07/23 - 跡見学園

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ミクロ経済学
(14)デフレと景気
丹野忠晋
跡見学園女子大学マネジメント学部
2012年7月23日
復習1

マクロ経済学は経済全体の動きを分析する

その目的:高い経済成長,低い失業率,低い
インフレ率
国内総生産 GDP
Gross domestic product

2012/7/23
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2
復習2







ある国内での一定期間に市場向けに生産され
たすべての最終的な財とサービスの総額
消費 consumption
C
投資 investment
I
政府購入 government
G
輸出 export
X
輸入 import
M
GDP=C + I + G + X – M
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ミクロ経済学 14
3
今日学ぶこと
1.
2.
3.
4.
5.
6.
GDPの三面等価
デフレ
物価指数
GDPデフレータ
実質GDP
景気
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ミクロ経済学 14
4
復習1






インセンティブは人々の行動を変化させる
日本で豊富な財があるのは競争があるから
完全競争市場では経済主体は価格を操作す
る事ができない
多くの人々が交換を行う場を市場と呼ぶ
市場に組み込まれたインセンティブによっ
て希少な資源は有効活用される
3つの主要な市場:生産物市場,労働市場,
資本市場
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5
復習2






モデルは経済の重要な点に焦点を当てる
市場がうまくいかない場合に政府が機能
国防,警察,司法が所有権を保護する
政府は個人が負担しきれないリスクも負担
する
政府財政の中で社会保障費が一番大きい
政府が上手く機能しないときは市場の良さ
を見直す事が必要
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6
復習3

経済学では経済の重要な要因を調べるために
モデルを使う

個々の市場を分析するのがミクロ経済学

日本経済全体のような分析がマクロ経済学

経済分析には冷静な頭脳をもって、しかし
暖かい心情も必要
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7
復習4

機会集合とは利用可能な選択肢の集まり

予算制約はお金によって機会集合を制約

2財の選択の機会集合は予算制約線,横軸,
縦軸の内部.境界線を含む

予算制約線の傾きはトレードオフを表す

その傾きの絶対値は価格比と等しい

時間制約は時間によって機会集合を制約

生産の機会集合は生産可能性曲線で表す
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8
真央の予算制約線
うまい棒の本数
60
ブラックサンダーの個数
うまい棒の本数
0
4
7
10
14
17
20
60
48
39
30
18
9
0
予算制約線
30
0
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10
ブラックサン
ダーの個数
20
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9
真央の機会集合
うまい棒の本数
60
機会集合は横軸,縦軸,予算
制約線で囲まれた領域である.
ただし,その境界線を含む.
真央の機会集合
予算制約線
0
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ブラックサン
ダーの個数
20
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10
真央の予算制約線の傾き
うまい棒の本数
タテの変化
傾き=
60
ヨコの変化
•点(0,60)から点 (20,0)への変化
•タテの変化=0-60=-60
•ヨコの変化=20-0=20
-60
傾き=
= -3
20
予算制約線
0
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ブラックサン
ダーの個数
20
ミクロ経済学 14
11
GDP年率4.1%増 2012年1~3
月期、3期連続プラス
朝日新聞 2012年05月17日夕刊
内閣府が17日発表した2012年1~3月期の国
内総生産(GDP)の1次速報は、物価変動の影
響を除いた実質(季節調整済み)で前期(11年
10~12月期)と比べて1・0%増、1年続い
た場合の年率換算では4・1%増だった。プラス
成長は11年7~9月期以来、3四半期連続にな
る。(中略) 同時に発表された11年度のGDPは
実質では511兆1010億円となり、前年度よ
り0・01%減。名目では469兆9897億円
の1・9%減で、ともに2年ぶりのマイナス成長
となった。
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12
ミクロ経済学 14
三面等価




1.
2.
3.
イチローがうまい棒を生産 【生産】
うまい棒を真央が購入→代金支払い 【支出】
イチローの所得 【所得】
GDPはこの三つの側面が常に等しくなることを
三面等価という
支出
生産(付加価値)
所得
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支出アプローチ
日本国における財の供給=需要
 GDP+輸入=消費+投資+政府購入+輸出
 GDP=消費+投資+政府購入+輸出-輸入
 GDP=消費+投資+政府購入+純輸出

消費
投資
政府購入
純輸出
国内総生産(支出側)
282
71
118
-4
468
2011年の名目GDP (単位兆円)
 値を切り捨てしたため合計は等しくない
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14
付加価値アプローチ,生産面








