資料 - 北海道大学 理学部
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Transcript 資料 - 北海道大学 理学部
Sapporo Winter School
8-10 March, 2012
超光速ニュートリノ
(Superluminal Neutrinos)
小田 一郎 (琉球大学理学部)
1
Superluminal Neutrino
1. Superluminal OPERA neutrinos
「ニュートリノ」とは?
1930年、パウリがベータ崩壊を説明するために理論的に導入し、1950年代
に実験的に観測された。
電荷を持たない中性の(ニュートラル)素粒子。電子型、ミューオン型、
タウオン型の3種類がある。
3種類のニュートリノは飛行中、互いに移り変わる(ニュートリノ振動)。
そのために速度は種類の違いには無関係。
質量の正確な値は分からないが、電子の100万分の1以下でとても軽い。
弱い相互作用しかしないので、検出が難しい。
1987年、超新星SN1987Aから飛んできた11個の電子型反ニュートリノを観測
し、小柴氏がノーベル物理学賞を受賞。ニュートリノは光の数時間前に到着。
陽子
中性子
電子
ベータ崩壊
電子型反ニュートリノ
2
OPERAの実験
Superluminal Neutrino
3
Superluminal Neutrino
イタリアのグランサッソにあるOPERAニュートリノ検出器
(Oscillation Project with Emulsion-tRacking Apparatus)
ニュートリノ振動の実験。速度を調べることは片手間に
やっていた(院生の博士論文のテーマ)。
4
Superluminal Neutrino
Gran Sasso
CERN
地球
GPSを大々的に利用した最初の実験!
5
Superluminal Neutrino
From a slide of seminar at CERN
6
Before OPERA,
■ MINOS (2007)
~1 sigma
■ SN1987A超新星 (1987)
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Superluminal Neutrino
ニュートリノが光速よりも60ナノ秒
(60秒の10億分の1)早く進む!
どうしてこの結果が驚きだったのか?
アインシュタインの特殊相対性理論に反する!
光速は最速の速度であって、すべての素粒子は光
速度以下で進む(光速度不変の原理)。
光速を超える素粒子(タキオン)があれば、タイムトラベルが可能?
光より速い粒子があったら、アインシュタインの理論の仮定自身
が変更されるので、新しい理論を作る必要がある。因果律は現
代物理学の基礎であるので、タイムマシンは作れない!
しかし、特殊相対性理論の正しさは今まで多くの実験によって
示されている。少しだけ破れるのか・・・・・???
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実験の問題点
Superluminal Neutrino
(1) ニュートリノ発射の時刻が正確か?
(2) ニュートリノビームの幅が広すぎる(3km)
10ナノ秒の誤差
3km
Gran Sasso
3km
CERN
9
追試の実験 (18 November, 2011)
1m
Superluminal Neutrino
1m
20 個のニュートリノ の測定。62.1 ナノ秒早く
着いた。前の実験の誤差範囲内。
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Superluminal Neutrino
(3) 間違いの可能性?? (23 Februay, 2012)
GPS関係
Timing
Oscillator
Miscalibration
Tens of ns ??
??
60 ns
Sensitive
Fiber Angle
As Much as
100 ns ??
0 ns
September, 2011
February, 2012
Superluminal Neutrino
理論家の反論
超光速ニュートリノから弱い相互作用を通じて、
電子・陽電子対が生成される
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Superluminal Neutrino
20GeV
40GeV
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Superluminal Neutrino
OPERA group
ICARUS group
17 October, 2011
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Superluminal Neutrino
理論家が解くべき問題
OPERAの実験結果:ニュートリノは超光速で進む(?)
注意すべきポイント
実験的な事実:SN1987Aの観測から、ニュートリノはほぼ
光と同じ時刻に到着した。もしOPERAの結果に従うと、4年
ほど前に到着すべき!
理論的な事実:ニュートリノが超光速だとビームの形が変
化するはずだが、全く変化していない!
CG論文以前の普通の解答
特殊相対性理論を少し破って、前者の実験的な事実
をしようとする。
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Superluminal Neutrino
アインシュタインの関係式
特殊相対性理論を破る項
v
OPERAのニュートリノのエネルギー=17500MeV
SN1987Aのニュートリノのエネルギー=15MeV
c
E
を微調整して、OPERAとSN1987Aのニュートリノの速さの違いを説明。
しかし、ニュートリノビームの形が変化すること(CG effects)を説明不可能!
そもそも両方のニュートリノはその質量に比べて、ultra-high energy! ふたつ
のニュートリノエネルギーの違いを利用するのは無理がある!
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我々のidea
H. Taira and I. O., arXiv:1110.6571 [hep-ph],
I. O., arXiv:1112.5793 [hep-ph]
本当に特殊相対性理論は少し破れるのか?!
■相対性理論は多くの実験結果によってその正しさが
確かめられている。
■相対性理論を少しでも破ると、CG effectsなどの病的な
現象が出現する。
■相対性理論を破ることなく、OPERAとSN1987Aの結果を
同時に説明しなければならない。
要するに、相対論を破ってニュートリノを超光速にする
アイディアはうまく行かない!
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特殊相対性理論を破らないで、OPERAの結果を理論的
に説明するほとんど唯一の方法
光の速度を変化させる!
光の速度は周りの環境に依らないのか?
例.水の中を進む光の速度は真空中の速さの3/4
= 媒質中の光速度
= 真空中の真の光速度
= 媒質中の屈折率
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媒質中の波の屈折率の公式
= 単位体積当たりの散乱数
= 光子の前方散乱振幅
= 光子の波数
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素朴な疑問
(1) 光だけでなく、他の波も媒質の影響を受けるのでは ?
