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崩壊点検出器 石川 明正 (東北大学) 20140721 ILC夏の合宿2014@関金温泉 1 物理と崩壊点検出器 • 崩壊点検出器の役割 – ジェットフレーバーの同定 • ジェットが b クォーク起源か、c クォーク起源か、u,d,sクォークまたはグルーオン起源か 区別する – 高運動量領域での運動量分解能の改善 – 低運動量の飛跡再構成 • どんな物理に重要? – 結合定数測定 • ヒッグスがダイジェットに崩壊する確率は70%ぐらい – bb : 57.7% – cc : 2.9% – gg : 8.6% • こいつらを分離しなくては結合定数は求まらない – ヒッグス自己結合などのレアプロセスの測定 • e+e- ZHH (qq)(bb)(bb), e+e- nnHH nn (bb)(bb) • 生成断面積は O(100) ab 程度 1ab-1 ためても O(100) events しか生成されない。 • bクォークを含まない膨大な背景事象O(100)fbを抑制する 20140721 ILC夏の合宿2014@関金温泉 2 どうやってジェットフレーバーを区別する? • b,c ハドロンは O(1) ps 程度の短い寿命を持つので、一次反応点から少し 飛んで (B中間子だと ct = 450μm)崩壊する なぜb,cクォークが ps 程度の寿命を持つか? ミューオンの寿命は 2μs – ほぼビームパイプの中で崩壊する。 – 崩壊は bcs のようなチェイン。 • 衝突点から離れた崩壊点を探す • 反応点の数 s – 3b, 2c, 1udsg • 離れた崩壊点での質量 – 重い b,c – B中間子 5.279GeV – D中間子 1.869GeV c b 崩壊点を数μmで測定する事が重要 20140721 e- IP ILC夏の合宿2014@関金温泉 e+ 3 シリコン半導体検出器 • 位置分解能が良いのと、高精細である長所を生かし、ビーム による背景事象の多い衝突点近傍に設置し、崩壊点を測定 – 良い分解能 O(1)μm • ガス検出器は良くて50μm – 崩壊点の位置精度は衝突点に近いほど上がる • センサー形状の違いによる二種類の半導体検出器 – ピクセル検出器 • センサー 5~30mm角の正方形(場合によっては長方形も) – ストリップ検出器 • センサー 長さ数cm 幅~80mm(ストリップ=紐) • ピクセル検出器の方が高精細な為、衝突点近傍に設置できる – 衝突点近傍は桁違いに背景事象が多い – 放射線耐性が要求される 20140721 ILC夏の合宿2014@関金温泉 4 原理 • 荷電粒子が通過するとシリコン中に電子とホールペアを作る – 8000電子ホールペア/100μm (1ペア/3.64eV) • ガス検出器だと大体 O(100)電子イオンペア/cm (1ペア/O(100)eV) • シリコン中には電場(逆バイアス)がかかり、生成された電子 とホールが電極に向かってドリフトする • 電極から電子・ホールを検出する。 • 電子回路で増幅し読み出す 20140721 ILC夏の合宿2014@関金温泉 5 ストリップ検出器 • LEP, HERA, Belle, Babar などの実験ではストリップ検出器を崩 壊点検出器に用いていました。 – 厚さ 320μmと厚い Double Sided Silicon Sensor • しかし高輝度の実験LHC、Belle2、ILCなどでは占有率が問題 になる為、崩壊点から離れたところに使われます • 崩壊点検出器は占有率を抑えられるピクセル検出器に取っ て代わられました 20140721 6 ILC夏の合宿2014@関金温泉 ILCでの崩壊点検出器への要求 • Impact Parameter 分解能 – sb = 5 10/psin3/2 θ[mm] – 第一項:位置分解能 – 第二項:クーロン多重散乱 s=ab/psin3/2q LEP SLC LHC RHIC ILC a [mm] 25 8 12 13 5 b [mm GeV/c] 70 33 70 19 10 • 位置分解能 – 3μm 以下 ペアバックグラウンドの量 • 最内層の半径 – R=1.6cm for B=3.5T 電子 • 物質量(放射長) – 0.15%/layer • 占有率 – A few % 以下 20140721 衝突点 ILC夏の合宿2014@関金温泉 ここ以下じゃ無いと背景事象 が多くて機能しない 7 ILC崩壊点検出器の構造 • 6レイヤー – ダブレットが3つ • 最内層ダブレットのどちらかのレイヤーが鳴ればよい崩壊点分解能を得られる • 近接したダブレットによりヒットのコンビネーションが減る tracking が楽 • 半径 1.6cm から6.0cmをカバー – 出来る限り反応点に近く – ストリップ検出器の占有率が高い領域をカバー 20140721 ILC夏の合宿2014@関金温泉 8 