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物理システム工学科3年次 物性工学概論 第火曜1限0023教室 第11回 スピンエレクトロニクスと材料[1] 磁性入門 大学院ナノ未来科学研究拠点 量子機能工学分野 佐藤勝昭 復習コーナ 第10回で学んだこと 読み出しは、レーザー光を絞ったときに回折限 界で決まるスポットサイズで制限されるため、波 長が短いほど高密度に記録される。 光ストレージには、読み出し(再生)専用のもの、 1度だけ書き込み(記録)できるもの、繰り返し記 録・再生できるものの3種類がある。 記録には、さまざまな物理現象が使われている。 復習コーナ スポットサイズ レンズの開口数 NA=nsinα d=0.6λ/NA 現行CD-ROM: NA=0.6 CD-ROM: λ=780nm→d=780nm DVD: λ=650nm→d=650nm BD: NA=0.85 λ=405nm→d=285nm HD-DVD: NA=0.6 λ=405nm→d=405nm α スポット径 d 復習コーナ 光記録に利用する物理現象 CD-ROM, DVD-ROM: ピット形成 CD-R, DVD-R: 有機色素の化学変化と基板の熱変形 CD-RW, DVD-RAM, DVD-RW, DVD+RW, DVR: アモルファスと結晶の相変化 MO, MD, GIGAMO, AS-MO, iD-Photo: 強磁性・常磁性相転移 ホログラフィックメモリ:フォトリフラクティブ効果 ホールバーニングメモリ:不均一吸収帯 復習コーナ 光ディスクの特徴 リムーバブル 大容量・高密度 ランダムアクセス 現行10Gb/in2:ハードディスク(70Gbit/in2)に及ばない 超解像、短波長、近接場を利用して100Gbit/in2をめざす 磁気テープに比し圧倒的に有利; カセットテープ→MD, VTR→DVD ハードディスクに比べるとシーク時間が長い 高信頼性 ハードディスクに比し、ヘッドの浮上量が大きい 復習コーナ 光ディスクの面記録密度の伸び 光ディスク MO ハードディスク 鈴木孝雄:第113回日本応用磁気学会研 究会資料(2000.1) p.11に加筆 復習コーナ CD-ROM ポリカーボネート基板:n=1.55 λ=780nm → 基板中の波長λ’=503nm ピットの深さ:110nm ~ ¼波長 反射光の位相差π:打ち消し http://www.infonet.co.jp/ueyama/ip/multimedia/cd.html 復習コーナ CD-RW 光相変化ディスク 結晶とアモルファスの 間の相変化を利用 http://www.cds21solutions.org/main/osj/j/cdrw/rw_phase.html 復習コーナ 光相変化記録 アモルファス/結晶の相変化を利用 書換可能型 成膜初期状態のアモルファスを熱処理により結 晶状態に初期化しておきレーザ光照射により融点Tm (600℃)以上に加熱後急冷させアモルファスとして記録。消 去は結晶化温度Tcr(400℃)以下の加熱緩冷して結晶化。 Highレベル:Tm以上に加熱→急冷→アモルファス Lowレベル:Tcr以上に加熱→緩冷→結晶化 DVD-RAM: GeSbTe系 DVD±RW: Ag-InSbTe系 復習コーナ 相変化と反射率 初期状態:結晶状態 R:大 記録 記録状態:アモル ファス状態 R:小 消去 レーザスポット 記録マーク 復習コーナ CD-R 有機色素を用いた 光記録 光による熱で色素 が分解 気体の圧力により 加熱された基板が 変形 ピットとして働く 復習コーナ DVDファミリー DVD-ROM DVD-R DVD-RAM DVD-RW DVD+RW 容量(GB) 4.7 / 9.4 2層8.54 3.95 / 7.9 4.7 / 9.4 