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生体情報を用いた
「楽しさ」の評定
文京学院大学 ゲーム心理学研究会
自己紹介
長野 祐一郎
学位:博士(心理学)
文京学院大学人間学部心理学科 助教
専門領域は、精神生理学、健康心理学、感情心理学
1991~1996
上智大学文学部心理学科
バイオフィードバック
1997~1998
早稲田大学人間科学研究科
ストレス負荷時の心臓血管反応
1998~2003
早稲田大学文学研究科/
札幌医科大学心理学教室
対人ストレスによる心臓血管反応
2005~現在
文京学院大学人間学部
各種対人場面での心臓血管反応
研究紹介1-1
競争型鏡映描写課題における心臓血管反応
目的
鏡映描写課題において競争が心臓血管系にもたらす影響
を検討する。
自分
方法
男子大学生32名(競争群16名、単独群16名)
練習
本課題
競争相手
競争群
安静
(単独/4分)
練習 - 前半
(単独/8分)
安静
(単独/4分)
本課題
(競争/4分)
単独群
安静
(単独/4分)
練習 - 前半
(単独/8分)
安静
(単独/4分)
本課題
(単独) /4分
100Base-T
Hub
PC-1
・被験者と競争相手は、同一の机に90度の角度で着席し、お互いの表
情を確認で きた。競争相手は実験者が用意したサクラであり、「どち
らが勝つかわからない」状態を維持するように努めた。
被験者
PC-
・本課題時、競争群のPCは互いに接続され、相手カーソルの現在位置
を知る事ができた。勝敗が一周ごとに決定され、勝率が星型の中央部
に表示された。
2
競争
相手
研究紹介1-2
25
練習
Changes from baseline
20
single group
competitive group
25
本課題
20
single group
competitive group
15
15
10
10
5
5
0
0
-5
HR
CO
TPR
SBP DBP
(bpm)
(%)
(%)
(mmHg) (mmHg)
-5
HR
CO
TPR
SBP DBP
(bpm)
(%)
(%)
(mmHg) (mmHg)
・従来の研究と同様に、鏡映描写は血管優位の反応を生じた。
・競争状況の導入により、本来血管優位の鏡映描写課題においても、明確な心臓優位型反応が生じた。
・競争という社会的要因は、主として心臓反応の増大を介して、血圧上昇に寄与する。
長野祐一郎 2004 競争型鏡映描写課題における心臓血管反応 生理心理と精神生理学, 22, 237-246.
研究紹介2-1
評価的観察がストレス課題中の心臓血管反応におよぼす影響
目的
暗算・鏡映描写を用い、社会評価が心臓血管
反応に与える影響を検討する。
方法
被験者:女子大学生20名
PC
暗算
評価あり
鏡映描写
評価あり
暗算
評価なし
鏡映描写
評価なし
手続き:
・評価条件では、一人が課題を行い、残りの4名は
被験者の背後に立ち、被験者の課題遂行を観察し、
評価を行った。
被験者
評価者
評価者
評価者
評価者
・評価は、「早い-遅い」「賢い-愚かな」「慎重な-不注意な」等の、個人の資質の評価を想定させる形容
詞対を用いて行われた。
研究紹介2-2
暗算-評価あり
暗算-評価なし
Changes from baseline
20
CO
15
鏡映描写-評価あり
鏡映描写-評価なし
TPR
10
5
0
HR
(bpm)
CO
(%)
TPR
(%)
SBP
(mmHg)
DBP
(mmHg)
-5
・暗算課題は心臓優位型、鏡映描写課題は血管優位型を示す傾向にある。
・評価的観察は、課題の種類にかかわらず、血圧を上昇させる。
・評価的観察は、課題の種類にかかわらず、心臓血管反応を心臓側へシフトさせる。
長野祐一郎 2005 評価的観察が精神課題遂行中の心臓血管反応に与える影響 心理学研究, 76, 252-259.
