オープンアクセス政策の動向 -欧米と日本の比較- 常磐大学人間科学

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オープンアクセス政策の動向
-欧米と日本の比較-
常磐大学人間科学部
栗山正光
2013年5月25日(土)
日本図書館情報学会春季研究大会
@筑波大学 春日エリア
研究の背景、目的、方法
• 背景:オープンアクセス(OA)運動の高まり
– 各国政府や研究助成機関がOA義務化の方針
を打ち出すなど、政策面でのOA推進の動きが
加速
• 目的:OA政策の違いや議論の争点を明ら
かにし、OA実現の方策を考える手がかり
を提供する
• 方法:文献調査
– 2012年の英米および日本の出来事を中心に
整理し、比較検討
英国の政策(1)
• 2012年6月、フィンチ・レポート
– ゴールドOA優位の勧告
• 7月、英国政府のフィンチ・レポート受入表明
• 英国研究会議(RCUK)もフィンチ・レポートに
沿った新たなOA方針を発表
– 論文掲載誌がゴールドOAオプションを有し、かつ
論文処理費(APC)が補助される場合は、著者は
ゴールドOA, CC-BYを選択しなければならない
RCUKポリシー
公的助成研究か?
No
Yes
出版先にゴールドOAオプションがあるか?
Yes
No
6ヶ月後のグリーンOA
(人文社会科学は12ヶ月後)
APCの助成を受けられるか?
Yes
即時ゴールドOA
No
12-24ヶ月後のグリーンOA
出所: RCUK Policy on Open Access and Guidance.
http://www.rcuk.ac.uk/documents/documents/RCUKOpenAccessPolicy.pdf
p.7 より作成
英国の政策(2)
• フィンチ/RCUKポリシーに対する批判
– 出版社が高価なハイブリッド・オプションを用意し
エンバーゴ期間を長くする誘引になる
• 事実上グリーンOAが不可能に
Stevan Harnad
– 自分たちのコスト便益比較研究を間違って引用
• 英国のみのゴールドOAは不経済
John Houghton and Alma Swan
– 不明瞭で「受け入れがたい」
貴族院科学技術委員会
– 高等教育助成会議(HEFCE)の研究評価の枠組
(REF)におけるOA義務化案
米国の政策(1)
• NIHのパブリック・アクセス・ポリシー(2008~)
• 2011年12月、「研究著作法案Research
Works Act 」(RWA)提出
– OA義務化禁止法案
– アメリカ出版協会(AAP)が支持
– エルゼビア社のボイコット運動につながる
→Academic Spring
• 2012年2月、「連邦政府助成研究公共アクセ
ス法案」(FRPAA)提出(3度目)
– またもや不成立
米国の政策(2)
• 2013年2月、FRPAAの後継として「科学技術
研究への公正アクセス法案」(FASTR)提出
– 四度目の正直?
• 2012年5月、ホワイトハウスの請願受付サイ
ト"We the People"でOA要請の署名運動
– 請願採択に必要な25,000人の署名を所定の半
分の期間で達成
• 2013年2月、ホワイトハウスは連邦政府の諸
機関にOA方針を策定するよう指令
日本の政策(1)
• 2011年8月、第4期科学技術基本計画を閣議決
定
– 機関リポジトリの構築やOA推進への言及
• 2012年7月、文部科学省が「学術情報の国際発
信・流通力強化に向けた基盤整備の充実につい
て」を公表
– 研究成果のOA化に積極的に取り組むべき
– OAジャーナルの育成とともに機関リポジトリの活用
も有益
– 科学研究費補助金研究成果公開促進費「学術定期
刊行物」の改善策の一つとしてOAジャーナルへの助
成を提案
日本の政策(2)
• 科学研究費補助金研究成果公開促進費「学
術定期刊行物」は「国際情報発信強化」と名
称を変え、「オープンアクセススタートアップ」
という応募区分が設けられた
– 「オープンアクセススタートアップ」で申請したの
は6学会にとどまる
• 2013年3月、文部科学省は「学位規則の一部
を改正する省令」を公布
– 博士論文は印刷公表に代えて、やむを得ない事
由がある場合を除き、インターネットにより公表
比較と考察(1)
• 英国も米国も公的資金による研究成果のOA義
務化を推進する方向では一致
• 大きく異なるのは、英国のみがゴールドOA優先
路線を突き進んでいる点
– APCと予約購読料との二重払いの負担に対する批
判・疑念は払拭するのが困難
• 日本でも政策文書にOA推進の文言を盛り込み、
OA誌スタートアップ支援導入、博士論文の原則
インターネット公開義務化などの政策
• が、英米で主流となっている学術誌掲載論文の
OAを義務付ける動きは見られない
– 欧米との最大の違い
比較と考察(2)
• 2013年4月、科学技術振興機構(JST)が「オープ
ンアクセスに関するJSTの方針」を発表
– OAの「推奨」という表現にとどまっている
• 国際研究会議(Global Research Council)
– 世界各国の研究助成機関の連合組織(2012年5月
設立)
– 日本からはJSTと日本学術振興会(JSPS)が参加
– 2013年の年次総会でOA実現のための行動計画が
策定される予定→日本にもOA義務化の機運をもた
らす可能性(外圧)