4.7/9.4 4.7/9.4 形状 disk disk cartridge disk disk マーク形成 材 料 ピット形成 1層 R=45-85 2層 R=18-30 650/635 熱変形型 相変化型 相変化型 有機色素 GeSbTe系 AgInSbTe系 相変化型 AgInSbTe系 R=45-85% R=18-30% 638/650 R=18-30% 650/635 R=18-30% 650 0.6 0.6 0.6 0.6 0.65 最短マーク長 1層:0.4 2層:0.44 0.4 0.41-0.43 0.4 0.4 トラック幅 0.74 0.8 Wobbled Land pre-bit 0.74 Wobbled L/G 0.74 Wobbled Land pre-bit 0.74 HF Wobbled groove 105 103-104 103-104 レーザ波長 レンズNA 書き換え可能 回数 - - 650 復習コーナ MO(光磁気)記録 記録: 熱磁気(キュリー温度)記録 再生: 磁気光学効果 光を用いてアクセスする磁気記録 磁化に応じた偏光の回転を電気信号に変換 MO, MDに利用 互換性が高い 書き替え耐性高い:1000万回以上 ドライブが複雑(偏光光学系と磁気系が必要) MSR, MAMMOS, DWDDなど新現象の有効利用可能 復習コーナ 光磁気ディスク 記録: 熱磁気(キュリー温度)記録 再生: 磁気光学効果 MO: 3.5” 128→230→650→1.3G→2.3G MD:6cm audio 70 min →Hi-MD audio13 hr iD-Photo, Canon-anasonic(5cm) 復習コーナ 光磁気記録 情報の記録(1) M レーザ光をレンズで集め磁性体を加熱 キュリー温度以上になると磁化を消失 冷却時にコイルからの磁界を受けて記録 Tc 温度 Tc コイル 外部磁界 光磁気記録媒体 光スポット 復習コーナ 光磁気記録 情報の記録(2) 補償温度(Tcomp)の利用 アモルファスTbFeCoは 一種のフェリ磁性体なので 補償温度Tcompが存在 TcompでHc最大: Hc M 記録磁区安定 室温 Fe,Co Tb Tb FeCo Mtotal Tcomp Tc T 復習コーナ 光磁気記録 情報の読み出し 磁化に応じた偏光の回転を検出し電気に変換 D1 LD + D2 N S S N N S 偏光ビーム スプリッタ 第11回に学ぶこと 磁界の定義 電流による定義 力による定義 両者をつなぐもの 磁界の発生と計測 磁気モーメントと磁化 磁性に親しもう 磁性体を特徴づけるもの:磁気ヒステリシス 磁性体は何に応用されているか 永久磁石 磁石になる元素たち 磁界の定義(1) 電流による定義 単位長さあたりnターンのソレノイドコイルに電流I [A] を流したときにコイル内部に発生する磁界*の強さH [A/m]はH=niであると定義する。 *応用磁気系用語では磁界、物理系用語では磁場という。 いずれも英語ではmagnetic fieldである。 q2 q1 r 磁界の定義(2) q1 F F -q2 r 2. 力による定義 ・距離r だけ離れた磁極q1[Wb] と磁極q2[Wb]の間に働 く力F[N]は、磁気に関するクーロンの法則 F=kq1q2/r2 で与えられる。kは定数。 磁極q1がつくる磁界H中に置かれた磁極q2 [Wb]に働く 力F[N]はF=q2Hで与えられるので、磁界の大きさは H=kq1/r2で表される。 2つの定義をつなぐ q1 q2 F H 一方、q1から磁束が放射状に放出しているとして、半径rの 球面を考える。 ガウスの定理により4r2B=q1であるからB=q1/4r2 磁束密度B [T=Wb/m2]とHを結びつける換算係数0を導入 するとB=0H となる。 