Transcript 魚介毒

てっぽう
その毒に「当たる」ことがあることから、昔からさまざまな言い伝え
がある。このため関西では「滅多に当たらないが、当たれば命が危な
い(昔の鉄砲は命中率が悪かった)」という意味で「てっぽう」という。
「てっさ」、「てっちり」という料理名はここから来ている。
がんば
長崎県島原地方でフグを指す方言「がんば」は、「がんば置いてで
ん食わんば(棺桶を置いてでも食べなくちゃ)」の略とされている。
町人出の俳人一茶
フグ食わぬ 奴には見せな 不二の山
出自が侍の芭蕉
あら何ともなや 昨日は過ぎて 河豚汁(フクトシル)
てっさ
(フグ刺し)
フグ科
フグ目
フグ亜目
フグ科 Tetraodontidae
世界: 20属150種
日本: 6属 50種
ウチワフグ科
ハリセンボン科
カワハギ科
モンガラカワハギ科
モンガラ
カワハギ亜目
ハコフグ科
マンボウ科
イトマキフグ科
ベニカワムキ科
ギマ科
ヒガンフグ
ハコフグ科
「北枕」や「彼岸」という
死を連想させるツワモノ
キタマクラ
ハリセンボン科
イ
ン
テ
リ
の
風
情
?
ショウサイフグ
ス
マ
シ
タ
美
人
フ
グ
ケショウフグ
トラフグ
クサフグ
コモンフグ
フグ科のほとんどの種類は、内臓や血液に
フグ毒(テトロドトキシン)をもつが・・・
「トラフグ」は最高級品
マフグ
シマフグ
ホシフグ
アカメフグ
トラフグは大きな移動・回遊を
行うことも特徴的で、はるばる
東シナ海、黄海、渤海から 西
日本各地の産卵場へ移動し
て産卵し、再び戻って行く。
また、産まれた仔魚は成長に
伴い湾奥、湾口、湾外と生息
場所を変えながら沿岸域に
留まり、 2歳くらいになると東
シナ海や黄海方面の外洋へ
移動する。
オスは2歳、メスは3歳で成熟し始め、湾口部や海峡など狭くて流れの激しい水深10
~50mの やや粗い砂礫底で3~6月に産卵。瀬戸内海は島が多く、平均水深も約
38mと産卵に 適しており、尾道や備讃瀬戸に産卵場がる。 瀬戸内海以外では有明
海湾口や関門海峡、伊勢湾口などが産卵場として知られている。 卵は直径1㎜前後
の球形沈性粘着卵で、砂泥、石、岩などに産み付けられ、約10日で孵化する (水温
16℃)。稚魚は主に底生性の小型甲殻類を食べ、成長に伴ってエビ・カニ類やイカ類、
魚類などを食べるようになる。大きさは1歳で全長25㎝前後、2歳で40㎝前後、3歳
で50㎝前後となる。
テトロドトキシンを持つ仲間達
ツムギハゼ
ハナムシロガイ
このように多種の魚介類が同一の毒を
持っているということは、テトロドトキシンを
産生する生物が別におり、それを食べる
ことで毒化したと考えられた。
誰が? 何のために? 毒を作るか?
フグは何故死なないか?