研究紹介3-1
サポート的他者の存在が暗算課題中の心臓血管反応に与える影響
目的
サポート的他者の存在が、暗算課題中の血
行力学的反応にあたえる影響を検討する。
友人
方法
男子大学生20名が、サポート群、非サポート
群に半数ずつわりあてられた。すべての被験
者は、5分間の安静期の後、5分間の連続引
き算課題を行った。
被験者
実験者
・サポート群は、サポート的他者として友人を同伴
し、実験に参加した。
・友人は被験者の課題遂行を観察できないよう被験者と90度の向きで着席し、さらにヘッドフォンを
装着し、クロスワードパズルを遂行した。
研究紹介3-2
Changes from baseline
30
25
non-support
support
血管抵抗
の減少
友人の存在は
血圧上昇を緩和
20
15
10
5
0
HR
(bpm)
CO
(%)
TPR
(%)
SBP
(mmHg)
DBP
(mmHg)
・サポート的他社の存在は、課題中のSBP、DBPの上昇を軽減した。
・血圧の上昇緩和は、主としてTPRの減少(血管抵抗の低下)によってもたらされたものと考えられた。
長野祐一郎・児玉 昌久 2005 支援的他者の存在が心臓血管反応に与える影響 生理心理学と精神生理学, 197-205.
心臓血管反応の説明を試みるモデル
Obristらの
能動/受動対処
モデル
Laceyらの
環境の取り入れ/拒否
モデル
決定因として想定する「注
意」は,刺激の物理的特
性(たとえば,どの程度視
覚的注意を伴うか等)に
より決定される.
Blascovichらの
脅威/挑戦
モデル
決定因として想定する「コ
ントロールの有無」は,主
として実験状況(反応-成
果の随伴性)により規定さ
れるが,主観的コントロー
ルの存在も想定している.
環境刺激の影響を重視
決定因として想定する「認
知的評価」は,環境要求
と個人の資源の比をどの
ようにとらえるかにより決
定される.
被験者の内的過程を重視
対人場面を考慮したモデルを構築する
導入
生理心理学の様々な研究から得た知見を
社会にフィードバックしたい・・・
生理心理学は科学として
エンタテインメント産業にどのように貢献できる
か?
ゲーム・映画などのコンテンツは
個人の経験をたよりに闇雲に作成している実態・・・
莫大な制作費が必要となるコンテンツ開発に、
上記のようなリスクを野放しにしておいて良いのか??
各種エンタテインメントのもたらす
「楽しさ」の定量的な評定が必要!
文京学院大学ゲ-ム心理学研究会
各種生理指標・行動指標を用いて、コンピュータ・エンタテインメントの
「楽しさ」を客観的に評価することを目的にした研究会
1.エンタテインメント体験時の生体反応変化に関する基礎的知見を得ること
2.エンタテインメントの楽しさを客観的に評価する手法を確立すること
3.生体情報計測を取り入れた新しいエンタテインメントを提案すること
コンピュータエンタ・テインメント(ゲーム)の
ポジティブな側面を科学的に示してゆきた
い!
研究例の紹介
1.対戦アクションパズルゲーム時の生体反応(2009)
2.対戦格闘アクションゲーム時の生体反応(2010)
3.ホラーゲーム時の生体反応(2010)
4.対人要因がゲーム中の飽きに及ぼす影響(2011)
5.ゲーム中のボタン押し行動が生体反応に与える影響(2011)
6.対戦相手の存在感が生体反応に与える影響(2011)
・
・
・
指標解説
皮膚伝導(SC)
感情変化に伴う発汗活動(精神性発汗)を反映。
うそ発見に用いられる。主として交感神経の働き
を反映した指標で、やる気、集中、各種感情の変
化に対応して上昇する傾向がある。
皮膚血流(BF)
皮膚表面の血流量をレーザードップラー方式で
とらえたもの。交感神経活動に伴う末梢血管収縮
を反映する。緊張・不安が生じると、外傷時の出
血によるダメージを緩和するために、皮膚表面の
血管が収縮し、血流が減少すると考えられている。
心拍数(HR)
一分間あたりの心臓の拍動回数。交感/副交感