するとH=q1/40r2. となり、これよりクーロンの式の係数kはk=1/40となる。 従って、クーロンの式は F=q1q2/40r2 +[T]はテスラ、[Wb]はウェーバーと読む。 cgs-Gauss系の単位[G](ガウス)との関係は、1[T]=10000[G] 真空の透磁率0は、410-7[H/m] ここに[H]はヘンリーと読む。 SI単位系とcgs-emu単位系 磁界Hの単位:SIではA/m、cgsではOe(エルステッド) 磁束密度Bの単位:SIではT(テスラ)、cgsではG(ガウス) 1[T]=1[Wb/m2]=10000[G] B=0H+M; cgsではB=H+4M 0=410-7[H/m]; 真空中でH=1[A/m]の磁束密度は 410-7[T]=1.256[T] cgsで測ったH=1[Oe]=79.7[A/m];B=100 [T]=1[G] 磁化M:単位体積[m3]あたりの磁気モーメント[Wb・m] M=1[Wb・m-2] →M=(10000/4)[emu]=796[emu] 1[A/m]=410-3[Oe]=0.0126[Oe] 1[Oe]=(4)-1103[A/m]=79.7[A/m] 磁界の発生: 電磁石 空心ソレノイドコイル 空心電磁石 せいぜい10mT ソレノイド 1cmあたり100ターン 1Aの電流を流すと 10000A/m、 磁束密度は4πx10-7x 104= 12.6mT 超伝導電磁石 10cmに1000ターン、 100A流すと 106A/m;1.26T 鉄心電磁石 鉄心電磁石 約B=2T程度 水冷コイル 超伝導コイル 最大10T 磁界の測定 ガウスメータ ホール素子で測定 ホール素子 ホール・プローブ QUIZ1 1cmあたり1,000回巻いた空心のコイルに1Aの 電流を流したときの磁界の強さはいくらか (SI単 位) 。1000turn/cm=105turn/m このときの磁束密度はいくらか(SI単位)。 B= 0H (0=410-7[H/m]) この中に比透磁率r=8,000のパーマロイ合金 (Fe80Ni20)を入れたとき、磁束密度はいくらか。 B=r 0H 磁界の大きさ 地磁気の大きさ:場所によるが B~50 T (H=B/0~40 A/m) 空心ソレノイドで作れる磁界:10 mT 鉄心電磁石で出せる磁界:ほぼ 2 T 超伝導電磁石で出せる磁界:ほぼ 10 T ハイブリッドマグネット 30-45 T パルス超強磁界(非破壊型) 60T パルス超強磁界(破壊型) 850 T 東北大金研の 31T ハイブリッド マグネット 磁極と磁気モーメント 磁石には、N極とS極がある。 磁界中に置かれた磁性体にも磁極が誘起される。磁極 は必ず、NSの対で現れる。(単極は見つかっていない) 磁極の大きさをq [Wb]とすると、磁界によってNSの対に 働くトルクは-qdHsin [N・m]=qdsin [Wbm] H[A/m] 必ずNとSが対で現れるならm=qrを磁性を扱う基本単位 と考えることが出来る。これを磁気モーメントという。単 位は[Wbm] 磁気モーメント rsin qH +q [Wb] r 磁気モーメント -qH m=qr [Wbm] 一様な磁界H中の磁気モーメントに働くトルクTは T=qH r sin=mH sin -q [Wb] 磁気モーメントのもつポテンシャルEは E=Td= mH sin d=mH(1-cos) ポテンシャルの原点はどこにとってもよいから E=-mH m//Hのときエネルギーは極小になる。 mはHに平行になろうとする。 単位:E[J]=-m[Wbm] H[A/m]; (高梨:初等磁気工学講座)より 磁界(磁場)H、磁束密度B、磁化M 磁界H中に置かれた磁化Mの磁性体が磁束密 度は、真空中の磁束密度に磁化による磁束密 度を加えたものである。すなわち、B=0H+M M B=0H 真空中での磁束密度 B=0H+M 磁性体があると磁束密度が 高くなる。 