資料2・3:対象とした文献の詳細

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Transcript 資料2・3:対象とした文献の詳細

1970年代のリハビリテーション雑
誌のなかの「寝たきり老人」言説
田島明子(立命館大学大学院先端総合学術研究科)
坂下正幸(立命館大学大学院先端総合学術研究科)
伊藤実知子(立命館大学大学院先端総合学術研究科)
野崎泰伸(大阪府立大学OD)
問題の所在
「寝たきり老人」という言葉は、日本において高齢者医療・福祉の諸制
度の方向性を占うための1つの重要なキーワードとして位置するが、
これら方向性は「寝たきり老人」を社会から消去しようという方向性と
も受け取れる。
誰もがよく知る言葉「寝たきり老人」は、いつごろ発生し、どのように定
着していったのか。
1960年代から1970年代初頭にかけて、「老人」に関わる法律の制定と
ともにリハビリテーションに関わる法律が整備、施設・在宅の「老人」
へのリハビリテーション実施の根拠が示された。その背景として、多く
は脳卒中後遺症により、施設あるいは在宅において「寝たきり」の状
態となった「老人」の存在が問題化されるようになり、その人たちへの
リハビリテーションの必要性が言われるようになってきた。
つまり、「寝たきり老人」という言葉の発生・定着には、リハビリテー
ションが関与していることが想定される。
研究の目的
そこで、1970年代のリハビリテーション誌
から、「寝たきり老人」に関する記述を調査
し、「寝たきり老人」をめぐりどのような言
説が生成されたかを探ること。
対象
『理学療法と作業療法』誌
選定理由:
1.
2.
理学療法士及び作業療法士法が制定(1965年)された翌々年(1967年)
に創刊
1983年までリハビリテーション職種である理学療法、作業療法に関す
る唯一の専門誌であった
創刊(1967年)~1970年代までの文献から
タイトルに「老人」が含まれる33文献を収集
し、調査の対象とした
分析手順・方法
対象とした文献(資料1)から「寝たきり老人」の記載の
ある文献を捜したところ、17文献あった(資料2)
・17文献についてはNoをつけた→資料1
・対象文献、17文献の年代ごとの数→資料2
・17文献の内容詳細→資料3
17文献中の、「寝たきり老人」の記載のある文章を抜
粋し、①前後の文脈が失われないよう、②なるべく単
一の意味内容となるよう分節化したところ、59カードが
作成された
59カードには、「カードNo」【「年代」-「文献No」-「頁
数」】とカード番号を割り当て、内容の類似性で、グ
ルーピングを行った。
資料2 対象とした文献の詳細
西暦
文献著者・タイトル
1967(S42)
◆上田敏「世界の同僚 「老人の町」の作業療法士として」
1969(S44)
1◆横山巌「老年医学とリハビリテーションの考え方」
◆保坂昭治「老人の理学寮法」
2◆大槻○子「老人の作業療法」 3◆上田敏他「老人のための住居・施設とリハビリテーション-建築的な面から」
1973(S48)
◆林義孝「玩具を用いた老人の呼吸訓練」
1974(S49)
◆吉田清和、三浦聡雄、小林雅夫、上田敏「老人切断者とリハビリテーション」
◆伊藤直栄「老人の関節可動域の研究」 4◆斎藤延男「第8回日本作業療法士協会学会シンポジウム 老人福祉と
OT」
1975(S50)
5◆田中荘司「日本の老人の統計」
◆原田豊治「老人と職業」
6◆遠藤文雄「老人に対する理学療法士の地域活動」
7◆香川幸次郎「特別養護老人ホームにおける理学療法士の役割」
8◆松下起士「特養における作業療法士の役割-現状と実際-」
9◆小島政茂「特養老人ホームにおける作業療法士の役割」
◆鈴木明子「資料/アメリカの老人」
◆松村秩「老年片麻痺患者の理学療法」
◆鶴見隆正、福田光祐、鈴木洋子「膝関節痛を持つ高年者の大腿四頭筋筋力強化訓練について」
1976(S51)
