KEKB加速器の現状と将来 菊谷 英司 [email protected] 2015/11/7 目 次 1. Introduction –KEKB とは何か 2. 加速器入門 3. 衝突型加速器とその例としての KEKBと PEP-II 4.

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Transcript KEKB加速器の現状と将来 菊谷 英司 [email protected] 2015/11/7 目 次 1. Introduction –KEKB とは何か 2. 加速器入門 3. 衝突型加速器とその例としての KEKBと PEP-II 4.

KEKB加速器の現状と将来
菊谷 英司
[email protected]
2015/11/7
1
目 次
1. Introduction –KEKB とは何か
2. 加速器入門
3. 衝突型加速器とその例としての KEKBと
PEP-II
4. KEKB加速器運転の歴史とその中での進歩
5. KEKBの将来:SuperKEKB計画
2015/11/7
2
KEKB とは何か?
Belle 測定器
陽電子リング
2015/11/7
電子リング
3
2015/11/7
●
KEKB rings
●
入射器
●
ニュートリノビームライン
●
陽子加速器
●
放射光リング(PF、PF-AR)
●
水泳プール(50m)
4
今、どこ?
1. Introduction –KEKB とは何か
2. 加速器入門
3. 衝突型加速器とその例としての KEKBと
PEP-II
4. KEKB加速器運転の歴史とその中での進歩
5. KEKBの将来:SuperKEKB計画
2015/11/7
5
加速器を構成するもの
• 磁石
– 2極、4極、6極
• 加速空洞
• 真空容器(ビームパイプ)
• ビームの様子を監視するシステム
– ビーム位置モニターなどのモニター、フィードバック
• 制御システム
• これらのほかにこの機器の裏方となる多くの機器が
ある
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6
4極磁石
加速器の重要なコンポーネン
トである磁石群は、ビームの進
行方向に垂直な方向の軌道を
決定する。
軌道をほぼ円形に保つのが、2極
電磁石である。これに対し、右の
写真の4極電磁石は、その円形
軌道から外れてしまおうとする
ビーム粒子の軌道をもどす役割を
もつ。
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4極磁石の磁場
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4極磁石の中の磁場の大きさは中心からの距離
に比例する。これで、中心軌道からずれた粒子に
対して調和振動子的な復元力を作用させる
8
6極磁石
距離に比例する復元力に
は色収差(即ち、エネル
ギーによる収束力の差)が
ある。これを補正するのが
6極電磁石
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6極磁石の形
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加速空洞内の電磁場
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ビームの進行方向と平行な方向の運動を司るの
が加速空洞
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位相安定性の原理
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粒子は加速空洞を通過するごとに加速または減
速される。平均より高いエネルギーの粒子が減速
され、低いエネルギーの粒子は加速させるという
うまいフィードバックがはたらくよう調整されている
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リング内の粒子分布(バンチ)
• バンチ
– 高周波でビームを加速しているため、この高周波フィール
ドの適当な位相でのみ適切な加速が行える。
– このことから、ビームはリング内に一様に分布しないで、バ
ンチと呼ばれる塊の集合になる。
– リングに存在できるバンチの数(の最大値)は、リングの周
長と高周波の周波数で決まる(KEKBの場合5120)
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ビーム光学 入門(その0)
• 加速器内の進行方向に垂直な方向の運動は
磁石によって支配される。
• 2極磁石はプリズムに対比され、4極磁石は
凸レンズ、または凹レンズに対比される。
• このような類似関係から、磁石を配置し、それ
を計画的に励磁したものを設計をすることを
ビーム光学と呼ぶ
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ビーム光学入門(その1)
ビーム光学的な考察は調和振動にも似ている。も
し純粋に調和振動子だったら、方程式は
x   2 x  0
で、解は
 x(t )  a sin(t  C )

 x (t )  a cos(t  C )
である。この時間発展の様子は以下のように、初期値に行列
を乗じる形に書ける
 x(t )  cost
 x (t )    sin t

 
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sin t   a sin C 
cost  a cosC 
1

15
ビーム光学入門(2)
• 加速器の中の粒子の場合、方程式の時刻 t
の代わりに、ある位置から設計軌道に沿った
距離 s を用いる。
