Transcript 第八回

思想と行為
第8回 ホッブス&ロック
「議会制民主主義」
吉田寛
トマス・ホッブス
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イギリス(西イングランド)
1588年生-1679年(91歳)没
中産階級専門職(牧師)の
家庭→オクスフォード大学
→家庭教師、顧問、社会思
想家
近代国家の概念を構築
『リバイアサン』『対話-イン
グランドのコモンローをめぐ
る』
ジョン・ロック
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イギリス(西イングランド)
1532年生-1704年(72歳)没
中産階級専門職(弁護士)
の家庭→オクスフォード大
学
→大学講師、医師、官僚
議会制民主主義の概念を
構築
『人間知性論』『統治論』
写真 http://www.geocities.jp/s3aoki/englandoxford.html より
社会の作り方(政治)の歴史
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「善く生きる」
– 善く生きるための善い社会を作る(倫理と政治のリンク)
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古代
– 古代帝国
– 直接民主制
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神→(神官)王→人民
市民→選挙、選ばれた代表→市民
中世 神→教会→王、諸侯→領民
→都市(市民)
近代
– 絶対王政
神→王→国民(ただし、議会と法による王
権の抑制)
– 議会制民主主義
国民→議会(立法)→国民
関係年表
絶対王政
1633 ガ裁判
1641 デ『省
察』
独裁制
1654 パ回心
復古的
絶対王政
議会制
民主主義
1687 ニュ
『プリンキピ
ア』
1588年 イギリス、スペ
インの無敵艦隊を破
る(世界一の植民地
帝国へ)
1640-1660年 清教徒
革命(国王処刑とクロ
ムウェル独裁政治)
1651年 『リバイアサ
ン』(ホ)
1688年 名誉革命
1689年 『統治論』(ロ)
1789年 フランス革命
1588年
ホ
ッ
ブ
ス
1632年
ロ
ッ
ク
亡
命
1679年
亡
命
1704年
乱ありて政治学あり
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時代背景のまとめ
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近代のはじまり(デカルトやパスカルの時代)
イギリスは「市民革命」の時代⇔フランス
議会派と国王派の戦い 政権交代
教会、国王、議会、市民らの勢力争い
最終的には「名誉革命」で市民優位の議会制民主主義確
立
ロックとホッブスの人生
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中流の専門職出身の知識人
市民の立場から新しい国家、社会のあり方を考える
亡命生活を余儀なくされる
自律的人間性を基本とした平和と寛容の社会思想家
(倫理と政治のリンク)
ホッブスの思想-1
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人間観
– 神と切り離された人間像≒デカルト・パスカル
– 生命として自己保存する存在
• 生命を助長する行為が「善」、その反対が「悪」
– 自然権(善)
• 個々の人間が自己保存しようとする権利を認める
• 基本的人権(自由権、生存権などなどのルーツ)
– 「万人の万人に対する戦い」(自然状態)
• 何かあれば、すぐに武器を取ってお互いに奪い合う社
会
• 神なき人間の悲惨(悪)≒パスカル
ホッブスの思想ー2
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社会の作り方
– 社会的契約
• 自己保存のための選択能力「理性」による契約↓
• お互いに、平和と自己防衛のため、武器を捨てる(自
己保存の権利を制限する)約束
• 約束を守るための強制力を持つ「共通権力」を設立す
る契約
– 「代表」
• 人々に共通権力を委任された存在、人々の利益を代
表する
• 人々は代表者の権力に従わねばならない
• 議会、王、独裁者、それぞれの正当化に使われた議
論
ロックの思想
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議会制民主主義の概念を確立
– ホッブスの思想を議会派の立場で具体化
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主権在民
– 近代国家:主権=一つの権力、一つの法
– 主権は国民に(議会を通して主権は働く)
– 国民の権力(議会)は国王の権力に勝る
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「民主主義」の確立
– 民主主義は錦の御旗「自由民主主義(日本)」「人民共和
国(中国、旧ソ連)」「立憲民主主義(英国)」「自由と民主
主義(アメリカ、フランス)」「社会民主主義(北欧)」「民主
化(A-A諸国)」
人間観(ロック『統治論』)
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自然状態 自己保全の自然権⇔戦争状態
– 「自分が適当と思うままに自分の所有物と身体を処理す
るような完全な自由な状態である。それはまた、平等な状
態でもあり、そこでは権力と支配はすべて互恵的であって、
他人より多くを持つものは一人もいない。」(『統』p.196)
– 理性による自然法の各人による執行
• 皆が必要なだけ(腐らないだけ)とり他人を尊重
– 自然状態は平和状態⇔ホッブス
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所有(『統』p.207-)
– 共有権+労働→私有(衣食住の必要と腐敗の範囲)
– 貨幣の発明→保存・蓄積→消費の限界を超えた所有→
争い
– 自然状態には、法、裁判官、執行権力がない→「統治」へ
市民社会(『統治論』)
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父権(両親の権力)(『統』p.226)
– 自己保存の能力に欠ける者の保護、教育
– 子供の理性が発達し、行動を律することができる「自由
人」になるまで
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市民社会、政治社会の結成(『統』p.240)
– 国民は生命、所有、自由を保存し、社会を存続させるた
めの政治権力を共同社会に委ねる(国家)
– 立法部(議会)が最高権力(主権)を持つ⇔絶対君主でな
く
– 市民の多数派の同意(委任)がこの権力の理由であるか
ら
革命(『統治論』)
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統治の解体について(『統』p.325)
– 征服された場合
– 立法部の破壊と解体
• 外国による征服、君主の横暴、政治家や官僚の怠惰、立法部や
行政部が国民の委任に背く
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反乱、革命の権利
– 国民は、国民による立法部再設立の権利を持つ
– 統治の解体を判断する最終的な裁き人は国民
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「統治」の根拠
– 共同社会に権力を委ねるているのは国民の選択
民主主義を考える
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日本の民主主義
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政治参加と投票率
「お上」意識とパターナリズム
マスコミとジャーナリズム
専門分化
「ガバナンス」をめぐる議論
– 政府による上からの統治を疑う
– 自主参加、関係者包括、情報公開、合意形成、
合法性、説明責任などの重視
社会の作り方
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ただ平和で自己保存できれば善いのか?
– ソクラテス「ただ生きるのではなく、善く生きよ」
– 国家と政治の倫理だけでは不十分
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法と道徳の基礎へ
– カント「人格の尊重」
– ベンサム、ミルの「功利主義」
参考文献
 『ホッブス』田中浩(著)、清水書院。
 『世界の名著(ロック、ヒューム)』、大槻
春彦(編著)、中央公論社
 連絡 アンケートへの回答はwebに
http://www.geocities.jp/yoshida_inf/siryo/res.htm