第6回(債務不履行(2) 損害賠償の範囲と相当因果関係)

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Transcript 第6回(債務不履行(2) 損害賠償の範囲と相当因果関係)

債権総論講義
第6回
明治学院大学法学部教授
加賀山茂
2014/5/13
Lecture on Obligation 2014
1
債権総論の位置づけ
成立
Ⅲ
債
権
債権
総論
債権
各論
契約
総論
契約
事務管理
契約
各論
効力
解除
不当利得
不法行為
2014/5/13
Lecture on Obligation 2014
2
債権総論の内容 →位置づけ
債権の目的
対内的効力
債権の効力
対外的効力
債
権
総
論
可分・不可分債権
多数当事者関係
債権の譲渡
履行強制
損害賠償
債権者代位権
詐害行為取消権
連帯債務
保証
弁済
相殺
債権の消滅
更改
免除
混同
2014/5/13
Lecture on Obligation 2014
3
金銭(預金)債権の時代
情報化時代の優等生
物権から債権へ
物から情報へ
 モノやサービスの価値は,物で
 債権とは,方向と量と時間の要素で
あるカネによって評価されてきた。
表現される情報(ベクトル)である。
 物の使用・収益・換価・処分に関  最も信頼されている債権は,預金債
する物権の全盛の時代であった。
権(家計:800兆円,企業200兆円)で
あり,その実体は,銀行口座への
 しかし,現代は,物権も,人と人
入・出金記帳という情報に過ぎない。
との関係(物権的請求権,優先
弁済権など)に還元されるように  情報であるから,電子的に安価かつ
なってきている。
即時に送・受信することができる。
 現代は,物権(権利の帰属)を前
提としつつも,人と人との関係で
ある債権が中心を占める時代で
ある。
2014/5/13
 振込み(預金債権の移転)は,相殺
という技術を使うことによって,危険
を伴う現金・有価証券の輸送を最小
限に抑えることができる。
Lecture on Obligation 2014
4
今回の学習目標
 債務不履行とは何か
 債務不履行の分類
 債務不履行の効果
 強制履行
 伝統的三分類
 履行期基準の二分類
 契約目的基準の二分類
 立証責任基準の二分類
 民法414条
 損害賠償
 損害賠償の範囲
 従来の考え方
 通常損害
 特別損害
 英米法の考え方
 確率論に基づく因果関係
 債務不履行の要件
 不履行
 帰責事由
 立証責任の分配法則
 結果債務と手段の債務
 因果関係
 事実的因果関係
 相当因果関係
2014/5/13
 解除の要件
 従来の考え方
 新しい考え方
参考文献
Lecture on Obligation 2014
5
債務不履行の三分類
(伝統的見解)
債
務
不
履
行
履行遅滞
本旨に
従った履
行がない
こと
履行不能
(原始的・後発的)
不完全履行
(瑕疵ある履行)
三分類は,漏れが生じることが多い。
この場合には,履行拒絶が漏れている。
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6
債務不履行の二分類
(履行期に履行があるかどうか?)
履行遅滞
債
務
不
履
行
本旨に
従った
履行が
ない
履行期に
履行がない
履行拒絶
履行不能
履行期に
履行がある
不完全履行
(瑕疵ある履行)
基準が明確なので,実務的には,この区分が一番役に立つ。
2014/5/13
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7
債務不履行の二分類
(契約目的を達成できるかどうか)
履行遅滞
(催告,定期行為)
債
務
不
履
行
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契約目的
不達成
(解除できる)
本旨に
従った履
行がない
履行不能
不完全履行
契約目的
達成
(損害賠償のみ)
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履行遅滞
(遅延損害)
不完全履行
(代金減額相当)
8
債務不履行の二分類
(帰責事由の立証責任による区別)
債
務
不
履
行
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結果債務
債務者に
無過失の立証責任
帰責事由の
立証責任
手段債務
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債権者に
過失の立証責任
9
立証責任を理解するための例題
答えを示さないので,各自で挑戦してみよう!