◆駒沢治夫「運動療法におけるリスク管理とその対策-成人・老人-」
10◆須崎良子、宮地敬、林義孝「老人の骨折における諸問題」
11◆濱島良和「とびら PTと老人福祉-医療と社会福祉の接点で-」
1977(S52)
◆松下起士「老人のレクリエーション」
1978(S53)
12◆蓮村幸いえ「特別養護老人ホームにおけるリハビリテーションのあり方」
13◆香川幸次郎、熊井初穂「特別養護老人ホームにおける理学療法士の役割」
14◆松下起士、佐々木千登世「特別養護老人ホームにおける作業療法士の役割」
◆大川嗣雄、佐藤博信、畠中泰司「老人切断ー血管原性切断を中心としてー」
1979(S54)
◆岩倉博光「老人の運動生理学的基礎ーとくに老年者の転倒と疲労についてー」
15◆吉沢勲「ソーシャルワークの立場からみた老人ーリハビリテーションの問題点」
16◆松村秩「老人の地域リハビリテーションの考え方」
◆柄沢昭秀「老年期の精神障害」
17◆福屋靖子「在宅寝たきり老人の訪問活動における理学療法士の関わり方」
◆山崎一朗、大田豊彦「老人精神障害に対する作業療法アプローチー情動不安2例を通して」
◆前田守「とびら 老人福祉とOT」
資料3 年代ごとの文献数
「寝たきり」が含
まれる文献数
対象文献数
1967
1968
1969
1970
1971
1972
1973
1974
1975
1976
1977
1978
1979
計
1
0
4
0
0
0
2
3
9
3
1
4
6
33
0
0
3
0
0
0
0
1
5
2
0
3
3
17
「寝たきり」が含
まれる文献数
対象文献数
1960年代
1970~74
1975~79
計
3期に分節化
すると・・・
5
5
23
33
3
1
13
17
結果
13グループが生成された。以下のようにグループ名をつけた。()内の数字はカード枚数。
さらにそれらを、5つにグルーピングし、それらを代表すると思われるテーマを設定した。
寝たきり老人に関する統計調査の紹介(8)
寝たきりの原因・要因(6)
「寝たきり老人」の表現(5)
リハビリテーションの意義(6)
理学療法の役割(3)
作業療法の役割(5)
看護師の役割(2)
特養ホームでの寝たきり老人(4)
特養ホームにおけるリハ効果(3)
寝たきり老人に対する訪問事業(6)
地域活動・地域サービスへ(4)
家族が作る寝たきり老人(4)
家族の介護負担(3)
「寝たきり老人」の
実態・要因・表現
リハの意義・関連職種の役
割
特養ホーム
地域サービス
家族
寝たきり老人に関する統計調査の紹介
6【1974-4-11】
ある統計によると48年度における独居老人は49万人、寝たきり老人は30万人と出されている
8【1975-5-9】
現在の老齢者の健康状況はどのような実態であるかを、47年実態調査でみると、約3分の1以上の31.9%が寝たきりまたは病弱の身体状況にあり、65歳以上の
場合は、36%と高年齢になうほど健康ではないという状態にある。
9【1975-5-9】
現在、寝たきりの状況にある老人は、65歳以上人口の3.8%を占めており、全国で約32万人と推計。また43年に全国社会福祉協議会が実施した70歳以上の寝たき
り老人調査では、脳卒中22%、高血圧18%、リューマチ、神経痛15%、老衰26%(老衰と分類することは異論があるところであるが)等が主な寝たきりの原因
として報告されている
1
3
【1975-6-22】
今や脳血管障害は国民病といわれ年間死亡数は18万人以上、かつての国民病結核最盛期の死亡数(S18,171474人)を上回っている。後遺症患者は30万人とも50
万人とも言われ、寝たきり老人の20%は脳卒中だといわれている
15【1975-7-25】
居宅寝たきり老人は全国で40万人をこえるといわれており、東京都内においても1万1千人から1万2千人(S43、全国社会福祉協議会「居宅寝たきり老人の
実態調査より」と言われ現在はそれ以上にのぼると考えられる)
言説のまとめ
