ペンタノールを水に加えると最初は溶けるが…

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Transcript ペンタノールを水に加えると最初は溶けるが…

Spontaneous motion
of an alcohol droplet
by the Marangoni effect
永井 健
• (1),(2) General introduction and Background
• (3) Mode change of motion depending on the size of a droplet
K. Nagai, et al., Phys. Rev. E, 71, 065301 (2005).
K. Nagai, et al., Colloids Surf. B Biointerfaces, 56, 197 (2007).
• (4) Spontaneous instability of alcohol-water interface by the
Marangoni effect
• (5) Mode change of motion depending on temperature
K. Nagai, et al., Prog. Theor. Phys. Suppl., 161, 286 (2006).
• (6) Irregular motion of an alcohol droplet
K. Nagai, RIMS Kokyuroku Bessatsu, B3, 139 (2007).
• (7) General conclusion
散逸構造
1 cm
S. Kondo, et al., Nature, 376, 765 (1995).
非平衡開放系での運動
20 ml
A. B. Verkhovsky, et al., Curr. Biol., 9, 11 (2005).
非平衡開放系
非平衡開放系(生命等)
食事などによる
エネルギー注入
?
運動エネルギー
生命現象の理解のためには
非平衡開放系で起こる自発的
運動のさらなる理解が必要。
単純な系であるマランゴニ効果による自発的運動を用いて
非平衡開放系で起こる自発的運動の普遍的な側面を
見つけ出せないだろうか?
表面張力(g)
マランゴニ効果
濃度(c)
空気
圧力勾配
水
1 cm
自発的運動のモード変化
2 cm
直進運動
回転運動
S. Nakata, et al., Langmuir, 13, 4454 (1997) .
目的
非平衡開放系において、パターン形成と運動がどの
ようにカップルしているかを明らかにするために…
• マランゴニ効果によるアルコール液滴の自発的運動
において液滴の変形と運動がどのようにカップルし
ているかを調べる。
• 固定されたアルコール相の自発的変形がどのよう
に起きているかを明らかにする。
アルコール液滴の自発的運動
実験状況
水相のペンタノール濃度は 2.3 ml/100 ml water。
アルコールは界面活性剤なのでマランゴニ効果によって
自発的に運動する。
液滴の運動
液滴の体積は0.02 ml。
円形の液滴が動くメカニズム
静止しているとき
運動中
液滴が動くと前方の濃度勾配が大きくなるため前方から
強く引かれることになる。そのため液滴は静止状態が不安
定である。
運動方向は摂動に対して中立安定である。
液滴の運動モード
不規則運動
直進運動
分裂
0.02 ml
10 ml
400 ml
不規則
10-2
分裂
直進
10-1
1
10
体積 [ml]
102
103
104
液滴の変形によるモード変化
境界が凹に変形
境界が凸に変形
水
ペンタノール
水
ペンタノール
境界が凸に変形していた方が境界の周りのペンタノール濃
度が薄くなり、濃度勾配が大きくなるため直進運動を起こす。
境界の不安定化の原因
波の凹部と凸部の界面張力勾配差によって波は成長する(1波長あ
たりの力はg1)
界面張力勾配
ペンタノール
ペンタノール
界面張力勾配
g1>g2のとき界面は不安定化する
水
水
 表面張力によって波が減衰する(1波長あたりの力はg2)
使用したモデル
バルク相-空気界面で
c
 D 2c   (c  ca )   (c  cw )
t
境界がy= sin kxであるとして界面
は( c( x,  sin kx) = c0 )より、
ca  cw
c ( x, y ) 
 
y
水
x
y = e sin kx
ペンタノール

ca  cw     D y
e
  c0 
  


ca  cw     

   c0 
e
   D

k 2    D y
sin kx
摂動を成長させる力(g1)の計算
(b は定数)
ペンタノール
 dc
 2
dc

g 1  b

 k
dr
dr
凹
 凸
界面張力勾配
界面張力勾配
水
g1 
(
4b c0 
 ca   c w
 
)
 
D
k
(k
2

 
D

 
D
)
減衰力(g2)の計算
2
d
L   1  ( dx ( sin kx)) dx
0
2
k
2  k


k
2
2
L
g 2  a  ak

(a は定数)
g1-g2の波数依存性
 4b(c 
)
(
k 

g g  
1
2


 
kc 
D
0
c a   c w
 
 
D
2
 
D

k
 
D
)  ak ,
2
  b
b
c a   c w 
c a   c w
16
c


8
c




0
 
a 0  
  a

(
)
(





)
液滴の周りにはn/Rの波数の摂動しか立たないので、液滴の半径に
応じて境界の自発的変形がどのように起こるかが変わる。
ca 、cwが大きくなるとkcが小さくなり、運動モードが
切り替わる体積が大きくなる。
理論的予測の確認
2
     b
b

c  c
kc 
16
c


8
c0  cc
  0   
D   a
a

(
2.3 vol%
不規則
10-2
10-1
1
2.4 vol%
不規則
10-2
分裂
直進
10-1
1
10
体積 [ml]
102
直進
10
体積 [ml]
103
104
分裂
102
103
a
w
)
(
a
w



