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URu2Si2
~隠れた秩序と微弱反強磁性、超伝導の共存~
主な特徴
TC(超伝導転移温度)
= 1.2K ( ~ 1.4K )
結晶構造
正方晶ThCr2Si2型
γ(電子比熱係数)
= 110mJ/moleK2
重い電子系超伝導体
反強磁性秩序を示す
μ = 0.03(±0.01)μB
マクロな物理量で異常
隠れた秩序 ( hidden order : HO )
磁性と超伝導が共存する主なU化合物
c
a
SC + 強磁性
SC+反強磁性
UGe2
URhGe
UPd2Al3
UNI2Al3
UPt3
SC+反強磁性
+隠れた秩序
URu2Si2
比熱、熱膨張、電気抵抗測定
比熱
⇒ T0=17.5K で異常
ΔC / T0
~ 300mJ/molK2
何らかの秩序状態への相転移
(発見当初SDWが有力)
熱膨張
T0
電気抵抗
T0
T0
T (K)
一方、中性子散乱において、同じ17.5K ( = Tm )で
微弱反強磁性秩序
を観測
Q=( 0 0 π/ c )
μ = 0.03 (±0.01)μB
*UPt3 でも同程度の小さな磁気モーメントによる
反強磁性秩序
TN ~ 5.8K
c
⇒ しかし、比熱などに
大きな異常は現れない
a
比熱、電気抵抗、熱膨張測定での大きな異常
中性子散乱での微弱反強磁性
隠れた秩序状態(HO) の存在を示唆
問題点
同じ温度T0=17.5Kで起こる微弱反強磁性秩序と比熱、電気抵抗等
の大きな異常をどのように関連付けるか
関連性なし ( Tm = T0 は偶然一致)
HO=AFQ (反強四重極秩序)
微弱反強磁性秩序
と
隠れた秩序(HO)
5f電子 ⇒ 局在
or
付随して起こる
(微弱モーメントを生む隠れた秩序変数)
HO= unconventional SDW
5f電子 ⇒ 遍歴
5f電子 = 局在
U 4+ ( 5f 2 )
⇒
フント則
スピン軌道相互作用
L=5 S=1
⇒
J = 4 (9重縮退)
結晶場により
分裂
singlet
9.6meV
doublet
3.8meV
Santini のモデル
結晶場項
HO = AFQ (反強四重極秩序)
四重極モーメント
の相互作用
ゼーマン項
四重極モーメント
・・・・ 異方的な電荷分布を表す
結晶場基底状態で縮退が残っている時、
いずれかの成分が秩序化
縮退解ける
比熱、電気抵抗、熱膨張などに異常
URu2Si2 ・・・・ 結晶場基底状態は1重項
1重項間の非対角成分(< Γ3 | Q | Γ11 > ≠ 0)が秩序変数
O22 = Jx2 - Jy2
Oxy = JxJy + JyJx
マクロな異常を説明できる
AFQは磁気モーメントを誘起しない
⇒ 微弱反強磁性とは全く関係ない(Tm = T0 は偶然一致)
5f電子 = 遍歴
SDW ( spin density wave )
HO =
CDW ( charge density wave)
秩序状態でフェルミ面上にエネルギーギャップ
マクロな物理量に異常
長期的な周期構造
中性子散乱 ⇒ Q=( 0 0 π/ c )
短期的周期の反強磁性秩序
unconventional SDW
d-SDW?
