層×(x, y) ③ 角度差(Base Track-Base Track)×(x, y) ④ 位置ズレ(Base Track-Base Track)×(x, y) 現在は内部関数としてlikelihood関数を使用 Lsignal i 1 PVPH isignal ( ) * i 1 PdAmicro isignal ( , ph ) * i 1 PdAbase isignal ( ) * i 1 PdXbase isignal ( ) 4 Lnoise i 1 PVPH inoise ( ) 8 2 ② 4 システマティックにSignal/Noise識別を行い、 肉眼観察不要領域を決定→解析Speed up 2 ③ ④ ① Track RankingScore ( R ) log Lsignal Lnoise 10 これらの解析技術によって OPERA CSの解析 1イベントあたり約1,000本, 15事象/day 約1,000時間の肉眼観察 → 毎日500人がそれぞれ2時間シフト 1イベントあたり平均5本, 15事象/day 3時間の肉眼観察 → 毎日2人が1.5時間のシフト OPERA ECCの解析 UTS SUTS 肉眼観察専用機 超高速自動飛跡読み取り装置 PLCH 反応点探索専用機 Navigationによって異なるハードウェアでの飛跡データの受け渡しが効率的になった。 Track Rankingは一部解析に導入され、スピードアップに貢献している。 とはいえ、まだ肉眼観察の負担は大きい。 もっとノイズを落としたい… !! 11 現在開発中のノイズ除去技術: 画像解析 要・肉眼観察 人間は直線認識だけでなく、3次元空間領域中の銀粒子の配置, 相関関係を見て判定している。 高エネルギー粒子の飛跡 低エネルギー電子の飛跡 要・肉眼観察領域のTrack Rankingが高いノイズは低エネル ギー電子の一部を直線認識している可能性が高い。 最終的には曲線認識も取り入れて低エネルギー電子を再構 成したいが、まずは領域中の銀粒子のHit数で識別を試みた。 現段階で要・肉眼観察領域の50%のノイズを除去でき ている。パラメータの最適化はこれから。 Hit数/(15μm x15μm x下面乳剤層) Noise data Signal data Signal data *Noise data Hit数/(15μm x15μm x上面乳剤層) 12 画像解析用飛跡読み取り装置の開発 将来的に飛跡認識でヘビーな処理をさせることを見越して、処理速度の向上を同時進行している。 GPU (Graphics Processing Unit) の導入 画像の二値化並列度チューニング 0.008 0.007 0.006 0.005 0.004 0.003 0.002 0.001 0 0 200 400 600 800 1000 1200 Bench mark test (直線飛跡認識) (sec) 2193 2500 2000 1500 1000 NVIDIA Tesla C2050 GPU 448 CUDA Cores 11 500 0 1 CPU (Intel Core i3 540) 2 GPU (Tesla C2050) 13 新型読み取り装置の応用: 大角度核破砕片探索 処理速度の向上を直線飛跡認識に活かせば、大角度飛跡の自動認識処理速度も上がる。 1.2rad までの飛跡再構成テスト 256m 320m 1rad ハドロン反応からの核破砕片生成の割合を求める研究はντ反応のバックグラウンド低減 に有効であり、現在解析を進めている。→ 詳しくは若手セッションで(松尾) 14 まとめと展望 原子核乾板では自然放射線からの低エネルギー電 子が主ノイズ成分となる。 これまでノイズを除去する解析技術を開発してきた。 現在、さらなるノイズ除去のためのアルゴリズム開 発及び新型読み取りシステムを開発中である。 最終的な解析速度のボトルネックとなる人間による 肉眼観察を解消を目指す。 15 supplement 16 CPUからGPUへの転送 =入力 CPU GPU 描画 =演算 GPUからCPUへの書き戻し(描画結果の取得) =出力 17