・当初は、大規模な統計調査
の結果が紹介されている
・その内容は、大括りに見て
、年代ごとに、①寝たきり老
人の多さ、②寝たきり老人と
なった原因疾患(脳卒中)、
③寝たきり老人の数が増加し
ていること、④より小規模地
域での寝たきり老人の実態、
の順で明らかとなっている
47【1979-17-25】
厚生白書によると”寝たきり老人”というのは65歳が、老人人口の急激な増加に伴い、寝たきり老人も年々
増加している。
49【1979-17-25】
寝たきり老人の原因としては、50年の老人実態調査によれば、脳卒中(35.3%)、高血圧(18.1%)、リウマ
チ・神経痛(9.5%)、老衰(9.5%)等が主なものとなっている
53【1979-17-26】
寝たきりとなった原因としては、疾患そのものの発症と同時に寝たきりとなったまま現在に至っているものは
30名中19名、原疾患+転倒等による外傷が原因となったもの5名(脳卒中+転倒 3名、脳動脈硬化症+
転倒 1名、関節リウマチ+骨折 1名)、脳動脈硬化症に精神障害が合併しておこった意欲低下等が原因と
考えられるものが4名、脳卒中+便秘がきっかけとなり寝たきりとなったもの1名、肝障害で長期入院中に寝
たきりになってしまったもの1名となっている
寝たきりの原因・要因
10【1975-6-19・20】
各地にできる温泉病院やリハ病院は例外なく遠く離れたところに建設され、付添や差額ベットなどの経済的負担に加え入院の審査が激しく特
別な縁故でもなければ入院は困難であった。従ってTさんにはこの種の入院経験はない。わが国の脳卒中患者のほとんどは行く病院も施設も
なくただ地域にほおりだされたままでいるのである。これらの多くは変形やこ拘縮を起こし、寝たきり老人へのたどると言っても過言ではあ
るまい。
22【1976-10-57】
(骨折の処置に関して)高齢者の手術の必要性として、痛みの問題、ADLの低下、看護上の問題があげられる。痛みは死期を早める要因となる
ことが多く、また、放置例では変形治癒や拘縮による日常の看護上の不便さがありねたきり状態となるに及んでは他の合併症を誘発する
23【1976-10-59】
観血的治療の場合、大部分の者が骨折前と同等のADLに回復している。これは医療スタッフが患者の骨折前のADLや知能、合併症などを十分
に考慮した結果であろうと考える。反面、寝たきり状態で大部分の介助を要する者及び死亡に陥ったものが4人ある
24【1976-10-59】
残りの一人は人口骨頭置換術後の再脱臼により寝たきり状態になった
26【1976-11-3】
特養ホームではどうであろうか。ホームにいる老人たちの心
身の障害をきたした起因疾患はやはっり脳卒中が最も多い。
ねたきりで失禁または他の理由でおしめをあて、痴呆状態に
ある老人も少なくない。
38【1979-16-19】
医学的には、寝たきり老人の大半は脳卒中後遺症によるもの
で、半身不随の片麻痺を中心とした障害を持つ老人である
言説のまとめ
・寝たきり状態は、脳卒中後、地域で放
置されたり、骨折後の放置、人工骨頭置
換術後の再脱臼が起因して生じた、と述
べられている。
「寝たきり老人」の表現
2【1969-2-14】
老人は生活の全般にわたっていろいろな問題がある。なかでも、身体的ハンディキャップを有する老人はいっそう深刻である。寝たきりで毎日を過ごすのと、
身の回りことが自分ででき、日常生活の自立ができるのとでは老年の意義が大きく異なる。作業療法は、健全な老年をつくる努力のひとつとして欠かすことが
できない
11【1975-6-20・21】
入るべき病院、施設もなく地域にとどまっている脳卒中患者、運よく温泉病院やリハセンターに入れてもらっても帰ってくるのは住み慣れた地域であり家族の
もとである。最初の3か月位は家族も励ますし努力もするから在宅での療養にはりも出るが、そのうちよくなると思っていた症状も思うように回復しない現実
