気管支喘息(高見) - 新潟大学小児科学教室アレルギーチーム

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2013

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日 新潟大学小児科アレルギーチーム 第1回アレルギーブートキャンプ

気管支喘息診療のポイント

新潟医療センター 高見暁

小学校~高校生の喘息有症率 気管支喘息の児童生徒はどれくらいいるでしょうか?

小学校~高校生の喘息有症率

学校生活管理指導表(アレルギー疾患用):喘息 病型・治療 学校生活上の留意点 緊急時連絡先 医師名 医療機関名

小児気管支喘息診療のスタンダード

作成:日本小児アレルギー学会 出版:協和企画 定価 3500円 (2011年10月発行)

小児気管支喘息診療のスタンダード

作成:日本小児アレルギー学会 出版:協和企画 定価 1500円+税 (2013年5月発行)

気管支喘息の病態

〈喘息ではない子供の気道〉 〈発作時の気道〉 正常な気道の状態には 戻りにくい ・喘息ではない子供の気道 画像 : 気道生検×630 著 明 な 好 酸 球 浸 潤 〈発作後(無症状期)の気道〉 リ モ デ リ ン グ が 進 行 完全には回復せず 気道炎症が残っている状態 ・喘息患児の気道 基 底 膜 網 状 層 の 肥 厚 Barbato A et al. : AJRCCM 168 : 798, 2003一部改変 監修 : 東京慈恵会医科大学 小児科学 勝沼 俊雄

小児気管支喘息の診断

〔症状〕 • 喘鳴、呼気延長、呼吸困難を繰り返す 〔既往歴・家族歴〕 • • アレルギー疾患を有する場合が多い 〔検査〕 • • IgE高値、特異的IgE(吸入系)陽性 呼吸機能検査、気道過敏性試験、呼気中NO測定 〔鑑別(気道感染症以外)〕 胃食道逆流、気道異物、声帯・喉頭の異常、腫瘍等の気道圧迫、等々 • 〔乳幼児喘息(2歳未満)〕 気道感染の有無に関わらず、明らかな呼気性喘鳴を3エピソード以上 繰り返す 「小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2012」より

喘鳴性疾患の亜型(phenotype) 一過性の初期喘鳴 lgE関連の喘息・喘鳴 喘 鳴 の 有 症 率 非アトピー型 喘鳴 0 原 因 一過性の初期喘鳴 形態・呼吸生理的特徴 特 徴 ◎肺機能の成長が遅れ 、 ウイルス感染により喘 鳴が起こる 3 年 齢 非アトピー型喘鳴 RSV等呼吸器感染症 6 11 (歳) lgE関連の喘息・喘鳴 lgE関与(アトピー型) ◎6歳までにみられる ◎アレルギーと無関係 である ◎過半数以上が3歳まで に、80%が6歳までに発 症する ◎ウイルス感染により 喘息症状の悪化や発作 が起こる

Martinez et al. : Pediatrics 109 : 362, 2002

一酸化窒素( NO;nitric oxide )

● 生物活性をもった最も小さな物質のひとつ。 呼吸器をはじめとして循環器・脳血管などの 種々の臓器に存在。その作用に関しては不 明な点が多い。 ● 呼気中NOは気道上皮細胞で産生され、気管 支喘息等の好酸球性の気道炎症性疾患で炎 症に相関してNO濃度が増加。

呼気中NOの測定方法 ( NO測定:Sievers 280 )

小児気管支喘息の治療目標

〔症状のコントロール〕 • • β 2 刺激薬の頓用が減少、または必要ない。 昼夜を通じて症状がない。 〔呼吸機能の正常化〕 • • • • ピークフローやスパイログラムがほぼ正常で安定している。 気道過敏性が改善し、運動や冷気などによる症状誘発がない。 〔QOLの改善〕 スポーツも含め日常生活を普通に行うことができる。 治療に伴う副作用が見られない。 「小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2012」より

小児気管支喘息の治療薬 • • • • 〔発作時〕 気管支拡張剤吸入:メプチンorベネトリン+インタールor生食 (ビソルボンは有効とのエビデンスは無し、悪化 も?) 酸素投与 ステロイド剤 その他:テオフィリン、プロタノール、アスプール、人工呼吸器 • • • 〔長期管理〕 ロイコトリエン受容体拮抗薬:オノン、シングレア、キプレス 吸入ステロイド薬:フルタイド、キュバール、パルミコート、アドエア その他:テオフィリン、アイピーディ、アトロベント(抗コリン薬) (ゾレア(抗IgE抗体)) 「小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2012」より

気管支喘息治療のポイント ~テオフィリンは過去の薬?~ • • 〔効果〕 大発作以上で使用考慮してもよい 作用が不明な点が多いが、抗炎症作用やサイトカイン 抑制作用、ステロイド薬の効果を補強する効果など、 有効性を示す報告有り • • • 〔注意=副作用〕 血中濃度測定 発熱、薬剤(クラリス等)などで濃度上昇 痙攀等中枢神経症状の既往のある場合は使用せず

