情報・ネットワーク概論

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情報・ネットワーク概論
2006
(後藤担当 その1)
コンピュータ・ネットワーク工学科
後藤 滋樹
1
このスライドのファイルをダウンロー
ドする時には、次のURLのページに
書いてある注意を読んでください
http://www.goto.info.waseda.ac.jp/
~goto/gairon.html
2
5月9日,5月16日,5月23日
• 後藤滋樹が担当します
• シラバスの三項目に該当する内容です
○光とネットワーク、どちらが速いか (5月16日)
○メディアを呑み込むインターネット (5月23日)
○人間社会は情報交換により成立 (5月9日)
• シラバスとは順序が異なります
3
(予告) レポートの課題
• これから授業の中で提供する話題の中の
あるテーマについて諸君の見解を求める
課題を提示します
• ただし、どのテーマがレポートの対象とな
るか、5月23日の授業の最終回の時まで
秘密です
• レポートの提出方法を、5月23日に説明し
ます
4
後藤滋樹 担当の問題意識
• 次のような観点で諸君の決断を迫ります
5/9日 人間社会は情報交換により成立
素人と専門家
5/16日 光とネットワーク、どちらが速いか
原理と実践
5/23日 メディアを呑み込むインターネット
使う人と作る人
5
人間社会は
情報交換により成立
ー 情報通信と社会 ー
諸君はいかなる分野の専門家になろうとするのか
6
ポイント1.個人としての人間
は弱い
• 走れば犬に負ける
• 力では馬に負ける
岩波講座インターネット第2巻「学習の手引き」 p.xvi
7
人間社会の一体感
哲学者パスカル
Blaise Pascal (1623—1662)
『パンセと小品集』
真空論序言
Préface pour le traité du vide
「一人一人の人間が日々に学問に進歩する
のみでなく,全体としての人類が,宇宙が
老いていくにつれてたえず前進するので
ある.」
http://www-groups.dcs.st-and.ac.uk/~history/PictDisplay/Pascal.html
8
人類の一体感は
情報交換により醸成
• [例] 身近になったアジアの友人たち
メールに返事のない国内よりも
即答のシンガポールが頼りになる
→ 返事がくると思えば依存する
• パスカル的な一体感は,多くのSFの
モチーフになっている
[例] アーサー・C・クラーク
9
アーサー・C・クラークの作品
1968
• A Space Odyssey
Arthur C. Clarke 著
• 2001: A Space Odyssey
(映画)Stanley Kubrick 監督
2001年宇宙の旅
940
1969
SRI # 2
360
• 米国でARPAネットがスタート
#3
UCSB
# 4 UTAH
PDP 10
#1
UCLA
Sigma 7
10
電子メールによる親近感
人間にとって時間の要素が大切である
48時間後
24時間後
約8000通の
メールを分析
した研究
11
挿話1
人間にとって時間の要素が大切である
時は金なり
時間 >> 金
世の中には、お金が一番大切だと考えている人
がいるらしい。それならば、お金が一番大切であ
ると仮定してみよう。すると、お金を手に入れた人
は、そのお金を決して他のものと交換しない筈で
ある。なぜならば、お金が一番大切なのだから。
実際には、人間はお金を他のものと交換をしてい
る。一体どのようなものと交換するのか。
12
現在のインターネットの関係者
• 等しく渇望しているものがある。
• それは睡眠時間
5時間(一日ではなく一週間)
連日3時間
会議の途中に眠ってしまう人
13
教訓・安息日
• 安息日とは
仕事を休んで神に感謝をささげる日
ふつうは日曜日をいう
• 宗教論争はあるがカレンダーは類似
• 人間の頭脳はリセットが必要
reset
挿話終
14
ポイント1.まとめ
個人としての人間は弱い
• 地球上で人間が偉そうにしているの
は、個々の人間が強いからではない
• 人間は社会を構成しているから強い
→ 人間社会はどのように構成されるか
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ポイント2.ネットワーク社会
では分業が進展する
• ネットワーク社会では個人が自立できる
これは正しい,ただし孤立するのではない
• ネットワーク社会 → オタク → 孤独
は誤ったイメージ
• 情報通信革命は産業革命の第二段。
時代のキーワードは「分業」
16
産業革命とアダム・スミス
• 国富論(諸国民の富)の冒頭
は分業の分析
• 産業革命を支えた運輸技術
情報通信技術
17
分業の例題
A君
本10冊
貸し借り
B君
本10冊
18
分業とは他者に依存すること
A君
知識10
A君
コスト
10
知識1 1 1 1 1 コスト1 1 1 1
60
15
享受できる知識の合計
コストの合計
1
19
分業が合理的である理由
• 知識をミクロ経済の手法で分析
– 費用と効用とが一致する点で均衡する
• 知識を保持するための費用
– 人間の脳の中の記憶の費用は良く分からない
コンピュータの内部の記憶機構で近似する
• 知識を使う効用(utility).
