ABLについて

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~新たな担保の取り組み~
04f0221 宮内 智規
目次
はじめに
 第一章
 第二章
 第三章
 第四章
終わりに
参考文献
ABLについて
企業の資金調達の現状
ABLの実施にあたって
事例
はじめに
日本では伝統的に間接金融が盛んに行わ
れている。間接金融では通常、融資と引き換
えに担保を設定している。その担保について
今、ABLという新たな手法について注目が集
まっている。これからそのABLについてみて
いきたい。
第一章 ABLについて
ABLとは
 ABLの特徴
 ABLが注目される背景
 ABLのメリット・デメリット

ABLとは
Asset Based Lendingの略で、企業の事業
に注目し、事業に基づくさまざまな資産の価値を
見極めて貸出を行うことである。
つまり、事業を行うことにより生み出される債権
(売掛金)やキャッシュフローを生み出すもとであ
る動産(在庫や機械設備)の価値に基づいて貸
出を行うことである。
ABLの特徴

企業の信用リスクの一部をその企業の保有す
る資産の価値で補完する貸出手法である。
コーポレート
ファイナンス
アセットベースド
レンディング
企業(事業)の信用力に
に依拠したファイナンス
アセット
ファイナンス
企業の保有資産の信用力
依拠したファイナンス
ABLのスキーム
法務局
譲渡担保登記
貸 付
企業
在庫
機械設備
売掛金
金融機関
評価・管理
サポート
外部専門会社
ABLが注目される背景

新たな資金調達手段の必要性

リレーションシップバンキングの強化

法整備
新たな資金調達手段の必要性
バブル崩壊による不動産価格の下落
→担保不動産が巨額の不良債権へ
 個人破産の社会問題化
→個人保証制度の見直し

不動産担保・保証に過度に依存しない新たな
資金調達手段が必要に
リレーションシップバンキングの強化

2003年3月 金融庁金融審議会
「リレーションシップバンキング
の機能強化に向けて」
リレーションシップバンキングとは
‥‥金融機関が顧客との間で親密な関係を
長く維持することにより顧客に関する情
報を基に貸出等の金融サービスの提供
を行うことで展開するビジネスモデル
法整備
2004年9月 法制審議会
「動産・債権譲渡に係わる公示制度
の整備に関する要綱」
 2004年11月 臨時国会
「債権譲渡の対抗要件に関する民法の特例等
に関する法律の一部を改正する法律案」可決

企業のメリット
新たな資金調達手段の拡大。
 保有資産だけでなく事業のCFを基にした資
金調達が可能になる。
 金融機関とのリレーション強化。
→安定的、機動的に資金調達が可能に

金融機関のメリット
新たな融資枠の設定
 企業とのリレーション強化
→長期的な取引、緊急時の迅速な対応
 リスク分散効果

デメリット
担保管理に手間とコストがかかる。
 企業の信用悪化のおそれがある。
→在庫や売掛金まで担保にしている。
 企業が破産した場合、従業員や取引先の債
権の引き当てとなる資産が残らなくなる。

第二章 企業の資金調達の現状
各国企業の資金調達構成
 企業規模別の資金調達構成
 貸出金の担保内訳
 企業の保有資産内訳
 企業の資金調達構造からみたABLへの期待

各国企業の資金調達構成
2002年時点 最近5年間
イギリス
35
2
16
48
借入
米国
22
45
19
14
その他債務
債券
株式・出資金
日本
46
0%
20%
40%
28
8
60%
80%
18
100%
(出所)日本銀行HP 資金循環統計の国際比較
企業規模別の資金調達構成
企業の保有資産内訳
全企業
現金・預金
受取手形
売掛債権
在庫
有価証券
土地
129兆円
32兆円
175兆円
中小企業
75兆円
15兆円
64兆円
96兆円
41兆円
11兆円
4兆円
165兆円
84兆円
その他建物・機械設備等
276兆円
104兆円
合計
884兆円
387兆円
(出所)2005年度 法人企業統計
貸出金の担保内訳
2007年
17%
41%
1%
不動産・財団抵当
3%
有価証券担保
その他担保
保証
信用
38%
(出所)日本銀行HP 貸出金の担保内訳
企業の資金調達構造
からみたABLへの期待



直接金融市場にアクセスをもたない中小企業を中心
に日本は借入依存度が高い。
担保として不動産と保証に強く依存している。
企業の保有資産において不動産よりも動産・売掛債
権等ABLで用いられる資産内訳の方が大きい。
企業の保有資産の有効活用
片寄った担保の是正
潜在的に大きな市場がある
ABLへ期待
第三章 ABLの実施にあたって
ABLの形態
 貸出額の算出
 担保の種類
 法整備前後の比較
 外部のプレーヤー