基本問題
応用問題
 Aから,Bは1万円を借りた。期
限が来たので,Aから返還を
請求されている。Bにとって,
証明が楽な反論はどれか(根
拠条文を示すこと)。
 Aは,人を言い負かすのが趣味
である。話の成り行きで,次のよ
うな議論をふっかけられた。Bは,
どう答えるのがよいか。
 えっ!麻雀の掛け金の借りか
よ。払わなくていいんだよ。
 えっ!とっくに返したじゃない
か。忘れっぽい人だな。
 えっ!10年前の話かよ。もう,
時効だよ。
 えっ!君からお金なんか借り
ていないぞ。
2014/5/13
 B: 予習していて,加賀山教授の
『契約法講義』の要件事実論の
箇所を読んだら,分かりやすくて
よかったよ。
 A: あの加賀山・契約法は最悪だ
ろう。どこが分かりやすいんだ
よ?
 B: えっ,…。
Lecture on Obligation 2014
10
立証責任の分配法則
法律上の推定があるかどうかがすべて
タイトル
一般論
具体例
理由
①慣性の法則
②形式から実質
③部分から全体
④政策的考慮
2014/5/13
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11
立証責任の分配法則
法律上の推定があるかどうかがすべて
タイトル
①慣性の法則
一般論
静止している状態
は継続する。
具体例
契約の成立は?
理由
契約の存在は推定され
ない。
②形式から実質
③部分から全体
④政策的考慮
2014/5/13
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12
立証責任の分配法則
法律上の推定があるかどうかがすべて
タイトル
一般論
静止している状態
は継続する。
①慣性の法則
運動している状態
は継続する。
具体例
理由
契約の成立は?
契約の存在は推定され
ない。
契約の消滅は?
契約が成立すると存在
が推定される。消滅は
推定されない。
②形式から実質
③部分から全体
④政策的考慮
2014/5/13
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13
立証責任の分配法則
法律上の推定があるかどうかがすべて
タイトル
一般論
静止している状態
は継続する。
①慣性の法則
②形式から実質
運動している状態
は継続する。
具体例
理由
契約の成立は?
契約の存在は推定され
ない。
契約の消滅は?
契約が成立すると存在
が推定される。消滅は
推定されない。
意思表示の合致が
契約の有効性
あれば,内容も確
は?
かとみる
意思表示の合致がある
と,意思の存在が推定
される。
③部分から全体
④政策的考慮
2014/5/13
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立証責任の分配法則
法律上の推定があるかどうかがすべて
タイトル
一般論
静止している状態
は継続する。
①慣性の法則
運動している状態
は継続する。
具体例
理由
契約の成立は?
契約の存在は推定され
ない。
契約の消滅は?
契約が成立すると存在
が推定される。消滅は
推定されない。
②形式から実質
意思表示の合致が
契約の有効性
あれば,内容も確
は?
かとみる
意思表示の合致がある
と,意思の存在が推定
される。
③部分から全体
複数の部分から全
体が推定される。
前後両時点の占有があ
れば,占有の継続が推
定される。
占有継続は?
④政策的考慮
2014/5/13
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立証責任の分配法則
法律上の推定があるかどうかがすべて
タイトル
一般論
静止している状態
は継続する。
①慣性の法則
運動している状態
は継続する。
具体例
理由
契約の成立は?
契約の存在は推定され
ない。
契約の消滅は?
契約が成立すると存在
が推定される。消滅は
推定されない。
②形式から実質
意思表示の合致が
契約の有効性
あれば,内容も確
は?
かとみる
意思表示の合致がある
と,意思の存在が推定
される。
③部分から全体
複数の部分から全
体が推定される。
占有継続は?
前後両時点の占有があ
れば,占有の継続が推
定される。
④政策的考慮
証明窮乏から弱者
を保護する
善意占有は?
