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LMXBの変動とその物理的な描像 高橋 弘充、北村 唯子、深沢 泰司 (広島大学)、 桜井 壮希、牧島 一夫 (東京大学) 低質量な恒星 (~ 1 M ) 弱磁場中性子星 (< 109 G) 低質量X線連星系(LMXB) 前半: High/Soft 状態(ひろたか) 後半: Low/Hard 状態(桜井、北村) 2013年 理研シンポジウム「コンパクト星連星の多様性と進化」 アウトフローが 起こっている? NSの磁場の影響? LMXBの状態遷移 ・状態遷移 color-color 図(CCD) (Haisinger et al. 1989) Upper banana Horizontal Island Normal Flaring Z天体:形がZ Lower banana Atoll天体:形が環礁 それぞれの状態での物理的な描像は? 前半は、Atoll天体の Upper banana(high/soft)状態について 後半は、Atoll天体の Island (low/hard) 状態について 2013年 理研シンポジウム「コンパクト星連星の多様性と進化」 4U 1608-522 ライトカーブ(ASM検出器) 1年 距離: 3.6 kpc (Type I バーストから推定) PCA検出器 115回観測 Upper banana 40日 Lower banana Island CCD Color-Intensity Diagram 目的(1):UB での一般的な振る舞いは? 目的(2):UB で、光度には依存せずに変動している物理量は? パラメータの変動 スペクトル RXTE衛星: Upper banana(UB)状態の95観測を解析 (1観測は数 ks) MCD+BBで再現 (χ2A/d.o.f.~0.8) B C D 全スペクトル(> Fe-Kライン 1 x 1037 erg/s : UB 状態)を再現 ・得られる物理量 観測量:温度、半径 → 光度、質量降着率 M BB TBB rBB LBB ∝ rBB2・TBB4 MCD NS 降着円盤 最内縁温度:Tin 最内縁半径:rin Ldisk ∝ rin2 ・ Tin4 質量降着率 M Ldisk ∝ M /r ∴ M ∝ rin3 ・ Tin4 パラメータの変動:目的(1) 10 光度[1037 erg/s] LBB/Ldisk ~ 0.6 → 0.4 全光度 1 Ldisk 0.1 L ∝ M LBB M [任意] 2013年 理研シンポジウム「コンパクト星連星の多様性と進化」 パラメータの変動:目的(1) 10 光度[1037 erg/s] LBB/Ldisk ~ 0.6 → 0.4 全光度 1 Ldisk 0.1 L ∝ M ・LBB ∝ LBB M [任意] M ほど上昇しない 重力 エネルギー 1/2 円盤からの放射 L disk 1/2 回転運動 ビリアル定理 GM M 2 r in ∝ M × M NS表面に降着すると LBB ∝ 物質の一部(約20%)が NSに降着していない 放射圧(円盤+NS表面)によりNS手前からアウトフロー パラメータの変動:目的(1) 10 光度[1037 erg/s] LBB/Ldisk ~ 0.6 → 0.4 全光度 1 Ldisk 0.1 L ∝ M ・LBB ∝ LBB M [任意] M ほど上昇しない 重力 エネルギー 1/2 円盤からの放射 L disk 1/2 回転運動 ビリアル定理 GM M 2 r in ∝ M × M NS表面に降着すると LBB ∝ 物質の一部(約20%)が NSに降着していない 放射圧(円盤+NS表面)によりNS手前からアウトフロー 光度に依存しない自由度は何か?:目的(2) 予想される平均値を差し引いた変動成分 (X’) の図 (r’in との相関) 普通の変動の図 (Ltot との相関) Ldisk 変動の仕方が2つ ・Ldisk, LBB は ほとんど変動せず (Constant-luminosity branch: CLB) L’disk L’BB LBB kT’BB rin kTBB kT’in 両branchは、r’in~0.85 で接しているかも? kTin r’BB rBB 全光度 ・両光度が反相関 (Variable-luminosity branch: VLB) r’in 光度に依存しない自由度は何か?:目的(2) 前ページの右図(変動成分の分布) CLBの特徴 Mdot ∝ r3T4 ∝ r1 (見かけ上?) FBに近づくと rin:小、Mdot小 HBに近づくと rin:大、Mdot大 ・光度は変化しない ・BB成分の変動はない ・円盤成分は kT’in ∝ r’in-0.5 => 解釈:本当に rin が変動? rin の変動は見かけ上 (rin は一定で hardening factor が変化?) L’disk L’BB Z天体のNBに対応? kT’BB VLBの特徴 ・光度が反相関(L’disk は減少、L’BBは増加するのみ) ・BB成分は、L’BB の変動に対して増加 (Mdot ∝ r3T4 ∝ r0) ・円盤成分は kT’in ∝ r’in-0.75 => 解釈:本当に rin が変動? kT’in r’BB r’in Z天体のFBに対応? 