人間禅若者・学生参禅会講演会(2/28)概要

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人間禅若者・学生参禅会講演
岡山市中国坐禅道場
平成22年2月28日(日)
激動の現代と禅
人間禅教団師家 葆光庵丸川春潭
工博 丸川雄浄 [email protected]
激動の時代にどう対処しどう
生きたらいいのか?
• この課題に対し、禅は何か有効な 示唆を与え
ることができるのか?
• 時勢に従って移ろい変わるものと、どういう時
代になっても変わらないものの仕分けが必要。
• 相対的であり変わるものの代表である「生」と
「死」に絶対的で不変な共通項を禅では見るこ
とができる!その禅の絶対的切り口とは?
• 禅で不変なるものを掴んだら、激動の現代にど
う対処し、どう生きることができるのか?
「不易と流行」Continuity and Change
• 「不易流行」:松尾芭蕉が『奥の細道』の旅の間
に体得した概念。
• 「不易を知らざれば、基立ちがたく、流行を知ら
ざれば、風新たならず」 :即ち不変の真理を知
らなければ基礎が確立せず、変化を知らなけれ
ば新たな進展がない。
• 「その本は一つなり」 :両者の根本は一つ。
• 「不易」は、どんなに世の中が変化し状況が変
わっても絶対に変わらないもの「不変の真理」。
• 「流行」は、社会や状況の変化に従ってどんどん
変わっていくもの、変えるべきもの。
激動の時代、何が不易であり、
何が流行なのか?
• 何が変わり、変わらないものは何か?100年
に一度というが決して同じ繰り返しではない。
何かが似ており、何かが変わっている。歴史は
同じ繰り返しをするのではなく、変わらないもの
不易を内包しつつ変わり流行している。
• 未経験の新しい事態の中に、変わらないもの、
不易なるものを見る力が付けば、変わるものが
見えてくる。
【変わるものを見るために不易をつかむ!】
• 不易と流行の「本は一なり」の深意は何か?
激動と云うが、
何が激しく動いているのか?
• 科学技術の進歩?IT技術の進歩?
• 地球環境の悪化速度?資源枯渇の速度?
• 世界的な経済格差の拡大化?発展途上国・
BRICsと先進経済大国との力学的構造変化?
• サブプライムローン以来の世界恐慌の進行?
• 日本の政権交代?日本経済の空洞化?
• 若者の価値観、気質?自殺者3万人超に象徴
される日本社会の精神的混迷?
日本の自殺者数と日本社会の病根
• 最近10年間は、コンスタントに自殺者3万人超。
• 交通事故死亡者5千人以下、神戸淡路大震災
の死者数5千5百名と比して自殺者数は膨大。
• 自殺率(人口10万人あたりの自殺者数)
日本22.9人、中国13.9人、米国11.0人、
インド10.5人、英国6.4人、イタリア6.3人
• 日本の多さの原因は?対策は?
• 命の尊厳の低下と「こころの教育」不在が、又
「生と死」の根本的課題に対する社会の無関心
が透かして見える。
(備考)社会の無関心について
• 社会のマジョリテイの関心事が、目先の「金
の尺度」での課題に特化されている。(命の
尺度、神の尺度が薄れている。)
• 政治、経済、教育、文化のあらゆる分野が、
自己中心の思考に汚染されている。人の為、
家族の為、国の為(利他心)が これほど薄
い時代はない。→孤立させる。→見捨てる。
• 命に限りのある人間にとっての最大の命題と
向き合うことを先延ばしにし、避けている。
(生と死の教育も無く、それに触れる文化も社
会的に欠如
社会の無関心)
変わらないものとは何か?
• 「激動の真実」を掴むためには、あらゆる時
代に貫通する不変なものをしっかり見定めて
おかねばならない。
• 「生死」の命題を根本的に解消するためには、
「生と死を超えるもの」を掴まねばならない。
• 「生と死を超えるもの」とは?そして何故それ
が、生死を貫通して変わらないのか?
• 変わらないものを突きとめ、見定めることが
できれば、生と死の悩みを根源的に救済する
本当の宗教の根源を突きとめることになる。
考える葦である人間の宿命
動物と人類の根本的違いは何か?
• 20万年前に、動物が進化してホモサピエンス
が地球に誕生。 Q.根本的違いは? A.人間
だけが平和で健康な状態で自分の死を考え、
悩み、苦しむ。(動物は死を考えない。)
• 人類誕生以来の宿命的命題:「生死」の命題。
人間は何故死ななければならないのか?死に
たくない!→→死とは何か?人間が生きてい
ると云うことはどういうことか?
