相関係数解析 - 超高層大気長期変動の全球地上ネットワーク観測・研究

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Transcript 相関係数解析 - 超高層大気長期変動の全球地上ネットワーク観測・研究

大気環境変動の統計解析システムの
開発に関する研究
修士論文公聴会
2013/2/7
濵口 良太1, 2
1情報学研究科
通信情報システム専攻 地球大気計測分野
2生存圏研究所 大気圏精測診断分野
研究背景
地球大気圏:
自然界の様々な物理・光化学現象に加え、人為起源の影響が
複雑に相互作用して長期・短期変動が起こっている
大気環境変動の
メカニズム解明には
様々なデータを組み
合わせた総合的な
解析が必要
研究背景
日本の主な大学・研究機関が世界に展開している大気観測ネットワーク
• 観測データは各機関(東北大、名古屋
大、京都大、九州大、極地研)ごとに独
自に管理・公開されている
• 個別分野の専門家が活用している
• しかし、データの特性が詳細に示され
ていないことが多く、他分野の研究者
には利用が困難である
総合的な解析ができるデータ利用基盤を整えるた
め、上記5機関が共同で大学間連携プロジェクト:
IUGONET(Inter-university Upper atmosphere
Global Observation NETwork)を実施(2009~)
IUGONET Project –分野横断研究の促進• 観測データの属性、観測機器等を要約した情報(メタデータ)を作成
• メタデータ共有システムを開発(下図:バーチャル観測所)
• データ解析ソフトウェア:UDAS (IUGONET Data Analysis Software )を開発
バーチャル情報拠
点による連携強化
他の地球科学分野
へ展開
国内他機関・大学
海外研究者
衛星、数値モデル
データへの拡張
名大・STE研
九大・
ICSWSE
XML
東北大・
PPARC
XML
超高層大気科学
バーチャル観測所
京大・理・
附属天文台
XML
XML
XML
XML
極地研
メタデータDB
XML
観測DB
(+解析ソフト)
京大・生存研
京大・理・地磁気センター
研究目的
解析ソフトウェア(UDAS)
・ データファイルを所在
情報やデータ形式
(.txt .cdf 等)を意識
することなく、Webを
介してダウンロード
プロット例(上図:信楽MUレーダーで観測された
高度2-20kmの風速、下図:信楽自動気象観測
装置で取得された地表気温)
・ 複数の時系列データ
の可視化
・ 平滑化、フーリエ変換
等の基礎解析機能有り
それぞれのデータを比較、
あるいは高度な解析をする
ためのツールが組み込ま
れていない
時間 →
研究目的
統計検定を含むデータ比較・
特性解析パッケージを開発
研究目的(まとめ)
IUGONET
メタデータ
GUI
共有
システム
ロード
分野横断研究の
ための、データ
利用基盤の構築
解析
ソフトウェア
データ解析
• 2次元描画
• 統計解析
• 特性解析
データ共有だけ
でなく、利用しや
すい環境を整備
UDASに未実装な
機能を追加し、
IUGONETに貢献
目次
• 研究背景と目的
– 研究背景
– 研究目的
• 統計解析システムに含まれる機能
–
–
–
–
機能一覧
① 平均値検定の詳細
② S変換解析の詳細
③ トレンド検定の詳細
• 観測データに対する統計解析システムの適用
–
–
–
–
観測データの詳細
解析機能適用① (コヒーレンス解析)
解析機能適用② (S変換解析)
解析機能適用③ (相関係数解析)
統計解析システムの機能内容
機能一覧
ユーザー側が使用データに合わせ、用意された機能を選択する
2データ系列に対して
⇒
平均値検定
[2データの分布の平均値が等しいかを検定]
⇒
相関係数解析
[相互相関係数の解析・無相関検定]
⇒
コヒーレンス解析
[周波数スペクトルに対するコヒーレンス・位相]
1データ系列に対して
⇒
S(Stockwell)変換解析
[周波数変化と振幅変調の解析]
通常のフーリエ変換では扱うことが難しい非定常な変動現象を捉
えるために地震分野で開発された解析手法 [Stockwell 1996]
⇒
トレンド検定
[上昇(下降)傾向の有無を検定]
回帰直線に依らないトレンド検定法も付加した解析手法
(注) 統計解析に先立ち、欠損デ-タの線形補間を行う
統計解析システムの機能内容 (① 平均値検定)
平均値検定
2データの分布の平均値が等しいかを検定
2データの分布
の平均値が等
しいか検定
共に正規
分布である
Welch検定
データ1
検定結果
データ2
正規性
検定
2データをそれ
ぞれ正規分布
かどうかを検定
