日本の宇宙開発について

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日本の宇宙開発について
異文化コミュニケーション論講座
1166549c 斉藤 真樹帆
目次
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
宇宙開発とは
年間予算にしめる割合
その他費用
日本の現状
その他問題
衛星の大型化と小型衛星の可能性
スーパー301条
なぜ産業として成立していないのか
宇宙開発の目指すもの
得られたもの
賛成派と反対派
まとめ
論点
参考文献
宇宙開発とは
 各種衛星の運用
 気象、放送、通信、地球観測、測位・測地、IGS(情報
収集)、
 日本は特に大型衛星を運用
 そのためのロケットの開発、打ち上げ
 国際宇宙ステーションでの実験、物資補給、実験棟き
ぼうの運用
 惑星探査
 はやぶさ、火星探査機のぞみ、金星探査機あかつき
 有人宇宙飛行
宇宙開発の目標
 「安全で豊かな社会」を実現するために積極的に
宇宙航空技術を利用したい
 JAXAの長期ビジョン
 自然災害、環境問題に役立つシステムの構築
 惑星、小惑星探査の高度化と月利用のための技術研
究
 安定的輸送のための信頼性の向上、有人宇宙活動関
連の研究
 宇宙産業の基幹産業化
政府の考え
 1安心安全で豊かな国民社会の実現
 通信・放送、気象予報、農業漁業、温暖化ガスの測定、新産業の創出
 2アジアを中心とした宇宙外交
 災害情報の発信、遠隔医療、技術協力
 321世紀の戦略的産業の育成
 太陽電池、探査ロボット、新素材等大きな波及効果、遠隔医療、遠隔教育、
宇宙旅行
 4安全保障への貢献
 情報収集衛星、早期警戒衛星
 5環境保全への貢献
 宇宙太陽光発電によるクリーンエネルギーの確保
 6先端的研究開発による技術立国の確立、子どもに夢を与え理科離れの
防止
 宇宙科学衛星、宇宙ステーション
向けて」経済産業省
ー「宇宙産業の発展へ
年間予算に占める割合
 2012年度の宇宙関係予算は約3000億円
 「エコカー減税・補助金」3500億円とほぼ同じ
 このままの予算規模だと、5年間で1兆2000億円の
不足
 JAXAの事業費は1800億円
 予算全体に占める割合は0.4%
 2012年度予算は90兆3339億円
 震災復興関連が主で過去最大規模
 2011年度予算では前年度比8.6%減の3099億円
その他費用
 国際宇宙ステーションへの供出金年間400億円
 はやぶさ2の開発費 年30億円(前年同額)
 はやぶさの開発費130億円
 陸域観測技術衛星(ALOS-2)61→36億円の減少
 H-ⅡAまでのロケット開発費用3900億円
 アリアンⅤの開発費用は80億ユーロ(約8560億円)
 ただしこれらの開発費用は他国に比べ、かなり少ない
 衛星も費用が限られており、一つの衛星で多くの実験を行っ
ている。故障しても実験が続けられるならつづけ、失敗して
も他の用途に利用
日本の宇宙開発の現状
 アメリカ依存
 通信分野で使われるすべての静止衛星が米国製
 カーナビ産業(売上高3000億円)の基本的システムは米国のGPS
を利用
 肝心なところはブラックボックス
 アメリカによる情報操作が行われる可能性も
→独自システム(ex.準天頂衛星システムプロジェクト)の運用、開
発の必要性
 官需依存86%
 アメリカ90%、ヨーロッパ47%
 国民への周知不足-JAXAiの廃止、
 予算不足
 偵察衛星とミサイル防衛費が科学分野予算から流用されて、技術開
発を圧迫
 人材の減少-若手技術者の減少
 種子島の限界
その他の問題
 新開発の凍結
 若手技術者へのノウハウの継承が困難に
 行政的にバラバラ―様々な省にまたがる宇宙開発
 政治の理解も不足
 統一された目標の不在
 産業として成立していない
衛星の大型化
政府系衛星
一つの衛星に様々なミッション→衛星の大型化
→一つ問題が起こる→他のミッションへも影響
1機数百億円、5年以上の開発期間
→全体のスケジュールの崩れ→遅れた衛星ミッ
産業化が困難ションの目的、意義の減少


 通信・放送・観測・科学などに限定
⇕
中型、小型衛星への切り替え→サポーター不足、
 コストの割に貢献性が少ない
宇宙予算の減少、開発費不足
⇓
悪循環
小型衛星の可能性
 用途;地球観測、宇宙科学ほか
