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日本と東アジアの環境と貿易 アジア研究所 小山 直則 今日学ぶこと ●予定を変更し、7章をもう一度やります。 7.1. 生産関数としてとらえた企業 ●生産関数とは? 177 ページ ⇒図7-2には、生産要素 (労働投入物)と生産 量(産出量)の関係が 描かれている。 ⇒このように、生産要素と 生産量の技術的な関 係を生産関数という。 7.1. 生産関数としてとらえた企業 ●生産関数とは? ⇒図7-2の企業は、労働 投入量を拡大させる につれて生産量を拡 大できるような生産技 術を持っている。 ⇒しかし、労働投入量を 10人から20人に2倍 に増やしても、生産量 は5個から8個までし か増やせない生産技 術である。 7.1. 生産関数としてとらえた企業 ●利潤と付加価値 179ページ ⇒利潤=収入ー労働費用ー資本費用ー中間投入費 (原料費・燃料費など) ⇒企業の付加価値 =収入ー中間投入費 =利潤+労働費用+資本費用 ⇒企業の付加価値は、収入から中間投入費を差し引 いたものである。 ⇒企業の付加価値は、投資家(利潤)、労働者、資本供 給者に分配される。これを一国全体で合計したも のが国民所得(GDP)である。 7.1. 生産関数としてとらえた企業 ●規模の経済と範囲の経済 180ページ ⇒自動車、鉄鋼、電力などの企業は、巨大な固 定設備を保有している。 ⇒したがって、生産量を拡大させるにつれて固 定費を分散させ、平均生産費用(生産単価)が 低下する。 ⇒このように、生産量が拡大するにつれて平均 費用が低下する現象を規模の経済性という。 ⇒範囲の経済性とは? 7.1. 生産関数としてとらえた企業 ●範囲の経済 183ページ ⇒西武、阪神、近鉄などの企業は、鉄道経営の他、鉄 道沿線にデパートを経営したり、野球の球団を持っ たりしていた。 ⇒このように企業が一種類だけではなく、多くの種類 の製品やサービスを供給していることが多くある。 ⇒企業が供給する財の種類が増えるにつれて生産費 用が低下していく現象を範囲の経済性という。 7.1. 生産関数としてとらえた企業 ●規模の拡大と生産性 180ページ ⇒図7-4のように、生産要 素の投入量を10単位 から20単位に2倍に 増やして企業の規模 を拡大したとしよう。 ⇒すると、生産量がちょう ど2倍になる生産技 術がケース1である。 7.1. 生産関数としてとらえた企業 ●規模の拡大と生産性 180ページ ⇒図7-4のように、生産要 素の投入量を10単位 から20単位に2倍に 増やして企業の規模 を拡大したとしよう。 ⇒すると、生産量が2倍以 上になる生産技術が ケース2である。 7.1. 生産関数としてとらえた企業 ●規模の拡大と生産性 180ページ ⇒図7-4のように、生産要 素の投入量を10単位 から20単位に2倍に 増やして企業の規模 を拡大したとしよう。 ⇒すると、生産量が2倍よ り小さくなる生産技術 がケース3である。 7.1. 生産関数としてとらえた企業 ●規模の拡大と生産性 図7-4 ⇒図7-4のように、生産要素の投入量を10単位 から20単位に2倍に増やして企業の規模を 拡大したとき、生産量がちょうど2倍になる 生産技術を規模に関して収穫一定という。 ⇒また、生産量が2倍以上になる生産技術を規 模に関して収穫逓増という。 ⇒さらに、生産量が2倍以下になる生産技術を 規模に関して収穫逓減という。 7.1. 生産関数としてとらえた企業 ●規模の拡大と生産性 図7-4 ⇒大規模な生産設備(固定費用)を必要とする製造業 は、生産量を拡大させると平均費用が低下し、生 産性が高まるので、規模に関して収穫逓増である ⇒農業など一定の土地で生産活動を行う企業は、生 産量を拡大させるにつれて生産性が低下する傾 向がある。したがって、農業部門は、規模に関して 収穫逓減の生産技術を持っている。 ⇒規模に関して収穫逓減となる企業は、企業規模を拡 大させると効率性が低下する大企業病に陥る危 険がある。 7.2. 生産要素間の代替と費用 ●労働集約的か?資本 集約的か? ⇒図7-5を見ると、この企 業は資本と労働を用 いて生産物を生産し ている。 ⇒A点、B点、C点、D点の いずれの組み合わせ でも同じ10単位の生 産物が生産できる。 7.2. 生産要素間の代替と費用 ●労働集約的か?資本 集約的か? ⇒標準化された製品なら ば、企業は販売価格 を設定できない(price taker)なので、 A点、 B点、C点、D点のうち どの組み合わせが最 も費用が小さいかを 考えることが重要で ある。 7.2. 生産要素間の代替と費用 ●労働集約的か?資本集約的か? ⇒標準化された製品ならば、企業は販売価格を設定 できない(price taker)なので、 A点、B点、C点、D 点のうちどの組み合わせが最も費用が小さいかを 考えることが重要である。 ⇒労働力人口が多く、資本蓄積が低い途上国では、 労働集約的な生産技術を選んだ方が割安で生産 できる。 ⇒資本蓄積が進んだ先進国では、資本集約的な生産 技術を選んだ方が割安で生産できる。 ⇒相対的に割高な生産要素から相対的に割安な生産 要素に生産技術を変更することを要素代替という。 7.2. 生産要素間の代替と費用 ●標準化製品を製造する企業の費用分析 ⇒図7-6 等費用線 ⇒図7-7 等量曲線 ⇒費用最小化条件 要素価格比=資本と労働の限界代替率 7.2. 生産要素間の代替と費用 ●図7-6 等費用線 ⇒等費用線上では、資本 と労働の総費用は同 じである。 ⇒相対的に労働が割高な 国(先進国)の企業は、 労働を一単位減らし たときに、多くの資本 を購入できるので、等 費用線の傾きが急に なる。 7.2. 生産要素間の代替と費用 ●図7-6 等費用線 ⇒相対的に資本が割高な 国(途上国)の企業は、 労働を一単位減らし たときに、少ししか資 本を購入できないの で、等費用線の傾き が緩やかになる。 7.2. 生産要素間の代替と費用 ●図7-7 等量曲線 ⇒等量曲線上では、労働 と資本の投入の組み 合わせがどのような 組み合わせでも同じ 生産量が生産できる。 ⇒A点、B点、C点、D点の どの点でも10個生産 できるので、これらを 繋ぐ曲線は等量曲線 である。 7.2. 生産要素間の代替と費用 ●図7-7 等量曲線 ⇒等量曲線は山の等高 線とよく似ている。 ⇒右上に行くほど、生産 量が多くなる。左下ほ ど、生産量が少なくな る。 7.2. 生産要素間の代替と費用 ●図7-7 等量曲線 ⇒等量曲線上では、労働と資本の投入の組み合わせ がどのような組み合わせでも同じ生産量が生産で きる。 ⇒企業はより多くの製品を最小費用で生産したい。 ⇒企業はprice takerならば、要素価格比は所与 (given)である。 ⇒この企業は、労働から資本に生産要素を代替しなけ れば、最小費用が実現できない。 ⇒10個生産する場合、費用が最も最小となるのは、A 点、B点、C点、D点のうち、どの点ですか? ⇒なぜですか? 7.3. 費用最小化行動と費用曲線 ●図7-7 ⇒費用が最も最小化される資本と労働の組み合わせ は、B点で決まる。 ⇒B点では、等費用線と等量曲線が接している。 ⇒等費用線の傾きの絶対値=賃金率/資本賃貸率 =要素価格比 ⇒等量曲線の傾きの絶対値 =資本と労働の限界代替率 ⇒費用最小化条件は、 要素価格比=資本と労働の限界代替率 である。 ●資本と労働の限界代替率とはなにか? ⇒先進国は途上国に比べて、要素価格比(賃金率/資 本賃貸率)が高くなる傾向がある。 ⇒先進国にある企業が、 資本と労働の限界代替率<要素価格比 となる場合、労働から資本に要素代替しなければ、費 用最小の生産が実現できない(図7-7、C、D点) 。 ⇒先進国では、資本集約的な産業が育ち、労働集約 な産業は育たない。 ⇒これによって、先進国では労働から資本への代替が 進み、資本蓄積が進むのである。 ●資本と労働の限界代替率とはなにか? ⇒途上国は先進国に比べて、要素価格比(賃金率/資 本賃貸率)が安くなる傾向がある。 ⇒途上国にある企業が、 資本と労働の限界代替率>要素価格比 となる場合、資本から労働に要素代替しなければ、費 用最小の生産が実現できない(図7-7、 A点)。 ⇒途上国では、労働集約的な産業が育ち、資本集約 な産業は育たない。 ⇒これが途上国で資本蓄積が進まない理由のひとつ である。