生産された物は多くの段階を経て最終的な購入主
体へ到達する
原材料・部品供給企業,メーカー,流通業者
各生産段階の付加価値を財の流れに沿って合計
企業の付加価値=収入-中間財費用
支出と生産は同じになることを確かめる
【例】パナソニックは20000円の費用でデジカ
メを作った
流通業者のヨドバシカメラに25000円で販売
ヨドバシカメラは消費者に30000円で売る
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中間にヨドバシカメラから三面等価
部品供給企
業の利益
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パナソニック
の利益
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ヨドバシの利益
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付加価値アプローチ

付加価値=部品供給企業の利益+パナソニックの
利益+ヨドバシカメラの利益

付加価値=20000+5000+5000=30000

3万円の付加価値は消費者の支出額3万円に等しい

各企業の付加価値=企業収入-中間財の費用

パナソニックの付加価値=25000-2000

GDP=全企業の付加価値の合計
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17
付加価値で測る

どちらも消費者は30000円を支払っている
→GDPは30000円

重複を避けるために付加価値で計算する
1.
パナソニック=5000円,ヨドバシ=5000円
2.
パナソニック=10000円

これに最初の費用20000円を加えると30000円

中間業者が増えてもGDPは変化しない
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産業別GDP構成比
2010年名目GDP構成比(単位%)
総務省 統計局 http://www.stat.go.jp/data/sekai/03.htm

四捨五入のため合計は100にならない
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19
所得アプローチ






生産された物の売上は誰かの所得になる
付加価値は貢献度に応じて各経済主体に分配
労働者への支払は【賃金】
資金を借りている人には【利子支払】
政府には【間接税】
企業のオーナーの元には【利潤】が残る

生産のために機械を使用すると摩耗や故障する分
は【減価償却】という

企業の付加価値=賃金+利子支払い+間接税+利
潤+減価償却
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国民所得
雇用者報酬
243
営業余剰
91
間接税
36
固定資本減耗
107
合計(兆円)
481
2010年名目GDP分配面(単位兆円)
総務省 統計局

四捨五入や統計上の誤差のため合計は少し違う
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景気の善し悪し
経済は波打ちながら成長していく
 景気の山や谷の判断は成長率
 好況(A)→後退(B)→不況(C)→回復(D)→好況(E)

E
山
A
B
谷
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D
C
22
実質国内総生産成長率
6,0
4,4
4,0
2,0
1,7
2,4
1,3
1,7
2,2
-1,0
0,0
-2,0
-0,7
2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011
-4,0
-6,0
景気拡大の山は
2008年2月
-8,0
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ミクロ経済学 14
-5,5
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インフレーションとデフレーション

正しくはデフレは不況を意味しない

先生が小学校の時の遠足のおやつは100円でし
た.皆さんの予算は幾ら?

世の中の財・サービスの物価の動向

インフレーションは複数の財の全般的な上昇を意
味する.

反対に諸価格の全般的な下落はデフレーションと
呼ばれる.
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物価の測定

デフレ
 ○物価の下落
 ×物価の下落+不景気

全ての財の価格が10%上昇すれば無問題

うまい棒価格が10%,ブラックサンダー価格が20%
上昇した場合にインフレ率はいくら?

複数の財の価格の平均を取る.ただの平均ではない

財の重要度によってウエートを変える

鉛筆価格の小さいウエート,住宅価格は大
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おやつの価格が変化した




ブラックサンダーとうまい棒しかない世界
【例1】当初,ブラックサンダー価格は30円,うまい棒
価格は10円であった
例2へ価格変化すると物価は上昇したことが理解
例3に変化した時は物価は上がったかどうか不明
価格(円)
価格(円)
ブラックサン
例2
ダー
うまい棒
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11
ブラックサン
例3
ダー
うまい棒
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36
9
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おやつのバスケット
価格ではなくて支出額を比較する
 バスケットを考える

 ブラックサンダー何個,うまい棒は何本
 ピクニックに行くときのカゴの中身
購入量が多い財ほどバスケットには大きな比重
 バスケットの中身を買うにはいくらかかる
 例えば次のバスケットを考えよう
ブラックサンダー2個,うまい棒は1本
 例1の支出額を計算しよう

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おやつの予算は70円
価格(円) 数量(個数) 支出額(円)
ブラックサ
例1
ンダー
うまい棒
30
2
60
10
1
合計金額(円)
10
70

例1の合計支出額は70円

この金額を基準にして比較

例2や例3に価格が変化した時にこのバスケットの中身
を買う時に何%支出額が変化したか?
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物価上昇率
次の年の支出-基準年の支出
物価上昇率=
× 100
基準年の支出
価格(円)
ブラックサン
例2
ダー
うまい棒
77-70
数量(個数) 支出額(円)
33
2
66
11
1
合計金額(円)
11
77
700
× 100 =
70
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= 10 (%)
70
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例3の物価上昇率は1%
価格(円)
ブラックサン
ダー
例3 うまい棒
数量(個数) 支出額(円)
36
2
72
9
1
合計金額(円)
9
81
例3の価格でバスケットを買うと合計金額は81円
例2の物価上昇率(%)=
(81-70)/70×100=15.7(%)
物価は約16%上昇した
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物価指数の作り方のまとめ
1.
2.
3.