ヒョウモンダコ
スベスベマンジュウガニ
大阪湾にも生息している体長10cmほどの小型のタコで、
興奮すると美しく光る青い斑紋が現われる。手を伸ばして
咬まれると、神経毒のテトロドトキシンを持っており、重症
の場合には死亡することもある。
科
名
種 類(種 名)
筋肉(骨を含む)
クサフグ
施で日
コモンフグ
行漁本
ヒガンフグ
規獲の
ショウサイフグ 則 さ 沿
マフグ
)れ岸
メフグ
た域
も、
アカメフグ
の日
トラフグ
本
(
カラス
東海
フグ科
京、
シマフグ
都渤
ゴマフグ
ふ海
カナフグ
ぐ、
シロサバフグ
の黄
クロサバフグ
取海
ヨリトフグ
扱及
サンサイフグ
いび
規東
ナシフグ
制シ
イシガキフグ
ハリセンボン科
条ナ
ハリセンボン
海
ヒトヅラハリセンボン 例
ネズミフグ
ハコフグ科
ハコフグ
○: 可食
ー: 不可食
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
皮(ヒレを含む)
精 巣
-
-
-
-
-
-
-
○
○
○
-
○
○
○
○
-
-
○
○
○
○
-
-
-
-
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
-
○
○
○
○
○
○
獲県日
さ越本
れ喜の
た来沿
も湾岸
の及域
をび等
除釜で
く石漁
湾獲
並さ
びれ
にた
宮も
城の
県。
た
雄だ
勝し
湾、
で岩
漁手
に有
基明
づ海
き及
処び
理橘
さ湾
れで
た漁
も獲
のさ
れ
、
長
崎
県
が
定
め
る
要
領
時期による変化(有毒個体数の割合 %)
無卵期(7-11月) 抱卵期(12-4月) 産卵期(5-6月)
トラフグ
卵巣
精巣
肝臓
6
0
9
80
0
44
45
0
38
50
0
18
89
0
54
100
0
62
ショウサイフグ
卵巣
精巣
肝臓
フグの種類、生息地、季節によって
毒の強さが異なり、個体差も大きい。
フグ毒の研究は日本で活発に進められ、1889年(明治22年)に
高橋順太郎・猪子吉人が、この毒は腐敗産物でなく、フグが本来
持っていることを明らかにした。
1911年田原良純博士は、卵巣からフグ毒を抽出し、これをテトロ
ドトキシン(TTx: Tetrodo-toxin)と名付けた。
1962年に津田恭介
博士らは結晶テトロドト
キシンの分離に成功、
c12h19o9n3なる分子
式と構造式とを確定、
発表した。その会議で
ふぐ毒とカリフォルニア
イモリの毒が同じ物だ
ということも発表した。
習慣性がないので鎮痛剤として医療に用いられる。
分子量319.27、CAS登録番号4368-28-9。
イオンチャネル (ion-channel)
ナトリウムやカルシウムなどのイオンが透過する細胞膜の孔をイ
オンチャネル と呼ぶ。
イオンチャネルは透過するイオンの選択性により、Na +チャネル、
Ca2+チャネル、K +チャネル、Cl-チャネル等に分類される。
Na +チャネルは神経や筋肉の細胞膜に存在し、主として電位差に
より、細胞内外のNa +イオンがこの孔を透過することで、神経や筋肉
に興奮性の刺激を伝える。
神経毒は、これらのチャネルを塞ぐことにより、細胞組織を麻痺さ
せて、中毒症状をおこす。 K +チャネルには、L、N、P/Q型などの3種
類が発見されており、それぞれ活性が異なる。このうち、痛覚の神経
伝達物質はN型といわれ、海産毒素コノトキシンがそのチャネルを選
択閉鎖する作用を利用し、新薬開発に繋げている。
アクアポリン(水チャネル)
とイオンチャネル
イオンポンプ
• 濃度勾配に逆らってイオンを能
動輸送する
• 新たなイオン濃度勾配を作る
イオンチャネル
• 濃度勾配にしたがってイオンを
拡散させる
• 特定のイオンに対して選択的
透過性を示す
膜電位の
変化
膜電位依
存性Na+
チャネルと
K+チャネル
の機能的
状態変化
このイオンチャネ
ルは,膜電位依
存性イオンチャネ
ルに比べると選
択性が低く,異な
る受容体イオン
チャネル複合体
によって各種の
異なる陽イオン
または陰イオン
が透過できる。し
かしながら,神経
伝達物質は実際
にはイオンに比
べると大きいの
で,イオンチャネ
ルを通ることはで
きない。
化学シナプスにおける
神経伝達
流入阻害機序
1.単純に穴を塞ぐ?
2.穴を狭める?