• 調和振動子とは異なり、粒子が通過する磁石
が変化する毎に、「ばね定数」が変わる。
• そのことを式に表すと‥‥
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ビーム光学入門(3)
K(s) はどんな磁石の中にいるかで
x は粒子の位置
決まる、区分的に定数(加速器一周
の長さの周期関数)
2
d x( s )
 K ( s ) x( s )  0
2
ds
s ある定点から軌道に沿った距
離
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ビーム光学入門(4)
d 2 x( s )
 K ( s ) x( s )  0
2
ds
この方程式の解は2種類ある
(1) 一周で完全に重なる解 → 閉軌道
(2) 一周しても重ならない解 → ベータトロン振動
実際の運動は、閉軌道を中心とする、ベータトロン
振動
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ビーム光学入門(4)
2
d x( s )
 k ( s ) x( s )  0
2
ds
K(s) は区分的に定数なので、調和振動子の場
合と類似の行列表示が便利
 x(s0  s)   a11 a12   x( s0 ) 
 x(s  s)  a



 0
  21 a22   x( s0 )
4極、2極など、磁場の種類と強さ、長さで行列の形が決まる
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ビーム光学入門(5)
(変換行列の例)
• Free space
1 l 
0 1


• 収束4極
 cos(l K )
1 / K sin(l K )


cos(l K ) 
 K sin(l K )
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ビーム光学入門(6)
実際の行列計算はコンピュータにやらせる。
円形加速器の一周の行列が求められると、
ベータトロン振動の方程式の解が決まること
が知られている。途中を省略して結果だけ書く
と
x(s)  cb (s) cos( (s))
加速器の設計、運転ではこの b と調
和振動子の  にあたるチューンなどが
重要なパラメータである。
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ベータトロン振動とチューン
• ビームは磁場から受ける力によって横方向(x方向またはy方向)に
振動を伴う運動をする。→ ベータトロン振動。
• 力の性質は「復元力」。(例:ばねによる振動)
• 蓄積リングの場合、ビームがリング一周する時に何回振動するかを
表すパラメータをベータトロン・チューンと呼ぶ。 (単にチューンと呼
ぶこともある。)
• チューンは磁石の設定、配置によって決めることができる。
• チューンはビーム光学系における重要なパラメータである。
設計軌道
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ビーム
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バンチ内の粒子の分布
• 横方向(水平、垂直方向のビームサイズ)
– リングの場所によって、ビームサイズが異なる
– このビームサイズは、ビーム光学でレンズの役割を果たす四極電磁
石のリング内の配置に依存する -> β関数
• 進行方向(バンチ長)
– 高周波加速の加速電圧、偏向電磁石の強さなどで決まる
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ビームサイズ
 p 2
 x  b xx  x 
 p 
 p 2
 y  b yy  y 
 p 
– Beta function and と Emittance
b x,y
x,y

Beta function
 (Optical parameter): リングの場所に依存
Emittance: リングの場所に依存しない不変量
– Energy Dispersion and energy spread
 x,y


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p
p
Energy dispersion (Optical parameter): リングの場所に依存
Energy spread : バンチ内の粒子のエネルギーの分布の広がり
リングの場所に依存しない不変量
24
今、どこ?
1. Introduction –KEKB とは何か
2. 加速器入門
3. 衝突型加速器とその例としての KEKBと
PEP-II
4. KEKB加速器運転の歴史とその中での進歩
5. KEKBの将来:SuperKEKB計画
2015/11/7
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衝突型蓄積リング
• 素粒子物理学の実験の世界では、衝突型の
貯蔵リングが主流
• 衝突型にすることによって、加速器で得たエ
ネルギーを無駄にせず反応のエネルギーに
寄与させる。
• 高い技術で加速器をつくり、超寿命のビーム
を実現することができるようになった
• 電子の貯蔵リングの中では、粒子は小さな集
団(バンチ)となって加速器内を周回している
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衝突型加速器とその例としての
KEKB
• エネルギーが非対称(3.5GeV電子x8.0 GeV陽電子)
• 二つの蓄積型加速器を重ね合わせ、一箇所でビームが
ぶつかるようにしたもの
• 二つのビームの衝突で起こる素粒子反応を調べる
e  e  (4S )  B B  ?
