現代世界経済をとらえるVer.5第2章

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現代世界経済をとらえる Ver.5
第2章 日本・中国・アジア
アジアを知ると世界がわかる
©東洋経済新報社
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2.1 なぜアジアは急成長したのか
アジアの経済成長要因
輸出志向型
工業化政策
プロダクト・
サイクルによ
る後発性利
益
熟練労働力
の存在
経済発展に
必要な要素
国家の市場
への介入
貯蓄の増加
=外資導入
推進母体とし
ての財閥・大
企業の存在
多国籍業に
よる経済波
及効果
アジアの経済成長の要因
① 輸出志向型経済政策
② プロダクト・サイクルに基づく後発性利益
③ 国内貯蓄に代わる外資の導入
④ 多国籍企業のアジア進出による経済的
波及効果の存在
⑤ 経済開発の推進母体としての財閥・大
企業の存在
⑥ 経済政策を企画・立案するテクノクラー
トの存在
⑦ 高付加価値製品を生産できる高級人力
=熟練労働者の存在
等が複合的に絡み合って達成された。
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アジアの経済発展の特徴
1960年代から1970年代:アジアNIEsが発展
1980年代後半から1990年代:東南アジアの国々が発展
その後:中国、ベトナム、インドが発展
アジア地域のこうした経済発展のダイナミズムは,雁の群れが逆V字型に
なって飛ぶさまになぞらえて,雁行型経済発展と呼ばれている。こうした中で
,アジア各国間の貿易関係が深化すると同時に,世界的には図2‐1(次のス
ライド)のようなトライアングル貿易の中にアジアは組み込まれている。
アジアの経済発展の問題点
① 対外依存度が高い→自国経済が外的要因によって左右される
② 輸出先が米中2カ国に偏重→米中の経済停滞がアジアを直撃する懸念
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図2-1 貿易のトライアングル構造
(出所)筆者作成
アジア各国から輸入された中間財,資本財を中国で生産加工された消費
財が,アメリカ、EUに輸出されるという貿易のトライアングル構造により,
世界の貿易構造は成り立っている。
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世界貿易に占める東アジアのシェア
(出所)経済産業省『通商白書2008年版』
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2.2 アジアが抱える諸問題
アジアが抱える諸問題
領土問題
環境問題
食糧問題
人口問題
エネルギー
問題
アジアが抱えている諸問題は,日本が過去経験したか,現在経験し
ている問題である。しかし,注意しなければならないのは,その顕在
化する速度は日本のそれより早く,かつ深刻化しつつあるということ
だ。
また,どの問題は一カ国では解決できないほど,グローバルな課題
かつ複合的要素が絡み合っている。したがって,アジア各国は協力し
てこれらの問題に対処しなければならない。
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a アジアの領土問題
① 北方領土問題:日本-ロシア間
・ 択捉島、国後島、色丹島、歯舞諸島の帰属をめぐる日本とロシア(旧ソ
連)の争い
・ ロシアが実効支配
② 竹島(独島)問題:日本-韓国間
・ 歴史的書物の中に、日本の領土であることが示されているが、韓国側
の歴史的書物には、韓国の領土であることが示されてない
・ 韓国が実効支配
③ 尖閣諸島(釣魚島)問題:日本-中国(台湾)間
・ 石油資源が埋没している可能性がでてきたことが発生
・ 日本の実効支配下にあるが、中国と台湾は反発
④ 南沙諸島問題:中国,ベトナム,マレーシア,台湾,フィリピン
など
・ 複雑な国境線 ・ 油田とガス田の発見
・ 海運ルートと通商ルートであり、軍事的意味も大きい
⇒原因:経済,エネルギー,軍事の各面で重要なため
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b 環境問題の震源地としてのアジア
① アジアでは、生活環境・公害問題・地球環境問題が深刻化・併存
② 経済成長にともなう環境汚染
・ 化石燃料の大量消費による都市の大気汚染の広がり
・ 廃水処理整備の遅れによる河川の汚染
・ 処理能力の不備による、固形廃棄物の放置
③ 二酸化炭素排出量について
・ 次のスライド参照
④ 環境問題の特徴
・ 過去の環境破壊は局地的・段階的だったが、現在では世界的・加速度
的に進展→一国では解決できない
・ アジアは経済成長のモデル地域であると同時に、環境破壊の中心地・
震源地でもある
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b 環境問題の震源地としてのアジア
・世界全体の二酸化炭素排出
量の内,アメリカ,中国,ロシ
ア、日本の4カ国で50%を超
えている。
・日本は,4.7%と米中に比較
したら,少ない(対米中比それ
ぞれ約四分の一)が,世界で4
番目に二酸化炭素を排出して
いる国であり,さらに一人当た
り排出量で見ると,約二分の
一とかなり排出していることが
分かる。
(出所)全国地球温暖化防止活動推進センターウェブサイト(http://www.jccca.org/)より
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c エネルギーの巨大消費地域アジア
ニューヨーク原油先物市場の推移(単位:ドル/バレル、月平均)
120
110
100
90
80
70
21世紀に入り,原油価格は
60
50
急速に上昇し続けている