(モーメントを持たない)
impurityのまわりで局所的にモーメント発生
高圧下中性子散乱
圧力印加によりモーメント増大
μ=0.03 ⇒ 0.25μBで一度飽和
Pc
Pc ~ 1.5 GPa
で不連続的に急増
~ 0.4μBでほぼ一定値
他の物理量の圧力変化
T0での異常に大きな圧力依存性
見られない
T0
モーメント温度依存性の圧力変化
P<Pc ・・・ Tm以下で緩やかに増大
P>Pc ・・・ Tm以下で急激に増大
Pc以上で反強磁性の性質が変化
Tm (中性子散乱)
T0 (比熱、電気抵抗)
Tmの圧力依存性
加圧により高温側へシフト
(同様にPcでとび)
反強磁性秩序の強化
高圧下29Si-NMR
中央の共鳴線(センターライン)
・・・Si核(I=1/2)の+1/2⇔-1/2遷移
両側の共鳴線(サテライトライン)
・・・U磁気モーメントからの内部磁場
(反強磁性秩序状態)
十分低温において常磁性状態のUサイトが存在
反強磁性秩序が空間的に一様ではない
サテライトラインの信号強度
反強磁性領域の割合
サテライトラインの分裂幅
内部磁場の大きさ
= 磁気モーメントの大きさ
内部磁場、サテライト強度、中性子散乱強度の圧力依存性
加圧により変化するのは
反強磁性領域のみ
磁気モーメントの大きさは
P < Pc において変化しない
(μ~ 0.25 μB)
中性子散乱強度
I B ∝ v μ2
反強磁性領域の体積を含む
NMR内部磁場
P = Pc においては磁気モーメントも
増大している可能性が高い
NMRサテライト強度
常圧における微弱反強磁性は磁気モーメントではなく
反強磁性領域の小ささが原因
内部磁場(磁気モーメント)の温度依存性
P < Pc においてもTm以下で急増
反強磁性領域が小さいため中性子散乱では
ゆるやかな温度依存性に見えていた
NMR
中性子散乱
磁気モーメント
P > Pc
どちらもTm以下で急成長する
P < Pc
一軸加圧中性子散乱
001方向のみモーメントの
圧力変化小さい
HOの秩序変数が関係?
但し反強磁性領域は小さい
高磁場測定
H増加
比熱
H ≦ 33.5 T
異常が大きくなる
T0が低温側へシフト
H増
H = 36 T
ピーク見られない
(7K以下でブロード)
H = 38 T
再び鋭いピークが現れる
H ≧ 40 T
ショットキー型の緩やかなピーク
HOは磁場により破壊される
~ 36 T でHO相閉じる
⇒ さらに高磁場で新たな転移
高磁場測定
磁気抵抗
磁気相図
磁化
高磁場で新たな相
磁化で見られる強い異方性
モーメントの圧力依存性
は001方向で小さい
起源わからない(HOと関連)
超伝導状態
比熱
T = Tc でのとびが小さい
(等方的なギャップ(理論値)に比べ)
実験値
∝T2
T = Tc 以下で ∝ T 2
等方的なギャップ
実験値
1 / T1
T = Tcでコヒーレンスピークなし
Tc直下での1/T1の増大
(等方的ギャップで特徴的に見られる)
T < Tc以下で ∝ T 3
異方的超伝導
ラインノード(線状にギャップが消失)を持つ
∝T3
等方的なギャップ
singlet or triplet ?
各磁場方向におけるHc2の温度変化
Hc2(上部臨界磁場)の性質から予想する
Hc2の角度依存性
大きな異方性が見られる
m||c / m||a ~ 1.5
(massの異方性)
+
Hc2,||a / Hc2,||c ~ 4
パウリ常磁性の効果
を考慮してフィッティング(実線)
軌道効果
・・・・・・
・
超伝導体内に量子化された磁束が
侵入することで超伝導状態壊れる
パウリ常磁性効果 ・・・・
・
臨界磁場・・Horb
ゼーマン効果によりスピンが磁場
方向を向き、超伝導状態壊れる
臨界磁場・・Hp
singlet(スピンが反平行)の時、その効果が現れる
臨界磁場はHorbとHpの兼ね合いで決まる
HorbとHpどちらが支配的か?
Horb = 0.73 × Tc × ( -dHc2 / dT )|Tc
= 13.6 T
Hp
Horb
Hp
= Δ0 / √2μB ~ 1.84 Tc = 2.9 T
H//a において Horb が支配的
パウリ常磁性効果は見られない
singletであればパウリ常磁性効果が現れ、Hc2はもっと下がるはず
triplet ?
summary
マクロな異常
AFQ (5f電子局在)
HO
SDW、CDW
(5f電子遍歴)
微弱反強磁性秩序
常圧、T0付近
非常に小さな反強磁性領域
磁場増加でHO相破壊
圧力印加で反強磁性領域増加
36 ~ 38T で新たな相が現れる
Pc = 1.5 Gpa で不連続的に急増
超伝導状態
比熱(∝ T2 )、1 / T1 (∝ T3 )
異方的超伝導 (ラインノード)
パウリ常磁性効果現れない
triplet ?
しかし現段階で判断するのは困難