三菱商事とCSRについて

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Transcript 三菱商事とCSRについて

三菱商事のCSRについて
13-MC004
元賢喜
三菱商事はどんな会社?
• 三菱商事は、国内および海外約90カ国に200超の拠点を持ち、500社を超える連結対象会社と共
にビジネスを展開する最大の総合商社です。地球環境・インフラ事業、新産業金融事業、エネル
ギー事業、金属、機械、化学品、生活産業の7グループにビジネスサービス部門を加えた体制で、
幅広い産業を事業領域としており、貿易のみならず、パートナーと共に、世界中の現場で開発や生
産・製造などの役割も自ら担っています。これからも私たちは、常に公明正大で品格のある行動を
信条に、豊かな社会の実現に貢献することを目指し、さらなる成長に向けて全力で取り組んでいき
ます。
• 三菱商事の業務は、貿易取引や事業投資など多岐にわたりますが、その本質は、お客様や社会が
抱えるニーズやシーズに着目し、ビジネスの仕組みを構想して、その実現と推進に必要な機能や
サービスを安定的に提供することにあります。
例えば、歴史的に主要業務のひとつである貿易取引では、ビジネスの最前線で得る豊富な情報を
活かして、物流・金融・マーケティングなどの機能を融合させながら付加価値の高いサービスを提供
しています。
パートナーとして事業に参画する際には、自らもリスクをとりながら、三菱商事の組織力やグローバ
ルなネットワークを活かして必要な経営資源を調達することを通じ、事業価値の向上を図っています。
また、開発から調達、生産、流通・販売にわたる事業経営全般について最善の解決策を提案し、そ
の実行をサポートすることや、異なる事業を組み合わせ、お客様同士の結びつきをコーディネートす
ることも重要な役割です。
さらに、社会や市場の将来の動きをいち早くとらえ、自らが主体となって事業を開発することも、活
発に行っています。
• 三菱商事は、常に自らを変革し、ビジネスに必要とされる最先端の機能を追い求めてきました。そ
のため、健全な財務力と高いリスク管理能力を備えることはもちろん、人材を最も重要な資産と位
置づけ、先見性と行動力、創意工夫を働かせる知恵を重んじてきました。
三菱商事は、常に誠実な対応で、今後もお客様の信頼を高めてまいります。
(出所:http://www.mitsubishicorp.com/jp/ja/about/mc/)
事業戦略と市場戦略について
• 資源分野
=>原料炭、銅、LNGなど既存コア事業の更新・拡張投資を中心に、今後収益
化を図るステージに移行しますが、同時に操業コスト・開発コストの改善に一層
注力しながら事業を推進し、経営資源の効率的な活用を実現します。
• 非資源分野
=>複数の規模感ある強い事業を創るという長期目標のイメージに向けて、『よ
り強い事業』『強くなる事業』への経営資源のシフトを加速させます。自動車、食
糧、食品流通、電力、ライフサイエンス等の事業を更に伸ばすとともに、北米
シェールガスの川下展開、金融事業のアセットマネジメントへのシフト等、事業モ
デルの変革も推進します。
• 市場戦略
=>資源国・工業国にとどまらず消費市場としても存在感を増すアジアを機軸と
するグローバル展開を加速化させ、アジアの成長を取り込むことで、持続的な成
長を図ります。そのために、増大するアジアの需要に対応したグローバルベース
の供給ソース確保や、M&Aや戦略提携も含めたアジア圏におけるインサイダー
化を進めます。
(出所:http://www.mitsubishicorp.com/jp/ja/about/plan/)
市場戦略
(出所:http://www.mitsubishicorp.com/jp/ja/about/plan/)
ステークホルダーとのかかわり
• 三菱商事はさまざまなステークホ
ルダーとかかわりながら、グロー
バルに事業を展開しています。
• 「お客様・パートナー」「株主・債権
者」「従業員」の3者を 中心とした
「ステークホルダー・トライアング
ル」のバランスをとりながら経営の
舵取りを行っています。
• 世界各地のステークホルダーとよ
り良い関係を築き、 サステナブル
な社会の実現に向けて努力してい
ます。
出所:(http://www.mitsubishicorp.com/jp/ja/csr/stakeholder/)