、日常の継続的運動訓練がいかに重要であるかの認識は十分に理解しながらも毎日のことになると挫折しがちである。このままでは確実に寝たきり老人になっ
てしまうという不安感、孤独は弱者としての身障老人の心理であろう。こうして地域にばらまかれている心身障害者老人に継続的な運動訓練をいかにしてやら
せるか”やる気を起こさせるか”が問題なのである
言説のまとめ
・「寝たきり」は、老年の意
義や健全さを失った状態であ
る
・「寝たきり」は、弱者とし
ての身障老人の不安・孤独感
を生じさせる状態
・「寝たきり」は、なってし
まえば、サービスも半減する
ので、いかにしないかが大切
・活動性ゼロで達磨のよう
・人間の最終状態で、あとは
死のみ
14【1975-6-24】
訪問サービスは寝たきり老人を作らないために特に大切でありコミュニティケアにおけるリハ
サービスの体系上最も重視すべきである。全老人の5.6%~6%が寝たきり老人だといわれ(
厚生省)、新宿区においても約3%が寝たきり老人である(47.11現在、新宿区老人実態調査
報告)。寝たきり老人に本当に意味でなってしまってからではいかなるサービスも半減するの
であるからいかにしたら寝たきり老人にしないかの内容をもたなければならない
17【1975-8-30】
ベット生活者、寝たきり老人においては活動性はゼロに近い。私が特養でリハビリをはじめ
た頃は、上肢は丸々肥えているが、フトンをめくってみるともやしのような細い萎えた脚と
屈曲した関節がまるで達磨を連想させた。
36【1979-15-14】
病院のオエライ先生達は、リハビリとかってえのをやれば仕事に戻れるって言ってくれるけど
、どうも信じられねぇなぁ。仕事はクビかも知れないし。アッシの仕事の先輩も同じような病
気だったけど、言葉はレロレロで、ねたきりになって死んじまったもんなぁ
リハビリテーションの意義
1【1969-1-9】
当然歩けるようになるはずの、巣症状をわずかしか残さない軽症の片麻痺や、あるいは手足に神経的な麻痺を残さないくも膜下出血の老人
が、3,4ヶ月の安静保持のために、寝たきりで立てない状態におちいってしまうというような事例が時おり生じてくる。筋萎縮・骨萎縮
・起立性低血圧・二次的精神荒廃については、疾病の急性期が去ったら危険のないかぎり可及的すみやかに、起坐・起立・歩行・自動運動
練習へもっていくことによって予防されるし、また、拘縮は他動的関節運動を、じょくそうは適切な体位の変換を、発病早期から行うこと
によって予防される。このようなリハビリテーション医学的配慮は、老人の患者をとりあつかううえで、きわめて重要な意義をもっている
18【1975-8-30】
とにかくあらゆる方法を使って少しでもベットから離すことに主眼を置いた。歩行の
できる老人は行動半径つまり「生活の場」の拡大、ベット上生活者は車椅子ででもベッ
トから離すこと、寝たきり老人は一日30分でも座位をとらせることなど、OneStep
押し上げが目標となる
27【1976-11-3】
寝たきり老人はおこし、ベッドから連れ出すことを考え、歩けそ
うな人は積極的に歩かせ、便所、食堂、散歩と行動範囲をひろげ
ることである。ここで寝たきり老人をつくらないようにつとめる
ことが大切だが、同時に”歩ける”ことがいかに大切かを痛感す
る。心理的問題への配慮がより大切なことは言をまたない
言説のまとめ
・1960年代にリハビリテーションの意
義についての言説が既に存在する
・言説が増えたのは、1975年以降
・寝たきり老人への訓練は、離床させ
、1日30分でも座位を取らせるなど
、1歩前進をめざすもの
・知能の低い人ほど訓練の必要がある
・訓練そのものが、寝たきり老人の支
えになる
25【1976-10-60】
③知能の低い人ほど寝たきり状態、死亡に陥りやすいので重篤な合併症のない場
合は積極的な治療、訓練が必要である、などの知見を得た。
31【1978-13-11】
全国で33万人のねたきり老人が存在するといわれており、今日大きな社会問題としてク