• KEKB ではビームの塊(バンチは約1300個)
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27
1. KEKB加速器の図解
• 電子(e)陽電子(e+)衝突型加速器
• 電子と陽電子のエネルギーが異な
る非対称エネルギー、2リング(電
子リング:HER、陽電子リング:
LER)型の加速器
• 重心系のエネルギーは10.58GeV
(Υ4s)
• 周長約3kmのトンネルに2リングが
左右に並んで設置
• 2つのリングは2カ所で相対位置を
交換。そのうち一カ所で衝突実験
を行う。もう一方はリングが上下に
すれ違う。
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Mt. Tsukuba
Nikko
Belle
KEKB Rings
KEK Site
Linac
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29
衝突のイメージ
• それぞれのビームの中でバンチは 6ns から
8 ns 間隔でやってくる。
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KEKB のトンネルの中
ビームパイプが2本見え
る。
左が陽電子リング。右が
電子リング
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KAGEYAMA, T.
Super-KEKB WS
Nov. 28, 2003
Accelerator Resonantly coupled with Energy Storage
ARES
QuickTimeý Dz
TIFFÅià•
èkǻǵÅj êLí£ÉvÉçÉOÉâÉÄ
ǙDZÇÃÉsÉNÉ`ÉÉǾå©ÇÈǞǽDžÇÕïKóvÇ­Ç•
ÅB
3-cavity
system stabilized with the π/2-mode operation
Two SiC bullets per Waveguide
HWG
Input Coupler
Port
Pumping Port
AC: Accelerating Cavity (HOM-damped)
CF
SC: Storage Cavity (TE013)
CC: Coupling Cavity damped with
an antenna-type coupler (C damper)
GBP
C damper
SC
Tuner Port
CC
AC
Tuner Port
Two SiC bullets per Waveguide
HWG
GBP
Mode Shifting
Groove
Eight SiC tiles per Groove
CF
SS
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HCC
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超伝導加速空洞
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Superconducting Damped Cavity for KEKB
T. Furuya
DOOR KN OB TR A N SF OR MER
I N P U T COU P LER
GA TE V A L V E
L He
GA TE V A L V E
F R EQU EN CY
TU N ER
H OM DA MP ER
( SBP)
H OM DA MP ER
(LBP)
Nb
CA V I TY
I ON P U M P
N 2 SH IEL D
0
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0.5
1m
34
Belle の前で二つのビームライン
がマージする
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入射器の構成
Schematic Linac Layout
A1 GUN
Sectors A & B
J-Arc 1.7 GeV
Sectors 2 - 5
CT Gun
ECS
PF 2.5 GeV
Sectors C & 1
e+ Target
e- 3.7 GeV
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KEKB e- /AR
8.0 / 2.5 GeV
KEKB e+
3.5 GeV
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衝突型加速器にとって最も大事な
パラメータは二つ‥‥
• 重心系のエネルギー
– どんな物理現象を研究したいのか決めれば自動
的に決まる。それに合わせて磁石、その電源等
を設計する。実際の製作前からかなりのことがわ
かっている。ところが‥‥‥
• ルミノシティ
– 加速器の設計で目安が決まる。ただし、それを実
現するには、設計時には知られていなかった多く
の問題を解決する必要があることが普通。
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要求される性能:高いルミノシティ
KEKB デザインルミノシティ 1034/cm2/sec
KEKBのデザイン段階では、世界の加速器研究者の間では
夢の数字と考えられていた
衝突型加速器の性能はルミノシティと呼ばれる
パラメタであらわされる
反応の断面積
Y=L 
1秒当たりの
反応の数
ルミノシティ
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単位は
[長さ-2 時間-1]
反応断面積は物理法則で決まっている。高い反応
レートは高いルミノシティによって得られる。
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ルミノシティを表す式は‥‥
両ビームの粒子数
L f
n1n2
4 x y
R
衝突の周波数
ルミノシティをあげるには、
水平、垂直方向のビー
ムのサイズ
● ビームサイズを小さくする
● バンチの数を増やす
● バンチ電流を増やす
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39
KEKB 衝突バンチの様子
平面交差角
1.3度
リングコライダーで世界最
小のビームサイズ
電子5×1010個
陽電子7×1010個
高さ2.3 mm
長さ7 mm
各バンチは1秒間に10万回衝突
各リングに1284バンチずつ蓄積