自由度2とは、Ltot (全光度、質量降着率)と r’in (円盤の最内縁半径の見かけ上/実際) の変動と考えられる いま考えている物理的な描像 CLB 最内縁半径の見かけ上の変化 (<=hardening factor の変化、円盤の厚みが上下に振動?) VLB 最内縁半径が実際に遠ざかる <= 物質が円盤上で放射せずに落ちた先のNS表面で放射 Ldisk が減少した分だけ、LBB が増加 2013年 理研シンポジウム「コンパクト星連星の多様性と進化」 4U 1608-522 Color-Intensity Diagram Constant-luminosity branch Variable-luminosity branch 目的(2) UB で、光度には依存せずに変動している物理量は? ・全光度(質量降着率) ・円盤の最内縁半径(見かけ上/実際)の変動 まとめ(ひろたか) ・Atoll天体 4U 1608-522 の Upper Banana (high/soft)状態を解析した。 ・全光度が上昇するにともなって、円盤放射ほどBB放射が 増加しないことが分かった。 これは、放射圧(円盤+NS表面)によりNS手前からアウトフロー が起こっていると考えられる。目的(1) ・Upper Banana 状態の変動は、2つの独立な自由度で説明されることが分かった。 1つは、全光度(質量降着率) もう1つは、円盤の最内縁半径(見かけ上/実際)の変動と考えられる。目的(2) 同じ光度でも、Constant-luminosity branch と Variable-luminosity branch が存在する。 ・Z天体との対応 放射圧が高い: NS表面に物質が降着しにくくなる(NS表面からの放射が減少) 大量のアウトフローが光学的に厚くなる(アウトフローによる放射+吸収) Constant-luminosity branch :Normal Branchに対応 Variable-luminosity branch : Flaring Branch に対応 LMXBのLow/Hard状態の振る舞い (桜井、北村) 2013年 理研シンポジウム「コンパクト星連星の多様性と進化」 14 H2. 第2~4観測の解析結果 第3観測 (L~2.9x1036 erg/s) νFν 1 中 性 子 星 コロナ 降着円盤 黒体放射 0.1 diskBB Tin~0.28 keV Rin~21 km Te ~ 35 keV compPS (seed=BB) t > 2.5 Tbb~0.5 keV Rbb~10 km c2 =1.01 (183) 5 c 0 -5 1 10 100 keV •円盤は半径~20 kmで途切れ、NSは表面全体が光っている (Sakurai+2012) •第2、第4観測からも同様の結果が得られた。 2013年 理研シンポジウム「コンパクト星連星の多様性と進化」 H3. 第5観測の解析結果 第5観測 ( 0.05νFν L~5.0x1035 同観測の single Compton によるフィット erg/s) 総Rbb = 7±1 km 0.05 compPS (seed=BB) 0.01 direct BB Rbb ≦ 3 km 5 c0 -5 Te ~ 62 keV t ~ 2.3 Tbb~0.4 keV Rbb~6 km c2 =1.19 (109) 1 10 BBの一部が高密度コロナで Comptonizeされている 100 keV νFν 総Rbb = 7±1 km compPS (seed=BB) 0.01 5 c 0 -5 Tbb~0.4 keV Rbb=7±1 km Te ~ 118 keV t ~ 0.8 c2 =1.20 (110) 1 10 BB全体が薄いコロナで Comptonizeされている 第2~4観測に比べ、黒体放射半径Rbbが有意に減少 2013年 理研シンポジウム「コンパクト星連星の多様性と進化」 100 keV H4. 