神経双方の影響を受ける。競争や他人からの評
価をうける場面では大きく増加するが、集中した
り、周囲への注意を高めたりすると減少すること
もある。
対戦アクションパズルゲーム
「スーパーボンバーマン3(HUDSON SOFT)」
マップ上に爆弾を置いて、爆風で対戦相手をやっつけるパズル要素の強い対戦アク
ションゲーム。スーパーファミコン用で、ロングセラーシリーズのため、経験者が多く
計測しやすい。画面はシンプルだが対戦が熱く、感情の変化が大きい。
アクションパズルゲーム中の皮膚伝導(SC)の変化
(μS)
20
前安静
課題
後安静
18
16
14
12
単独
対CPU
対人
10
8
N=41
6
1
2
3
4
(分)
単独は壁を崩してアイテムをとるだけの条件。対CPU、対人は、CPUもしくは
友人を相手に対戦を行う条件。ゲーム開始直後(1分)から急激な上昇が見ら
れ、その変化の度合いは対人プレイにおいて一番大きい。プレイ後は、徐々
に低下する。
アクションパズルゲーム中の血流量(BF)の変化
(ml/100g/m)
40
前安静
課題
後安静
単独
対CPU
対人
35
30
25
20
N=41
15
1
2
3
4
(分)
ゲーム開始直後から急激な下降が見られ、その変化の度合いは対人プレイ
において一番大きい。プレイ後は、徐々に上昇し回復する。
アクションパズルゲーム中の心拍数(HR)の変化
(bpm)
90
前安静
課題
後安静
単独
対CPU
対人
85
80
75
N=41
70
1
2
3
4
(分)
ゲーム開始後徐々に上昇し、中盤で最大になる。その変化の度合いは対
人・対CPUで大きく、単独では少ない。対人と対CPUは明確な差が見られな
い。→対人ならではの楽しさはHRでは測れない可能性?
主観感情と生体反応の関係の検討
PA、NA、CA(主観感情)および、 SC、BF、HR (生体反応)に関して安静期から課
題期への変化量を求め各指標の変化量の相関を条件ごとに算出した。
表 S条件における主観感情と生体反応の相関行列
PA
NA
CA
SC
HR
BF
PA
1.00
.18
-.11
.23
.25
-.33*
NA
CA
1.00
-.36*
.03
-.06
-.40*
1.00
.29
.00
.41*
SC
HR
BF
・生理指標と心理指標の相関
PA -BF
負の相関
NA-BF
CA-BF
正の相関
・心理指標どうしの相関
1.00
.03
-.05
1.00
-.13
1.00
*は、p<.05であることを示す
負の相関
NA-CA
・生理指標どうしの相関
有意な相関は認められなかった
表 C条件における主観感情と生体反応の相関行列
PA
NA
CA
SC
HR
BF
PA
1.00
.06
-.14
.20
.33*
.21
NA
CA
1.00
-.51*
-.28
.08
-.06
1.00
.14
-.08
.40*
SC
HR
BF
・生理指標と心理指標の相関
PA -HR
正の相関
CA-BF
・心理指標どうしの相関
1.00
.07
-.14
1.00
-.26
NA-CA
1.00
*は、p<.05であることを示す
負の相関
・生理指標どうしの相関
有意な相関は認められなかった
表 V条件における主観感情と生体反応の相関行列
PA
NA
CA
SC
HR
BF
PA
1.00
-.01
-.14
.20
.05
-.13
NA
CA
SC
HR
BF
・生理指標と心理指標の相関
CA-BF
1.00
-.55*
-.09
.12
-.05
正の相関
・心理指標どうしの相関
1.00
.02
-.27
.31*
1.00
-.04
-.13
NA-CA
1.00
-.02
負の相関
・生理指標どうしの相関
有意な相関は認められなかった
1.00
*は、p<.05であることを示す
3条件をあわせて
・心理指標と生理指標の関係は、S条件で多くみられ、S>C>Vの順で関係
性は希薄になっていくように見受けられた。
・CAとBFの正の相関は、3条件を通してみられ、CAが低くなるほどBFは下