ローズアップされている。在宅障害老人に対する関心、施策とあいまって、これら老人を
収容している特別養護老人ホームも老人を収容し、単に日常の世話をするという域を脱し
、老人の自主・自立への援助へと変革することも強くもとめられている。これの大きな柱
に、リハビリテーション・サービスがある
34【1978-13-14】
ADL能力の低い老人ほど回復への期待を強く持っており、そのことがねたきり状態の老人
の大きな精神的支えとなっていることが伺われる
理学療法の役割
54【1979-17-28】
恵まれた施設でファシリテーション・テクニックを思う存分適用しても、
退院後寝たきりになるのでは何のためのPTかといわざるを得ない。他の面
は誰かがやってくれるだろう、という無責任な依存的な態度はもう許され
ないのである
55【1979-17-28】
寝たきり老人の訪問活動もPTにとっては難問のうちにはい
る。
57【1979-17-28・29】
PTとしての独自の分野は何か? 最低譲れないのは、PTと
しての患者評価、PTとしての目標設定、プログラム作製で
ある。・・・寝たきり老人の訪問活動でも目標設定が不可
欠なのは例外ではないのである。・・・寝たきりになる前
の生活動作、社会的活動性は目標設定に大きな影響を与え
るので情報収集を忘れないように
言説のまとめ
・「寝たきり老人」をめぐる取り組み
の言説は、理学療法より作業療法の方
が早い
・理学療法では、訪問活動のなかでの
理学療法について言及されているが、
それは難問であるともされる
・作業療法では、日中活動の提供を通し
て、心理的な部分にも着目しながら、
ベットから離れさせることの意義が述
べられている
作業療法の役割
3【1969-2-14】
慢性疾患患者の多くは寝たきりで、拘縮、変形、筋の廃用性萎縮、骨そしょうな
ど、二次的な機能障害をもつものも多かった。慢性疾患を有しても安静を必要と
しないかぎり、日中はできるだけベッドをはなれて、普段の生活に近く過ごすこ
とが望ましい。こういった患者の日課の一部として作業療法は適している
4【1969-2-15】
「片麻痺における例をあげよう。上肢の機能が比較的良好であり、OTによって改善
の見込みがあっても、意欲がなく、寝て過ごすことが多い老人に対しては、機能的O
Tを行う前に、患者を少しでもベッドから離すようにしてむける。テレビを見に行っ
たり、食堂で食事をとる、周囲の老人と交わるなどをすすめて、いきいきした生活を
体験させるほうが、手がわずかによくなるということよりも意義の大きいことがある
。
5【1969-2-15】
身体機能にハンディキャップを有する老人は、作業目標がはっきりしているので、
理解も得やすく、導入に際してさほど問題がない。これに対して、慢性疾患を有す
る老人で、外見上身体障害がないものには動機づけがむずかしい。なぜ寝てばかり
いてはならないかをよく説明するとともに、導入法にも意を用いよう。
21【1975-9-38】
一般にリハビリテーションのゴールには、1職業復帰(通常の職場)、2職業復帰(
保護職場など)、3職業復帰(在宅作業)、4家庭復帰(家庭内自立)、5施設内自
立、などが考えられるが,高齢でそのほとんど寝たきりの生活をおくる特養ホームで
はそのどれにも該当するものがない(ごく限られた何人かは施設内自立もあるが)。
おそらく特養老人ホームという性格と核家族化しつつある現在の諸般の事情から一部
には家庭に帰るケースはあってもその大半の老人は余生をホームでおくるものと考え
る。だとすれば、この残り少ない余生を、どのようにしてあげたらよいのか。。。私
は、ここのところに心理的OTの重要さがあることを強調したい
35【1978-14-18】
<事例>A、75歳、女、寝たきりで・・・OTでは坐椅子で座位姿勢をとらせ、ベッド
サイドでOTを開始した。・・・糸巻き作業にした。・・・寮母の顔を見ると、仕事
をするから起こしてくれと言うまでに変化した
看護師の役割