– 知識は使うためにある
– 知識を使うと「嬉しい」
20
知識の効用関数— Zipf’s Law
効用
å¿äEå¯óp
限界効用関数
•
–
–
–
–
%
10
10
êîó
量
10
(%)
r
•
5
5
3.33
2.5
2
Zipf (1949)が研究した英単語の出現
頻度
1.67 1.43
1.25 1.11
1
1st:
2nd:
3rd:
4th:
the (10%)
of (5%)
and (3.3%)
to (2.5%)
ジップの法則は次のような場面でも
成立つと言われている
– 都市の人口
– Emacsエディタのコマンド
– 人気のあるWebページ
•
0
0
1
2
3
4
5
6
7
8
Zipf’s law を限界効用関数として採
10 用する
9
順位
èáà
21
知識の費用ー記憶
費用
îÔóp
åXÇ´ b
傾き
費用
å¿äEîÔóp
a3
åXÇ´b
傾き
a3
a2
a1
åXÇ´ b
傾き
a2
b
ÅEÅEÅE
ほとんどb
a1
íPåÍÇÃêî
記憶語数
ディレクトリ型
または
ハッシュを仮定
b
ÅEÅEÅE
ほとんどb
123
ÅEÅEÅE
ほとんどb
íPåÍÇÃêî
記憶語数
cost b
記憶語数
22
均衡点 一人の場合
限界効用
å¿äEå¯óp
utility = cost
限界費用
å¿äEîÔóp
b
語数
23
社会の均衡点
O: 元の均衡点
X: 専門家に頼る場合
A—B: 自分の記憶に頼る
B—C: 専門家に頼る
k > 1 ( 費用が効用を上回る)
higher cost function
A
B
k < 1 ( 他者を頼る費用が効用より下)
C
lower cost function
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専門家の均衡点
専門家の限界効用関数
元の均衡点
orig inal
equilibrium p oint
専門家の均衡点
bra in
素人の均衡点
end us er
re
素人が専門家を頼りに
し始める点
専門家の知識は
圧倒的に多い
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この部分の参考文献
• S. Goto and H. Nojima,
Equilibrium analysis of the distribution of
information in human society,
Artificial Intelligence, 75 (1995), pp.115—130.
• H. Nojima,
Cognitive Analysis on Roles of Others in
Problem Solving,
Ph.D Thesis, Waseda University, March, 2003.
(早稲田大学 博士学位論文)
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どの分野の専門家になるのか
• 専門家†は何故,多忙か
働いてくれる人に任せておくのが,
経済的に合理的である.
• (例) 出版社の論理: 反社会的?
忙しい人に執筆を頼む
暇な人に頼む出版社はいない
†)後のスライドではBrainsと呼ぶ
27
2階層
ネットワーク社会はフラットではない
3階層
28
運輸⇔情報通信は何を運ぶか
• 物質・エネルギーの交換,情報の交換
特に情報の重要性に注目
• 人間社会は情報の交換によって成立
個人は独立の存在ではない
(例外):Robinson Crusoe
• パソコンを使わなくても,インターネットでなく
ても,人間は情報を絶えず交換してきた
(会話,手紙,電話,物語)
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人間社会は「情報」に満ちている
• 貨幣は情報価値である(電子貨幣)
• 人間の行動を規定しているのは情報
• 例:貨幣の価値,制度,慣行…
金融工学,著作権,商標
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まとめ
ネットワークで分業が進展
• 産業革命を支えた運輸技術
アダムスミスの国富論(諸国民の富)「分業」
• 情報通信は分業を推進する
実に多くのものが「情報」である
Brain
Broker =
Gate-keeper
End User
• 例:貨幣の価値,制度,慣行…
金融工学,著作権,商標
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挿話2
日本人は分業が
得意か不得手か
ハロウィーン
vs.
秋祭り
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日本社会の特質
• 分業よりも「平等」を重視する
• 平等主義の一例は「交代制度」
会社や役所における人事異動
• パートタイムのI T 国家ニッポン
インターネットマガジン連載「新・社会楽」
1999年11月(第58回)「フルタイムvs.パートタイム」
2000年10月(第69回)「日本人の個人主義」
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日本の弱点
パートタイム vs. フルタイム
新規プロジェクトがスタートする時
既存の会社の中で対応
←→新しい会社を設立
既存の役所が担当
←→新しい部局を創設
既存の学科が学生を受入れ ←→新しい学部・学科の誕生
従来の枠組にも、それなりの合理性
ただし、相当に工夫しないと、パートタイムはフルタイム
と競争できない。
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新しいものは「胡散臭い」
• 一体、胡散とはどのような臭いか
• 実は「胡散」の意味が
あやしいこと
疑わしいこと
• 新しい物、者、事、会社、組織が
なかなか一人前に扱われない
挿話終
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心構え
社会全体の中での役割を認識
• 分業、分担、を「ズルい」と言わない
• 良い結果も、悪い結果も公開する
• 情報を共有(share)して社会全体の
価値を高める
• チャンスもリスクも取れる人が取る
(take)
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ポイント3.情報通信時代に
問われる日本語
• 大人は言語によって情報を圧縮している
• 言語の壁があると,情報が共有できない
• インターネットは,英語帝国主義か?
英語だけが使われているのではない
現状は各国においてバイリンガル
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言語に注目
• 言語はもちろん重要
• マルチメディア情報とは言うものの、実は
言語(文字)に依存している
• テレビ番組表が好例
• 本講演も日本語のスライドを示し
日本語で話をしている
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アジアの課題
言語の壁
• インターネットにおける実績
ISO-2022-JP, -KR, -CN
• 電子メールの本文とSubject
WEBのタイトルと本文
39
40
41
言語(日本語)
• 言語がバリアとなる(国境)
• 日本語にとって試練の時代
日本語はuniversalな言語であるが
世界言語となるためには妥協が...
• スペイン語、アラビア語の先例
• アジアは英語か中国語か
42
情報は電流のように流れる
ただし言語で表現されている
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