)
バルク相のペンタノール濃度を上げる
とcwが増えるため、モードの切り替わ
りが起こる体積が大きくなる。
104
シャーレの上にふたがあると
き(ca→大)、液滴の動きは直
進から不規則に変わる。
ここまでの結論
• 水面上のペンタノール液滴は自発的に運動し、
大きさに応じて運動のモードが変化する。
• このモード変化はアルコール・水・空気三重
線の自発的変形が特定波数以下のものしか
不安定化しないために起こる。
アルコール水界面の自発的変形
実験装置
横から見た図
上から見た図
ライト
小シャーレ
水相
ペンタノール相
水相
ペンタノール相
5.3 cm
14 cm
カメラ
三重線
水相は2.35 vol%のペンタノール水溶液。
5 cm
実験結果
40
35
30
t [s]
25
20
15
10
1 cm
4倍速
5
0
水相
0
0.5

1.5
2
q
振幅の時空間プロット。明るさがrを表す。
この図から界面上に進行波が出ている
ことが確認できる。
q
ペンタノール相
パワースペクトル
1
振幅 [a.u.]
0.8
0.6
0.4
0.2
0
0
20
40
60
80
100
波数
ピンクの線は10 ml、青の線は0.1 ml、緑の線は0.05 ml
の液滴周囲の1モードに対応する。
モデル1
水相
u=0
ペンタノール相
g(c)
u=1
三重線は内部の面積を保存しながら、c(ペンタノール濃
度)に応じた界面張力に引かれる。
三重線の運動の表現にフェーズフィールドモデルを用い
る(u=1はペンタノール相、u=0は水相を表す)
モデル2
 u
u  f dx
2
  u  f (u, c) 

 t
 u dx

c
  Dcx  u  c
 t
 f (u, c)  uu  1 2  g (c)(1  u )

g (c)  tanh ( c0.11 )
=0.005, =0.005, D=0.00078, =1
液滴運動のシミュレーション
=2.1
=3
一つの波数しか持たないときの界面
不安定化
=2.1
進行波
=2.1
 u
u  f dx
2
  u  f (u, c) 

 t
 u dx


c
  Dc  c  u (g (c  c0 )  c)
 t
 f (u, c)  uu  1 2  g (c)(1  u )

g (c)  tanh ((c  1) / 0.8)
=0.004,=0.001,D=0.01,g=50,=0.5,c0=0.85
後半の結論
• アルコール・水・空気三重線は自発的に変形
し、進行波が現れる。そこに現れる構造は特
定波数以下の構造である。
• フェーズフィールドモデルを基にしたモデルで
界面の変形を再現した。
全体のまとめ
• アルコール・水相分離系において水上のアル
コール液滴は自発的に運動する。アルコー
ル・水・空気三重線の自発的変形と運動が
カップルし、液滴の運動モードが変化する。
• アルコール・水・空気三重線上には特定波数
以下の構造しか不安定化せず、そのために、
液滴の大きさに応じて運動モードが変わる。
• フェーズフィールドモデルを基にしたモデルを
用いてアルコール相の運動を再現した。
展望
• 今回の系を用いて液滴を集団にしたときの運
動を調べ、生物等の自発的に変形しながら運
動する系が集団になったときに起こる現象の
議論につなげたい。
• 形状と運動の関係をさらに調べ、アメーバな
どの運動の議論につなげていきたい。
(
ut  u   12 u  (u   0.5)(1  u  )  c   (u (u 0.5)(1u )c )dx 