占有があれば,善意が
推定される。
2014/5/13
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(実習)立証責任の意味(問題)→解答
← 秦,曽川
過失あり
(原告立証)
真偽不明
無過失
(被告立証)
過失責任
(手段の債務)
中間責任
(結果債務)
無過失責任
○:原告勝訴 ×:原告敗訴
2014/5/13
Lecture on Obligation 2014
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(実習)立証責任の意味(解答)→問題
← 秦,曽川
過失責任
(手段の債務)
過失あり
(原告立証)
真偽不明
無過失
(被告立証)
○
×
×
中間責任
(結果債務)
無過失責任
○:原告勝訴 ×:原告敗訴
2014/5/13
Lecture on Obligation 2014
18
(実習)立証責任の意味(解答)→問題
← 秦,曽川
過失あり
(原告立証)
真偽不明
無過失
(被告立証)
過失責任
(手段の債務)
○
×
×
中間責任
(結果債務)
○
○
×
無過失責任
○:原告勝訴 ×:原告敗訴
2014/5/13
Lecture on Obligation 2014
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(実習)立証責任の意味(解答)→問題
← 秦,曽川
過失あり
(原告立証)
真偽不明
無過失
(被告立証)
過失責任
(手段の債務)
○
×
×
中間責任
(結果債務)
○
○
×
無過失責任
○
○
○
○:原告勝訴 ×:原告敗訴
2014/5/13
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結果債務と手段の債務とで異なる
立証責任の分配(問題)→解答
証明主題
結果債務
手段の債務
債権者
債権者
?
?
因果関係
債権者
債権者
損害の発生
債権者
債権者
債務不履行
帰責事由
(債務者の故意・過失)
2014/5/13
Lecture on Obligation 2014
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結果債務と手段の債務とで異なる
立証責任の分配(解答)→問題
立証責任
結果債務
手段の債務
債務不履行
債権者
債権者
帰責事由
(債務者の故意・過失)
債務者
債権者
因果関係
債権者
債権者
損害の発生
債権者
債権者
2014/5/13
Lecture on Obligation 2014
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結果債務と手段の債務の区別による
難解な判例の解読
 最一判昭41・9・8民集20巻7号1325頁
 他人の権利を目的とする売買の売主が,その責に帰すべき事
由によって,該権利を取得してこれを買主に移転することがで
きない場合には,〔悪意の〕買主は,売主に対し,民法561条但
書の適用上,担保責任としての損害賠償の請求ができない。
 そのときでも,なお債務不履行一般の規定〔民法415条〕に従っ
て,損害賠償の請求をすることができるものと解するのが相当
である。
 難解な点
 「特別法(民法561条)は,一般法(民法415条)を破る(排
除する)」のではないのか?
2014/5/13
Lecture on Obligation 2014
23
民法561条と415条との関係 ←田丸
一般法:債務不履行責任(民法414条以下)
損害賠償責任の原則(民法415条)
特別法:売主の担保責任(民法560条以下)
他人物売買
買主善意:売主の結果債務(財産権移転の結果達成)
 →民法561条が適用される
買主悪意:売主の手段債務(財産権移転のための最
善の努力義務)
 →民法415条が適用される。
2014/5/13
Lecture on Obligation 2014
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事実的因果関係と相当因果関係
事実的因果関係
相当因果関係
 あれなければこれなし
 sine qua non
 A ⇒ B の代わりに ¬A ⇒ ¬B を使う。
 具体例
 先天性奇形症の子が出産したのが,
サリドマイド剤の服用によるものかどう
か証明が困難であった。
 しかし,サリドマイド剤が販売禁止に
なってからは,この先天的奇形症の子
は一人も生まれていない。
 したがって,サリドマイド剤の服用と先
天性奇形症の子の出産との間には,
事実的因果関係がある。
2014/5/13
 原因事象が,結果事象に対して,そ
の確率を高めたか?
 具体例
 ある夫婦の子が,何人もの人を殺害
した。夫婦がその子を出産したことと,
それらの殺人との間に因果関係が
あるか?
 馭者が道を間違えて,左折したとこ
ろ,落雷に遭い,乗客が死亡した。
馭者の過失と乗客の死亡との間に
因果関係があるか?
 相当因果関係は,一般的には,事実
的因果関係の範囲を狭める作用が
ある。
Lecture on Obligation 2014
25
事実的因果関係が破綻する例
 複数原因がある場合には,事実的因果関係は破綻する。
 1.致死量10mgの毒物をY1,Y2,Y3のそれぞれが4mgずつ
ワイングラスに注いで,Xを殺害した。
 Y1,Y2,Y3の行為とXの死亡との間に事実的因果関係はあるか?
 2.致死量10mgの毒物をY1,Y2,Y3のそれぞれが5mgずつ
ワイングラスに注いで,Xを殺害した。
 Y1,Y2,Y3の行為とXの死亡との間に事実的因果関係はあるか?