がるという関係性は条件をとおして一貫していた。
・PAとCAの負の相関も、3条件を通して一貫してみられた。
対戦格闘アクションゲーム「Street Fighter IV(CAPCOM)」
PS3用対戦格闘アクションゲーム。ロングセラーシリーズであるため、経験者が多く
計測しやすい。背景・キャラクタともに高解像度で作りこまれ、キャラクタの表情やし
ぐさなどの表現も豊かであるため、感情移入しやすい。
格闘アクションゲーム中の皮膚伝導(SC)の変化
(μS)
25
前安静
課題
後安静
単独
対 CPU
対人
20
15
N=40
10
1
2
3
4
(分)
単独はひとりで必殺技の練習を行う件。対CPU、対人は、CPUもしくは友人
を相手に対戦を行う条件。ゲーム開始直後(1分)から急激な上昇が見られ、
その変化の度合いは対人プレイにおいて一番大きい。プレイ後は、徐々に
低下する。変化の速度(立ち上がり)、変化量ともにパズルゲームより大きい。
格闘アクションゲーム中の血流量(BF)の変化
(ml/100g/m)
22
前安静
課題
後安静
20
18
16
単独
対 CPU
対人
14
12
N=40
10
1
2
3
4
(分)
ゲーム開始直後から急激に下降し、対人プレイにおいてのみ低下した状態
が維持された。プレイ後は、徐々に上昇した。
格闘アクションゲーム中の心拍数(HR)の変化
(bpm)
100
前安静
課題
後安静
95
単独
90
対 CPU
対人
85
80
N=40
75
1
2
3
4
(分)
ゲーム開始直後から急激に上昇し、変化の度合いは、対人>対CPU>単独と
なった。変化の度合いは、パズルゲームより明らかに大きい。
ホラーゲーム 「零 月蝕の仮面(任天堂/テクモ)」
幽霊が出没する病院跡地をさまよい、霊を封じ込めることのできる射影機をたよりに
謎をといていくWii用ホラーゲームソフト。Wiiのモーションコントローラを用いた直感
的な操作体系が特徴。
ホラーゲーム
分析イベント一覧
前安静
導入ムービー
「部屋に戻りなさい」
射影機
スピーカー
麻生記念館入口
幽霊出現,射影機
チュートリアル
幽霊と格闘
麻生記念館入室
エンディング
ムービー
後安静
ホラーゲーム中の皮膚伝導(SC)の変化
(μS)
26
24
**
**
22
*
**
20
18
16
14
12
10
N=25
8
6
前
安
静
ム
ー導
ビ入
ー
も
ど「
り部
な屋
さに
い
」
ス
ピ
ー
カ
ー
麻
入生
口記
念
館
麻
入生
室記
念
館
射
影
機
チ
ュ幽
ー霊
ト出
リ現
ア
ル・
幽
霊
と
格
闘
ム
ーエ
ビン
ド
ー
後
安
静
約20分間のプレイ時間中に、感情の変化は二山構造を示す。最初の病院
探索時の恐怖と、幽霊に襲われた時の恐怖の双方を反映。
ホラーゲーム中の血流量(BF)の変化
(ml/100g/min)
400
**
**
350
**
300
250
200
N=25
150
前
安
静
ム
ー導
ビ入
ー
も
ど「
り部
な屋
さに
い
」
ス
ピ
ー
カ
ー
麻
入生
口記
念
館
麻
入生
室記
念
館
射
影
機
チ
ュ幽
ー霊
ト出
リ現
ア
ル・
幽
霊
と
格
闘
ム
ーエ
ビン
ド
ー
後
安
静
SC同様、病院探索の恐怖と、幽霊の恐怖の双方を反映するが、概して下が
りっぱなしの傾向にある。
ホラーゲーム中の心拍数(HR)の変化
(bpm)
90
**
**
**
N=25
85
80
75
70
前
安
静
ム
ー導
ビ入
ー
も
ど「
り部
な屋
さに
い
」
ス
ピ
ー
カ
ー
麻
入生
口記
念
館
麻
入生
室記
念
館
射
影
機
チ
ュ幽
ー霊
ト出
リ現
ア
ル・
幽
霊
と
格
闘
ム
ーエ
ビン
ド
ー
後
安
静
SC・BFとは異なり、幽霊と戦う際の恐怖のみを反映する。探索時は、明確な
変化が見られない。
対人要因がゲーム中の「飽き」に及ぼす影響の検討
(レースゲーム 「スーパーファミコン版 マリオカート」)