56【1979-17-28】
少ないPTでどのように対応するのかー主たる介護者が寮母である特別養護老人ホームで、寮母に血圧測定、脈拍のチェックその他起立性低血
圧の観察点を指摘した結果、寝たきり老人をなくした施設がある。これは一例でも、もちろん一律にはいかず、相手の能力に合わせた安全で
責任の持てる範囲での指導を見定めることが大切である。リハビリテーション施設において看護婦は、施設の生活での日常生活の指導・管理
を担当する。寝たきり老人の訪問看護ではこの日常生活動作の指導・管理が中核になるので、かなりの部分を看護婦にやってもらえる
58【1979-17-29】
チーム・リーダーは誰か? 寝たきり老人の訪問業務のような看護が主体のチームでは当然、常勤の保健婦あるいは看護婦がチーム・リーダー
に適していることが多い。
言説のまとめ
・施設サービスでも、在宅サービスでも
、看護婦は、チームリーダーとなって、
寝たきり老人へのアプローチで多くの役
割を担うと述べられている。
特養ホームでの寝たきり老人
16【1975-7-27】
特養の老人は一般的に寝たきりと言われているも、圏内生活ではADLが独立
している人、ある程度の介護を必要とする人、そしてその名の通り寝たき
りの状態の人と千差万別である
28【1978-12-3】
表6(入所者の上下肢機能レベルを示した表。)のA、Bは上下肢より見
た機能レベルを示したものである。本当に意味での寝たきりは5名のみで
ある
19【1975-9-37】
いわゆる特養ホームといわれるそのほとんど(およそ65%)が寝たきり
の生活を余儀無くされている
20【1975-9-37】
私達セラピストの面接には「もうなんの望みもありません、このまま早くお
迎えのくるのを待っています」などと特にベット上のADL、あるいは、ホー
ム内の生活活動がなんとか可能な軽症の患者たちまでが終日寝たきりの無
気力で意欲に乏しい無為の生活をおくっている
言説のまとめ
・特養ホームでの寝たきり老人の実態に
ついては、「ほとんどが寝たきりの生活
をしている」という言説がある一方で、
「千差万別である」、「本当の意味での
寝たきりは少ない」など、多様な記述の
なされ方をしている
特養ホームにおけるリハ効果
7【1974-4-13】
しかしながら現在の老人ホームは、共有面積も含めて一人当たり面積が僅か16平方メートルであり、寝たきり老人をすくえる充分な広さ
ではない」13
29【1978-12-8】
全てのベッドにキャスターを取り付けたことにより、寝たきり老人の移動が楽になり
、他室および屋外への移動回数が増加し、全ての老人を動かすことに成功した
30【1978-12-8】
ポータブルトイレ使用者の増加が目立つ。この事実は、寝たきり
老人の人数の減少を示す大きな裏づけとなっていると考える
言説のまとめ
・1970年代後半には施設内におけ
る「寝たきり老人」に対するリハ
効果が指摘されるようになった
・施設環境が問題となり、環境設
定の工夫がなされることによる効
果が指摘されている
寝たきり老人に対する訪問事業
42【1979-16-20】
近年、この寝たきり老人に対する行対策が行政ニーズとして取り上げられ、区市町村単位の地域において取り組まれるようになってきている。東京都板橋区に
おけるこの事業は・・・人口50万の行政区域の老人を対象とした地域リハビリテーション(在宅寝たきり老人の訪問サービス)の事業が組織的に可能になった。
この寝たきり老人を含む在宅障害老人のリハビリテーション事業に参加するスタッフは・・・このように寝たきり老人を含む在宅障害老人に対する地域リハビ
リテーションのサービスを総計93名のスタッフで行っている。
43【1979-16-21】
昭和53年度(53年4月~54年3月)の在宅障害老人(寝たきり老人を含む)に対するリハビリテーション実績は次のようである。保健婦(42名)は寝たきり老人