少なくとも一方が
正規分布ではない
マンホイットニー
U検定
統計解析システムの機能内容 (② S変換解析)
S変換解析 (時系列データに対して周波数変化と振幅変調を計算する解析)
20mHzの振幅変調を抽出
S変換を行った結果
複数の周波数成分を含むデータ
振幅
4
周波数が時間ととも
周波数が時間変化する成分
に変化している様子
が捉えられる
実際の振幅変調
+
S変換より抽出された振幅変調
BB 振幅が変化する成分
0
-4
0
200
400
S変換よって抽出された振幅変調は、実際に入
れた振幅変調とほぼ合致している。
20mHzの成分が振
800
1000 [s]
幅変調している様子
が捉えられる
600
時間 [s]
0
200
400
600
800
1000 [s]
統計解析システムの機能内容 (③ トレンド検定)
トレンド検定
データ値に順位 T1 ,, Tn を付け、それを用いて表されるDの値をもとに傾向性を判定する
D  (T1  1) 2  (T2  2) 2    (Tn  n) 2
Dはデータが単調増加のとき、最小値0を取り、単調減少のときに最大値をとる
このトレンド検定が効果的な例(外れ値を含む微小増加データ)
回帰直線(青)は正の傾きを示してい
るが,その信頼区間は負値も含んで
いるため、その結果のみではトレンド
の有無を結論できない
青:回帰直線
赤:傾きの信頼区間
Time
しかし順位を基準に判定するトレンド
検定は、上昇トレンドを判別可能
目次
• 研究背景と目的
– 研究背景
– 研究目的
• 統計解析システムに含まれる機能
–
–
–
–
機能一覧
① 平均値検定の説明
② S変換解析の説明
③ トレンド検定の説明
• 観測データに対する統計解析システムの適用
–
–
–
–
観測データの詳細
解析機能適用① (コヒーレンス解析)
解析機能適用② (S変換解析)
解析機能適用③ (相関係数解析)
実観測データへの統計解析システムの適用
流星レーダーの位置関係(インドネシアのKoto TabangとBiak)
・ 2観測点ともにほぼ赤道上にあり、経度差は約36度
・ 観測システムは同一
• 地球大気は東西方向に対してほ
・ 高度70-110kmの風速を観測
ぼ一様であり、経度方向に離れた
2点間で似た現象が観測されると
期待される
• しかし局地的な変動が加わること
による差異も生じうるので、とても
興味深いデータ対である
流星レーダー
Koto Tabang
(2002/11-)
南緯:0.203
東経:100.318
★
★
流星レーダー
Biak (2011/5-)
南緯:1.175
東経:136.102
実観測データへの統計解析システムの適用
2011/10/1からの200日間(両観測点で長期データ欠損がない期間)に高度90kmで
観測された東西風データを比較した
⇒ 周波数領域での特性を調べるためにコヒーレンス解析を実行
Ktb
Koto
KotoTabangとBiakの東西風のスペクトルとコヒーレンスとフェーズ
TabangとBiakの東西風 (2011/10/1からの200日間 高度90km)
1day
1day
1/2day
6.5days
6.5days
Bik
6.5days
1/2day
1day
1/2day
コヒーレンスの高い周波数成分の
振幅の変調を調べるためにS変換
解析を実行
高度90kmの東西風に対するS変換結果
Ktb
時間経過とともに同じ
周波数であっても振幅
が変化していることが
確認できる
6.5days
拡大
Bik
6.5days
拡大
コヒーレンスが高い周
期成分は両観測点と
も比較的強い振幅を
持っている
高度90kmの東西風に対するS変換結果
Ktb
高コヒーレンスである周期成分の振幅
変調に対する相関を調べるため相関
係数解析を高度別・周波数別に実行
1day
1/2day
Bik
相関係数:-0.38
1day
1/2day
高度別・周波数別の振幅変調に対する相関係数
3つの相関が高い
領域を確認
相関係数:0.93
まとめ
解析ソフトウェアUDAS上にはない統計解析システムを開発
機能
⇒
⇒
⇒
⇒
⇒
平均値検定
相関係数解析
コヒーレンス解析
S変換解析
トレンド検定
[ 2データの分布の平均値が等しいかを検定]
[無相関検定を含む相互相関解析]
[周波数スペクトルに対するコヒーレンス・フェーズ]
[各周波数成分の振幅変調解析]
[上昇(下降)傾向の有無を検定]
統計解析システムを流星レーダーデータに適用
⇒ ・ 風速データの周波数特性を知るためにコヒーレンス解析機能を適用
・ より詳細に周波数特性を知るためにS変換解析機能を適用
・ 高度別・周波数別の周期成分の振幅変調に相関係数解析機能を適用
⇒
