相対論的MHDジェットの効率的な加速

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相対論的MHDジェットの
効率良い加速
~解析的研究~
當真賢二(阪大理)
共同研究者: 高原文郎(阪大理)
理論懇シンポジウム 2012@ 筑波
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Outline
1. GRMHDシミュレーションの発展とその性質
2. 定常軸対称、相対論的MHDジェットの
energetics, 加速メカニズム
3. 定常軸対称、特殊相対論的MHDジェットの数値
計算の発展と残る問題
4. 効率良い加速を実現する磁力線形状
2
相対論的ジェットの駆動メカニズム
~宇宙物理学の大問題~
• AGNs, GRBs, XRBs, …
• BH + accretion flow
• 多量のエネルギー注入と
少量の質量注入が必要
𝐿𝑗 ≫ 𝑀𝑗 𝑐 2
• Thermal or Poynting energy ?
(AGN jetでは後者が主流)
• 磁場や遠心力バリアで質量注
入が抑えられる領域がある
• 少量のバリオン注入:
• 中性子媒介?(KT & Takahara
2012; Levinson & Eichler 2003)
磁気リコネクション?
• Collimation shock?
(McKinney 2005)
•
3
GRMHDシミュレーションの例
• 真空を避けるために質量を注入
(Mass floor at least at stagnation
surface) = 質量・エネルギー保存
されない
• 初期はゼロ磁気フラックス
(Confined within a torus) ⇒
磁気リコネクション、軸付近に大
域的磁場
• より深い解析的理解が必要
• 非熱的過程も重要となりうる
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(McKinney 06; McKinney & Narayan 07)
中性子を媒介とした質量注入
• GRB jetの質量注入:𝜈𝜈
対消滅 or 中性子拡散
• AGN jetの質量注入:𝛾𝛾
対消滅 or 中性子注入
(KT & Takahara 2012)
大域的磁場と遠心力によるバリア
陽子+電子
中性子
磁気乱流による
陽子加速⇒中性
子生成
𝑐
2𝐺𝑀
𝑡𝑛 𝛾𝑛 ~ 2 ~1013 cm
𝑐
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定常MHDモデル: energetics
• 単極誘導(回転導体+一様磁場+導線)
• 導体=降着円盤(あるいは星)
• 導線=磁場𝐵𝑝
• 回転エネルギー→電場(起電力)
• 電流→𝐵𝜑 (Poyntingフラックス𝐸 × 𝐵𝜑 )
• →(構造に依存して) ローレンツ力 𝐽𝑝 ×
𝐵𝜑 で粒子エネルギーに転換
• モノポール構造であればほとんど粒子に
エネルギー転換しない(Michel 1969)
• 効率良いエネルギー転換を実現
する磁力線構造はどういう形か?
(Goldreich & Julian 1969;
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Beskin 2011)
定常MHDモデル: energetics
• 単極誘導(回転導体+一様磁場+導線)
• 導体=降着円盤(あるいは星)
• 導線=磁場𝐵𝑝
• 回転エネルギー→電場(起電力)
• 電流→𝐵𝜑 (Poyntingフラックス𝐸 × 𝐵𝜑 )
• →(構造に依存して) ローレンツ力 𝐽𝑝 ×
𝐵𝜑 で粒子エネルギーに転換
• モノポール構造であればほとんど粒子に
エネルギー転換しない(Michel 1969)
• 効率良いエネルギー転換を実現
する磁力線構造はどういう形か?
定常軸対称なポロイダル
磁場の形状
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加速(エネルギー転換)のメカニズム
• 定常軸対称では、磁力線方向の運動方程
式が簡単に積分できる (Bekenstein & Oron
1978; Camenzind 1986)
• 𝑣𝜑 − 𝑣𝑝 𝐵𝜑 𝐵𝑝 = 𝑟Ω(Ψ): MHD条件
• Γ+
𝑟Ω(−𝐵𝜑 )
𝜂𝑐 2
= ℰ(Ψ): エネルギーフラックス
• 質量フラックス、角運動量フラックスも定数
• 𝑟 > 𝑐 Ωで −𝐵𝜑 𝐵𝑝 ≈ 𝑟Ω 𝑐
• ⇒Γ+
Ω
2
𝐵
𝑟
𝜂𝑐 2 𝑝
≈ℰ
• 𝐵𝑝 𝑟 2 が磁力線に沿って減少すれば加速
する。それはどういう形か?
Ψ 𝑟, 𝑧
= 𝑐𝑜𝑛𝑠𝑡.