 予算;大学レベルで可能
 開発期間:2年
 メリット
 様々な層(中小企業、大学、個人)が参加可能
 新たなアイデアが生まれやすい
スーパー301条
 1989年アメリカが市場開放を迫った
 スーパー・コンピューター、木材、人工衛星
 日本が国内で使用する実用衛星も、国際競争入札に
 低コスト生産だったアメリカ製に対し、少生産・
高コストだった日本製は惨敗
 国産技術に致命的な打撃
 国内の実用衛星を運ぶためのロケットは、顧客を
失った
 ひまわり5号の後継機は米国製の完成品を購入
進まない民間への委譲
 宇宙利用産業の世界市場規模は、約2898億ドル(約2
3兆7600億円)
 年間14%で成長
 主に伸び率が大きいのはサービス、データ分野
 日本の産業規模およそ7兆円
 カーナビ産業は3000億円、
 IHIエアロスペース、三菱重工業、川崎重工業、日
本電気・NEC東芝スペースシステム、三菱電機
 メーカーの利益率は1%以下
 ほぼ0.1%に近い
 過去8年間で50社以上が、宇宙機器産業から撤退
 就業人口も減少
なぜ産業として成立していないの
か
 これまでの宇宙予算は、大半が一品限りの
研究衛星の開発に費やされていた
 研究に偏重した技術体系のため、「適度な
性能、短納期、低コスト」が実現できてい
ない
 先行投資(大型衛星、ロケット)の難しさ
 官需の仕組み
 かかったコストに比例した利益→コストダ
ウンにつながらない→計画の大型化
今後予想される市場展開
H-ⅡAロケット
 2007年度13号機から民間企業である三菱重工へ移
管
 打ち上げ作業も含まれる
 打ち上げ費用を70-80億円に抑えて、受注を獲得
するため、射場の点検費、修繕費、ロケットの飛
行データの提供費など、1回当たり20-30億円の
公的負担を国へ要請
 静止衛星、大型衛星などH-ⅡAの増産につなが
るような本格的な商業打ち上げは未定
まいど1号
 東大阪の中小企業が集まって、小型衛星を打ち上げ
た?
 しかし、実際はJAXAのサポートがほとんど
→JAXAがまいど1号を作るのを、東大阪の中
小企業が手伝った
 独立行政法人NEDOが開発費7億円を支出
 千葉工業大学の「観太くん」,東北大学の「スプラ
イト観測衛星」,香川大学の「STARS」
 中小企業はほとんどの小型衛星に関わっている
 回路基板、金属加工など特化分野に高い技術力
宇宙開発で期待されるもの
 宇宙は極限状態
 無重力、真空、放射線の存在
 耐熱、軽量化、電力制限などの必要条件が厳しい
 結果として高度な技術が生まれる
 例:1500℃の熱に耐えられる素材、1000万光年先にある銀河
を撮影できるカメラ
 高度で信頼性に富んでいる技術
 基礎研究の必要性
 例:高温、高圧に耐えうる素材の開発
→市場で活用されて、利益やメリットを生む
宇宙開発で得られた実例①
 東日本大震災での災害支援
 陸域観測技術衛星「だいち」は被災地を約400シーン
撮影し、その画像を各関係機関に提供
 超高速インターネット衛星「きずな」や技術試験衛
星Ⅷ型「きく8号」の通信回線を利用して、岩手県や
宮城県の避難所などでインターネットに接続できる
通信環境を提供
 準天頂衛星「みちびき」の衛星測位
宇宙開発で得られた実例②
 高速鉄道の先頭車両設計
→ロケット打ち上げ時の爆風伝播シミュレーションプログラム
 ダイヤカット缶
→宇宙工学研究上の構造設計技術
→製造コストのカット
 気象予報、GPSカーナビ、テレビ放送
 デジカメ、太陽電池パネル、パソコン、ケータイ、
 エアーバック、レトルト技術、粉末コーヒー、紙おむつ、メガネ
フレーム、トランジスタ半導体電子技術
 テンピュール
→もともとロケット打ち上げや帰還時に、飛行士の衝撃を軽減さ
せるための素材
 ジャイロシステム(移動体の姿勢変化を検出するセンサー)-デ
ジカメの手振れ防止
 加齢臭、アンモニア臭を消すワイシャツ
 放射性物質の測定用カメラ
→もとは宇宙望遠鏡用のガンマ線カメラ
宇宙開発で得られた実例③
オリジナル
区分
技術分野
応用事例
スピンオフ分野
無停電電源装置、交流出力可能な蓄電源
環境・エネルギー 宇宙科学
教材用太陽光熱複合発電装置
環境・エネルギー
その他
レジャー・教育
有機廃棄物再資源化処理装置
環境・エネルギー 有人
断熱塗料
環境・エネルギー ロケット
教材用スターリングエンジンキット
環境・エネルギー