3. ・・・・・・
4. ・・・・・・
TTX: 分子量319
フグ毒(TTX)は、イオンチャンネル
にナトリウムイオンが流入するのを
阻害することにより、神経を麻痺さ
せる。
Vibrio alginolyticus, V.damsela, Staphylococcus
主要水揚げ地
(1998年)
全国の水揚げの約6割が大阪で消費されている。
天然
養殖
順位
都道府県
漁獲量
構成比
順位
都道府県
漁獲量
構成比
1
長崎
1,339
16%
1
長崎
1,635
30%
2
福岡
701
8%
2
熊本
1,489
28%
3
愛媛
566
7%
3
愛媛
750
14%
4
熊本
516
6%
4
香川
417
8%
5
山口
506
6%
5
鹿児島
206
4%
6
富山
500
6%
6
三重
180
3%
7
愛知
387
5%
7
福井
121
2%
8
新潟
370
4%
8
山口
117
2%
9
石川
344
4%
9
島根
94
2%
10
島根
330
4%
10
和歌山
79
1%
-
全国計
8,329
100
-
全国計
5,389
100%
ホルマリン薬浴問題
魚体に寄生虫が付着しやすいため、その対策が養殖業者の課題となっている。ホルマ
リンによる薬浴が手っ取り早い方法であるとされるが、処理後の廃水を海に流すことか
ら、問題視されている。2002年、東京水産大学は厚生労働省に対して、愛媛県と長崎
県の養殖業者が寄生虫対策としてホルマリンを使用していることを指摘。両県が調査
を実施した結果、2003年になって半数以上の業者が使用していたことが判明した。
この影響で長崎県では、しばらくホルマリンを使っていないフグまで出荷できなくなるな
どの影響が出た。ほぼ同時期に発生した真珠貝(アコヤ貝)の大量へい死の原因の一
つではないかと指摘された。ふぐ養殖業者と真珠養殖業者とが反目するなど、社会問
題となった。
体内にフグ毒と呼ばれる強い毒を持つ種類がほとんどである。身を食用とする種でも
内臓には毒があることが多い。フグが持つ毒はテトロドトキシンとよばれる物質であり、
もともと細菌が生産したものが餌となる貝類を通して生物濃縮され、体内に蓄積された
ものと考えられている。餌の種類を変えて養殖すると、同じ種であってもフグ毒が少な
かったり、全くない場合があることからこのように推定されている。ただし、 フグ自身
は中毒することはない。フグ毒の毒量は「マウスユニット (MU)」という単位で表
される。20グラムのネズミを30分で死亡させる毒の量を1マウスユ
ニットとしている。人間の場合5,000–10,000マウスユニットで致
死量に至るが、フグ毒による事故ではほとんどの被害者が死に至っており、極めて生
存率が低い。
最もTTxが多く含まれる卵巣は、法律で食用とする
ことが禁じられている。石川県は、岡本嘉六の出身
地であり、命知らずがそろっているのか?
河豚の卵巣の糠漬け (石川県の郷土料理)
河豚(フグ)の卵巣には、肝などと同様に致死性の高い毒素テトロ
ドトキシンを多く含んでおり、当然そのままでは食用には向かない。
しかし、石川県白山市の旧美川町地域、金沢市の金石、大野地区
では、その卵巣を1年間塩漬けし、更に2年以上のあいだ糠漬けに
するという大変に時間をかけた製法により、毒素を消失させ珍味と
して販売されている。
糠に含まれるある種の酵素が醗酵する際に毒素を分解するので
はないかという説があるが、正確な理由はまだ明らかにされていな
い。味は濃厚で、御飯の友や酒の肴として重宝されている。
食品衛生法により食用を禁止され、廃棄しなければならない部位
を、このような加工法で食品として製造しているのは、日本全国でこ
の美川、金石、大野地方のみである。なお、河豚の卵巣の糠漬けの
製造は、ふぐ加工に関する資格免許を持つ業者にのみ許されてお
り、出来上がった糠漬けは、石川県予防医学協会による毒性検査
を受け、毒素が消失したことを確認した後に出荷される。
第二次世界大戦後は中毒事故が激増し、年間数百件にも達したので、
東京都では1949年(昭和24年)ふぐ取扱業取締条例を交付し、所定
の試験を受けた者でないとフグを取扱う事が出来なくなりました。
ふぐ処理師免許証
ふぐ条例制定年別都道府県一覧
条例制定
年
条例制定
年
都道府県
名
昭和56年
山口県
昭和35年
鹿児島県
53年
福岡県
34年
神奈川県
53年
34年
鳥取県
33年
熊本県
33年
宮崎県
28年
香川県
49年
奈良県 .
静岡県 .
.
愛知県
.
千葉県 .
岡山県
27年
愛知県
48年
滋賀県
25年
京都府
36年
高知県
24年
東京都
23年
大阪府
52年
51年
50年
「唇がシビレル頃が、最
も美味しい頃合です」
都道府県名
歌舞伎役者で人間国宝の 坂東三津五郎(8代目)
1975年1月16日、京都の料亭で肝を4人前食べて中毒死。
シガ(cigua)
Cittarium pica
カリブ海
シガテラ食中毒: 熱帯から亜熱帯海域の
サンゴ礁海域に生息する魚類の摂食によっ
て起こる食中毒の総称
水質汚染もなく、きれいな海で
何が起きているのか?
