第3回講義の内容 - 東京医科歯科大学

Download Report

Transcript 第3回講義の内容 - 東京医科歯科大学

多様性の生物学
第3回 多様な生物3
和田 勝
東京医科歯科大学教養部
これまでのまとめ
真体腔
真体腔と言うのは、空所の周囲すべて
が、中胚葉由来の組織によって覆われ
ている形式の体腔を言う。
真体腔と口のできかた
真体腔と口のできかた
1)胚の後端に中胚葉のもとになる細胞
群が生じて増殖、消化管の左右に中胚
葉帯を生じ、この細胞塊内部に生じる
2)原腸胚期に、原腸壁から左右一対
のふくらみが生じ、この空所がなる。
3)2)と同じだが、原腸と体腔の間には
直接的なつながりはない。中胚葉細胞
群の起源はさまざま
旧口動物
まず、1)の動物群を見ていこう
軟体動物、環形動物、節足動物のグ
ループである
軟体動物(Mollusca)
軟体動物になると、かなりなじみ深い
動物になる。カタツムリだとか、イカや
タコ、アサリなどが軟体動物の例。
軟体動物の原型
軟体動物の綱
ヒザラガイ綱(Polyplacophora)
マキガイ綱(腹足綱)(Gastropoda)
マキガイ亜綱、ウミウシ亜綱、
イソアワモチ亜綱、マイマイ亜綱
イカ綱(頭足綱)(Cephalopoda)
オウムガイ亜綱、イカ亜綱
ニマイガイ綱(斧足綱)(Bivalvia)
ツノガイ綱(掘足綱)(Scaphopoda)
ヒザラガイ綱(Polyplacophora)
小判型をしていて、海岸の岩場の隙間
に張り付いている。
殻は8枚に分割され(背板)体を覆って
いるが、体そのものに体節構造はない。
頭部はほとんど発達していない。軟体
動物のなかでもあまり進化していない
グループである。
マキガイ綱(Gastropoda)
マキガイ類は、基本的な体制にねじれ
がおこっている(発生過程でおこる)た
めに、外套腔が頭部のほうにあり、した
がって肛門も前方にある。
マキガイ綱(Gastropoda)
また内臓器官の中には左右相称性が
失われていたり、片方が退化しているも
のがある。
オキナエビス
古い形質を残したマキガイにオキナエ
ビスがいる。オキナエビスは、明るい紅
色の火焔状の模様のある大きな殻をも
ち、一番外側の殻に大きな切れ込みが
あるのが特徴である。この切れ込みは
、オキナエビスが原始的な形質を残して
いる証拠で、「生きている化石」と言わ
れる所以である。
オキナエビスの仲間は、化石としても見
つかっていて、もっとも繁栄したのは古
生代最後のペルム紀である。化石とし
て産出されるものと現生種を比べても
ほとんど形態的な違いは見つからない
。古生代最後の生物の大絶滅を逃れて
、生き残ってきたと考えられている(ちな
みに三葉虫はこのとき絶滅した)。
その他のマキガイ類
ヨメガカサ
イシダタミガイ
ウノアシ
アラレタマキビ
カノコタカラガイ
殻のないマキガイ類
ハナデンシャ
アオウミウシ
シロウミウシ
アメフラシ
磯に行くと必ず見つかるのは
アメフラシである。
黄色い紐状の卵が見つかる。
ウミゾーメンと呼んでいる。
イカ綱(Cephalopoda)
化石種であるオウムガイの仲間とアン
モナイトをも含むイカ、タコのグループ
現生種であるオウムガイも「生きてい
る化石」
イカ綱
イカ綱
イカもタコも口を囲む腕は吸盤を備え
てよく発達している(頭足類の名前の
由来)。
頭部神経節からは太い軸索(giant
axon)が後方に伸び、すばやい運動が
できるようになっている。
捕食者に襲われると、吸い込んだ水を
漏斗から急激に噴出し、このジェット
推進力でさっと逃げる。このとき少量
の墨汁を出し、空蝉の術を使う。
感覚器としての眼もよく発達している。
ピント調節の方法は異なるが、我々と
同じカメラ眼である。
ニマイガイ綱(Bivalvia)
環形動物門(Annelida)
環形動物の特徴はなんと言ってもそ
の体節構造である。名前の由来が小
さな輪と言うように、たくさんの環状構
造が融合した姿をしている。
およそ15000種の環形動物がいるが、
その大きさも1mm以下のものからオー
ストラリアのミミズのように3mを越える
ものまでさまざまである。
環形動物門(Annelida)
典型的な環形動物のゴカイ
環形動物の体のつくり
環形動物の綱
環形動物は剛毛の発達の度合いによ
って次の3つの綱に分ける。
多毛綱(Polychaeta)ゴカイの仲間
貧毛綱(Oligochaeta)ミミズの仲間
ヒル型綱(Hirudinea)ヒルの仲間
多毛綱(Polychaeta)
各体節から生えている剛毛が目立つ
のでこの名がある。
各体節には疣足があり、ここから剛毛
が生えている。
多毛綱
ゴカイやイソメは釣りの餌として売られ
ているので釣りをする人なら知ってい
るだろう。
これらの多毛類は、泥を含むような海
底の砂地中に生息していて、餌を含
んだ泥を食べて未消化物を糞として
出す。そのため、干潟を見ると紐状の
泥の塊がよく見られる。
干潟を餌場とするシギやチドリのよう
な多くの旅鳥にとって、ゴカイなどは
重要な栄養補給のための餌となって
いる。
管に棲む多毛類
分泌物と砂や泥を混ぜて作った棲管
に身を隠しているものも多い。磯の
岩場のカゲに住むケヤリムシはその
ような多毛類である。
貧毛綱(Oligochaeta)
見た目には剛毛がほとんど分からな
いので貧毛類と言う。ミミズの仲間で
ある。
英語の名前(earthworm)が示すよう
に、土中にいて栄養分を含む泥を食
し、未消化物と腸管から分泌される
粘液物を混ぜて糞として出す。
こうして土をかき混ぜ泥質を良くして
くれるので、農業にとっては有用な
生物である。
ダーウィンは、イギリスの農地には1
エーカー当たり50,000頭のミミズが
いて、毎年18トンの排出物を作り出
すと試算している。
貧毛綱
ミミズ
ヒル型綱(Hirudinea)
多くは淡水産だが、濡れた植物の葉
陰を移動する場合もある。多くのヒ
ル類は無脊椎動物を餌とするが、先
端の吸盤で魚や人を含む哺乳類に
吸い付いて吸血する種もいる。
Medicinal leech
昔は放血のためにヒル(Hirudo
medicinalis)が使わた。現在でも、手
術後の鬱血の解消や、切断された
指を元に戻す手術のあとに血流も戻
すためにヒルが利用されている。