• この宿命に、功罪の両面あり(功:精神文化の
高度発展→本当の宗教の誕生)。
生死の命題に対する「解」
• 生死の命題を人類誕生の20万年前より探求
し続けた人類が、19万7500年経過した時代
(今から2500年~2000年前)に至って初めて、
数人の先覚者がこの課題の根本的「解」を得
た。
• 中国の老子、孔子、インドの釈迦牟尼、500
年経過して中近東のキリスト、ムハンマドが、
お互い独自に、同じ生死の命題の「解」を掴
んだ。そして生死の命題に悩み苦しむ人間の
救済のために、それぞれの宗教を創始した。
(世界宗教の誕生)
生死の命題の「解」とは?
• 先覚者達の共通する「解」とは?
• 高々百才にも満たない はかない寿命の人間
に、即 「永遠の命」が宿っていることを発見。
• 世界宗教の創始者達の生死の命題の「解」は
全て同じであるが、ただその呼び名は、大道、
明徳、仏、神などとそれぞれ異なり、また救
済・布教方法も異なっている。
• その掴んだ共通の「解」こそが、「不変絶対」で
あり、「不易」なのである。
「永遠の命」:唯一の不変なもの
• 「永遠の命」これが、根本的な「不易」であり、
「流行」を本当に掴むには、本当の「不易」を
しっかり掴まねば、真の変化が見えない。
• 科学技術の進歩も、政治や経済の変化も、地
球の変貌も、「永遠の命」をしっかり見定め、
この「永遠の命」の尺度で洗い直して見直さな
ければ、それらの「真の変化」を見ることはで
きないし、これからの地球の変化に、人類は
正しく対応できない。
「不易と流行の本は一なり」とは?
• 不易「究極の不変なるもの」と、流行「諸行無
常・万物流転」とは「本は一なり」!?
これは、般若心経の「色即是空、空即是色」の
示すところである。(色が流行、空が不易)
• 「色即是空 空即是色」が判れば、 「はかない
命に、即永遠の命が宿っている」ことが判り、
生々流転するものの中に不易が宿っているこ
とを見抜ける。
• 「不変の真理」が「新しい変化」として出現する。
「不易即流行 流行即不易」を、激動の最中に
見る!
「千の風」と「色即是空 空即是色」
• 「千の風になって」もまた、「色即是空 空即
是色」の示す掌の内のことである。
• 相対変化の代表である生死をとらえて、死は
即千の風( 永遠の命)になる。(色即是空)
• 千の風( 永遠の命)即、変化しうるもの「秋に
は光になり 冬はダイヤのようにきらめく雪に
なり 朝は鳥になり 夜は星になり 死んでな
んかいない」となる。(空即是色)
• 北米原住民インデイアン詩人の感性が「生と
死の同一性・連続性」を捉えている、と見る。
千の風になって
作詞:不肖
作曲・翻訳:荒井満
歌手:秋川雅史
1.私のお墓の前で 泣かないでください
そこに私はいません 眠ってなんかいません
千の風に千の風になってあの大きな空を吹きわたっています
2.秋には光になって畑にふりそそぐ
冬はダイヤのようにきらめく雪になる
朝は鳥になってあなたを目覚めさせる
夜は星になってあなたを見守る
3.私のお墓の前で 泣かないでください
そこに私はいません 死んでなんかいません
千の風に千の風になってあの大きな空を吹きわたっています
4.千の風に千の風になって
あの大きな空を吹きわたっています
あの大きな空を 吹きわたっています
人間形成のための禅とは
• 人間形成の第1段は、本当の不易をしっかり掴
む。自分に宿っている永遠の命(本来の面目)を
悟る(見性入理)。その為には先ず、「相対と絶
対」、「知性と感性」の位置づけを明確にする必
要がある。
• 「永遠の命(本来の面目)」を悟ることは、思考し、
哲学してできることではない。思考せず「一念不
生」の三昧の架け橋を渡って彼岸(絶対の領域)
に行かねば見えない。
• 後悟の修行で、差別の妙所を究め、五蘊を空じ
て、最終的には更に本当の三昧に徹し切って、
迷悟両忘の真の達人になる(見性了了)。
人間形成をして、激動の現代にどう
生かせるか(箇条的事例)
• 山川草木、人種貴賤を問わず、自分と一体の見地。
他を我が面と見、自他の畦を切る。(道眼を開く)
• 主体性を持ち(自分に合掌)、全ての人(他に合掌)
と把手供行できる。一滴の水の命の重さを識る。
(道眼磨き見識を持つ)
• 情報過多、精神的ストレスからの根本的解放。二
念を継がず。正受にして不受。(道眼・道力の働き)
• 「吾我」意識を空ずる。エゴの根本的解放。童子の
足下を拝す。滅私利他。(境涯を磨く)
• 禅機横溢!間髪を入れない実行力。(道力の充実)
激動の現代と禅のまとめ
• 自己の内なる絶対不動が、激動の現代社会に躍
り出て、活発々地に働き出す。
• 目先の変化に迷わされることなく、どんな厳しい
難局に対しても、ある時は大胆に、ある時は柔軟
に、怯むことなく、正鵠を見抜いて間髪を入れず、
世のため人のために働き出す。
• 【両刃鋒を交えて避くることを須いず、好手還って
火裏の蓮に同じ。宛然自ずから沖天の気有り。】
(洞山五位:兼中至):達人の境涯。
• 激動の現代社会を、絶対不動に生き切る!