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40
PEP-II
• KEKB と同じ目的で建設された加速器である
PEP-II が海の向こうの SLAC にある。
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KEKBとPEPIIとの比較(デザイン)
KEKB
PEP II
Feature
Aggressive
Conservative
Luminosity
1×1034/cm2/sec
3×1033/cm2/sec
RF
ARES + SCC
Conventional
Crossing angle
±11 mrad
0 mrad (Convention)
Lattice
Special (2.5 cell)
Conventional
BPM
Conventional
Single pass
Injector
Upgraded Linac
SLC Linac
Cu
Al ante chamber
TiN coating
LER
Vac. chamber
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KEKBとPEPIIとの比較(デザインパラメタ)
KEKB
name of ring
LER
Peak luminosity
[/cm2/sec]
PEP II
HER
LER
1×1034
HER
3×1033
Beam Energy [GeV]
3.5
8.0
3.1
9.0
Ibeam [mA]
2.6
1.1
2.14
0.75
〜 5000
Number of bunches
by* [mm]
10
l [mm]
4
Momentum compaction
RF Voltage [MV]
Beam-Beam parameter
xx/ xy
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1658
15
10
1〜2×10-4
10
30
17.9
0.039/0.052
1.5×10-3
2.4×10-3
9.5
18.5
0.03/0.03
43
ルミノシティ最大化のためのマシンデザイン/技術
世界最高の革新的な加速器設計
– 有限交差角に基づく衝突点配置、特殊超伝導・常伝導電磁
石
– 最大の柔軟性、最小の非線形性を持つ新型ビーム光学系と
それを可能にした高精度電磁石群
– 大電流を安定に加速するARES空洞
– 世界最高蓄積電流をほこる超伝導空洞
– 大電流に耐える超高真空システムとビームパイプ
– 高精度ビーム診断・安定化装置群
– 世界標準EPICSを世界最大規模で実現した制御系
– 陽電子2バンチ入射をも可能にした強力なJ-Linac入射器と
ビーム輸送系
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44
2015/11/7
45
Low-b Optics(byの小さい光学系)
• 衝突点付近の特殊な四極電磁石により極限まで衝突点のβ
関数を絞り込む
• β関数
– リングの平均的な値
• 5~30m
– 衝突点(KEKBデザイン値)
• 水平方向(x*):33cm
• 垂直方向(y*):10mm
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46
今、どこ?
1. Introduction –KEKB とは何か
2. 加速器入門
3. 衝突型加速器とその例としての KEKBと
PEP-II
4. KEKB加速器運転の歴史とその中での進歩
5. KEKBの将来:SuperKEKB計画
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KEKBの歴史
• 1989年: デザイン作業に着手
•
•
•
•
•
•
•
•
•
•
•
•
1994年: 予算通過、建設開始
1995年6月: KEKB デザインレポート完成
1997年9月: 入射器リニアックKEKB用アップグレード完成、運転開始
1998年12月: HERビーム運転開始
1999年1月: LERビーム運転開始
1999年5月: Belle検出器装着
1999年6月: Belleで最初の素粒子反応観測
2001年4月: 当時の世界最高ルミノシティ(3.4×1033cm-2s-1 )に到達(PEP-IIを
越える)
2002年10月: 積分ルミノシティ、100 /fbに到達(世界初)
2003年5月9日: デザインルミノシティ1034cm-2s-1を達成(世界初)
2004年2月: 積分ルミノシティ、200 /fb に到達(世界初)
2004年5月現在: ルミノシティは1.26 ×1034cm-2s-1 で世界記録を更新中
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48
KEKBの歩み
連続入射開始
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49
加速器運転の実際とその経験の蓄積
• ビーム光学系の管理
– 閉軌道、光学パラメータ、チューン
• ビーム不安定現象との戦い
– 強いベータトロン振動の抑制(バンチ フィード
バック)
– 陽電子リングのビームサイズ拡大への対処
• 大電流による障害への対処
– 「強い」真空機器の設計、製作
– ビームの暴走の的確ですばやい対処
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50
Optics測定と補正
beta function
dispersion
Knobs:
■ Local bumps at sextupoles
■ Fudge factors for quads/skews
Works very well !
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XY-coupling 51
Optics補正(beta function補正)
bx/ bx rms 0.296 -> 0.073
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52
マシンチューニング “tool” の例
チューン フィードバック
測定値
セット値
安定な運転に非常に効果的
Diff. is kept
<0.0005
Ref. line
53
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T. Ieiri and Y. Ohnishi, et al.