磁化 磁性体に磁界を加え たとき、その表面には 磁極が生じる。 この磁性体は一時的 に磁石のようになるが、 そのとき磁性体が磁化 されたという。 (a) (b) (高梨:初等磁気工学講座)より 磁化の定義 ミクロの磁気モーメントの単 位体積あたりの総和を磁化と いう。 K番目の原子の1原子あたり の磁気モーメントをkとする とき、磁化Mは式M= kで 定義される。 磁気モーメントの単位は Wbmであるから磁化の単位 はWb/m2となる。 (高梨:初等磁気工学講座)より 磁化曲線 磁性体を磁界中に置き、磁界を増加していくと、磁 性体の磁化は増加していき、次第に飽和する。 磁化曲線は磁力計を使って測定する。 VSM:試料振動型磁力計 試料を0.1~0.2mm程度のわずかな振幅 で80Hz程度の低周波で振動させ、試料の 磁化による磁束の時間変化を、電磁石の 磁極付近に置かれたサーチコイルに誘起 された誘導起電力として検出する。誘導起 電力は試料の磁化に比例するので、磁化 を測定することができる。 スピーカーと同じ振動機構 磁極付近に置いたサーチコイル 電磁石 VSMブロック図 丸善実験物理学講座「磁気測定I」 p.68より Y2BiFe4GaO12の磁気ヒステリシス 0.05 面内・面直 方向の比較 面内方向 磁化(T) 0 -60000 -40000 -20000 0 面直方向 20000 40000 60000 磁場(A/m) -0.05 磁性体を特徴づけるもの 磁気ヒステリシス 強磁性体においては、そ の磁化は印加磁界に比 例せず、ヒステリシスを 示す。 O→B→C:初磁化曲線 C→D: 残留磁化 D→E: 保磁力 C→D→E→F→G→C: ヒステリシスループ 縦軸:磁化 横軸:磁界 (高梨:初等磁気工学講座テキスト) 磁気ヒステリシスと応用 保磁力のちがいで 用途が違う Hc小:軟質磁性体 磁気ヘッド、変圧器鉄心、 磁気シールド Hc中:半硬質磁性体 磁気記録媒体 Hc大:硬質磁性体 永久磁石 このループの面積が磁石に蓄積される磁気エネルギー 高周波の場合はヒステリシス損失となる。 キュリー温度とネール温度 原子磁気モーメントが整列している状態には、 強磁性と反強磁性がある 温度が高くなると整列させる力に熱的にランダ ムにしようとする力が勝って常磁性になる 強磁性常磁性の転移温度をキュリー温度 反強磁性常磁性の転移温度をネール温度 という。 自発磁化の温度変化 さまざまなJについ て、分子場理論で 交点のM/M0をT に対してプロットす ると磁化の温度変 化を求めることが できる。 ×は鉄、●はニッケル、○はコバルトの実測 値、実線はJとしてスピンS=1/2,1,∞をとったと きの計算値 磁性体はどこに使われている? 磁気記録、光磁気記録→IT 光アイソレータ→光ファイバ通信 永久磁石→モータ、アクチュエー タ 変圧器、インダクター用磁心 ハードディスク 永久磁石のいろいろ 磁石(永久磁石)は何で出来ている? 鉄? いいえ。鉄だけの磁石はありません アルニコ磁石(AlNiCoFe) 1930年代に開発 フェライト磁石(BaFe12O19 or SrFe12O19 ) 1936年加藤与五郎、武井武博士(東工大)が発明 サマコバ磁石SmCo5 1960年代に開発 ネオジム磁石Nd2Fe14B 1982年佐川眞人さん(当時住友特殊金属勤務)が発明 磁石のいろいろ www.26magnet.co.jp/ webshop/top_menu.htmlより フェライト磁石 ネオジム磁石 BaFe2O4 NdFe2B14 ラバー磁石 サマコバ磁石 SmCo5 キャップ磁石 アルニコ磁石 FeAlNiCo 磁石応用製品 永久磁石の最大エネルギー積(BH)max の変遷(http://www.aacg.bham.ac.uk/magnetic_materials/history.htm) BHmax