ゲームの販売成績には、楽しさと同時に「飽きにくさ」も重要。そこで、
1.各種生理指標に「飽き」がどのように反映されるか
2.対人要因(他者との競争)が、「飽き」にどのように影響するか
を、皮膚伝導、末梢血流、心拍数を用いて検討した。
レースゲーム中の皮膚伝導(SC)の変化
(μS)
21
(μS)
21
N=30
19
1回目
N=31
19
2回目
17
3回目
2回目
17
15
15
13
13
11
11
9
9
7
前安静
課題
単独
後安静
1回目
7
3回目
前安静
課題
後安静
競争
単独でプレイすると、繰り返しに応じてSCの反応は減弱してゆく。
しかし、競争場面ではSCは減弱せず、なおかつ課題後半まで維持される。
→競争状況の導入は「飽き」を防ぎ、
個々のゲーム内容をより楽しいものへ変える可能性
レースゲーム中の血流量(BF)の変化
(ml/100g/min)
(ml/100g/min)
30
30
N=30
25
20
20
15
15
1回目
10
N=31
25
1回目
10
2回目
5
0
3回目
前安静
課題
単独
後安静
2回目
5
0
3回目
前安静
課題
後安静
競争
SC同様、単独プレイ時にはBFの反応は減弱してゆく。
一方、競争時はそのような傾向は見られず、なおかつBF低下は
課題後半まで維持される。
レースゲーム中の心拍数(HR)の変化
(bpm)
(bpm)
90
90
N=31
1回目
N=30
2回目
85
1回目
2回目
85
3回目
3回目
80
80
75
75
70
70
65
前安静
課題
後安静
前安静
課題
後安静
65
単独
競争
HRの変化量は、明らかに競争時に大きい。
単独条件では、繰り返しによるHR反応の減弱が認められるが、
競争状況では、そのような傾向は比較的少なく、
なおかつHR上昇は課題後半まで維持される傾向にある。
ゲーム中のボタン押し行動が生体反応に与える影響
ゲーム中の激しいボタン押しは、各種生理指標に影響しているのでは?
→ゲーム中の指の加速度を測定し、ボタン押しが生じる生体反応を個別に検討
LEDの点滅スピードを3段階に調節
High・・・300ms間隔
Midium・・・
500ms間隔
Low・・・
1000ms間隔
LED点滅装置
実験参加者は、三段階(L・M・H)のボタン押
し課題+ゲーム課題(ストリートファイター4)
の計4セットを行った(安静1分、課題2分)。
ボタン押し課題時、実験参加者はLEDの点
滅に合わせボタンを押すように教示された。
加速度センサー装着の様子
ボタン押しおよびゲーム課題中の心拍数(HR)の変化
(bpm) 100
ST4
95
N=24
butH
Heart Rate
butM
90
butL
85
80
75
安静
課題
70
安静から各課題にかけてのHRの推移
安静期後半30秒を基準とした変化量は、 ST4>butL,butM,butHとなり、ST4のHR
はボタン押しの3課題と比較して明らかに高い値を維持した。
ボタン押しおよびゲーム課題中の皮膚伝導(SC)の変化
(μS)
24
N=24
Skin Conductance
ST4
20
butH
butM
butL
16
12
8
安静
課題
安静から各課題にかけてのSCの推移
安静期からの変化量は、ST4 > butL,butM,butHとなり、ゲーム中のSC上昇は各
ボタン押しに比べ明らかに大きかった。
ボタン押しおよびゲーム課題中の血流(BF)の変化
(ml/100g/min)
25
Blood Flow
20
N=24
15
ST4
10
butH
butM
butL
安静
課題
5
安静から各課題にかけてのBFの推移
安静から課題にかけてBFは下降した。安静期を基準とした変化量は、
ST4>butL,butM,butHとなり、ゲーム中のBF下降はボタン押しに比べ有意に大き
かった。
対戦相手の存在感が生体反応に与える影響
CPUよりも人との対戦が楽しく、生理反応が大きいのは、
対戦相手が実際に隣にいる影響が大きな要因ではないのか??