4.人間形成のための禅と職業
補遺(1ー1)人間形成のための禅とは
4.1.人間形成のための禅とは
・山岡鉄舟、中江兆民等、明治の志士たちの腹
づくりの集まり「両忘会」が、「人間形成のた
めの禅」(人間禅)の起源である。
・禅は信仰の対象でも、目的でもなく、人間形成
のための手段・ツールでしかないが、人間形
成のための素晴らしい手段(人類が積み上げ
継承した最高の文化)の一つである。
・本物の人物になるために一生をかける。終生
自己教育。道眼を磨き道力を養う。
補遺(1ー2)人間形成のための禅とは
4.人間形成のための禅と職業
3.禅による人間形成(2)
ー道力を養う(人間力を付ける)ー
4.2.人間形成のための禅とは(2)
• 道力の養成は、坐禅における数息観法が有効
であり、この実践を「静中の工夫」という。「動中
の工夫」として、「経行」や「作務」の行があり、
「剣道の稽古」「茶道の稽古」もそうである。
• この道力の養成で肝要なことは、実践的に三昧
を身につけることであり、その深さが問題である。
• 古来一日一炷香といって、毎日線香一本(約45
分間)の数息観法の継続実践が、道力をつけ、
人間形成を積む為に極めて大切である。
• 数息観法は、非宗派性の練心法であり、学校教
育の「こころの教育」に最適である。
4.人間形成のための禅と職業
3.禅による人間形成(1)
補遺(1ー3)人間形成のための禅とは
補遺(1)人間形成のための禅とは
4.2.禅による人間形成とは(1)
ー道眼を開き磨く(本当の見識を持つ)ー
• 道眼を開くには、数息観を幾ら永年やってもできるもの
ではなく、正脈の師家に参禅し、公案の工夫によって、
見性するということが不可欠。
• 見性の為の工夫の仕方の基本は、公案の工夫三昧に
徹すること。公案と自分とが一体になって見性の端的
に迫まる。
• どの則も 「一念不生の三昧境」→「禅定三昧」に打入し
なければ、仏祖方の境涯に自分の境涯を高めることは
できない。
• 公案を目標にして自分の殻を打破し、より大きな
より高い境涯へと人間形成してゆく。公案三昧に
なる骨折りが人間形成の原動力。その骨折りの
過程が重要。
4.人間形成のための禅と職業
補遺(1ー4)人間形成のための禅とは
3.禅による人間形成(3)
ー公案と人間形成ー
4.2.人間形成のための禅とは(3)
• 「禅による人間形成」とは、公案三昧になりき
ることにより、自らの低い境涯を、古則公案
の中に塗り込められている仏祖方の高い人
間形成の境涯にまで高めていく修行ある。
• 公案三昧、数息三昧になる骨折りにより、道
眼が開かれ、道力が養われる。道眼が開か
れることにより道力が増し、道力が付くことに
より、またさらに道眼が磨かれる。
• 東洋的無の法財は人類の精神文化の最高
峰の一つとして、二千五百年間色あせること
なく、現代に生き生きと伝承されている。
補遺(2ー1)数息観法:息の位置づけ
・ 「息」という字は、「自(おのず)」、と、「心」を合わ
せて出来た字である。
・ 息は、心臓等の自律神経系とは異なり、意志で
もってしばらく息を止めることが出来る知覚神経
系・運動神経系に属しているといえるが、寝てい
る時、息をしようと意識していなくても自然に息
をしており、自立神経系にも属する。
・ 即ち、息は、フィジカルとしての肉体とメンタルと
しての心の中間的性格に位置し、肉体とこころ
の架け橋に成ることができ、智から慧への入り
口となり得るのである。
補遺(2ー2)数息観法:姿勢と数息
• 姿勢は、古来からの坐禅の姿勢が最も適す。ただ椅
子に腰掛けた状態でもやむを得ない。
• 下腹を前に突き出し、腰骨から脊梁骨をまっすぐ伸ば
す。腰から上の重心を、尻と両足でなす三角形の中
心に入れる。
• 前後左右に揺振して、重心が偏っていないことを確か
めた後、数息に入る。
• 随意の自然の息を数え、意識を数息のみにする。
• 吸う息と吐く息で、ひとーつ、ふたーつ、というように
10まで数える。途中で息を数えるということ以外の念
慮が湧き起こり、息を数えることよりそちらに気が行き、
息を数えるという数息が乱れたり、間違えたりすると、
また初めの“ひとーつ”に戻してやり直し、繰りかえす。