その他
レジャー・教育
燃焼除害装置
環境・エネルギー
航空
機械
医療等むけの精密ガンマ線センサ
医療・健康
宇宙科学
ライセンス
(2009年度)
ライセンス
(2008年
度)
ライセンス
(2006年
度)
ライセンス
(2005年
度)
ライセンス
(2004年
度)
共有成果
ライセンス
(2006年
視覚障害者用点図ディスプレイ
医療・健康
通信
共有成果
GPS式波浪計測システム
安全
航空
ライセンス
(2005年度)
航空機や車両向けのCFRP検査技術
安全
機械
部品
ライセンス
(2004年度)
地上用監視カメラ
安全
情報
安全
建築用・橋梁用積層ゴム支承
安全
ロケット 企業技術
自動車用部品など
耐火スクリーン
安全
安全
ロケット 企業技術
ロケット 企業技術
ネットワークセキュリティ
ライセンス
(2004年度)
地球観測 企業技術
管理
流体・解析用六面体格子生成の自動化・高速化プ
情報
ログラム
航空
ライセンス
(2007年度)
超小型ネットワークコンピュータ
宇宙科学
ライセンス
(2004年度)
管理
ライセンス
(2004年度)
情報
ユビキタス社会における組込みソフト開発向けソ
情報
リューション
フォトルミネッセンス測定装置
機械
宇宙科学
噴霧・スプレー等粒子の構造解析装置
機械
航空
浄水装置
機械
有人
GPS補強型慣性航法装置
輸送
航空
サッカーボール型地球儀ペーパークラフト
レジャー・教
宇宙科学
育
アマチュア天文家向け天体検出ソフト
ミウラ折の紙地図
野球スパイク、腕時計
シェーバー、光ファイバ
製缶技術
レジャー・教
宇宙科学
育
レジャー・教
育
宇宙科学
その他
レジャー・教
育
その他
その他
通信
その他
その他
その他
宇宙科学
ライセンス
(2010年度)
ライセンス
(2005年度)
ライセンス
(2005年度)
ライセンス
(2007年度)
ライセンス
(2006年度)
ライセンス
(2004年度)
公開情報
公開情報
公開情報
公開情報
これから事業展開が期待されるも
の







建築用等の塗布式断熱材、電子機器用の断熱材
→ロケットの先端部の断熱材技術
自動車用ブレーキ
→固体ロケットノズル材料のカーボン複合材技術
新薬、新素材の開発
宇宙太陽発電システム
リアルタイムの気象予報
宇宙開発への賛否(賛成派)




資源がない日本は技術で世界をけん引するべき
航空宇宙技術は国防の面から重要
中国やインドに遅れをとってはいけない
多くの国民に夢を与える点に意義がある
最先端の技術開発は資源の乏しい日本が、製造業まで海外に依存し居ている今
こそ、最重要課題であり、宇宙開発にしても、そのもののみならず、周辺、裾
野の技術開発、発展を考えると、その効果は計り知れない物が見えてくるはず
です
宇宙開発への賛否(反対派)
 地球上の問題を解決してから行きなさい
 経済格差、外交問題、環境問題、雇用
 費用対効果が見込めるのか
 未来には必要だが、現在では不必要
 これまで生まれた技術は、いずれ宇宙開発でなくて
も生まれるものだったのでは
まとめ
 財政危機の昨今、宇宙開発など科学・テクノロ
ジー分野への逆風が吹き続けている
→官需へ依存する仕組みに限界
 宇宙開発自体も、衛星の大型化や産業化していな
いことなど、大幅な見直しが必要
 しかし宇宙開発への過程において、結果的に地上
での生活の役に立つ技術も生まれている
提言
 大型衛星(技術研究)と小型衛星(産業利用)の役
割分担を進める
 安全保障と技術開発の予算の分離
 軍事的利用が困難である以上、重要となるのは情報
量
 現在は偵察衛星とミサイル防衛の範囲のみで、軍事利
用が認められている
 民間への委託を進めて、産業として成立する仕組み
を整える
→例:
 広報活動の活性化
 現役宇宙飛行士の説明
論点
日本は宇宙開
発を続けるべ
きか
続けるべき
予算問題は?
その他問題点
の改善
続けるべきで
ない
国際競争力の
低下?
民間へ委譲を
進めるべき?
参考文献
 的川泰宣「図解 宇宙ビジネス」アスキー・メ
ディアワークス
 河井克行、五代富文ほか「国家としての宇宙戦略
論」誠文堂新光社、2006年
 的川泰宣「宇宙ビジネス;入門から業界動向まで
ひと目でわかる」角川グループパブリッシング、
2011年
 青木節子「日本の宇宙戦略」慶応義塾大学出版会、
2006年