 3.致死量10mgの毒物をY1,Y2,Y3のそれぞれが10mgず
つワイングラスに注いで,Xを殺害した。
 Y1,Y2,Y3の行為とXの死亡との間に事実的因果関係はあるか?
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Lecture on Obligation 2014
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事実的因果関係の破綻の解消?
Y1
Y2
Y3
関
連
共
同
共
同
行
為
事実的因果関係
不
真
正
連
帯
Y1
部分的因果関係(相当因果関係)
Y1
Y2
部分的因果関係(相当因果関係)
Y2
Y3
部分的因果関係(相当因果関係)
Y3
2014/5/13
Lecture on Obligation 2014
連
帯
債
務
一
つ
の
結
果
一
つ
の
結
果
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民法416条の意味(通説)
損
害
賠
償
の
範
囲
2014/5/13
必然・当然
(確率が高い)
通常事情による
通常損害
蓋然
(蓋然性がある)
特別事情による
通常損害
偶然
(確率が低い)
特別損害
(相当因果関係なし)
Lecture on Obligation 2014
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確率論に基づく因果関係
ベイズの定理の応用
事前確率
p(Cn)
条件付確率
p(R|Cn)
原因(C1)
0.5
R
(結果)
原因(C2)
0.5
2014/5/13
事後確率
p(Cn|R)
p(C1|R)
≒0.86
p(C2|R)
≒0.14
Lecture on Obligation 2014
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債務不履行の救済手段
債
務
不
履
行
2014/5/13
損害賠償
帰責事由が
あるとき
解除
契約目的が
達成できないとき
強制履行
原則から
例外へ
Lecture on Obligation 2014
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解除の要件(旧)→新,総論
履行
遅滞
解
除
の
要
件
履行
不能
不完全
履行
2014/5/13
相当期間を定めた催告の後
(民法541条)
定期行為の場合は催告不要
(民法542条)
帰責事由があるとき
(民法543条)
帰責事由がないとき
(民法534条~)
危険
負担
契約目的を達成できないとき
(民法561~566~572条)
Lecture on Obligation 2014
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解除の要件(新)→旧,総論
履行
遅滞
解
除
の
要
件
2014/5/13
契
約
目
的
不
達
成
履行
不能
不完全
履行
相当期間を定めた催告の後
(民法541条)
定期行為の場合は催告不要
(民法542条)
帰責事由があるとき
(民法543条)
帰責事由がないとき
(民法534条~)→解除へ
契約目的を達成できないとき
(民法561~566~572条)
Lecture on Obligation 2014
32
危険負担の解除への吸収→総論
債務者主義=解除可能,債権者主義=解除権消滅
危険負担
(危険負担の原則)
 第536条(債務者の危険負担
等)
吸収
解除 ←契約書
(無過失責任へと改正される予定)
第543条(履行不能による解除権)
 履行の全部又は一部が不能となったときは,債権者は,
 ①前2条に規定する場合を除き,
契約の解除をすることができる。ただし,その債務の不
当事者双方の責めに帰するこ
履行が債務者の責めに帰することができない事由によ
とができない事由によって債務
るものであるときは,この限りでない。 ←改正の予定
を履行することができなくなった
第548条(解除権者の行為等による解除権の消滅)
ときは,債務者は,反対給付を
受ける権利を有しない。
 ①解除権を有する者が自己の行為若しくは過失に
 ②債権者の責めに帰すべき事
よって契約の目的物を著しく損傷し,若しくは返還す
由によって債務を履行すること
ることができなくなったとき,又は加工若しくは改造に
ができなくなったときは,債務者
よってこれを他の種類の物に変えたときは,解除権は,
は,反対給付を受ける権利を
消滅する。
失わない。この場合において,
 ②契約の目的物が解除権を有する者の行為又は過
自己の債務を免れたことによっ