思わぬ伏兵
• 一般に、電子(陽電子)のリングでは、この
ビームからでる放射光がビームパイプの中の
電子をたたき出す効果がある。
• 陽電子のリングでは、このたたき出された電
子が陽電子ビームの周りに付きまとい、ビー
ムサイズがふとる現象が発見された。これで
は、ルミノシティがおちてしまう‥
• そこで考案されたのがソレノイド巻き
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54
電子雲(electron cloud)
によるビームサイズの増大
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55
NEGポンプのまわりにも
巻いたソレノイドコイル
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56
電子雲対策(ソレノイド磁場)
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57
光干渉計によるビームサイズ測定
各リング
一カ所で測定
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58
光干渉計によるビームサイズ測定
2015/11/7
59
ソレノイドコイル巻きの歴史
Total length of solenoid
preliminary (very rough estimation)
3200
circumference
2800
2400
total drift length
4th
Total length(m)
2000
5th
1600
2nd
3rd
1200
1st
Bz > 20 G
800
400
0
Sep. 00
2015/11/7
Jan. 01
Apr. 01
Sep. 01
Jan. 02
Date
この頃効果が確認される
60
ビームサイズでみるソレノイドの効果
5
2001 July : off
1 train, 1153 bunches,
4 rf bucket spacing
Vertical beam size@IP (micron)
4
2001 July : on
3
2001 De c. : on
2
1
0
2015/11/7
2002 Feb. : on
0
200
400
600
800
1000
LER beam current (mA)
1200
1400
1600
61
ルミノシティへの効果
Effect of solenoid
(after second installation)
15
-2
mA )
sec
-1
10
cm
-2
NEG-bellows section off
(9/M ay/01)
All on
(9/M ay/01)
30
(10
Specific luminosity / bunch
All on
(7/Apr./01)
5
All off
(9/M ay/01)
0
2015/11/7
0
0.1
0.2
0.3
0.4
2
Ib(LER) I b(HER) (mA )
0.5
62
2015/11/7
63
Beam-beam 衝突の効果を最適化
• より良いビームパラメタ(betatron tune等)の選択。
Simulationで探し(tune servey) 実際のマシンで実験する。
• マシンチューニング方法の改善。
• Optics 補正の改善。
• チューニングを行うためのソフトウエア(“tool”)の開発と整備。
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64
積分ルミノシティ向上への努力
• 2バンチ入射
• 連続入射
2015/11/7
65
2バンチ入射
Gun
96.29 ns
10.4 MHz
1
SHB1
SHB2
PB
114 MHz
11
571 MHz 2856 MHz
55
275
First
Buncher
Second
KEKB Ring
SLED
96.29 ns
Linac / e+ Target
508.9 MHz
2856 MHz
Every 49 bucket
275
2015/11/7
66
入射時間
2015/11/7
67
入射時間の短縮
2015/11/7
68
連続入射による効率化
2015/11/7
69
連続入射
• 入射中もデータを取り
続ける。
• 10Hz入射
• 3.5msecのveto
2015/11/7
70
連続入射
従来の運転の様子
• 入射中もデータを取
り続ける(ただし、
3.5msecのveto )
• 10Hz入射
2015/11/7
連続入射の様子
71
連続入射による効率化
• 従来の運転では、入射中にBelle測定器にかかっている
高電圧を一時的に下げる。このため入射の時間が「ロス
タイム」となり、積分ルミノシティを下げることになる。連続
入射を行なえばそのロスタイムをなくす事が出来る。
• 加速器のチューニングパラメーターは、ビーム電流の値
によって変わる。連続入射を行なうと、ビーム電流がほぼ
一定となり、加速器を良い状態で保つことがより容易にな
る。
2015/11/7
72
Best Shift
2015/11/7
73
PEP-II との熾烈な戦い
2015/11/7
74
KEKBとPEP IIの到達点
KEKB
PEP II
Record
Design
Record
Design
12.6×1033
1 ×1034
8.6×1033
3×1033
Integrated luminosity
[/fb]
250
-
200
-
Ibeam LER [A]
1.65
2.6
2.43
2.14
Ibeam HER [A]
1.19
1.1
1.38
0.75
Number of bunches
1184
〜 5000
1561
1635
by* [mm] LER/HER
5.2/7
10/10
11/11
15/30
0.074/0.053
0.052/0.052
0.067/0.046
0.03/0.03
nx/ny LER
45.511/43.553
45.52/45.08
38.52/36.56
32.28/35.18
nx/ny HER
2015/11/7
44.513/41.582
47.52/43.08
24.52/23.62
25.28/24.18
75
Peak luminosity
[/cm2/sec]
xy LER/HER
Daily/weekly/monthly積分ルミノシティ
2015/11/7
76
4年間の不屈の努力のまとめ
–
予想外の困難=「陽電子リングにおける光電子雲不安定性」の克服
•
ソレノイド磁場の半手巻きによる追加、全長2300m
•
ビームパラメータの変更による対応
–
大電流(LER 1.5 A, HER 1.1 A)の蓄積に伴う発熱・放電・破壊との闘い
•
真空チェンバーの発熱、溶解(放射光、ビームエネルギー直撃等)
•
可動コリメーターの破壊(ビームエネルギー直撃、放電、高次モード電磁場等)
•
ベローズ内部の破壊(放射光、放電、高次モード電磁場等)
•
衝突点ベリリウムチェンバーの破損
•
初代Belleシリコンヴァーテックス測定器の損傷(放射光)
–
1日24時間週7日日曜も休日もない連続運転、年間数十週間
•
停止期間は修理と改造で休みなし
2015/11/7
77
今、どこ?