• お客様・パートナー
=>三菱商事のお客様は世界のあらゆる地域・産業に及びます。さまざまな機能を駆使してお客様の多種多様な
ニーズに応えていきます。また、グローバルなレベルでサプライチェーンを管理し、取引先とともにCSRを推進します。
• 株主・投資家・債権者
=>国内外の機関投資家・個人投資家を合計して255,771名の株主が資本を提供しています。三菱商事は、収益力
強化、企業価値向上、配当により、これに応えていきます。
• 従業員
=>三菱商事には、国内外を合わせて単体では5,832名、連結子会社を合わせると60,039名が働いています。一人
ひとりのナレッジやスキルが、三菱商事の成長を支えています。
• 地域社会
=>ビジネスを行う地域でのコミュニケーションを重視すると共に、企業活動を通じて生じる有形・無形の社会的なコ
ストを負担しつつ、よりよい社会づくりに貢献します。
• NGO・NPO
=>環境や人権をテーマとするNPO・NGO の皆さまと対話を行っています。また、寄付やボランティア活動などを通
じて、支援や共働の体制を築いています。
• 政府・行政
=>納税の義務を果たすことはもちろん、国家プロジェクトや経済団体への参画を通じ、経済・環境・社会といった幅
広い分野で提言などを行っています。
出所:(http://www.mitsubishicorp.com/jp/ja/csr/stakeholder)
三菱商事の社会貢献活動
• 基本理念
=>グッド・コーポレート・シチズンと
しての自覚を持ち、地球的視野から
社会に対し幅広い貢献活動を行う。
• 社会貢献活動に関する
基本的な考え方
=>三菱商事の社会貢献活動は、
「地球環境」「福祉」「教育」「文化・芸
術」「国際交流」の分野を中心に、世
界各地の社員が自発的に参加して
汗を流すとともに、継続して活動に
取り組むことを重視しています。
出所:(http://www.mitsubishicorp.com/jp/ja/csr/contribution/)
地球環境
福祉・教育
地球にある豊かな自然やたくさんの生き物たち。その豊かさを未来に受け継いでいく
ため、あらゆる面での企業活動を通じて地球環境の保全と改善に努力します。
障がい者が仕事を通じて「(社会への)完全参加と平等」を実現するための自立支援
や社会福祉活動における取り組み、青少年の育成と次世代のリーダーを育てること
を目的とした様々な教育分野での支援を実施しています。
また、国内・海外において奨学金制度を実施しています。
森林保全プロジェクト「三菱商事千年の森」
サンゴ礁保全プロジェクト(沖縄・オーストラリア・セーシェル)
森林再生実験プロジェクト(ケニア・マレーシア・中国・ブラジル・インドネシア)
生態教育援助林プロジェクト(中国) など
母と子の自然教室
博物館・美術館プログラム
大分車いすマラソン
三菱商事留学生奨学金 など
文化・芸術
国際交流
文化・芸術関連の支援を通じたメセナ活動を中心に新しい社会貢献活動として、将来
性のある若手アーティストの支援を実施しています。
グローバルな総合事業会社として、三菱商事がビジネスを展開する国や地域に、中長期的にどのよう
なサポートができるかを考え、現地の人々のニーズに合った国際貢献施策をはじめ、各拠点で様々な
社会貢献活動を実施しています。
三菱商事アート・ゲート・プログラムは菱商事が企業の社会貢献として取り組んでいる、
プロのアーティストを志す方々へのキャリア支援プログラムとして日本の芸術系大学
生及びその卒業生は、一般的に作品発表の機会に恵まれていないという現状があり
ます。本プログラムは、将来性のあるアーティストの現代アート作品を、公募により年
間約200点を1点10万円で購入し、社内外に展示した後、その作品を一般参加のオー
クションで販売することで、若手アーティストの育成とキャリア支援を目指しています。
代表的な財団:三菱商事米州財団(MCFA)、三菱商事欧州アフリカ基金(MCFEA)
無電化村に太陽光発電の外灯を寄贈(インド)
ダカールで産科医院を開設(セネガル)
小中学校に教室を寄贈(フィリピン)
スクール・オブ・ザ・フューチャー(グアテマラ)
出所:(http://www.mitsubishicorp.com/jp/ja/csr/contribution/)
事業活動とサステナビリティ