治療前の臨床症状に基づく重症度分類 (JPGL2012)

小児気管支喘息の長期管理に関する薬物療法プラン (JPGL2012)

コントロール状態による喘息治療の調整(JPGL2012)

吸入ステロイド薬が有効な場合の指標 (Bates et al. J Allery Clin Immunol Vol 111. 2. p256-262)

気管支喘息治療の予後 ~喘息は治らない?~

● 3歳から26歳までに2回以上喘鳴があったのは51.4%、 26歳の時点でまだ喘鳴があるのが26.9%(継続14.5%、 再発12.4%)。 (Sears MR et al. N Engl J Med 2003; 349:1414-22) ● 3歳前から6歳までに喘息を発症した群で、 22歳まで継続59%、途中寛解し22歳までに再発13% (Stern DA et al. Lancet 2008; 372: 1058-64)

気管支喘息の定期受診時の 問診ポイント

• • • • • • • • 咳嗽の有無:本人、保護者それぞれに 咳止め薬(ホクナリン、ムコダイン等)の使用の有無 気管支拡張薬吸入の使用の有無 学校・園を休まなかったか 運動時の症状=運動誘発喘息:本人に、具体的に 鼻炎症状の有無 感染症の有無 よく寝られているか

Japanese Pediatric Asthma Control Program (JPAC)

15点:完全コントロール、14~12点:良好なコントロール、11点以下:コントロール不良

運動誘発喘息

運動 ⇒ 呼吸の速さ 大きさ 気管支の 水分が低下 = 乾燥 熱が奪われる = 冷える 喘息発作!

発作の 起こり易さ

運動の種類と喘息発作

「アレルギー疾患診断・治療ガイドライン2007」より

気管支喘息治療のポイント

• • 〔発作時〕 SpO 2 値測定 吸入療法について 20~30分毎に繰り返す(3回まで) SpO 2 値が95%未満の時は酸素投与も一緒に 実施時にその手技をできれば自分の目で確認 泣いたり騒いだりしていると効果なし 静注用ステロイド剤そのもので症状誘発も • • • 〔定期受診時〕 アドヒアランス 吸入の手技:息止めができているか確認 ダニ・ハウスダスト陽性では、フトン類の掃除

症例のプロフィール(1) 症 例:11歳男児 主 訴:繰り返される喘息発作 既往歴:アレルギー性鼻炎 家族歴:母方曾祖父に気管支喘息 現病歴: 気管支喘息を1歳で発症し、近医総合病院にて各種治療を 行っていたがコントロール不良であった。2008年秋より小発 作や中発作が持続し、頻回のメチルプレドニゾロンの頓用や 入院治療を必要とした。

症例のプロフィール(2) 前医での治療内容 ・ブデソニド(BUD)吸入(1200μg/ 日) ・ロイコトリエン受容体拮抗薬 ・テオフィリン徐放製剤 ・長時間作用性吸入β2刺激薬(LABA) ・抗コリン薬吸入 ・Th2サイトカイン阻害薬 JPGLのステップ4の治療に関わらず発作を繰り返し、時に大発 作となるため、2009年4月20日群馬大学医学部附属病院小児 科へ入院した。

入院時検査所見 ・非特異的IgE : 1812 IU/ml ・RAST (class) : ヤケヒョウヒダニ (5)、ハウスダスト (5)、 スギ (6)、ヒノキ (4) ・胸部CT検査:気管、気管支に明らかな狭窄所見認めず。 ・フローボリューム曲線 吸入前 吸入後 %FVC 95.0% 100.9% %FEV1 81.4% 97.5% %MMF 57.0% 99.2% ・eNO濃度:164.9 ppb (基準値:5~15)

入院後経過 大量の吸入ステロイドを使用していたが、eNO濃度164.9ppbと 気道炎症が治まっておらず、フローボリューム曲線より末梢気 道狭窄も認められた。 →患児の吸入方法を確認したところ、吸入時間が非常に短く ほとんど気道内に入っていない状態であった。 吸入方法の指導を徹底し、ステロイド吸入量を増量するため BUD吸入1200μg/日からフルチカゾン吸入1000μg/日に変更 した。

当科入院

「ぜんそくで困ること」というアンケートの回答 ・体育の授業を休ませたい時、なかなか先生に理解して もらえない ・体調が悪くなっても、保健室で休ませてくれない ・周囲から部活を早く切り上げさせられたり、体育を休め など、特別扱いを受けるので、学校生活を楽しめない ・校外授業・宿泊時など、親から離れた時の薬の管理が心配 ・学校で息が苦しくなっても一人で吸入している (AIRJ全国喘息患者実態電話調査2005年より)

作成:家族と専門医が一緒に作った 小児ぜんそくハンドブック2012 作成委員会 監修:日本小児アレルギー学会 出版:協和企画 定価 1500円+税 (2012年9月発行)