渦鞭毛藻に分類されるツノオビムシ属の1種
イケノツノオビムシ(Ceratium hirundinella)
シガトキシン
石垣島白保のサンゴ礁
「シガテラ」(Ciguatera)
シガトキシンは海藻表面に付着生息する渦鞭毛藻 Gambierdiscus tokicus
が生産し、食物連鎖によって藻食魚から肉食魚に蓄積し、魚が毒化すると言われ
ています。毒性は「フグ毒」テトロドトキシンより20倍から100倍も強い。
この毒素の作用は、テトロドトキシンと同様ナトリウムチャネルブロック: 神経細
胞の軸索中にナトリウムチャンネル、Na専用のトンネルがあり、神経が刺激を受
けるとナトリウムイオンをこのトンネルで細胞内から外に出すことで刺激を伝達す
るもので、この神経伝達作用を抑えてしまう一種の麻痺剤。
この神経麻痺で現れる中毒症状は様々。①嘔吐、下痢、腹痛などの消化器症
状 ②血圧低下や心拍数の減少などの循環器症状 ③ドライアイス・センセイショ
ンと呼ばれる知覚・温覚異常、縮瞳などの知覚症状 ④脱力感、関節痛、麻痺、
昏睡その他の症状があります。しかも回復の遅いのが特徴で症状が数ヶ月以上
続く。
シガテラ中毒は本来無毒な食用魚が食性によって徐々に毒化し、匂いも味も正
常魚と変わらないので、最近のように世界各国からの魚介類の輸入が増えると、
日常生活で中毒が起こる危険性が考えられる。 我が国では沖縄での発生が最
も多い。
類似の毒素にシガテリン(ciguaterin)、スカリトキシン(scaritoxin)、マイトトキシ
ン(maititixin)が知られている。毒魚にはバラフエダイ、イッテンフエダイ、ドクウツ
ボ、サザナミハギ、オニカマス、マダラハタ、ギンガメアジ、ナンヨウブダイ、ヒラマ
サ、カンパチ、イシガキダイ等がある。沖縄からの報告では、ハタ科のミーバイに
よる中毒が殆どだった。
イッテンフエダイ
バラフエダイ
小型
レギュラー
大型
小型
レギュラー
大型
~30cm
30~40cm
40cm~
~50cm
50~70cm
70cm~
バラハタ
小型
レギュラー
大型
~40cm
40~50cm
50cm~
シガテラ毒魚は数百種類に及ぶが、
特に問題になる魚種は、ドクウツボ、
ドクカマス(オニカマス)、マダラハタ、
バラハタ、イッテンフエダイ、バラフエ
ダイ、ナンヨウブダイ、サザナミハギ
などの約20種で、世界的にもっとも
中毒例の多いのはバラフエダイ。各
地の魚市場でシガテラ毒魚の廃棄と
いう水際作戦が行われて、中毒事件
は非常に少なくなっている。
オニカマス Sphyraena barracuda
ドクカマス
マダラハタ
Epinephelus polyphekadion
ドクウツボ Gymnothorax javanicus
小型
レギュラー 大型
~40cm 40~50cm 50cm~
小型
レギュラー 大型
大型
小型
レギュラー
~80cm 50~100cm
80~120cm100cm~
120cm~
~50cm
アオブダイ
アオブダイの肝臓摂食によ
る食中毒事件は、日本で
は1960年代から十数件発
生し、4人の死亡者が記録
されている。主な中毒症状
は、筋肉痛、関節痛、ミオ
グロビン尿症(筋肉色素で
あるミオグロビンが尿中に
現れる症状)。
アオブダイScarus ovifronsはバンド(高知)、イガミ(徳島)などとよばれ、磯釣りやエビ網
等により少数が漁獲される。地域によって、この魚種の内蔵とくに肝臓が猛毒で、時に死を
伴う中毒を起こしている。最近、原因物質はパリトキシンと同定された。パリトキシンの主
な症状は筋肉痛。腰や四肢のしびれ感、筋肉のこわばり首や腰の筋肉痛、筋力低下や痙
攣を起こす場合もあり、 重症例では頻呼吸、呼吸困難、不整脈、ショック、腎臓障害などが