ABLの形態①
 リボルバー
→借り手が借入と返済を随時行える貸
出枠を設定する貸出形態で、主に運
転資金に利用される。通常、借り手
の保有する売掛金と在庫をセットにし
て担保設定を行う。
ABLの形態②
 タームローン
→設備資金等の長期資金の貸出に
利用される。通常、借り手の保有す
る固定資産に担保設定を行う。
ABLの形態③
 クレジット・ファッシリティ
→リボルバーとタームローンをセット
にした貸出形態。
貸出額の算出①
貸出基準額
=担保価格-不適格担保×前貸し率
適格担保
貸出基準額≦クレジットライン
貸出額の算出②

前貸し率
→適格担保から実際にいくら回収できるの
かを考慮に入れて、担保の種類ごとに異
なる掛け目を使う。通常、売掛金は70~
90%、在庫は25~60%の範囲で用い
る。
貸出額の算出③

クレジットライン
→貸出基準額をもとにした審査決裁上の枠
取。通常、貸出基準額の変動を考慮に入
れ、多少大きめの金額設定を行う。
貸出額の算出④
500
200
売掛金
160
担保適格
な売掛金
× 75%
貸出
基準額
180
資産
在庫
担保適格
な在庫
180
120
× 50%
前貸し率
≦
クレジット
ライン
200
担保の種類
抵当権
物
根抵当権
担
保
的
約定担保
質権
仮登記担保
担
譲渡担保
権
保
法的担保
先取特権
留置権
人 的 担 保
保証(連帯保証)
法整備前後の比較①
動産譲渡登記制度の創設
法整備前‥第三者対抗要件は「引渡し」のみ
法整備後‥第三者対抗要件に「登記」を追加
登記によって引渡しと同等の効果を得られる。
(注)対抗要件が競合した場合、対抗要件を備
えた時間的な前後により優劣を決定。
法整備前後の比較②
法整備後
法整備前
先に登記
A銀行
A銀行
先に担保
設定し貸付
対立
B銀行
企業
動産
担保設定
されていると
知らず貸付 そのまま使用
二重担保のリスク
法務局
先に担保
設定し貸付
担保設定の確認
B銀行
×
貸付
企業
動産
そのまま使用
二重担保のリスク減
法整備前後の比較③
法整備後
法整備前
先に登記
法務局
A銀行
A銀行
先に担保
設定し貸付
〇 ×
×〇
先に担保
設定し貸付
所有権の主張
所有権の主張
B社
B社
C社
C社
後に売却
(引渡し)
動産
第三者対抗要件の不備
後に売却
(引渡し)
動産
第三者対抗要件の整備
法整備前後の比較④
債権譲渡登記制度の見直し
法整備前‥債務者が特定されるつど登記をし
なければならず手間がかかる。
法整備後‥債務者が特定していない将来債
権の譲渡についても登記により、
第三者対抗要件を具備することが
可能になる。
プレーヤー①
アプレーザー
→動産・債権・不動産等の価値評価を行う
専門会社。
 リクイデーター
→動産・債権・不動産等の処分を行う専門
会社。

プレーヤー②
フィールドイクザミナー
→担保提供された在庫や売掛金が本当に
存在するのか実地調査する専門家。
 オークショ二ア
→オークションを実施する専門会社。
 監査法人
 弁護士

第四章 事例

商工組合中央金庫の事例

みずほ銀行の事例
商工組合中央金庫の事例
本件の概要
企業名
有限会社十和田湖ファーム
金額
2億円
担保
肥育豚約1万頭、豚販売代金
特徴
日本ではじめてICタグを利用して在
庫管理を行ったABL案件である。
連帯保証債務の発生を一定のコベ
ナンツ違反の場合に限定している。
商工組合中央金庫の事例
(出所)商工組合中央金庫HP
みずほ銀行の事例
本件の概要
企業名
A社
外部事業者 トゥルーバアプレーザルサービスイズ、
監査法人
担保
切削工具一式、売掛金
金額
2億円
借入方式
特別口座貸越
貸付期間
1年(双方意義なき場合は自動更新)
みずほ銀行の事例
東京法務局
⑥販売代金入金(みずほ銀行口座)
⑥販売代金入金
(他行口座)
売掛債権
顧客
販売先
商取引
①借入申込
③譲渡担保登記
②社内管理
体制の確認
監査法人
③譲渡担保差入
売掛金
在庫
④融資実行
⑤担保情報
定例報告
顧客
みずほ
銀行
②動産
担保評価
動産担保
評価会社
②フィールドイクザミネーション、 ⑤担保定例モニタリング
終わりに
ここまでみてきたように、今はABLの必要
性が認識され環境も整いつつある。これから
は、プレーヤーの育成、案件を積むことが重
要となってくるだろう。それと同時に、貸し手
と借り手が共にABLの本質を正しく理解し、
それを日本の企業金融の変革につなげよう
とする姿勢を持ち続けることも重要である。
参考文献
アセット・ベースト・レンディング入門
小野隆一 宮崎源征 川上恭司
柴田尚朗 植竹勝
著
 経済産業省HP
 日本銀行HP
 商工組合中央金庫HP
 日本経済新聞
