1 - 京都大学大学院理学研究科附属天文台

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Mars-One計画に見る
人類の火星移住に伴う倫理的問題
高橋卓也(*1)・石田新司(*2)・大野邦久(*1)
1:京都大学理学研究科 2:京都大学エネルギー科学研究科
Introduction:
現在、幾つかの火星移住計画が実現に向け動いている。
今回、その中でも最も先進的な計画の一つであるMars-One計画を取り上げ、
その実現に当たって、私たちが直面する倫理的問題について検討を加えた。
惑星探査計画の歴史
人類は惑星探査を進めてきた
• 月を周回・探査する衛星の打ち上げ
• 金星・水星・火星・彗星の衛星探査
• 月への有人飛行
→次の大きな目標は有人による火星探査
→有人による惑星移住も視野に
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Mars-Oneのロードマップ
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2013
2015
2016
2020
2022
2024
2025
2026
宇宙飛行士の選定開始
宇宙飛行士の訓練を開始
通信衛星や居住技術の実証試験
火星探索機の打ち上げ
居住用の貨物の打ち上げ
最初の宇宙飛行士を火星へ打ち上げ
火星への到着
第二陣の宇宙飛行士の火星打ち上げ
Mars-One(計画)とは(概略)
• 2025年までに火星に人間の居住基地を作り、
そこに永住させようという計画
– 宇宙飛行士は地球に帰らない前提のもの
• 2013年に宇宙飛行士を公募で募集し、20万
人もの応募者を集めた。
– その中から、20人を選り抜き、4人を2025年に火
星に送ろうとしている。
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住居とロケット
居住スペースとなるモジュール。この中で宇宙飛行士は生活する
宇宙飛行士が火星へと向かうロケット。先端部分が居住モジュールになる
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Mars-One HPにあるFAQ
Mars-One HPのFAQにある
倫理についての記載1
1. 人類の進歩と夢の実現にとって偉大な一歩となる
2. 基本的に火星への片道切符、しかし、いつかは帰れ
る技術が出来るはず
3. 旅を出来る限り安全にするため、考えうる限りの危険
を警戒
3 入念にトレーニングし、出発直前までいつでもドロップ
アウト可能
4. 火星での移住者のQOLを可能な限り高める
・E-mailその他で地球と交信可能に
・可能な限り多数の探検、調査の機会を提供
・施設の増築能力を可能な限り準備
Mars One ホームページ内に宇宙飛行士応募者用のFAQページがある
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Mars-One計画に見る
人類の火星移住に伴う倫理的問題
Mars-One HPのFAQにある
倫理についての記載2
5. 少なくとも2年毎に4人の飛行士を移住させる
6. 片道切符は極端に聞こえるかも知れない。だが、
オーストラリアに移住した我々の祖先と丁度同じ。
ボートで戻った移住者のように、火星についた数
年後にロケットを作って地球に帰って来れるかも知
れない。
7. 以上すべてを考慮して、人々を火星に移住する
ことを許す事は、倫理的に見て良心的
(conscientious)と考える。
参照:http://www.mars-one.com/faq/health-andethics/is-this-ethical
問題点
• One Way(火星への片道切符)でいいのか?
– アポロ計画では人員の地球帰還まで計画を立てて
いた
• 資金調達の問題
– 資金が途中で集まらなくなったらどうするの
• Heroism(ヒロイズム)を過剰に鼓舞している
– 参加者に躁的な認識を誘導しているのでは?
• ミッションが失敗した場合、責任は誰が負うのか
– 社会全体が鬱状態に陥るのでは?
説明責任を果たしていないのでは?
(HPで不誠実な情報提供)
本当に倫理的にみて良心的?
文章を反対に見れば、制限が多い
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アポロ計画とMars-Oneの比較
アポロ計画
計画の周到さ
地球帰還まで考慮
Mars-One
火星への片道
MITチームのMars-Oneシミュレーショ
ン
• MITのチームがシミュレーションした結果、こ
の計画には問題があるとレポートを公表
– 技術的要素が十分に整っていない
• 居住カプセル(モジュール)の安全性
スポンサー
アメリカの国家予算
民間スポンサー
継続性
国家の威信がかかり、 予算の枯渇で終了
一定の責任あり?
してしまう?
– スペアパーツや堅牢性に疑問
• 予定している自給自足農業に必要な必須要素(酸素・
窒素・水)に問題
– 地球から送った方が安全、
– 補給物資(ロケット)が足りない
• Mars-Oneは6機でよいとしているが、15機は必要
• 2年に一度しか飛ばせない。物資欠乏時に対処不可
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オーディエンスへの質問
Q:あなたはこの計画について賛成?反対?その理由は?
参考文献等
Mars-One HP: http://www.mars-one.com/
MIT NEWS: http://newsoffice.mit.edu/2014/technical-feasibility-mars-one-1014
Conclusion:
Mars-One計画の倫理的問題について検討した。
実現に当たっては、健康面、資金面での数多くの課題とともに、
そこから派生する倫理上の課題に取り組む必要がある。
Mars-One計画への宇宙飛行士の応募ページでは、提示される情報の偏りと誘導的説明が多数見受けられる。
中立的情報を元に、宇宙飛行士本人が判断を下せる体勢の実現が、倫理問題解決の必要案件ではないかと考えた。