報告されている。嘔吐や下痢などの消化器症状は普通は出現しない。家庭でできる対処法
はなく、しびれを感じたら医療機関を受診する。医療機関でも解毒剤はない。 対症療法で
呼吸循環不全を克服できれば予後は比較的良好。肝臓の摂食は行わない。
貝類による食中毒の原因となる有毒物質で、おもに世
界各地の沿岸海域に生息している渦鞭毛藻類、珪藻類、
藍藻(藍菌)類が原因する麻痺性貝毒、下痢性貝毒、神経
性貝毒および記憶喪失性貝毒が知られている。麻痺性貝
毒は渦鞭毛藻のアレキサンドリウム、ギムノジニウム、ピ
ロジニウムおよび藍藻のアファニゾメノンやアナベナがも
つアルカロイドのサキシトキシン(saxitoxin: SXT)である。
下痢性貝毒は渦鞭毛藻のディノフィシスやプロロセントラ
ムがもつポリエーテル化合物であるオカダ酸(okadaic
acid: OA)とその誘導体であるディノフィシストキシン
(dinophysis toxin: DTX1)である。神経性貝毒は渦鞭
毛藻のギムノジニウムがもつポリエーテル化合物である
ブレベトキシン(brevetoxin: BTX)である。また、記憶喪
失性貝毒は珪藻のシュードニッチアがもつドーモイ酸
(domoic acid: DA)である。
下痢性貝毒(DSP:Diarrhetic Shellfish Poison)
イガイ、ホタテ、ムラサキガイなどの二枚貝を食べることで起こりま
す。食後、数時間で下痢や嘔吐、腹痛などの症状を示しますが、発熱
はほとんどなく死亡例もありません。
貝の有毒プランクトンの摂取による毒化が原因で、貝類の主産地で
は毒化時期に毒性の定期的なモニタリングが実施されており、規制値
以下の場合のみ出荷されています。
下痢性貝毒原因プランクトンのディノフィシス属のプランクトンは、三
河湾(愛知県)ではほとんど見られません。毒成分としては、ディノフィ
シストキシン、オカダ酸などであり、必ず下痢をひきおこし、また吐気、
腹痛、嘔吐を伴なうこともあります。
中毒症状--激しい下痢が主な症状で、吐き気、嘔吐、腹痛を伴うこともある。
死亡例なし。
毒化機構--二枚貝が有毒プランクトン(渦鞭毛藻Dinophysis属)を摂取、
中腸線に蓄積される。
毒化貝--ムラサキイガイ、ホタテガイ、コマタガイ等。
その他--上記(1)麻酔性貝毒と同様に北海道では毎年のようにホタテガイ
D.Fortii
が毒化する。
10μm
毒力はフグ毒の16分の1程度です。
麻痺性有貝毒(PSP:Paralytic Shellfish Poison)
イガイ、ホタテ、アサリ、ムラサキガイなどの二枚貝によっておこる中毒で、食後3
0分程度で口唇、舌、顔面が痺れ始め、次いで全身に痺れが広がります。重症の場
合は、呼吸麻痺により死に至る場合もあります。
これらの原因は、貝が摂取するプランクトン(Protogonyaulax属、Pyrodinium
属)が持つ自然毒により毒化されることで起こり、代表的な有毒性分はサキシトキシ
ンです。これらの毒は加熱でも容易に分解しないため、毒が蓄積される中腸線を避
けて食べるのが防止策です。
中毒症状--食後30分で口唇、舌、顔面のシビレ、手足にも広がる。軽症の場
合は、 24~48時間で回復しますが、重症の場合は、運動障害、頭痛、嘔吐、言語
障害、流 涎等の症状が現れる。麻痺が進行すると呼吸困難で死亡することがある。
対 応--治療薬なし。対症療法として、胃洗浄、人工呼吸
毒化機構--二枚貝が有毒プランクトン(渦鞭毛藻Alexandrium属)を摂取、
中腸線
A.Tamarense
に蓄積される。
10μm
毒化貝--二枚貝のホタテガイ、ムラサキガイ、アカザラ、アサリ、ヒラオウギ、
マガキ等。
その他--北海道で生産量の多い養殖ホタテが夏頃になると毒化して、業者
を悩まし
