Transcript Ad.CAGMyoD

研究内容紹介
1. 海洋産物由来の漢方薬の糖尿病への応用
Insulin concentration (ng/mL)
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Compounds
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糖尿病患者は長寿社会を迎え、予備軍も含めると1300万名を越すと言われている。
動脈硬化や肥満などを伴うメタボリック症候群の増加だけでなく、新規血液透析導入患
者は糖尿病性腎症が全体の40%を越え、血液透析患者全体でかかる医療費は1兆5
000億円を超えている。糖尿病のコントロールは今や医療費全体を押し上げる大きな
要因となっており、その意味でも国民病である。
治療に関してはグリベンクラミド(スルフォニールウレア系薬剤)やインスリンをはじめ
として、幾つかの薬剤が開発されて来たが、未だに完全なものはない。
一方、近年海洋産物由来の成分に対する注目は、生物由来の成分が複数の機序によ
り疾患に働く事、西洋薬と比べると有害作用が少なく穏やかに効果があることなどによ
り、特に慢性疾患に対して有効な薬効を持っているものが報告されて来た。
当該物質は海洋産物はヒジキ(Sargassum fusiforme (Harv.) Setchess)から抽出された
多糖成分である(A)。それを、分子ふるいにかけA1~A6まで(M.W. 30000 ~ 1000を均
等に分離)にして、検討した。試験した方法はラット膵臓β細胞の樹立細胞のRIN-5F細
胞を用いて当該物質がインスリンを分泌させるかどうかを検討した。培養液中に分泌イ
ンスリンを測定した結果をグラフに表したが、何の薬剤も入れないblank controlや培養
液中に高めの糖を入れたものに比べたら、Aを100μMを入れたものはSU剤の一つであ
るグリベンクラミドと同様なインスリン分泌刺激能を示した。分子ふるいにかけたものと
してはA1(平均M.W.27,600)とA5(平均M.W. 3,400)が高いインスリン分泌刺激能を示
したが、分離前のAより低かった。
これらの細胞毒性はグリベンクラミドより低く、SU剤長期使用によるβ細胞への毒性も
回避できるかもしれない。現在、糖尿病モデル動物での実験で臨床有用性を更に検討
している。
2. 遺伝性筋疾患の診断・治療法の開発
Ad.CAGMyoD
transduction
polyA MyoD cDNA CAG promoter
Ad.CAGMyoD の構造
Fibroblasts
Myoblasts
Myotube
 遺伝子診断
 治療薬剤スクリーニング
筋芽細胞、さらには筋管細胞へと
分化を遂げた
Ad.CAGMyoD 導入培養線維芽細胞
 再生医療
筋特異的転写調節因子であるMyoDは、非筋細胞を筋細胞へと分化誘導する能力を有する。
私たちは、MyoD発現組換えアデノウィルスベクター( Ad.CAGMyoD )を作成、同ベクターの導入
によって、培養線維芽細胞を筋肉細胞へと高率に形質転換するシステムを確立した。
このシステムを遺伝性筋疾患患者さんの遺伝診断、治療薬剤スクリーニング、さらには再生医療
へと応用することを試みている。
3. 筋ジストロフィーの病態の解明
図1;DMDモデルマウス(mdx)では血流の障害が
みられる。
デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)は
筋ジストロフィー症の中で最も発症頻度が
高く、筋力の低下が進行して死に至る疾患
である。一般に、DMDの筋は運動等の機
械的な刺激で壊れていくと考えられている。
しかし、私たちはDMDでは血流の異常も存
在し、筋肉の崩壊には機能的な虚血が関
与する可能性を見いだした(図1)。
図2;DNAマイクロアレイを用いた実験の
シェーマ
そこで現在は、DMDのモデルマウスと野生型マウスの動脈の遺伝子発現パターンを比較する
ため、血流障害に関わる分子をDNAマイクロアレイを用いて探索している(図2)。この結果を元
に新たな治療薬を検討していきたいと考えている。