第6,第7観測の解析結果 第7観測 (L~2.3x1034 erg/s) 第6観測 (L~1.3x1034 erg/s) νFν 10-3 10-4 5 c0 -5 νFν 10-3 compPS (seed=BB) Tbb~0.3 keV Rbb=3±1 km y = 0.4−1.1 10-4 c2 =0.91 (76) 1 5 10 keV 5 c 0 -5 compPS (seed=BB) Tbb~0.3 keV Rbb=3±1 km y = 0.7−2.5 c2 =0.87 (80) 1 第5観測と同じモデルで再現できたが、Rbbはさらに減少 2013年 理研シンポジウム「コンパクト星連星の多様性と進化」 5 10 keV H5-1. Discussion: BB半径の変化 光度による黒体放射半径の変化 HardHigh状態 Rbb (km) Soft状態 黒体 放射 中性子星 RNS=10 2 10-4 10-3 0.01 2013年 理研シンポジウム「コンパクト星連星の多様性と進化」 0.1 光度 (LEdd) H5-2. Discussion: BB半径の変化 光度 (⇔質量降着率)によるAlfven半径 RAの変化 HardRA, Rbb High状態 Soft状態 (km) 黒体 放射 RNS=10 中性子星 Hard-Low状態 磁軸 コロナ 2 10-4 10-3 0.01 0.1 光度 (LEdd) 低光度 (Hard-Low状態)ではNSの磁極に降着している? 2013年 理研シンポジウム「コンパクト星連星の多様性と進化」 まとめ(桜井) • 2007年 9月~10月、「すざく」はAql X-1のアウトバーストの立ち下がりを7回観測 し、~3桁にわたり光度変化するスペクトルを得た。 • 第2~4観測はHard-high状態で、円盤は半径~20 kmで途切れ、厚い降着流となっ てNS表面に降着し、表面全体が光っている。 • 第5~第7観測のスペクトルは、黒体放射 (BB)とそのコンプトンで再現される。光度 が下がるにつれ、BB半径は 10 kmより小さくなっていく。 • BB半径、およびコロナの光学的厚み (t)の両観点から、低光度 (第5~7観測)では NS表面の狭い領域のみに降着し、その部分が光ると結論される。 → Alfven半径の議論から、低光度で降着流は磁場に絞られ、 NSの磁極に降着していると考えられる。 2013年 理研シンポジウム「コンパクト星連星の多様性と進化」 NS表面の放射領域:磁場強度の違い? ・Aql X-1 L~5.0×1035 erg s-1 (北村さんの仕事) LMXB 0.02 peak IGR J16194-2810 2 5 L~7.6×1034 erg s-1 ・IGR 0.05 2compPS(seed=DBB , BB) SyXB 0.02 0.01 共生X線連星: Symbiotic X-ray Binary;SyXB LMXBの一種で、NSと赤色巨星の連星 軌道周期が長い peak 5 χ 0 -5 1 2 5 10 100 Energy (keV) 2013年 理研シンポジウム「コンパクト星連星の多様性と進化」 NS表面の放射領域:磁場強度の違い? ・Aql X-1 L~5.0×1035 erg s-1 LMXB IGRは、黒体放射のピークがAql X-1 に比べ高エネルギー側にある 0.02 peak 2 5 L~7.6×1034 erg s-1 ・IGR 0.05 2compPS(seed=DBB , BB) SyXB 0.02 0.01 peak 5 χ 0 -5 ステファン=ボルツマンの法則 L∝R2 T4 の関係から 同じ光度で比較して、 ・IGR Tbb:高 ,Rbb:小 <= 磁場が強い? Te ~100keV(fix) τ ~ 0.6±0.1 LMXBへの進化の途中? Tbb ~1.05±0.05 keV Rbb ~0.68 (+0.03/-0.04)km χν 2=1.14(594) 1 2 5 10 100 Energy (keV) 2013年 理研シンポジウム「コンパクト星連星の多様性と進化」 まとめ(全体) • 明るい天体では、アウトフローが生じていると考えられる。 • 全光度に依存しない変動がある。(Z天体の状態遷移に影響?) • LMXB でも暗くなると、NS表面の放射領域が小さくなる。 →磁場の影響が効いてくると考えられる。 • 同じ光度でも、天体によってNS表面の放射領域のサイズが異なる。 →磁場の強さが異なることを反映しているのではないか? 暗い天体(星風でちょっとずつ降着、降着円盤の構造は?) MAXIは引き続き、新しい突発天体や既知天体のアウトバーストを バンバン見つけて下さい。 ASTRO-H では、カロリメータにより、精度のよりライン観測ができる。 かつ、パイルアップのない(統計の良い)スペクトルが取得できる。 2013年 理研シンポジウム「コンパクト星連星の多様性と進化」