例.ニュートリノ
光は電磁相互作用、ニュートリノは
弱い相互作用のみ
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(2) 媒質は何 ? エーテル? それとも他の未知の物質?
もっとも自然な媒質
暗黒物質
Gran Sasso
CERN
地球
暗黒物質の雲
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(3) 既存の実験に矛盾しないのか ?
暗黒物質の密度 =
太陽系の暗黒物質の密度
J.-M. Frere et al., P.R. D77 (2008) 083005
重力のために、何もない宇宙空間より、銀河系近傍に
集まる傾向が強い。
今までの光速度の精密測定実験は、我々の
銀河系近傍のみ
暗黒物質の影響は避けられない!
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暗黒物質(ダークマター)
Dark matter
我々の天の川銀河
暗黒物質の海に中にある!
見える天体の質量を足しても全質量の2
割しかならない。残りの8割は暗黒物質
(未知の素粒子?)が担っている。
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Dark matter
衝突前
衝突後
2006年発見の弾丸銀河団
2つの銀河が衝突した衝撃で、暗黒物質(ブルー)と可視
物質(ピンク)が分離する様子。
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面白い疑問
(1) 光速度はエネルギーに依存しないのか?
HERA Compton polarimeter data:
for 12.7 GeV photons
V. Gharibyan, P.L. B661 (2005) 231
Fermi Gamma-ray Space Telescope data:
73億光年離れた所で起こったγ線バーストの測定から
エネルギー依存性は見られなかった。
A.A. Abdo et al., Nature 462 (2009) 331
2つの実験結果は矛盾するか?
No! 前者は暗黒物質の影響を強く受けたから。
cf. S.L. Glashow, Madrid conference, Dec. 2011
“One possibility could have been that the speed of a photon is
a descreasing function of its energy. ……”
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面白い疑問
(2) 特殊相対性理論の光速度不変の原理に矛盾しないのか?
2つの基本原理
①特殊相対性原理
“すべての方程式はローレンツ変
換に対して不変”
②光速度不変の原理
“光の速さは有限で、光源の運動
に依存しない”
光は電磁波であって、その存在は
電磁気学によって保証されている。
電磁気学が特別視されている?
②光速度不変の原理
②’普遍極限速度の原理
“すべての物質に対して、有限な普遍極限速度が存在する”
W.V. Ignatowsky, Arch. Math. Phys. Lpz. 17 (1910)
1; P. Frank et al., Ann. Phys. Lpz. 34 (1911) 825;
N.D. Mermin, “Boojums All The Way…….”, Cambridge
Univ. Press, 1990(「マーミン相対論」丸善、町田茂 訳)
練習問題. ①と②’からローレンツ変換則と速度
の合成則を導いてみよう
y軸
慣性座標系 I
y’軸
慣性座標系 I‘
速さ v
x軸
z軸
x’軸
z’軸
①と時空の一様・等方性から
ここで、共通因子Dは相対運動の定義から来る。
逆の変換は、(つまり、vを-vに置き直して、)
ここに元の変換を代入して、tとxの恒等式とみると、
座標系I’で速度V’を持つ物体を、座標系Iで見ると
対応する速度Vは
ここで②’普遍極限速度の原理を使うと、普遍極
限速度
を用いて、
これを使うと、ローレンツ変換
また、速度の合成則も導ける:
今までの考察から得られた知見
特殊相対性理論は破ってはいけない。
CG effectsなど実験に合致しない結果が現れる。
OPERAの“超光速”ニュートリノとSN1987Aのほぼ
“光速”ニュートリノを同時に説明することが必要。
OPERA(17GeV), SN1987A(10MeV)なのでエネル
ギーは静止質量に比べ、両方ともultra-high。
光速度不変の原理は、普遍極限速度の原理に
置き換えることが可能。
地球上の光子の速度は、“暗黒物質”の影響で
変化する可能性がある。
実際にこれらの条件を満足する理論を構成出来るのか?
2. Subluminal OPERA neutrinos
Our key idea
SN1987Aニュートリノ
SN1987A
地球
ほとんどの間、暗黒物質のない宇宙空間を飛ぶので、
光は真の光速度(普遍極限速度)で進む。
OPERAニュートリノ
CERN
Gran Sasso
地球
暗黒物質の雲
ニュートリノの速度は地球近傍の光の速度より大きい。
相対論を破ることなく、二つのニュートリノを同時に説明する仮定
“Subluminal”
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2-1. Scalar dark matter
Non-renormalizable term
This effective theory is defined only for
Here
= Massive scalar dark matter with mass m
= Field strength of photon
= Mass scales controlling the couplings
= Trace of stress energy tensor
We set
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Here an effective metric, along which photon propagates, is
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Eq. of motion for scalar field
At the linearized approximation,
For simplicity, we assume that stress energy is taken as
a static and spherically symmetric source of earth’ s
mass
.
Otherwise = 0
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Linearized eq. of motion
A solution to this eq.
We postulate that Compton wave-length of the scalar
is the order of planetary distance
, so we can
set m = 0. Then, we have
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The effective space-time on which photon propagates
Here
and
By using the coordinate transf.,
Here
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The effective velocity of photon
At the last step,
is recovered.
Beyond Standard Model
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3. Conclusion
If OPERA result is correct, we can explain it by
using “dark matter” without violating special relativity.
Then, OPERA neutrinos are not superluminal but
subluminal whereas the velocity of light is reduced
by the refraction index coming from dark matter
as a medium.