 
ct  bc  qc  su 
 0
水相
u=0
ペンタノール相
u=1
ct  bc  qc  su

Vn  ( N  1) K  g c t   ( N  1) K  g c t dH
(
)
tは境界、Vnは境界の各点における速度の法線成分。
g(c)
)
液滴周りの対流
ct  (  v )c  Dc  c
 a(  c )c  Dc  c
 ( D  ac)c  c
温度を変えたときのモード変化
今回の研究
• アルコール液滴の運動モードが温度に応じて
どのように変化するか調べ、ペンタノールの
物性値の温度依存性との比較を行う。
バルク相は2.35 ml/100 ml waterのペンタノール水溶液。
湯煎で水相の温度を調整しておき、ペルチェ素子で温度を固
定しながら実験を行う。
結果
溶解度の温度依存性
低温で3 ml/100 ml water~2.3 ml/100 ml waterのペンタ
ノール水溶液を作り、セルの温度を20 ℃から徐々に上げていく。
相分離を起こしたときの濃度を溶解度とする。
solubility  2.38(T  12.6)T 1.81
表面張力の温度依存性
ウィルヘルミー法で測定
g wa  36.2  0.36T
g pa  26.2  0.043T
kcの温度依存性
温度
g wa
(溶解度  2.35)
g pa
15 ℃
3.81
2
20 ℃
0.50
   b 
b 
kc 
16 c0   8 c0 
25 ℃
0.21
D   a 
a 
g

b g
b
 const , a  g wa ,  wa , c0  溶解度  2.35, c0  wa (溶解度  2.35),
D
a g pa
a
g pa
とすると温度が高くなるとkc は小さくなる
他のモード
振動
不規則運動と直進運動が切り替わる大きさで観察される。
ゆらゆら
2.4 vol%、23℃、900ml。温度上昇や水層の濃度を上げて
不安定化しにくくすると、大きくても割れない
まとめと今後の課題
• ペンタノールの蒸発速度ととけこみの速度に
よって決まる波長の波だけが界面で不安定化
するため、ペンタノール液滴の大きさによって
運動モードが変わる。
• 間欠運動や振動運動など今回の議論では説
明できない運動のでる原因を調べていきたい。
K. Nagai, et al., Phys. Rev. E, 71, 065301 (2005)
K. Nagai, et al.,Prog. Theor. Phys. Supp. 161, 286 (2006)
物性値とパラメータの関係付け
b・・・水溶液中の界面張力に起因する力の比例係数
a・・・液滴を円形に保つ力の比例係数

b g
 const ,  wa , c0  溶解度  2.35
D
a g pa
k max  
bc

 bc0 
4

1  0  0.88
2D
D a D
a
2
   b 
b 
kc 
16 c   8 c0   10.9
D   a 0 
a 
(
(
)
1
400 mlの液滴の円周
)
1
0.1 mlの液滴の円周
20℃のときの値の比較から
b

c0 , , a, g 2  g 1 を求める。
a
D
b

c0  24.2,  0.0131 (20 ℃で)
a
D
 4 bc0
g 1  g 2  a a



D
(k
2
k
 D 

D
)  k 


g2-g1を計算
20 ℃、400 mlの時に1になるよう規格化。
0.1 ml
15 ℃
7.83
20 ℃
0
25 ℃
-0.69
1 ml
10 ml
100 ml
400 ml
8.28
8.48
8.50
8.23
0.49
0.76
0.96
1
-0.21
0.068
0.28
0.35
いろいろなアルコールの動き
オクタノール
純水の上
0.02 vol%
ヘキサノール
1-ブタノール
2-ブタノール
物性
物質名
密度
蒸発速度 飽和蒸気圧 hPa
溶解度g/100g
1-ブタノール
0.81
6.4
4
7.33
6.32
2-ブタノール
0.806
12.5
17.4
15
1-ペンタノール
0.815
0.26
2 1.3-13.3
1,5
1-ヘキサノール
0.819
0.05
0.7
1.33
1-オクタノール
0.826
0.0794
0.3
0.54
温度を下げたとき(12℃)
相図は左にずれる。
気温が下がると水に溶けるペンタノール
の量が増えるため(c0が増える)
Appendix1
I0
I1
K0
K1
I0とK0はディリクレ条件を円境界で課したときの 2c  c  0の解。
dI ( r )
dK ( r )

I
(
r
),
また dr
1
dr  K1 (r )
0
0
Appendix2
 R 1のとき
変形ベッセル関数の漸近展開から
( )
lnI0 (r)K0 (r)  ln 2  ln r  O 1/ r 2  const.
  d
g 2  b(c0    cw )
(
 b c0     cw
D
dr
lnI 0 (r )K0 (r )
r
(   )/ DR
 8b(c0     cw )Ak 2



D 
2
(   ) / DR 
   
)
 R 1のとき
1
変形ベッセル関数の多項式展開から
lnI0 (r)K0 (r) (1 O(r 2 )) ln r
g 2  b(c0    cw )

  d
D dr
ln ln r
   b(c0    cw )

D
r ln r
r  (   )/ DR

r  (   )/ DR
8b(c0     cw )Ak 2
(
 2 ln 8k 2 A /  2 (   ) / D
)