ILCでのトレイン構造と読み出し • ILCのトレイン構造は特殊 – 1300程度のバンチが 1ms のトレインを形成 – トレインが 200ms 毎に衝突 – 間の199msは電子ビームも陽電子ビームも通過しない • 二つの読み出し方式 – トレイン中1msに電荷をため、トレイン間199msに読み出す • ピクセルサイズ < 10um • 読み出しの最中にビームにより高周波ノイズが乗らない – トレイン中1ms の間に10回~100回程度読み出す • ピクセルサイズ 20um 程度 • 190ms 程度は電源を切る事が可能であり、電力消費が少ない 554 ns 1300-2600 20140721 ILC夏の合宿2014@関金温泉 9 代表的なテクノロジー • トレイン間読み出し – Choronopixel (米) – FPCCD (日) • トレイン中読み出し – MIMOSA/AROM (仏) – DEPFET (独+西) 他にもありますが、それほどアクティブに開発してない(ように思える) 将来的にさらに先進的なテクノロジーが出てくる可能性あり 崩壊点検出器は最後にインストールする検出器なのでまだまだ 開発する時間は残っている 20140721 ILC夏の合宿2014@関金温泉 10 Chronopixel • バンチ時間情報をピクセル内部のメモリに記録 – バイナリー読み出し(ヒットがあったか無いかの情報、電荷情報は無し) – メモリはそれぞれのピクセルに2つある • トレイン間に読み出す • ピクセルサイズ 10μm角 – 45nmプロセス – 分解能 10/sqrt(12) = 2.9μm – 現在 90nmプロセスで25um角 • 12.5μm角(分解能3.6μm)までしか出来ないかもと予想されてる 20140721 ILC夏の合宿2014@関金温泉 11 DEPFET(DEPleted Field Effective Transistor) • 全空乏型電界効果トランジスタ – 20μm角 • ビームテストでの分解能3.5μm • 50μmの厚さだと charge sharing が十分でない – PチャンネルのFET – N+ をバルクに作り gate の下に電荷が集 まるようにし、トランジスターで電流を増幅 • g~=400pA/e- – ローリングシャッター読み出し ILC夏の合宿2014@関金温泉 – Belle II 実験で採用 20140721 12 MIMOSA/AROM • CMOSテクノロジー – 0.35μmプロセス – 二つのレイヤー(位置分解能と読み出し時間) • 16μm×16μm – 分解能3μm、読み出し時間50μs • 16μm×64μm – 分解能6μm、読み出し時間10μs – ローリングシャッター読み出し 読み出し回路 • センサーの端に読み出し回路をおいて、ピクセルを順次行毎に読み出す • 1トレインの間に10回から100回程度読み出す。 – STAR実験に採用 20140721 ILC夏の合宿2014@関金温泉 13 FPCCD 20140721 ILC夏の合宿2014@関金温泉 14 FPCCD • Fine Pixel CCD (高精細CCD) – 読み出しはトレイン間 • 電荷を1トレイン分ためる – CCDなので読み出しは端にしかついていない – バケツリレーのように電荷を転送し読み出す • ピクセル内のポテンシャル井戸を電圧で制御し転送 – アナログ読み出し – ピクセルサイズ 5μm角 • 仮にデジタルで読み出しても 1.4μm の分解能 • 3~6レイヤーは10μm角 – 多ピクセルなので占有率が低い – 有感層の厚さ15μm • 全体の厚さ50μm – 全空乏化 – 読み出し回路 • 読み出し速度 >10Mpixel/sec • ノイズ < 30電子 • 電力消費 < 6mW/ch (総電力~35W) 20140721 ILC夏の合宿2014@関金温泉 東北大学 森 15 FPCCDの特徴的な点 • 利点 – 位置分解能が他のテクノロジーより良い • ジェットフレーバーの同定が良いはず – トレイン間読み出しなのでビーム通過の際の高周波ノイズを受けない • SLD で問題になりました – トレイン間に電源をオフにしないため、ローレンツ力による振動が無い • 欠点 – 中性子耐性が他のテクノロジーより弱い • 電荷転送効率が悪化するがILC程度の中性子量であれば十分(要検証) – 斜め入射だと電子ホールペアの数が少ない • 5um 400e• 低雑音読み出し回路が必要 – 電荷転送効率は放射線により悪化ため-40度に冷やすクライオスタットが必要 20140721 • 0.17eV や0.42eV にトラップ準位が形成 • -40度まで冷やすことにより回避できる ILC夏の合宿2014@関金温泉 • 物質量が増える 16 開発されたFPCCDと読み出し回路 • FPCCD 12×12μ𝑚2 9.6×9.6μ𝑚2 – 現在6μm角まで開発 • 6μm角の動作検証中 – 目標の5μmまであともう一息 – 厚さ50μmの目標を達成 – 長さ6cmの大型チップを開発 8×8μ𝑚2 6×6μ𝑚2 • 読み出し回路 – 第二次試作 • 速度 ○ • ノイズ ○ • 消費電力 × – 第三次試作 • 速度 ○ • ノイズ ○ • 消費電力 ○ 20140721 ILC夏の合宿2014@関金温泉 17 全空乏化センサーの開発 • 全空乏化CCDの開発 – 全空乏化していると電荷の広がりを抑えられる – 背面照射タイプのCCDに線状にフォーカスしたレーザーを照射 – 信号の拡がりを観測して全空乏化を確認 Back-illumination Back-illumination Nondepleted Depleted Depleted Gate Projection 20140721 ILC夏の合宿2014@関金温泉 18 薄型センサーの開発 • センサーの薄型化 – 機械的グラインド(研削)による薄型化 – ステルスダイシング(レーザーによって シリコンの内部を)によってウェハーから 切り出す – 50mmの薄型化チップを製作 – 暗電流の増加は認められなかった 60mmx9.7mmx50mm 20140721 ILC夏の合宿2014@関金温泉 19 東北大学 伊藤 電荷転送効率の測定 • 実機では電荷を2万回程度転送する。 – 電荷転送効率が 99.999% 程度無いと転送後の電荷が小さくなりSN が悪化 • Fe55 からの 5.9keV のX線を照射し転送効率を測定 ペデスタル シグナル • 電荷転送効率(CTE : charge transfer efficiency) • 電荷転送非効率(CTI : charge transfer inefficiency) – CTI = 1-CTE 20140721 ILC夏の合宿2014@関金温泉 20 東北大学 伊藤 電荷転送効率の測定結果 • Fe55のレートがそれほど高くないので16x16ピクセル単位で 解析する。 – 転送回数が1回の時と501回の時では電荷が CTE500 倍 – 転送効率は水平と垂直で異なる 水平方向 : (1.844±0.547)×10−6 垂直方向 : (4.660±2.135)×10−6 ・ ・ ・ ・・・・ 読み出し回路 20140721 512 pixels ILC夏の合宿2014@関金温泉 21 東北大学 伊藤 et al 中性子照射試験@東北大学CYRIC • セットアップ – 70MeVの陽子を6mm厚のLiターゲットに照射 – ほぼモノクロ(67MeV)の中性子が発生 • ILC環境での約半年分の中性子を照射 Plastic scintillator 1.25m 0.65m 0.10m Neutron beam line Li target 20140721 CCD set ILC夏の合宿2014@関金温泉 Liquid scintillator 22 東北大学 伊藤 中性子照射前後のCTI • 照射後でも十分小さなCTIである。 Before irradiation test After irradiation test 水平方向: (1.844±0.547)×10−6 水平方向 : (6.392±0.626)×10−6 垂直方向: (4.660±2.135)×10−6 垂直方向 : (2.834±0.247)×10−5 20140721 ILC夏の合宿2014@関金温泉 23 FPCCDとジェットフレーバー同定 20140721 ILC夏の合宿2014@関金温泉 24 東北大学(現東大) 森 ジェットフレーバー同定w/oペアBG 20140721 ILC夏の合宿2014@関金温泉 25 東北大学(現東大) 森 ジェットフレーバー同定w/ペアBG 20140721 ILC夏の合宿2014@関金温泉 26 東北大学(現東大) 森 ペアBG 20140721 ILC夏の合宿2014@関金温泉 27 東北大学(現東大) 森 ペアバックグラウンド抑制 20140721 ILC夏の合宿2014@関金温泉 28 東北大学(現東大) 森 ジェットフレーバー同定w/ペア抑制 20140721 ILC夏の合宿2014@関金温泉 29 今後の課題 • センサー – 5μm角 • 性能評価 – ハドロンビームテストによる • 位置分化能の測定 • 電荷転送効率の測定 – 中性子ビームテストによる • 電荷転送効率の測定 • 暗電流の測定 • 低物質量構造体 – 薄くて軽いラダー 20140721 ILC夏の合宿2014@関金温泉 30 まとめ • 崩壊点検出器はジェットフレーバーの同定のために必須 • 崩壊点検出器は半導体ピクセル検出器を用いる – テクノロジーは多数 – 将来的に新たなテクノロジーが開発されるかも • FPCCDは最も位置分解能が良いテクノロジー • 現在開発中で実験開始5年ぐらい前までにテクノロジーを完 成させ、製作する。 • ジェットフレーバー同定を改善するには時間分解能の良い検 出器とダブレットをとる? 20140721 ILC夏の合宿2014@関金温泉 31