三菱商事はグローバルな総合事業会社として、本業を通じた社会の持続的発展への貢献を目
指し、事業活動のあらゆる側面において積極的な取り組みを推進しています。
再生可能エネルギーへの取り組み
採掘跡地の環境修復
• わたしたちの社会は、さまざまなエネルギー源で支えられています。とりわけ風力発電や太陽
光発電は、発電するときに二酸化炭素を発生させないため、地球温暖化への対策のひとつと
して注目されてきました。
• 三菱商事は、火力発電と並んで風力・太陽光・太陽熱や地熱などの再生可能エネルギーを利
用した発電事業にも取り組み、社会の需要にこたえています。
• 多様化する電力ニーズに応える様々な取り組み
• スペイン企業とともに太陽熱発電所に出資
• 米国アイダホ州で風力発電所を建設・運営
• 熊本県を皮切りに日本各地でメガソーラーを開発
• インドネシア共和国で地熱発電に参画
• カナダで太陽光発電を共同推進
• 資源の開発においては、周辺の生物多様性や森林、水などへの配慮が必要で
す。また、地域社会が重要なステークホルダーの一つとなります。三菱商事が
オーストラリアで進める鉄鋼原料事業は採掘の前も後も、細心のケアで自然環
境そして地域社会との共生を果たしています。
環境に配慮した街つくり
自然のサイクルの森林管理
•船橋:環境配慮型の大規模複合開発を推進
•三菱商事は、先進の環境技術やコミュニティー形
成の仕組み等を導入した「スマートシェア・タウン
構想」の下、千葉県船橋市において大規模複合開
発事業「船橋 森のシティ」プロジェクトを進めてい
ます。
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資源事業への挑戦
大規模な露天掘りとリハビリテーション
HSECを最優先事項として
地域と共に生きる
• 森林資源に根ざしたパルプ事業では、地球環境に与える影響を考慮するととも
に、森とともに暮らす地域住民とのパートナーシップも重要です。徹底した自然
保護と地域との深い対話は、ビジネスを縛る制約ではなく、発展のための力と
なっているのです。
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創業時から環境と対話を重視
持続可能な森林管理の認証を取得
地域との共存共栄体制
森林資源の新たな価値を求めて、新エネルギー分野への取組み
自然と地域住民との共生
アルミ事業と地域の発展
• ケープフラッタリー・シリカ鉱山
• オーストラリア北部、ケアンズ市から250キロ北に位置するフラッタリー岬には、白い雪山のように広がるシリカサ
ンドの山があります。この鉱山が三菱商事を通じてシリカサンドの日本向け輸出を開始したのは1968年。1977
年に同社を買収し、100%子会社としてケープフラッタリー・シリカ鉱山社を設立しました。以来、採掘・精製など
鉱山経営から輸送、販売に至る一貫体制を構築して、良質なシリカサンドの安定供給に努めています。
• モザールアルミ製錬プロジェクト
• 1998年、三菱商事はモザンビーク政府、世界最大の資源会社BHPビリトン、南アフリカ開発公社との共同出資
により、アルミ製錬会社「モザール」を設立しました。当時モザンビークは、直前まで続いていた内戦のために疲
弊しきっており、モザンビーク政府は国家再建のために外資を積極的に導入し、事業を開発していくとの政策を
取っていました。また、近隣諸国の経済自立と安定を望む南アフリカ政府は、モザンビークに対し自国の電力を
供給する用意がある旨を宣言していました。こうした外的環境と各当事者の強い意志により、国家再建という使
命を負ったアルミ製錬プロジェクトが実現したのです。モザールは、現在、年間56万トンのアルミ地金を生産し輸
出しています。今日ではアルミ製錬がモザンビーク第一の産業となり、同国の全輸出額の55%を占めています
• モザールでは1,100名の人が働いており、サブコントラクターの従業員、港湾荷役などのプロジェクト関係者総計
で1万名に及ぶ大きな雇用機会が創出されています。工場の従業員は90%以上がモザンビーク人です。工場が
稼働したのは2000年12月ですが、工場の建設が始まった1998年から採用を始め、丁寧な教育訓練を行ってき
ました。例えば、製品の品質を確かなものとするための職業教育も徹底して行っていますし、安全・衛生教育に