40
30
20
10
0
91 92 93
94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07
08
資料:米国エネルギー情報局
(出所):経済産業省『エネルギー白書2008』
原油価格高騰の背景:
1. 長期的な需要の逼迫化傾向(石油需要ファンダメンタルズ)
2. 地政学的リスクの増大
3. 資源ナショナリズムの台頭
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d 人口大国としてのアジア
世界10大人口大国(2008年)
順位
国(地域)
総数
世界
6,750
1
中国
1,336
2
インド
1,186
3
アメリカ合衆国
309
4
インドネシア
234
5
ブラジル
194
6
パキスタン
167
7
バングラデシュ
161
8
ナイジェリア
151
9
ロシア
142
10 日本
128
(出所)総務省統計局『世界の統計』
男
3,400
690
614
152
117
96
86
82
76
66
62
(100万人)
女
3,350
646
573
157
117
98
81
79
76
76
66
・世界の人口大国(上位10カ国)のうち,6カ国をアジアが占めている。
・世界で人口が1億人を超えている国は,メキシコを含め11カ国しかない。
そのうち,日本は,10番目の人口大国である。
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e 世界はアジアの胃袋を満たせるか
人口増加⇒食料需給問題
食料価格高騰の原因:
1. 人口増加
2. 経済成長に伴う1人当たり消費カロリーの増加と
食生活の多様化
3. バイオ燃料向けの穀物需要の増大
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2.3 アジアにおける地域統合
a 東アジア共同体構想の変遷
「経済産業省は,2005年12月に第1回東アジアサミットが
開催され,東アジア共同体形成に向けた動きが本格化す
る中,東アジア経済統合推進のため、積極的にイニシア
ティブを発揮すべく,2006年4月には「グローバル経済戦
略」を発表した。この戦略にそって,ASEAN10ヶ国に日
中韓+インド,豪州,ニュージーランド16ヶ国で「東アジア
包括的経済連携(東アジアEPA・CEPEA
(Comprehensive Economic Partnership in East
Asia))」構想,さらに東アジア版OECDのような国際的体
制の構築に向けた第一歩として,「東アジア・ASEAN経
済研究センター(ERIA:Economic Research Institute
for ASEAN and East Asia)」構想が提唱された。2006年
8月には東アジア経済大臣会合において,CEPEA民間
専門家研究の開始,及びERIA構想を提唱し,2007年1
月第2回東アジアサミット,2007年11月第3回東アジアサ
ミット等を通じて,東アジア経済統合に向けた地域の取組
を積極的に主導してきている。」(『通商白書2008』 )
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東アジアにおけるFTAの経済効果(実質GDP増加率)
・アジア各国とも,FTAの経済効果
は高い。特に,中国,ASEAN諸国
でその傾向が高い。
・日本の経済効果は,0.44%とあま
り大きくないが,これは経済規模そ
のものが他のアジア諸国と比べ大
きいため,割合としてはそれほど大
きくは反映されていない。
(出所)経済産業省『通商白書2008年版』
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b 東アジア共同体構想に対する日本の立場
1. 「開かれた地域主義」の原則に基づくこと
2. 「機能的な協力促進が中心(機能的アプローチ)」となること
3. 普遍的価値の尊重,グローバルなルールを推進すること
「ASEANは統合に向けた取組を着々と行うとともに,域外諸国・地域とも関係を強化している。近
年,東アジアにおいて貿易をはじめとする相互依存関係が深化する中,東アジア諸国同士の自由
貿易協定や経済連携協定締結の動きが活発化しているが,ASEANは,中国,韓国とFTAを発効
させ,日本ともEPAの署名を完了している。インド,豪州,ニュージーランドとも交渉を継続しており,
東アジアのEPA/FTAの結節点(ハブ)として位置付けられている 」(『通商白書2008』)
「東アジアで最も東アジア共同体形成に積極的なのはASEANである。」
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結論
・アジアで「世界の工場」「世界の消費地」と呼ばれるまでに急成
長した。
・世界がグローバル化する中で,世界が抱える諸問題の発信
源・噴出地ともなっている。
・「東アジア共同体」にはアジア経済の緊密化・ダイナミズムをさ
らに推し進める可能性がある。
・「東アジア共同体」に最も積極的なのはASEANである。
・日本はアジアが抱える諸問題,「東アジア共同体」形成に向け
て、イニシアティブを発揮すべきである。
・それらを通して日本は,アジアの一員として21世紀の世界経
済に大きな貢献を果たすことができる。
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図2-2 経済連携強化に向けた取組み―スケジュールのイメージ
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(出所)外務省経済局『日本の経済連携協定(EPA)交渉:現状と課題』2009年10月
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