他者の空間的な存在(いわゆるPresence)の影響の検討が必要!
スクリーン
参
CPU条件(C条件)
CPUと対戦
スクリーン
参
パ
ー
テ
シ
ョ
ン
スクリーン
実
参
実
パーテーション条件(P条件)
対人条件(V条件)
パーテーション越しの相手と対戦
隣にいる相手と対戦
課題は、Playstation3版 ストリートファイターⅣ(CAPCOM製)を使用。
Presenceの異なる3条件を設定した。ただし、実際はすべてCPUと対戦させた
各条件におけるSCの推移
(μS)
N=38
(sec)
条件毎のSCの推移
過去の計測事例と同様に、プレイ中SCは顕著に上昇したが、上昇の程度は
約5μSであり、少ない傾向にあった(前回の測定時は10μS程度上昇)。
SC変化の大きさは、V条件>P条件>C条件であるように見受けられたが、統計
的に有意ではなかった。
各条件におけるBFの推移
(ml/100g/min)
N=38
(sec)
条件毎のBFの推移
過去同様に、プレイ中BFは顕著に低下したが、下降した血流は過去の研究
ほど維持されない傾向であった。
BFの低下度合いは、V条件>P条件>C条件であるように見受けられたが、統
計的に有意な差はなかった。
34
各条件におけるHRの推移
(bpm)
N=38
(sec)
条件毎のHRの推移
過去同様に、プレイ中HRは上昇したが、上昇の程度は約8bpm程度であり、
過去の計測事例(+15bpm)より少なかった。
HR上昇の度合いは、V条件>P条件>C条件であるように見受けられたが、統
計的に有意な差はなかった。
33
今後の計画
・より広い範囲のゲームジャンルの測定
(RPG・スポーツ・恋愛シミュレーションなど)
・より多彩な対人場面での測定
(競争だけでなく協力など)
・ゲーム中の生体反応フィードバックが
感情体験におよぼす影響の検討
・体感アトラクションの測定
・ゲーム経験測定尺度の開発
・簡便なゲームの「楽しさ評価」システムの開発
(ソフトウェア・ハードウェア)
ご清聴ありがとうございました
本研究は文京学院大学人間学部
で行われました。
・・・
研究協力の依頼
・研究参加者への謝礼
・実験補助者へのアルバイト代金
・測定環境の増強
我々と共同研究をするメリット
・自律系生理指標の測定経験
・対人場面での計測経験が豊富
・マンパワー(研究会のメンバー)
・研究の継続性
以下倉庫
心臓血管反応の説明を試みるモデル1
Obristらによる能動的対処vs受動的対処モデル
心臓血管反応は被験者が環境に対し
どの程度コントロールを持つかによって規定される.
能動的対処
努力次第で状況を改善でき
る!
(環境に対するコントロールをある程度持つ場合)
心拍数は増加し,
パタン1様の反応を誘発
受動的対処
解決策がなく,ただ耐え
つづけなければならない・・・
(環境に対するコントロールがない場合)
心拍数は減少し,
パタン2様の反応を誘発
例:暗算課題は能動的対処で寒冷昇圧課題は受動的対処
心臓血管反応の説明を試みるモデル2
Laceyらによる環境の取り入れvs拒否モデル
心臓血管反応を規定するのは被験者の環境への注意であると考えられている.
環境の取り入れ
環境の拒否
2378-7=・・・
環境
環境
外界の出来事に注意をはらい,それ
をみつけようとする場合
心拍数は減少
認知的作業に邪魔な外界の出来事を
積極的に無視もしくは拒否する場合
心拍数は増加
例:ヴィジランス課題は環境の取り入れで暗算課題は環境の拒否
心臓血管反応の説明を試みるモデル3
Blascovichらによる脅威vs挑戦モデル
心臓血管反応はtask demand(課題の難易度などの環境要求)とresource
(有効な対処方略を持っている等の個人の資源)の比によって規定される.