解析の結果、東西風「高度84km-周期13日」,「高度90km-周期6.5日」,
「高度96km-周期18日」の周期変動の振幅変調が2観測点で類似した傾
向を示しているという結論を得られた
以上の適用のように様々な解析が容易にできるデータ利用基盤を構
築することで、大気環境に限らず、あらゆる分野の変動解明に貢献で
きると期待される
ご静聴ありがとうございました
UDAS開発におけるIUGONET各機関の役割・活動
共通の役割
自機関が持つ観測データをダウンロードし、変数に読み込む関数群の作成
京都大学 花山・飛騨天文台
• 太陽観測データフォーマットを読み込むライブラリーの作成
• 太陽画像2次元プロットツールの開発
京都大学 生存圏研究所
• GUIの開発
• 統計解析ツールの開発
• 科学研究への利用促進
京都大学 地磁気センター
• UDASチュートリアルムービーの作成
• Javaクイックルックツールの開発
東北大学
• IDL Virtual Machine上で動くUDASの開発
• Javaクイックルックツールの開発
名古屋大学
• メタデータ共有システムとの連携機能開発
• レーダー2次元プロットツールの開発
九州大学
• メタデータ共有システムとの連携機能開発
極地研
• UDAS開発の全体取りまとめ
• UCバークレーのソフトウェア開発チームとの連携窓口役
UDAS開発におけるIUGONET各機関の役割・活動
自機関が持つ観測データをダウンロードし、
変数に読み込む関数群の作成
1a 1b 1c 2 3 4 5
2次元プロットツールの開発
1b 2
メタデータ共有システムとの連携機能開発
24
1c 3
Javaクイックルックツールの開発
統計解析ツールの開発
1a
GUIの開発
1a
科学研究への利用促進
1a
UDASチュートリアルムービーの作成
1a 京大 生存圏研究所
1b 京大 花山・飛騨天文台
1c 京大 地磁気センター
2 名古屋大学
3 東北大学
4 九州大学
5 極地研究所
1c
太陽観測データフォーマットを読み込むライブラリーの作成
1b
UCバークレーのソフトウェア開発チームとの連携
5
統計検定・解析パッケージの実装機能
トレンド検定
データ値に順位 T1 ,, Tn を付け、それを用いて表されるDの値をもとに傾向性を判定する
D  (T1  1) 2  (T2  2) 2    (Tn  n) 2
Dはデータが単調増加のとき、最小値0を取り、単調減少のときに最大値をとる
E=(n^3-n)/6
V=n^2(n+1)^2(n-1)/36
Z=(D-E)/sqrt(V)
研究背景
高
度
太陽望遠鏡観測
電
離
大
気
太陽圏
太陽風域
太陽風
電波望遠鏡
電波観測
磁気圏
プラズマ圏
電離圏
中
性
大
気
太陽望遠鏡観測
熱圏
中間圏
グローバル
地磁気ネットワーク観測
電離圏レーダ
南極域
SDレーダ
オーロラ観測
地磁気観測
光学観測
地磁気
MF/流星 レーダ
成層圏
赤道域
MSTレーダ
MFレーダ
流星 レーダ
高緯度
IS & SDレーダ
光学観測
中緯度
光学観測
地磁気 ISレーダ
ライダ
北極域
ISレーダ
オーロラ
地磁気
MF/流星
対流圏
WDC 収集・算出データ
南極
極地研の装置
中低緯度
九州大の装置
観測所地磁気データ・地磁気活動度指数
赤道
京都大の装置
中低緯度
東北大の装置
北極
名古屋大の装置
統計検定・解析パッケージの実装機能
Interpolation
・指定時刻データを切り出し、等間隔に時間軸を決定
・決定された時間軸に対して、データ1及び2のデータを宛てていく
・時間に対応した点がない場合は線形補間によって補う
[nT]
60
Data2(地磁気データ)
[m/s]
100
0
0
-40
1957
1970
1990
2010
-100
2003
指定時刻データを切り出し
[nT]
30
[m/s]
60
0
0
-30
2003/1
Data2(風速データ)
2004/1
-80
2003/1
2006
2008
2010
切り出し後、線形補間
2004/1
Welch検定
Mann-Whitney のU検定
両データを合わせて順位をつける
:データ1の順位合計
コヒーレンス検定
二乗コヒーレンスの信頼限界
90km
Meridional Wind
Dominant Period Auto Correlation Coefficient
[day]
of Amplitude Modulation
1
-0.37
6.5
0.78
17
0.45
0.5
0.34
1
-0.15
2
0.83
3.3
0.58
cross-corre
lag
0.35(1606)
0.80(-87)
0.78(-132)
0.42(-1020)
0.85(-57)
0.63(150)