磁束関数
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Pioneer: Komissarov+ 2007
•
•
•
•
•
特殊相対論的
軸対称、“定常”
明確な境界条件
外側に壁
広い領域の数値計
算(ゆっくりとした
加速を示した)
• 軸付近が早く収束
する ⇒ 本体の磁
力線が広がり
(𝐵𝑝 𝑟 2 減少)、加速
する
ポロイダル磁力線と
固有密度
ポロイダル電流線と
ローレンツ因子
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残る問題: エネルギー転換効率
• Cold
• 壁:𝑧 ∝ 𝑟 3/2
• Γ+
• 𝜎≡
𝑟Ω(−𝐵𝜑 )
𝜂𝑐 2
𝑟Ω −𝐵𝜑
Γ𝜂𝑐 2
= ℰ(Ψ)
ℰ
𝑟Ω(−𝐵𝜑 )
𝜂𝑐 2
< 0.1は
非常な遠方でのみ起こる
(観測と矛盾)
• AGN jet放射: 𝑧 > 103−4 𝑟𝑔
で𝜎 < 0.1
Γ
ある磁力線(Ψ)に沿ったポイン
ティングフラックスと運動エネル
ギーフラックスの構造
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Lyubarsky (2009; 2010)
• 漸近解析(𝑟 ≫
𝑐
),
Ω
外圧 𝑃 ∝ 𝑧 𝛼
• 遠方で𝜎 ≫ 1の場合
• 加速がsaturateし、𝜎 ≲ 0.1は非
常に遠方でしか達成されない
(Komissarovと同じ結論)
• 近傍で効率よく加速することは
起こりえないのだろうか?
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形状を仮定した場合の解析解
(Fendt & Ouyed 04)
磁気音速点
• 磁力線に沿って 𝐵𝑝 𝑟 2 ∝ 𝑟 −𝑞 (𝑞 > 0) を仮定し、ベルヌーイ式を解
いた(磁力線間の力の釣り合いは考えていない)
• 磁気音速点の近くで急激な加速
• これまでのグローバル計算で仮定した境界条件では、このような
磁力線形状にならない。実際、外側も軸付近も境界条件は非自明12
加速する部分の磁力線形状
• 外部媒質に接した磁力線とその近
傍を考え、ベルヌーイ式を解く。
𝑧
(KT & Takahara in prep.)
𝑧 = 𝐴𝑟 𝑎
𝐵𝑝
• 𝑧 − 𝜁(Ψ) = 𝐴(Ψ)[𝑟 − 𝜌(Ψ)]𝑎(Ψ)
• 𝐵𝑟 =
−1 𝜕Ψ
,
𝑟 𝜕𝑧
𝐵𝑧 =
1 𝜕Ψ
𝑟 𝜕𝑟
𝑃(𝑧)
• 𝑧 = 𝐴𝑟 𝑎(Ψ) 型が最も効率が良い
2
• 𝐵𝑝 𝑟 =
1
(−𝑎′ )ln(𝑟)
𝑟 2
𝑧
+ 𝑐𝑜𝑛𝑠𝑡
• それでも不十分であることがわ
かった。(see also Vlahakis 04)
10𝑟𝑔
Light
cylinder
∼ 30𝑟𝑔
𝑟
Light cylinderより内側の形状は大きく
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影響しない(KT & Takahara in prep.)
加速する部分の磁力線形状
• さらに効率の良い形を発見。
• 𝑧 = 𝐴𝑟 𝑎 + 𝐵 Ψ 𝑟 𝑏 (a<b, A>B)
𝑧
(KT & Takahara in prep.)
𝑧 = 𝐴𝑟 𝑎
𝐵𝑝
• 𝐵𝑝
𝑟2
𝐵)
1
𝑎−𝑏
=
(𝐴𝑟
−𝐵′
𝑟 2
𝑧
+
𝑃(𝑧)
+ 𝑐𝑜𝑛𝑠𝑡
10𝑟𝑔
Light
cylinder
∼ 30𝑟𝑔
𝑟
Light cylinderより内側の形状は大きく
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影響しない(KT & Takahara in prep.)
解とそれに対応する外圧構造
𝑧 = 0.1𝑟 2 + 𝐵 Ψ 𝑟 3 の𝐵 = 0の磁力線
𝑃 = (𝐵𝑝 2 + 𝐵𝜑 2 − 𝐸 2 )/8𝜋
∝ 𝑥 −4
急激な減圧
𝑧~103 𝑟𝑔 で𝜎 < 0.1が得られる。この場合、外圧は急激な減圧
を経て、ベキ則的な振る舞いを持つ(atmosphere + wind?)
(Komissarov, Lyubarskyなどが考えていない境界条件)
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まとめ
• 定常軸対称MHD jetは、単純な境界条件では、
エネルギー転換がsaturateする(観測と矛盾)
• 効率良いエネルギー転換が起こる磁力線形状、
境界条件を考えた
• 外部が非常に希薄であることが必要 ⇒ GRBの
中心部ではこの種の加速は起きないが、高密度
領域からのjet breakoutでは起こる
• 全体の構造を解くには、希薄波の存在も考慮す
る必要がありそうだ
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