1.
2.
3.
4.
5.
Introduction –KEKB とは何か
加速器入門
KEKB加速器の特徴
KEKBの歴史と現状
KEKBの将来:SuperKEKB計画
2015/11/7
78
KEKB加速器の将来計画における目標
• Bファクトリー実験で用いられているKEKB加速器の最
高ルミノシティー(2004年5月現在)は、
Lpeak = 1.2x1034 cm-2 s-1
• KEKB加速器の将来計画では、さらに高いルミノシ
ティーを目指し2.5x1035 cm-2 s-1を目標とする(約20
倍)。 SuperKEKB計画
• アップグレードの時期は2009年頃を予定。
2015/11/7
79
SuperKEKBの概念図
測定器のアップグレード
8 GeV 陽電子ビーム
4.1 A
新しい衝突点デザイン
Crab空洞
新型ビームパイプとベローズ
RF源の増強
空洞の増強
3.5 GeV 電子ビーム
9.6 A
Cバンド加速ユニット
陽電子ダンピングリング
陽電子源
2015/11/7
80
陽電子・電子衝突型円形加速器の性能
(e+e- circular collider)
過去30年間に達成された
Super B Factory計画
の目指すところ
ルミノシティーの歴史
W+-ボゾン
Z0ボゾン
τレプトン
チャームクオーク
2015/11/7
B中間子
81
超高ルミノシティーへの主要戦略
• SuperKEKB加速器ではKEKB加速器の約20倍のルミノシ
ティーを達成するために、
– ビーム電流を約4倍に増強する。
• 1.6 A (LER) / 1.2 A (HER) → 9.6 A (LER) / 4.1 A (HER)
– βy*関数を約1/2にする。
• βy* = 6 mm → βy* = 3 mm (ビームを絞る)
• バンチ長も合わせて3 mm にする。
– ビーム・ビーム パラメータを約3倍にする。
•
2015/11/7
xy = 0.05 → xy = 0.14
約24倍のゲイン
82
ビーム電流の増強
• 大電流ビームを安定に蓄積できるようにする。
– ビームパワーを補償するためにRFシステムの数を約2倍に増強。
– クライストロン1台:空洞2台からクライストロン1台:空洞1台へ移行
(RFパワーの増強)。
– 空洞のチューニングにより結合バンチ不安定性を軽減。
– 進行方向のバンチフィードバックシステムを装備。
• RFシステムを大電流ビームに耐えられるように改良。
– 高次モード電磁波(HOM)による反射を受け止めるHOM damperの
改良。
– 空洞での高調波の発生を軽減するためにロス・ファクター(k)を小さく
する。(ex. 空洞とビームチェンバーの結合部を滑らかにする等)
PHOM
2015/11/7
I2
 k  T0
nB
ビーム電流
バンチ数
ビームがリング1周に要する時間
83
RF システム
• RFシステムはKEKB加速器のものを
改良。
• 最大バンチ数:5018(現在約1300)
• 最小バンチ間距離:約60 cm(現在そ
の3倍)
• 電流増に対応し機器の拡充
2015/11/7
84
ビーム電流の増強(つづき)
• 大電流ビームを高真空中で保持する。
– 真空チェンバーの改良。アンテ・チェンバーの導入。
• 強力な放射光を受け止める。
• 陽電子ビームに悪影響を及ぼす光電子雲を遮蔽する。
– HOMパワーロスの軽減。真空チェンバーを結合するためのベロー
ズの改良。
• フィンガータイプから櫛型へ。