に対して585回の調査を含めた家庭訪問を行い、発症した脳卒中患者に対して362回の家庭訪問を行った。訪問看護婦は寝たきり老人を含む192名の在宅障
害老人に3700回の在宅リハビリテーション・サービスを含むケアを行った。PTは寝たきり老人を含む97名の在宅障害老人に対して397回の在宅リハビ
リテーション・サービスを行った
44【1979-16-22】
3.デイホスピタルのサービス
65歳以上の都民
デイホスピタルの通院対象は・・・③回復した機能を維持し、寝たきりを防止するために、定期的な指導を必要とする、老人
50【1979-17-25】
中野区役所、福祉部老人福祉課訪問看護系では、老人福祉事業の一環として、S53.7より寝たきり老人の訪問看護事業を
開始した
言説のまとめ
・すべて1979年
・寝たきり老人に対する訪問
事業、デイホスピタルなど、
具体的な事業の展開の紹介、
そのための人員などの具体例
が述べられている
51【1979-17-26】
主査保健婦は寝たきり老人訪問業務の役割を果たしており・・・
52【1979-17-26】
S53.7~S54.3の8か月間に寝たきり老人訪問看護の希望者103名中、訪問事態調査までに入
院・死亡した10名および主治医なし7名(62.7%)診療所18名(21%)、病院14名(16.3%)
となっている
地域活動・地域サービスへ
12【1975-6-20・21】
すなわち在宅療養のむずかしさはリハ技術や高度の医学的ケアーにあるのではなくこうした弱者としての老人を地域の中に埋没させ一人ぽっ
ちにしておくことにある。一人になったこうした老人はやがて寝たきり老人として家族ごと潜在化してしまうのである。こうした老人のほり
起こしがなくて地域の活動はありえない。ほり起こした老人や家族に接点を見出してやればやる気が起こり地域サービスはスタートするので
ある
40【1979-16-20】
現在、地域リハビリテーションの実施場所は実際にはそのニーズから言っても家庭における在宅サービスが最も多い。その対象は歩行不で
、主として寝たきり老人である。行政的には65歳以上の老人で6か月以上寝たきり状態が続いている者で老人福祉手当の受給者が対象
46【1979-17-25】
橋本は、-ケアの包括性からみて重要な問題は、コミュニティ・ベースでみた場合、わが国の現状ではリハビリテーションの機能が全く欠
落しているという事実である。このことは、脳卒中が死因の25%を占め寝たきり老人40万といわれる現状では真に重大な問題といわれねば
ならない。わが国のPT、OTの養成は、国際的にみて立ち遅れており、今日のところ、ほとんどその活動は施設内に限られているが、その計
画的増員と、コミュニティとの関連における有機的弾力的な活動パターンの開発が急務である-と述べている。
59【1979-17-29】
寝たきり老人の家庭訪問活動をはじめてみて、今までの18年間精一杯実践してきたつもりの病院・施設でのリハビリテーションサービス
の欠けていた部分があまりにも明瞭になり、ああもすればよかった、もっとこうすれば、と悔やまれることが多い
言説のまとめ
・在宅の寝たきり老人の掘り起こしなく
して、地域サービスはありえない
・地域サービスを行うために、PT・OT
の養成、活動パターンの開発は急務
・経験者は、その難しさ、を語る
家族が作る寝たきり老人
32【1978-13-12・13】
入所前状況チェックでは、特に寝たきりとなった原因やその期間を詳細に
聴取しなければならない。脳卒中やリウマチといった疾患により寝たきり
となった場合、その様態は把握しやすく、入所時の身体能力と大きな差異
はない。しかし風邪や転倒といった原因では、家族の者が大事をとって、
人為的にねたきりを作り出している場合が多くみられる。これら老人に対
しては、家族の言葉をうのみにせず、入所時の身体的能力のチェックを詳
細に実施し、ねたきりの真相を明らかにするよう努めなければならない
33【1978-13-13】