脅威
task demand > resource
状況は脅威と評価される
心臓側,血管側ともに反応亢進が
生じ血圧が大きく増大
挑戦
resource > task demand
状況は挑戦と評価される
心臓反応は増大するが,血管収縮が
減少するため,血圧の上昇は控えめ
同じ状況,刺激であっても,どのように評価するかは個人によって異なる.
現在、実験で用いられている計測機器
自作の生体情報の測定機
器。
心電図と脈波と皮膚電位
が計測できる。
測定用のプログラムがAVR
マイコンArduinoの中に入っ
ている。
現在、実験で用いられている計測機器
心臓の速さ。深呼吸後に心
臓がゆっくりに・・・
血管の収縮を示す緑のグ
ラフ。心臓が一回収縮する
ごとに指の血流が変化。
測定された生体情報はPCに送られ上記のように表示される。
近年のコンピュータ・エンタテインメント作品は、高品質
かつ様々なモダリティを介したメディアに、さらに
インタラクティビティを加味した総合芸術であ
る。
古典的な娯楽メディアであった絵画と音楽が統合
されて映画という新しい芸術が生まれたように、コン
ピュータ・エンタテインメントは芸術・娯楽メディアの
正統な進化型で、これからの娯楽文化の担い手で
中心的役割を果たしていくことは間違いない。
これらの作品が芸術・娯楽たりうるのは、それらが受け
手に豊かな感情変化をもたらすからに他ならない。
これらがもたらす感情変化を正確に評価しようという
試みは、学術的にも重要であると同時に、メディア製
作者(ゲーム会社や映画会社)にとっても有意義なも
のとなると思われる。
ヒトは感情変化を潜在的に求めている・・・
→感情変化が顕著なものほど、優秀なエンタテインメントとなる
ゲーム、映画などの
エンタテインメントの評価
それらにより生じる感情変化をとらえる作業
各種のアンケート、
質問紙によって評価
各種の生理指標に
よって評価
生理指標は感情のバロメータになる!
怒っている!
・心拍数や血圧の増加
・呼吸数の増加
・気管支の拡張
・筋肉の血管拡張
・血糖の増加
・瞳孔が開く
・胃腸の活動抑制
緊急反応
感情の変化
自律神経系指標の変化
感情は何によって決まる?
泣くから悲しい(ジェームズ=ランゲ説)
悲しいから泣く(キャノン=バード説)
主観感情の変化と生理反応はどちらが先なのか実は決着がついていない!
シャクターの二要因説
生理的変化は、状況
判断に大きく影響して
いる。
実は主観的な感情は、それほど
信頼できるものではない?
恐怖体験の後は、
女性が魅力的に見える
→生体情報は,感情状態を把握す
る重要な手がかりとなっている!
つまり主観的な質問紙で楽しさを正確に評価するのは難しい?
生体情報を用いたほうが、
正確な評価となるのでは?
生体情報で「楽しさ」を測ることのメリットは?
質問紙による調査は社会的な望ましさ
が反映されやすい(嘘がつける)欠点があ
る
→生理指標を用いると嘘がない反応が測れる
質問紙による調査はゲーム体験の総和として測られる
→時々刻々と変化する感情過程をモニターし続けることができる
ゲーム中の生理指標の変化は各ゲームイベントのインパクトを反映
→製作時に、投入したイベント、ゲームシステム等の効果を測定できる
生体情報の反応量は、感情体験の強さ(楽しさ)を反映
→ゲームの売れ行きを数値として予測できる可能性
現在進行中の研究
他ジャンルゲームの測定(ロープレ・スポーツ・パズル・リズムアクション・育成など)
助け合うなど、対人過程にともなうポジティブな感情状態の測定→KDDI、Sony
ゲーム中の生体反応のフィードバックが感情体験におよぼす影響の検討→任天堂
生体情報を利用したゲームの「楽しさ評価」システムの開発
→適切な生体情報機器の選定、目的に即した使いやすいソフトウェアの開発
(全体としては)
ゲームのポジティブな側面を科学的にしめしてゆきたい!