• 強力なRFシールド。
• ダメージに強い。
– 測定器をビーム・バックグラウンドから守るための可動マスクシステ
ムの改良。
• HOMの発生を軽減するタイプ。
• ビームによるダメージに強い。
– 特殊なHOM吸収体(HOM absorber)を装備。
2015/11/7
85
新型ベローズ
アンテ・チェンバー
ビーム
放射光
HOM吸収体
SiC
可動マスク
Bellows Chamber
Mask Chamber
Bellows Chamber
Beam
Mask Head
2015/11/7
Slot
Wing
Beam Chamber
86
衝突点でビームを絞る
• 衝突点でのβ関数、βx* / βy*を20 cm / 3 mm まで絞る。
• 最終収束系の改良。
30 mrad finite-crossing (有限交差角)
– 最終収束磁石を衝突点に出来る限り近づける。
– 衝突点まわりの特殊四極磁石も衝突点に出来る限り近づける。
x (m)
QC2LP
QC1RE
QC2RE
QCSL QCSR
Belle solenoid axis
8 mrad
22 mrad
e2015/11/7
→
QC1LE
QC2LE
IP
QC2RP
← e+
s (m)
87
高いビーム・ビーム パラメータの追求
• ビーム・ビーム パラメータにはリミットがある。
– 大きくなるにつれて衝突確率は上がるがバンチ不安定性も増す。
ある値を超すとバンチがばらける(ビーム・ビーム リミット)。
• ビーム・ビーム パラメータの見積もりには数値シュミレーションに頼ら
ざるを得ない。
• 衝突するビームに含まれる粒子数は1011個を超えるので、そのままで
はシュミレーションはできない。
モデルを仮定する。
• Weak-Strongモデル
– 一方のビームをガウス分布に固定して、もう片方のビームはマクロ
粒子(〜10万個)で記述する。
• Strong-Strongモデル
– 両方のビームをマクロ粒子(〜10万個)で記述する。
2015/11/7
88
Head-on衝突とfinite-crossing衝突
Weak-Strong
Strong-Strong
half crossing angle
half crossing angle
•
両方のシュミレーションからfinite-crossing衝突では0.05~0.07のビーム・ビーム パラメータ
が得られている。 (Not so difference between 11 and 15 mrad)
•
Head-on衝突 では高いビーム・ビーム パラメータが期待できる。
•
但し、Weak-StrongとStrong-Strong モデルでは結果が約2倍違うが信頼性の高いStrongStrongの方をデザイン パラメータとしている。
•
Crab-crossing衝突は、head-on衝突を再現できるのでCrab空洞は高いビーム・
ビーム パラメータを得るための必須アイテムである。
2015/11/7
89
Crab空洞によるhead-on衝突の実現
電子ビーム
陽電子ビーム
Crab空洞なしの場合
x
有限交差角=30 mrad
衝突点
s
Crab 空洞
• 大電流(〜10A )で使用可能なCrab空洞を開発中。
2015/11/7
90
リングへビームを供給する入射器の改良
• ビームエネルギー交換:光電子雲効果の軽減と入射の
高効率化
8 GeV電子 / 3.5 GeV陽電子→8
GeV陽電子 / 3.5GeV電子
1.
2.