も力を入れ、従業員同士で話し合う機会を増やすとともに職制上のスムースな報告体制を整えています。こうし
た教育訓練によって、モザールは優秀な労働者を育てる人材育成の場としても高く評価されています。
• 地域の人々と環境との共生を目指す事業
• ケープフラッタリー・シリカ鉱山の埋蔵量は確認されているもので約2億トン。現在の産出量換算で約100年分の
埋蔵量があると言われています。それだけに、周辺の自然環境を第一に考え、持続可能な資源開発を行うよう、
十分な配慮がなされています。そのひとつが、植生を修復する鉱山表土のリハビリテーション。シリカサンド採掘
後、その土地に自然に育っていた植物の種を蒔き、3~4年をかけて自然の木々が茂る緑の山にしています。
また、精製に使用した水はすべて再利用しています。
地域の人々と自然との共生を目指す事業の歴史が、オーストラリアの地で40年以上にもわたって育まれていま
す。
出所:(http://www.mitsubishicorp.com/jp/ja/csr/sustainability/)
サプライチェーンにおけるCSR
世界中で多様な商品・サービスを取り扱う三菱商事にとって、サプライチェーンにおけるCSRは重要な課題の
ひとつとなっています。三菱商事では、人権・労働問題・地球環境等への取り組みの方針となる「サプライ
チェーンにおけるCSR行動方針」を制定し、当社の基本的な考え方をサプライヤーの皆様と共有しています。
基本原則
三菱商事は、「三綱領」を創業以来の企業理念とし、企業の社会的責任を履行する上での拠り所として
います。「企業行動指針」においても、企業活動の展開に当っては、諸法規や国際的な取決めを遵守し、
社会規範に沿った責任ある行動を取ること、また企業活動のあらゆる面において地球環境の保全に努
め、持続可能な発展を目指すことを定めています。
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サプライチェーンにおけるCSR行動方針
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方針
三菱商事は、サプライチェーンを通じたCSRの取組を推進するため、「サプライチェーンにおけるCSR行
動方針」を定め、サプライヤーに対して三菱商事の基本的な考え方をお伝えするとともに、以下に定める
項目への賛同と理解、実践を期待します。
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(1)強制労働の禁止
すべての従業員をその自由意思において雇用し、また従業員に強制的な労働を行わせない。
(2)児童労働の禁止
最低就業年齢に満たない児童対象者を雇用せず、また児童の発達を損なうような就労をさせてはならない。
(3)安全で衛生的かつ健康的な労働環境の提供
従業員に対して、安全で衛生的かつ健康的な労働環境の提供に努める。
(4)従業員の団結権の尊重
労働環境や賃金水準等の労使間協議を実現する手段としての従業員の団結権を尊重する。
(5)差別の禁止
雇用における差別をなくし、職場における機会均等と処遇における公平の実現に努める。
(6)非人道的な扱いの禁止
従業員の人権を尊重し、虐待や各種のハラスメント(嫌がらせ)をはじめとする過酷で非人道的な扱いを禁
止する。
(7)適切な労働時間の管理
従業員の労働時間・休日・休暇を適切に管理する。
(8)適切な賃金の確保
従業員には少なくとも法定最低賃金を支払い、また賃金の不当な減額を行わない。
(9)公正な取引と腐敗防止の徹底
国内外の関係法令を遵守し、公正な取引及び腐敗防止を徹底する。
(10)地球環境への配慮
事業の遂行に際しては、地球環境の保全に努め地域社会及び生態系への影響に配慮する。
(11)情報開示
上記に関する適時・適切な情報開示を行う。
アンケート調査と現場モニタリングの実施
当社は、農作物やアパレルなどCSR配慮が強く求められている商品を取り扱うサプライヤーに対して、ア
ンケート調査を実施しています。
質問項目は「規範の有無、法令遵守」「従業員に対する強制労働、児童労働、差別の禁止」「環境保全」
「情報開示」などで、2008年度は28カ国・地域、193社より回答をいただきました。
今回の結果からは特に問題は見られませんでしたが、2009年7月には、中国の2社を訪問し、製造現場