在宅ねたきり老人の8割は医師の定期的治療をうけているが、ねたきりの期
間が長くなるにつれて、医師の定期的治療を受けるものの割合が減してく
る。このことは、家族の者がもう治らないと諦め、医療の必要性を認めず
医師の往診を求めないことや、毎日の介護で精一杯ということによるもの
であろう
3
9
【1979-16-19】
地域の障害老人は寝たきり老人を含めてその多くは家族において療養生活
を送っている・・・家族も対象の発病以来、保護的な看病に終始してきて
おり、・・・そのために、全く依存的な生活態度になって、わざわざ人為
的に寝たきり老人が作られている場合が少なくない
4
5
【1979-16-22
・
23】
生きることの基本は、まず自分の身体を自身で臥位であるいは座位で動か
すことであり、そのための適切な介助方法と介助量が決定されなければな
らない。その介助量を計画的に、段階的に減少してゆき、最終的には介助
量をゼロにしてその動作を自立させることを目標にした介助法を採り入れ
なければならない。そのような介助法は家族にも指導されねばならない。
寝たきり老人でも残存能力がゼロであることはあり得ない。家族がゼロで
あると勝手に思い込んでいるのである
家族の介護負担
37【1979-16-19】
・「厚生省の調査(S50)によると、全国で寝たきり老人は44万人で、そ
のうち特養に入所しているのが5万5千人であると報告している。38万
人は家庭にいて家族がほとんど面倒をみているのである。寝たきり老人の
状態は本人自身の問題だけでなく、家族に関わる深刻な問題になり、それ
は地域全体の社会問題になってくる
4
1
【1979-16-20】
1.在宅サービス寝たきり老人 障害老人のなかで、最も深刻な寝たきり
老人は本人のみならず、それを抱える家族にとって切実な問題である。こ
の寝たきり老人によって地域社会を構成する家庭そのものが崩壊する可能
性をはらんでいる。これは寝たきり老人の持つ深刻な側面でもあり・・・
48【1979-17-25】
生活の場である家族において、家族および地域社会との関わり合いを絶つ
ことなく生活することは、長期療養の必要な患者、特に寝たきり老人にと
っては大きな意味を持つものと考えられる。寝たきり老人は、差し迫った
救命の処理の必要もなく、入院治療の適応もないままに在宅で家族の介護
によって生活しているわけであるが、加齢に伴う障害の重度化、複合化に
よってによって介護者の負担は増すばかりで、ついには家庭崩壊に至るケ
ースも少なくないのが現状である。
言説のまとめ
・家族の思い込み、過保護、諦め、が人
為的に寝たきり状態を作ることがある。
・一方で、居宅の寝たきり老人の問題は
、家族の問題でもあり、寝たきり老人の
介護負担は、家庭崩壊にまで至るケース
も少なくない、としている。
考察
13グループ内容のつながりについて
寝たきり老人に対する
否定的イメージの生成
家族が寝たきりを作る
寝たきり老人に対してリハビリは
意味のある関与できる
寝たきり老人の実態・原因
が明らかに
家族崩壊の懸念
施設(特養ホーム)の寝たきり老人の実状
(寝たきりが多い、から介入によって改善
する可能性を持った人も多い、に言説変化)
地域サービス・訪問事業の具体化・課題
看護師・理学療法士の役割
居 宅
施設(特養ホーム)の寝たきり老人
のリハビリ効果の経験
施設(特養)
まとめ
「寝たきり老人」に関する記述は、1975年以降に急
増していた。
「寝たきり老人」については、その実態や要因、否定
的イメージを生成するような言説とともに、リハビリ
テーションを行う意義が強調されていた。
家族については、家族崩壊の懸念とともに、家族が
人為的に寝たきり老人を作ることが指摘され、地域
サービスや訪問事業の意義が指摘されていた。
施設(特養ホーム)の寝たきり老人化が指摘される
一方、施設には本当の寝たきり老人は少ないことも
指摘され、施設の寝たきり老人に対する環境の工
夫、リハビリテーションの効果が指摘されていた。