~80 m
Two-bunch
operation
kicker
1. 陽電子ダンピング・リング (1 GeV)
2. Cバンドを用いた陽電子エネルギー8GeV化 (e- LER / e+ HER)
Cバンド:40 MeV/m ⇔ Sバンド:20 MeV/m
2015/11/7
91
その他の主要アイテム
• ビーム光学系の基本コンセプトはKEKB加速器を踏襲。
• ソレノイド磁石
– 陽電子ビームに対する光電子雲の有効的な遮蔽
• 大電流に耐え得る高性能ビーム・モニター
– ビーム位置モニター
– 光干渉計によるエミッタンス測定
• 強力なバンチ・フィードバックシステム
– 横方向バンチ・フィードバックシステム
– 進行方向バンチ・フィードバックシステム
• 高速なビーム・アボートシステム
• 強力な冷却システム
• 大電力の安定供給
• 信頼性の高い制御システム
•
…
2015/11/7
92
主要マシンパラメータ
Parameter
Beam currrent
I
LER
HER
Unit
9.4
4.1
A
Number of bunches
nb
5018
Horizontal beta at IP
Vertical beta at IP
bx
by
20
3
cm
mm
Bunch length
z
3
mm
Emittance
x
24
nm
Coupling
k
1
%
Crossing angle
x
Momentum compaction
RF voltage
Synchrotron tune
Vertical beam-beam
p
Vc
ns
xy
Luminosity
L
30 with crab-crossing
2.7x10
15
0.031
-4
1.8x10
20
0.019
mrad
-4
MV
0.14 (0.28)
2.5 (5)
x10
35
cm -2 s -1
Beam-beam parameter is obtained from simulations: strong-strong (weak-strong)
2015/11/7
93
まとめ
• KEKBルミノシティはデザイン値の1×1034 /cm2/sを超え
た。
– これは設計段階では世界の加速器研究者の間では
夢の数字であると思われていた。
• 現在のKEKBのルミノシティは1.26 ×1034 /cm2/sであり
世界記録を更新中。これはライバルのPEP-II (SLAC)の
ルミノシティより5割近く高い。
– PEP-II が比較的conventionalな設計方針をとったの
に対してKEKBはいくつもの新しい技術を導入してより
高いルミノシティを目指したことが功を奏したのではな
いかと考えられる。
2015/11/7
94
まとめ(続き)
• この成果はKEKBに携わっている多くの人達の5年以上
に渡るたゆまない努力によってもたらされた。
– デザインルミノシティに到達するまでには我々が過去
に経験したことがない様々な困難を克服しなければな
らなかった。
• これらのKEKBの経験をもとに次のステップである
SuperKEKB計画の準備を行っている。
– SuperKEKBではKEKBのデザイン値と比べてビーム電
流で4倍、衝突点でのβyを1/2、ビーム・ビームパラメ
タを3倍にすることにより2.5 ×1035 /cm2/sを目指して
いる。
2015/11/7
95
ルミノシティ向上への努力
ピークルミノシティ
•
•
蓄積電流を増やす
バンチ数を増やす(バンチ間隔を狭める)
アボートギャップを狭める(1ms ->450 ns)
積分ルミノシティ
•
•
2015/11/7
連続入射
2バンチ入射
96
ルミノシティ(Luminosity)
Luminosity*:
Beam-beam tune
shift parameter*:

Beam current:
Luminosity
rewritten:

N N f
L
RL
*
*
4 x y
x x,y 
re
Geometrical
reduction factors (z,
b*, x, x, …)
N b*x,y
2   *x,y

 *x   *y

Rx,y
I  Nef
    *y Ix y RL 
L
1 *  *  
2ere   x  b y Ry 
Luminosityを大きくするにはxと蓄積電流を大きくし
2015/11/7
y,byを小さくすればよい。
97
ピークルミノシティ向上への努力
(1) High beam currents (大蓄積電流)との戦い
·
·
加速器コンポーネント(特に真空関係)の発熱、破損。
Instability
(2) Single beam blowup due to electron cloud
·
電子雲によって引き起こされる陽電子ビームサイズの増大(ビーム
不安定性)の問題
(3) Beam-beam blowup
·
ビーム・ビーム効果相互作用によるビームサイズの増大
モニター類の開発、改良は必要不可欠
2015/11/7
98
KEKBとPEPIIとの比較(IR)
KEKB
LER
Crossing Angle
[mrad]
2015/11/7
HER
PEP II
LER
HER
±11
0
Final focus
quadrupole
Superconducting
Permanent
bx*/ by* [cm]
33/1
Natural
chromaticity
xx/ xy
-72.4/111.5
Other features
・Local
chromaticity
correction (LER)
・Crab cavity (in
planning)
-84.2/105.7
37.5/1.
5
75/3
-51.8/55.1
-35.7/46.7
99
Optics補正(beta function補正)
2015/11/7
bx/ bx rms 0.296 -> 0.073
100
ベータトロンチューンとルミノシティ
10/29/2002
5/9/2003
12/18/2003
25%アップ
2015/11/7
101