バスケットを固定する
バスケット費用を計算する
基準年を選び計算する
例1の年を基準年とする.基準年の指数を100とする
基準年の支出
70
× 100 =
基準年の支出
4. インフレ率を計算する
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× 100 =100
70
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物価の作り方
例2の支出
77
× 100 =
基準年の支出


× 100 =110
70
例2の物価指数は110である
同様に例3の物価指数は
例3の支出
81
× 100 =
基準年の支出
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× 100 =115.7
70
ミクロ経済学 14
32
消費者物価指数

基準年である例1は100

例2は110,例3は115.7

消費者は新幹線や下水道管は買わない

消費者物価指数とは
家計にとって重要な物価の動向を見るための指
数

消費者の生計費を測る

平均的な家計が購入する財の組合せを考える
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消費者物価、0・1%下落…4か月連続
(2012年3月3日 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/job/news/20120302-OYT8T00542.htm
総務省が2日発表した1月の全国消費者物価指数
(2010年=100)は、値動きの大きい生
鮮食品を除く総合で99・3となり、前年同月
比で0・1%下落した。前年を下回るのは4か
月連続で、依然としてデフレ状況が続いている
ことを示した。テレビが36・1%、冷蔵庫が
32・2%下落するなど、耐久消費財の値下が
りが響いた。
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消費者物価指数
102,5
102,1
102
101,5
101
100,5
100
101
100,7 100,7
100,7 100,7
100,7
100,4
100
99,5
99,7
99
98,5
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ミクロ経済学 14
35
消費者物価指数変化率
2,00%
1,37%
1,50%
1,00%
0,50%
0,30%
0,00%
-0,30%
0,00%
-0,50%
-1,00%
-1,50%
-2,00%
2012/7/23
2002
2003
2004
-0,30%
-0,89%
2005
2006
-0,30%
2007
2008
2009
2010
2011
0,00%
-1,39%
-0,70%
総務省,統計局 2010年を100とする
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デフレとは何か

デフレは全般的な物価の下落を意味する

少なくとも二年間継続的に物価が下落する状態
岩田規久男『デフレの経済学』東洋経済新報社

現在はデフレである.-0.3%(2011),-0.7%(2010)

しかし,2005年から2008年はデフレではない

デフレの何が悪いのだろうか?
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実質GDP

国内総生産 GDP は総付加価値

生産量は変わらなくても物価の上昇で支出アプロー
チの金額が上昇してしまう

支出額=価格 × 生産量

うまい棒やブラックサンダーが同じだけ生産されても
物価が2倍ならばGDPも2倍

物価が上がって見せかけのGDPが上昇してしまう場
合.これは困る!

物価を調整したGDPを実質GDPと呼ぶ
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ミクロ経済学 14
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GDPデフレータ







物価調整のないGDPを名目GDP
インフレを調整した実質的な生産量を測る実質GDP
はどうやって作られるのだろうか?
実質GDPは名目GDPから物価上昇の影響を控除し
て作られる
GDPデフレータとは
国内で生産された財(GDP)の物価指数
である.アイディアは物価で割る.
支出=価格×数量
数量=支出/価格
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実質GDPの作り方

数量を求めたい
名目GDP
実質GDP=

GDPデフレ-タ
以前見せた次のグラフは実質GDP
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ミクロ経済学 14
40
GDPデフレータ
106,0
104,0
104,4
102,0
102,7
101,3
100,0
100,0
98,0
98,9
98,0
96,0
96,7
94,0
96,2
94,2
92,0
92,2
90,0
88,0
86,0
2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011
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ミクロ経済学 14
41
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ミクロ経済学 14
42
実質GDPとGDPデフレータ

名目GDPはあまり増えていない

しかし,GDPデフレータが大きく下落している

そのため実質GDPは高くなっている

GDPデフレターは消費者物価指数よりも下落して
いる傾向にある
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ミクロ経済学 14
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復習1
 付加価値=企業収入ー中間財の費用
 GDP=全企業の付加価値の合計
生産された物の売上は誰かの所得になる
 GDP=賃金+利子支払い+間接税+利潤+減
価償却
 総生産は総所得に等しい

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復習2
経済は波打ちながら成長していく
 好況→後退→不況→回復→好況


消費者物価指数は家計にとって重要な物価の
動向を見るための指数

GDPデフレータは国内で生産される財の物価
指数
名目GDP
実質GDP=
GDPデフレ-タ
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ミクロ経済学 14
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