ています。また、広島のカキも毒化し、その範囲が広がっています。
毒性分はサキシトシンであり、その毒力はフグ毒に匹敵します
日本水産資源保護協会
平成18年
全国の出荷自主規制一覧
赤潮のプランクトン
赤潮プランクトンの素顔
食品衛生法で定める規制値(可食部1gあたり)
麻痺性貝毒 4 MU
下痢性貝毒 0.05 MU
※1MUとは、体重20グラムのマウスが、「麻痺性貝毒」にあっては15分で、「下痢
性貝毒」にあっては24時間で死亡する毒量のこと。なお、麻痺性貝毒の場合、体重
60㎏の人間の致死量は3,000以上と言われています。
貝毒の毒量はマウスユニット(MU)という単位で表され、規制値が設定されてい
ます。
貝のむき身重量1グラム当たり、麻痺性貝毒では4マウスユニット、下痢性貝毒
では0.05マウスユニットを超えた場合、当該海域の生産者は、直ちに出荷自主規
制を行い、毒化した貝類が市場に出回らないようにします。
テトラミン中毒
北日本や山陰地方で捕獲される肉食
性巻貝のうち、エゾバイ科のエゾボラモ
ドキ(ツブ貝)やヒメエゾボラ(赤バイ、バ
イ貝)などの唾液腺中に含まれる貝毒。
内因性(貝がもともと持っている)毒なの
で、種類や個体による毒量の差はある
が、季節による毒量の変動はない。
食後30分程度で、頭痛やめまい、船
酔い感、足のふらつき、目のちらつき等
の神経症状を示す。通常2~3時間で
回復する。
エゾボラモドキなどは1個分の唾液腺
でも食中毒を起こすのに十分な量のテ
トラミンを含むことがあり、テトラミンは加
熱しても分解されない。唾液腺の除去
が重要な予防方法。
ボウシュウボラ
房総半島以南の浅い海に棲息し、殻はホラガイに似る。ボウシュウ
ボラには殻の表面に結節(こぶ)があり、ホラガイにはなく滑らかであ
る。ヒトデやナマコなどを餌として摂取する。中腸腺にはフグ毒(テト
ロドトキシン)が蓄積されることがあります。ボウシュウボラが餌にし
ているヒトデからフグ毒が検出されることから食物連鎖を通じて毒を
体内に蓄積することが分かってきました。海でフグ毒を最初に作るの
は海洋の細菌だといわれています。最初にボウシュウボラでフグ中
毒様の症状を示したのは1979年の清水市の事例といわれています。
・ 海域によって毒化の状況は異なる?
バイ中毒
巻貝のバイ貝はネオスルガトキシン、プルスルガトキシンやまれにテトロドト
キシンの毒を持ち、食することで視力減退、瞳孔拡散、口渇、便秘などの症
状を示します。1957年に新潟で中毒死例が記録されています。
1
2
3
4
5
6
スルガトキシン-バイの毒ベネルピン-アサリの毒テトラミン-ヒメエゾボラ,エゾボラモドキ等の毒ベコリン誘導体-エゾワスレおよびアクキガイの毒光過敏症-アワビテトロドトキシン(フグ毒)-巻貝類-
、昭和55年7月1日付環乳第29号「麻痺性貝毒等により毒化した貝類の取扱いに
ついて」をもつて通知
光線過敏症
アワビの内臓(中腸腺)を食べた翌日以降に、顔面など日光にさら
される皮膚に発赤や腫れ、疼痛を示しす。貝の摂取する海藻のク
ロロフィルが原因といわれ、2月~5月に起こる季節性の毒化現象。
ビタミンA過剰症
イシナギの肝臓摂食によって、中毒が引き起こされることがよく知ら
れている。食後30分~12時間で発症し、激しい頭痛、発熱、吐き気
などが見られ、2日目頃からは顔面や頭部の皮膚が剥がれる特徴的
な症状が起こる。原因は、肝臓に多量に含まれるビタミンA。イシナ
ギの肝臓は1960年に食用禁止になった。他に、サメ、マグロ、ブリ、
カンパチなどの大型魚、特に老成魚の肝臓にはビタミンAが多く、注
意が必要。
肝油=市販のビタミンA剤
ハオコゼ
ミノカサゴ
オニオコゼ
オニオコゼ
ヒメオコゼ
アカエイ
ゴンズイ玉
ウツボ
あさり、カキ
下痢型 嘔吐型