の視察や責任者との面談を行い、各社のCSRへの取り組み状況のモニタリングを行いました。
•
今後の対応
このアンケート調査と実態調査を通じた各サプライヤーとのコミュニケーションは、当社の環境・CSRに関
する考え方を伝えるきっかけとなっており、今後も継続的に取り組んでいきます。
当社は全世界で膨大な数のサプライヤーと取引を行っています。したがって今後は、本行動方針を本店
部局のみならず、海外拠点や三菱商事グループ会社へも浸透を図ることとしています。海外拠点やグ
ループ会社のそれぞれの取引先に対しても、本行動方針への理解と協力を呼びかけていきます。
•
モニタリング
本方針の遵守状況を把握するため、サプライヤーに対する定期的な調査を実施します。
また、活動地域や事業内容から、必要と判断される場合には、サプライヤーを訪問し活動状況の確認を
行います。
•
遵守違反への対応
本方針に違反する事例が確認された場合には、対象となるサプライヤーに是正措置を求めるとともに、
必要に応じて、指導・支援を行います。
継続的な指導・支援を行っても、是正が困難と判断された場合には、当該サプライヤーとの取引を見直し
ます。
•
出所:(http://www.mitsubishicorp.com/jp/ja/csr/management/supplychain.html)
サプライチェーンにおけるCSR現地モニタリング実施例1
• Saigon 3 Garment Joint-Stock Company
(ベトナム ホーチミン市)
2010年9月、ベトナムの大手縫製メーカーである
Saigon 3 Garment Joint-Stock Company
(SG3社)のMinako工場を訪問し、同社のCSR
責任者との面談および工場内の視察を行いまし
た。
SG3社は、1986年に設立された縫製会社であり、
従業員は2,700名(2010年7月現在)、同社と三
菱商事は10年以上にわたって継続的な取引を
行っています。訪問した工場では、主にジーンズ
の縫製加工が行われています。
同工場では、有害物質を含む排水や温室効果
ガスを多量に発生するような作業工程はなく、環
境負荷に関して懸念事項は確認されませんでし
た。また、同工場では、雇い入れ時に身分証明
書による年齢確認を行っており、18歳以上の従
業員が就労しています。複数の販売先から、環
境および社会性(主に労働・人権)に関する詳細
な監査を定期的に受けており、マネジメントの意
識も高いことが確認されました。工場内には、複
数箇所に労働安全衛生関連の方針や注意事項
が掲示され、マスクや手袋などの保護用品も適
切に使用されていました。
出所:( http://www.mitsubishicorp.com/jp/ja/csr/management/supplychain.html )
サプライチェーンにおけるCSR現地モニタリング実施例2
• 山東魯菱果汁有限公司(山東省・乳山市)
2010年10月、中国・山東省に所在する山東魯菱果汁有
限公司(当社30%出資先)を訪問し、同社のCSR責任
者との面談および工場内の視察を行いました。
同社は1982年に設立され、従業員数330名、年間約3
万トンを生産するリンゴ濃縮果汁工場です。同社では、
契約農家で栽培されたリンゴを原料として、リンゴ果汁
の搾汁、濃縮、充填、出荷までが行われています。
同社は、取引先メーカーからCSR関連の監査を受ける
機会も多く、欧米系の大手飲料メーカーの認証工場にも
なっています。訪問時に工場内の踏査を行い、作業に
応じた保護具(手袋、マスク、耳栓等)が着用されている
こと、労働安全衛生関連の注意事項や避難経路が複数
箇所に掲示されていることを確認しました。同工場から
排出される搾汁後の残渣については、外部業者に引き
渡され、家畜用の飼料として利用されています。
また、工場からの排水は敷地内の処理施設を経由して
排出されています。なお、排水処理施設からの放流ポイ
ントには行政が設置した連続監視モニターが設置され
ており、水質の確認が行われています。訪問時のインタ
ビューでは、これまでに基準を超過したことがないことが
確認されました。
出所:(http://www.mitsubishicorp.com/jp/ja/csr/management/supplychain.html)
サプライチェーンにおけるCSR戦略と特徴とは?