失によらないで滅失し,又は損傷したときは,解除権
て利益を得たときは,これを債
権者に償還しなければならない。
は,消滅しない。
2014/5/13
Lecture on Obligation 2014
33
危険負担の実務(売買契約書)
→債権総論
 危険負担の実務 → 債権者主義から債務者主義へ
 不動産売買契約書ひな形 第9条(危険負担)
 ①本契約締結後,本件土地建物の引渡しの完了前に,売主又は買
主のいずれかの故意又は過失によらないで本件土地建物の全部又
は一部が火災,流出,陥没その他により滅失又は毀損したとき,又
は公用徴収,建築制限,道路編入等の負担が課せられたときは,そ
の損失は全て売主の負担とし,買主は売主に対して売買代金の減
額又は原状回復のために生ずる損害の賠償を請求することができる
ものとする。
 ②前項に定める滅失又は毀損により買主が本契約締結の目的が達
することができないときは,買主はその旨を売主に書面でもって通告
することにより本契約を解除することができるものとし,この場合,売
主はすでに受取った手附金を全額買主に返還するものとする。
2014/5/13
Lecture on Obligation 2014
34
参考文献
 民法の入門書(DVD付)
 加賀山茂『民法入門・担保法革命』信山社(2013)
 民法(財産法)全体を理解する上での助っ人
 我妻栄=有泉亨『コンメンタール民法』〔第3版〕日本評論社(2013)
 金子=新堂=平井編『法律学小辞典』有斐閣(2008)
 契約法全体についての概説書
 加賀山茂『契約法講義』信山社(2009)
 債権総論の優れた教科書
 平井宜雄『債権総論』 〔第2版〕弘文堂(1994)
 債務不履行に関する文献
 平井宜雄『損害賠償法の理論』東京大学出版会(1971)
 浜上則雄「損害賠償における「保証理論」と「部分的因果関係の理論」(1)(2・完)民商
66巻4号(1972)3-33頁, 66巻5号35-65頁
 ベイズの定理の応用
 浜上則雄=加賀山茂「法医学者による血液型に基づく証明方法に対する批判と提案」
(上)(下)ジュリ650号(1977)95-101頁,ジュリ651号118-130頁
2014/5/13
Lecture on Obligation 2014
35
アイラック(IRAC)
-法律家の思考方法-
IRAC(アイラック)で考え,論証する
論点・事実の発見
Issue
法的分析 Rules
の能力
ルールの発見
Application ルールの適用
A
Argument
法的議論
の能力 Conclusion
2014/5/13
原告・被告の議論
具体的な結論
Lecture on Obligation 2014
36
論文の書き方
アイラック(IRAC)で書く
問題提起
本論
結論
2014/5/13
• I:重要な問題を発見したことの経緯を述べる
• R:その問題を解決する視点と仮説を提示する
• A:問題をいくつかのブロックへと分割する
• A:ブロックごとに問題を展開しすべてを解明する
• C:問題を展開して得られた答えを1つにまとめる
• I:残された問題に対する展望を行う
Lecture on Obligation 2014
37
レポート課題
 債権の「目的」と「目的物」の違いについて,以
下の項目についてレポート(A4版で4頁以内)を
作成し,第7回目の講義(5月20日)までに提出
すること。なお,レポート課題の講評は11回目
の講義(6月17日)で行う。
 1.民法399条~419条までの範囲で,現代語
化以前の民法の規定(旧条文)と現代語化され
た民法の規定(現行条文)を対比してみると,
旧条文が「債権の目的」と「債権の目的物」とを
間違って規定していた箇所がある。その間違い
の箇所をすべて指摘し,現代語化に際して,ど
のように改正されたのか,対照表を作成して明
らかにしなさい。
 3.物権については,目的と目的
物の区別について改正がなされ
ていない。
例えば,民法343条(質権の目
的)の質権の「目的」と,民法344
条(質権の設定)の「目的物」とは,
同じものを示しているはずである。
それにもかかわらず,民法の起
草者が,あえて,両者を「目的」と
「目的物」とに区別した理由は何
か。民法362条(権利質の目的
等)の「目的」が何かを検討するこ
とを通じて,考察しなさい。
 2.旧条文が,「目的物」を誤って「目的」として
いた箇所について,「目的物」と修正せずに,現
行条文が,あえて,「目的」を維持しながら,誤
りを訂正した箇所がある。その理由は何か。
 4.債権や物権の「目的」と「目的
物」との違いについて,自らの見
解(私見)をIRACで簡潔に表現し
なさい。
2014/5/13
Lecture on Obligation 2014
38