Transcript 1-3

北上川の自然とそのとらえ方
北上川の自然環境を全体的に把握するために、北上川の各場所の植生と、物理的条件のデー
タを整理して、北上川の環境を区分しました。
川の形(狭くて深い、広くて浅いなど)によって、冠水頻度(洪水などによって水に浸る頻
度)の違う場所ができ、その違いによって、土壌の水分条件も変わり、生育する植物が決まり
ます(図1)。さらに、それらの植物をすみかとして好む生き物も少しずつ変わります。
こうして、川の形や冠水頻度、植物の特徴を上流から下流まで並べると、同じような環境を
持つ場所がいくつかに分けられることがわかりました。これを北上川の川の形や、植生などか
ら分けた区分としました(図2)。
次に、この各区分は、川の中のいろいろな環境の要素で作られていることに着目しました。
川には、瀬・淵、河原の礫地、草地、ヨシ原、樹林などのいろいろな小さな環境の要素が集ま
っています。これらの環境の要素は、川の形の特徴から、その成り立ちを説明できるのではな
いかということがわかってきました。
また、環境要素の中には、生物のすみかとなったり、餌場として重要なものがあります。その
ような環境を好む生物で、わかりやすいものを注目種として決め、その生息状況から川の環境を
モニタリングするため、市民の協力を得ながら調査する試みも始められています。
植生別冠水頻度の分布
2年 に1回 冠 水
1年 に1回 冠 水
年 間 2日 冠 水
年 間 5日 冠 水
年 間 10日 冠 水
年 間 20日 冠 水
年 間 50日 冠 水
年 間 100日 冠 水
常時冠水
分布が集中している範囲
遷移
20年 に1回 冠 水
10年 に1回 冠 水
撹乱
遷移
遷移
撹乱
図1 冠水頻度と
植生の特徴
撹乱
撹乱
礫
河
原
草
地
湿
性
群
落
ヤ
ナ
ギ
河
畔
林
ヤ高
ナ木
ギ
河
畔
林
オ
ニ
グ
ル
ミ
ニ
セ
ア
カ
シ
ア
二
次
草
地
図2
北上川区分図
工学部建設環境工学科 水域防災工学研究室(内線6448)
赤川の水環境評価に関する研究
赤川に含まれる種々の金属類が水
環境中でどのような挙動を示し、水
生生物相にどの程度の影響を及ぼす
のかを詳細に評価することを目的と
した研究を行った。
赤川の水環境評価
St.5
N
River Nagagawa
St.1
River Suzushigawa
Mine drainage
treatment plant
St.8
St.6
St.2
Site of
abandoned
Matsuo mine
0
St.3
River
Akagawa
St.7
St.4
St.9
River Kamodagawa
River Matsukawa
5 km
River Kitakami
Fig. 1 赤川の概要と調査地点
St.2 (pH : ca.3.6)
金属濃度
Al 39.8mg/l
Fe 7.2mg/l
As 18.2μg/l
水生昆虫
個体数: 1~31匹
種数: 2~7種
Cd 3.4μg/l
St.9 (pH : ca.6.8)
金属濃度
水生昆虫
Al 3.5mg/l
個体数:108~472匹
Fe 1.5mg/l
種数:6~17種
As 7.9μg/l
Cd 0.6μg/l
Fig.2 St.2とSt.9のpH,金属濃度,
水生昆虫の種数,個体数
Fe
Al
Ca
others
Chl-a
0.16
0.08
20
0.04
0
0
St.1 St.2 St.3 St.4 St.5 St.6 St.7 St.8 St.9
調査地点
工学部建設環境工学科環境衛生工
学研究室 (内線6449)
Fig.3 河床堆積物中の各金属の存在
率とChl-a量
2
0.12
40
Chl-a(mg/m )
60
重金属割合 (%)
赤川において水質と水生昆虫に関する
野外調査(Fig.1参照)を3年間実施した
結 果 、 上 流 部 ( St.1 ~ 3 ) は 強 酸 性
(pH:3~4)であるとともに、金属濃度
が高く、水生昆虫の種数や個体数が非
常に少なく、そのほとんどが耐酸性で
あった。中和処理施設の稼動によりそ
の本流である北上川の水質は改善され
たが、赤川上流部は依然として酸性状
態にあると言える。一方、中・下流部
(St.5以降)はpHが上昇し、金属濃度
が低下するにもかかわらず、水生昆虫
の多様性や個体数は一般自然河川に比
べて明らかに低い(Fig.2参照)。また、
底生動物の餌資源となる付着藻類に注
目して研究した結果、赤川においてAl
堆積物が多い中・下流部では、調査期
間を通して藻類量の指標となるChl-a
量が他の地点に比べて顕著に低かった。
Alイオンは植物への成長を阻害し、さ
らにその程度はpHに依存したAlイオ
ンの形態によって異なることが報告さ
れている。河川水中のAl濃度自体は上
流部の方が高いことを考慮すると、中
流部でのpHの上昇に伴うAlイオンの
加水分解過程で生成されるAl重合イオ
ンの存在や、その河床への堆積が 、
St.6~8での付着藻類の増殖を阻害し
ている一因と考えられる。
北上川の橋について
江戸時代は河川が物資の流通や人々の交通に
大きな役割を果たしていた。つまり、河川は道
路や鉄道の役割をしていた。ヨーロッパの歴史
においても同じことで、皇太子殿下のロンドン
留学の研究テーマはテムズ川の交通史であった
という。
大 正 橋
<北上川の橋の歴史>
盛岡の南には舟橋が、北には夕顔瀬橋が架けられていた。舟橋は船を多数横に
並べて金綱でつなぎ敷板を渡した形式で、洪水時には綱を切り増水を流すので
ある。夕顔瀬橋は川の中に島を作りそこに橋脚を建て架橋した。
<現代の北上川の橋>
明治になり岩手県にも鉄道が建設され、新しい駅は町はずれに作られたので、北
上川に新しい橋「開運橋」が架けられた。
夕顔瀬橋の架け替えや新橋梁建設にあたって、土木工学科や建設環境工学科が技
術指導をしたり、卒業生を世に送り橋の設計や架橋工事などに貢献してきた。現在
も岩手県内の橋の維持管理の調査や耐荷力の測定を行い、県内の技術力を高める支
援をしている。
下記に主な北上川の橋をまとめる。
橋名
岩姫橋
北大橋
夕顔瀬橋
開運橋
明治橋
大正橋
新朝日橋
昭和橋
珊瑚橋
高舘橋
北上大橋
橋長(m)
137.3
68.0
93.0
82.5
170.7
183.1
475.8
172.5
254.6
625.0
487.0
幅員(m)
形式
6.0
17.5
25.5
18.2
20.7
9.0
20.5
6.0
7.0
12.5
15.5
ワーレントラス
活荷重合成桁
箱桁
ランガートラス
プレートガーダー
ランガー桁
箱桁
ランガー桁
ゲルバートラス
箱桁
バランストタイドアーチ
工学部建設環境工学科
架設年度
昭和41年
昭和43年
平成 5年
昭和28年
昭和48年
昭和34年
昭和56年
昭和11年
昭和 8年
平成13年
平成14年
構造工学研究室(内線6435)