• サプライチェーンにおけるCSR戦略とは
=>CSRの展開をサプライヤーに対しても求めるCSR調達のこと
• 日本企業のCSRサプライチェーンの特徴
ー サプライチェーンのCSRに取り組むにあたって、日本企業の強み
は長期継続的かつ親密な取引関係とグリーン調達で培った品質管理
ノウハウである。一方、欧米先行企業に対する取り組みの出遅れや、
多様なステークホルダーとのコミュニケーション能力が弱みである。
ー 日本企業がグローバル市場における企業競争力を高めるために
は、CSRの国際的な議論の潮流や先行取り組みを勘案しながら、サ
プライチェーンのリスクアセスメントの実施、継続的な改善を担保する
マネジメントの構築、コミュニケーション能力の強化を考慮したサプラ
イチェーンのCSR戦略の構築を検討すべきである。
出所:「グローバル市場における日本企業のCSRサプライチェーン」2008年1月 富士通研究(FRI)経済研究所より引用
戦略に問題はないのか?
• 日本企業の弱み
― 欧米先行企業に比べてサプライチェーンのCSRに関する
取り組みが出遅れたことから、経験の蓄積という点で遅れを
とっていることが挙げられる。日本と比べて、欧米の多国籍企
業は、グローバルなサプライチェーンにおける人権・労働・環
境問題等に関して、いち早くステークホルダーからプレッ
シャーを受けていたことから、サプライチェーン管理手法や、
ステークホルダーとのコミュニケーションなどについて、試行
錯誤をしてきた。この結果、個々の企業の経験蓄積に加えて、
例えば電機業界のEICCのような業界標準策定等において主
導権を握っており、日本企業の対応が後手に回るという傾向
がある。日本企業は、欧米企業と比べて、自社の取り組みを
多様なステークホルダーに対して明確に伝えることを苦手と
する傾向がある。そもそもCSRの取り組み自体が、ステーク
ホルダーからの要請と企業の対応・提案とをマッチングさせる
ということであり、ステークホルダーとのコミュニケーションは
その根本にあると言ってよい。さらに、サプライチェーン対応
ということになれば、サプライヤーとの相互理解を求めるため
のコミュニケーション能力の強化は当然のことながら、これら
の取り組みをいかに戦略的に情報発信しながら、有機的なコ
ミュニケーションにつなげていけるかが問われることとなろう。
• 日本企業の脅威
― 海外におけるCSR関連の規制環境や枠組みが急速に変
化しつつあることであり、これらの変化に適切に対応するため
には、海外市場の状況に絶えず留意しておく必要がある。さ
らに、途上国の工場では、労働者の人材流動性(離職率)が
高く、サプライチェーンのCSR活動のカギを握る普及啓発活
動の効果を損なうばかりか、新規雇用者に対する教育研修コ
ストの増大につながることが懸念される。
出所:「グローバル市場における日本企業のCSRサプライチェーン」2008年1月 富士通研究(FRI)経済研究所より引用
CSRに対する認識の変化
• マイケル・E・ポーターは、最近、現
在の経済システムや企業活動の
あり方に危機感を抱き、企業は
もっと社会に対して価値を生み出
せるはずと考え、企業価値と社会
価値を両立する経営フレームワー
クである”Creating Shared Value
(CSV)”を提唱している。
• 本業を通じて社会に貢献すること
は、CSRの世界で、攻めのCSR、
戦略的CSRなどとして言われてき
たことですが、ポーターのCSVが
優れているのは、バリューチェーン、
クラスターといった従来提唱してき
た理論を応用して、具体的に使え
る戦略コンセプトに落とし込んでい
るところである。
さらなる社会貢献へのアクセス
• キーストーン戦略とCSVの融合
•
自然界の生態系には、比較的少ない生物量でありながら、生
態系に大きな影響を及ぼすキーストーン種という生物種がいる。
•
キーストーン種の例としては、北太平洋沿岸のラッコが挙げら
れます。ラッコは、旺盛な食欲を持ち、大量のウニを食べること
