(3)系統利用制度に対するコメント ・バックアップメニューの多様化

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Transcript (3)系統利用制度に対するコメント ・バックアップメニューの多様化

2003年日本の電力改革:
要点
2003年3月10日
京都大学大学院経済学研究科 助教授
依田高典
(1)中立機関の創設
ガバナンス
・中間法人
・電力会社・PPS・IPP・自家発・学識経験者から構成
・行動規範の確立と秘密保持の法定化
業務
・設備形成・系統アクセス・系統運用・情報開示
・ルールの作成と公平・透明な取扱を示す義務
ルール遵守の担保
・行政が、指針と変更命令によりサポート
(1)中立機関の創設に対するコメント
・送電部門の中立性に鑑みて、長期的にはISO/RTOが必要。
・中央給電指令と電源調整の権限確保。
・電源の流動化と市場参加者の多様化に応じて、将来はリア
ル・タイム市場の創設が必要。
・多様な利害関係者の参加が、中立性の担保になるとは限ら
ない。専門的知識を有するスタッフの育成が重要。
・産業政策と規制機関との独立性が曖昧。
(2)送電部門の公平性・透明性の確保
行政の行為規制
・情報遮断
・内部相互補助の禁止
・差別的取扱の禁止
振替託送料金の廃止
・会社間精算措置
・電源設置者による送電設備増強費用負担の明確化
・地域別価格差方式
・送電ロスの取扱い
・送電ロスの当該地域補填
・需要地近接性評価
(2)送電部門の公平性・透明性の確保に対するコメント
・行為規制は、抜本的解決策にはならない。
・グローバルな流れに従えば、所有分離までする必要はないが、
操業分離は必要。
・振替託送には、PPSvs既存電力会社と需要過多地域vs供給過
多地域の2種類の異なる問題が混在。
・振替託送廃止は、遠隔地に電源立地するIPP/PPSが得をし、一
般消費者が損をする危険性。
・実際に混雑が発生したときの割り当てメカニズムが欠如。
・遠隔地の電源立地抑制には、地域別価格差方式だけでは不十
分。
・現在の需要地近接性評価はザルの目評価。将来的には、立地
点ベースの限界価格評価が必要。
(3)系統利用制度
バックアップ・メニューの多様化
・変動範囲3%から10%まで段階別選択メニュー導入
・プロファイリングの検討
・需要家データへのアクセス
インバランス料金の弾力化
・変動範囲3%内を選択 → 従量料金のみ
・変動範囲3%以上を選択 → 3%超は二部料金
・変動範囲外 → 事故時扱い廃止、規制料金適用
・容量確保要件緩和(スポット市場からの電力調達)
系統利用料金規制方式
・届け出制の堅持
・変更命令基準の明確化
・プライスキャップ、プロフィット・シェアリング導入見送り
・接続供給収支の開示、説明責任の徹底
(3)系統利用制度に対するコメント
・バックアップメニューの多様化、インバランス料金の弾力化に
より、新規参入者に対するペナルティ性は薄まり、有効公正競
争条件は向上。
・実効性のある中身の議論が重要。
・将来的には、インバランス価格とリアルタイム市場価格のリン
クが必要。
・系統利用料金規制は現行のまま。ISO/RTOによる監視がなけ
れば、紛争はなくならず。
・先ず厳格なコア・ネットワークに対する規制があり、然る後、規
制の差し控えに移行するべき。
・プライスキャップは、料金水準低下のみならず、料金体系のリ
バランシングに寄与。
(4)卸電力取引市場
基本的な市場設計
・中間法人形態
スポット市場
先渡し市場
・匿名性
・1価格1オークション
・取引所の信用管理
・取引成約後の顕名性
・ザラ場方式
・当事者間の信用管理
・バックアップ・サービス等
・リアルタイム市場は作らない
・クリティカルマス確保、強制的電源投入はなし
・系統混雑時は市場分断方式で調整
(4)卸電力取引市場に対するコメント
・市場の厚み(流動性確保)とPPSの参入しやすさは、異なる問
題。
・PPSは競争に足るだけの電源確保が当面の課題。
・既存事業者は、市場の厚みを確保するための最大限の努力
が必要。
・市場支配力の行使をチェックする仕組みが必要。
・一元価格か多元価格かの問題は、誤った二項対立。市場指
標性を有する多元価格オークションは設計可能。
・将来的に地域の電源の多様化が進めば、リアルタイム市場の
創設は必要。
(5)残された中長期的課題
・真に中立で実効性のある構造措置:ISO/RTOの創設と専門的
スタッフの育成。
・原子力発電のバックエンド問題:事実上、民間だけの採算性は
困難で、国家介入は不可避。
・分散型電源の連系と自営線の建設の可否。
・決めの細かな潮流改善に寄与する立地点ベースの費用情報の
利用。
・実効性と有効性の高い遠隔地電源の抑止策。
・具体的な連系線の容量不足のための割当ルールと設備増強
ルール。
・ユニバーサル・サービスと最終保障問題。
・産業融合問題とイコール・フッティング(電力vsガス、エネルギー
vs通信)。
・縦割行政の撤廃と規制機関の独立性の確保。