で生態系を維持している。ウニは、放っておくと、様々な無脊椎
動物や、沿岸部の営みの基礎となるケルプを含む海藻を食い
荒らす。19世紀から20世紀にかけて、毛皮を求めてラッコ猟が
行われ、頭数が減った時、魚類をはじめ、様々な沿岸の海洋生
物が深刻な影響を受けた。
•
キーストーン企業は、顧客やビジネス生態系の構成企業にとっ
てなくてはならない存在になることによって、大きな利益を獲得
しているが、なくてはならない存在になることは、社会やステー
クホルダーとの関係においても重要である。
社会にとって価値を生み出し、なくてはならない存在になること
で、政策的なサポートを得られやすくなるし、場合によっては、
NPO/NGOなどからの支援も得られる。
顧客や取引先にとってなくてはならない存在となることは、利益
を生み出すという意味でも重要だが、企業の持続可能性という
意味でも重要である。市場環境が大きく変化したとしても、顧客
や取引先との強い関係があれば、それを乗り切ることができる。
•
•
•
また、最近は、人材の流動性が高まっているが、社員、特に優
秀な社員にとってなくてはならない存在となることは、企業の競
争力にとって非常に重要である。
出所:http://www.cre-en.jp/mizukami-blog/?p=493#.UfXgtWyCiUkより引用
新たなKSV戦略への提案
•
•
三菱商事はグローバル企業であり、社会のために貢献していることは間違い
ない。しかし、長期的なパートナージップを強化するために既存のサプライ
チェーンCSR戦略か抱えている問題を解決しないといけない。つまり、SWOT
分析の結果のように指摘される弱みと脅威を乗り越えるためのコミュニケー
ション能力の強化と人材の確保、およびネットワーク強化のためにキーストー
ン戦略を活かす必要性がある。キーストーン企業の役割としてのビジネス生
態系全体の健全性の向上に継続的に取り組むことはキーストーン企業にとっ
て自らの存続と繁栄を確保することが必要である。
一方、新たな社会貢献戦略として、既存に存在する戦略概念を融合し私は
KSV戦略が必要であると提案する。企業が社会貢献の主体として必要な戦
略はK(Keystone)、S(Social and Shared)、V(Value)で、つまり、キーストー
ン的な存在として、社会共有価値を追求する企業を目指さなければならない。
競争優位性確保
および、
存続と繁栄
ビジネスマネジメントの
健全性の確保
長期継続的かつ密接な
それは、ビジネス生態系におけるキーストーン企業、社会やステークホル
ダーにとってなくてはならないCSV企業、これからの時代に持続的に繁栄す
る企業は、そうした周りとの関係性をうまく創り上げることができる企業である
からである。
取引関係の向上
•
しかし、KSV戦略を追求することで一番必要なことは、ビジネスあるいはマネ
ジメントの健全性である。この健全性を確保するために必要な役割を三菱商
事は力を注ぐ必要がある。サプライヤーのための行動規範を測定―監査(モ
ニタリング)―改善にむけた活動というサイクルを構築しなければならないの
である。三菱商事がキーストーンの中心的な役割を果たし、社会共有価値を
追求することは最終的に消費者の利益になると考える。この結果として三菱
商事が構築した生態系全体が栄え、競合する生態系に競争優位を発揮する
ようになると考える。
現地とのコミュニケーション
能力強化
•
長期的な視野を広げ、既存の活動以外も、潜在的に現地のパートナーとして
担い手になる人材育成のプログラム強化や、現地のアントレプレナーを養成
しネットワーク強化のように、現地とのコミュニケーション強化のための活動が
必要である。このことは長期継続的かつ密接な取引関係をもっと高めること
で三菱商事と現地の人々との存続と繁栄が確保できる。このようなことが進
むことこそ、三菱商事の経営理念の三綱領(所期奉公、処事光明、立業貿
易)であるのではないかと考える。
三菱商事
•
三菱商事のKSV