Transcript 講義資料
日本経済入門 日本と東アジアの成長と貿易 アジア研究所 小山直則 今日学ぶこと ●予定を変更し、1章と2章をもう一度やります。 1.1. 需要・供給曲線 ●需要の法則 図1-1 ⇒一般的に消費者は、価 格が下落(上昇)するに つれて、需要量を拡大 (縮小)する傾向がある。 これを需要の法則とい う。 ⇒したがって、縦軸に価 格、横軸に需要量を とった場合、需要曲線 は図1-1の赤い線のよ 1.1. 需要・供給曲線 ●供給曲線 図1-1 ⇒一般的に企業は、価格 が下落(上昇)するにつ れて、供給量を縮小(拡 大)する傾向がある。 ⇒したがって、縦軸に価 格、横軸に供給量を とった場合、供給曲線 は図1-1の青い線のよ うに右上がりとなる。 1.1. 需要・供給曲線 ●価格の決定メカニズム 図1-1 ⇒価格が400円のとき、消費者は2000本購入しようと する。企業は20,000本生産しようとする。 ⇒このとき、市場では、超過供給が存在し、18,000本 の売れ残りが発生する。 ⇒市場には価格を叫ぶ競売人がいると仮定すれば、 競売人は価格を引き下げるであろう。 ⇒競売人が200円と叫べば、需要量と供給量が一致し、 それぞれ10,000本となり需給が一致する。 1.1. 需要・供給曲線 ●価格の決定メカニズム 図1-1 ⇒価格が100円のとき、消費者は18,000本購入しよう とする。企業は6,000本生産しようとする。 ⇒このとき、市場では、超過需要が存在し、12,000本 の品不足が発生する。 ⇒市場には価格を叫ぶ競売人がいると仮定すれば、 競売人は価格を引き上げるであろう。 ⇒競売人が200円と叫べば、需要量と供給量が一致し、 それぞれ10,000本となり需給が一致する。 ⇒したがって、市場価格は200円となり、取引量は 10,000本となる。 2.1. 需要曲線の構造 ●需要曲線のシフト 図 2-6 ⇒需要曲線が右(左)にシ フトする要因 ①人口の増加(減少) ②所得の増加(減少) ③珈琲の価格が上昇(下 落)すると、紅茶の需要 曲線が右(左)にシフト する。 2.1. 需要曲線の構造 ●供給曲線のシフト 図2-6 ⇒供給曲線が右(左)にシフトする要因 ①規制緩和による企業の参入(規制強化による 企業の退出) ②天候がよくて農産物供給が拡大する場合(台 風による不作の場合)。 ③技術進歩 ④新規設備投資の拡大による生産能力の拡大 1.2. 価格変動と需要・供給曲線のシフト ●白菜の価格はなぜ大き く変動するのか? ⇒芸能人や台湾の夏場 の野菜の供給は、価格 が変化しても短期的に 供給量を大きく変動さ せることはできない。 ⇒したがって、このような 財やサービスの供給曲 線は垂直に近くなる。 図1-2 ●白菜の価格はなぜ大きく変動するのか? ⇒白菜の需要曲線は、図 1-2のF点とD点を通過 する赤い曲線(D線)で あるとしよう。 ⇒このとき、価格が下落し ても需要量は大きく増 加しない(非弾力的な需 要曲線)。 1.2. 価格変動と需要・供給曲線のシフト ●白菜の価格はなぜ大き く変動するのか? ⇒D’の需要曲線の場合。 ⇒このとき、価格が下落 すると需要量は大きく 増加する(弾力的な需 要曲線)。 ●白菜の価格はなぜ大きく変動するのか? ⇒白菜などの野菜や食品 の需要曲線は、一般的 に非弾力的な需要曲線 である。 ⇒台風等の災害がないと き、供給曲線はS1線の ようになる。 ⇒このとき、需要曲線と供 給曲線が交わるE点で 市場価格が決定し、1 個30円となる。 ●白菜の価格はなぜ大きく変動するのか? ⇒台風等の災害があると、供 給曲線はS1線からS2線に シフト(移動)する。 ⇒このとき、需要曲線と供給 曲線が交わるF点で市場価 格が決定し、1個300円とな る。 ⇒したがって、野菜のように ①非弾力的な需要曲線であり、 ②供給曲線が垂直となる ような財の価格は、供給曲線 のシフト(移動)によって大き く変動する。 ●白菜の価格はなぜ大きく変動するの か? ⇒したがって、野菜のよう に ①非弾力的な需要曲線で あり、 ②供給曲線が垂直となる ような財の価格は、供給 曲線のシフト(移動)に よって大きく変動する。 1.2. 価格変動と需要・供給曲線のシフト ●豊作貧乏 ⇒農家は農産物がたくさん収穫するほど、所得 が少なくなる傾向がある。これを豊作貧乏と いう。 ⇒農産物の需要曲線は、図1-2のD線ように非 弾力的となる。 ⇒豊作のとき、供給曲線は図1-2のS1線のよう になる。 ⇒農産物の市場価格は30円となり、すべての 農家の収入は( )円となる。 1.2. 価格変動と需要・供給曲線のシフト ●地価と土地の需給 図 1-4 ⇒地価が上昇しても地主 が土地を売り惜しむ場 合は、土地の供給曲線 は急になる。 ⇒例. MRTの延長工事が 進み、沿線の土地への 需要が拡大すると、消 費者の土地の需要曲 線はD1からD2へとシフ 1.2. 価格変動と需要・供給曲線のシフト ●地価と土地の需給 図 1-4 ⇒MRT沿線の地主が土 地を売り惜しみする場 合は、地価がp1からp2 へと大きく高騰する。 ●地価と土地の需給 図1-4 ⇒地主が土地を売り惜し まない場合は、土地の 供給曲線は緩やかにな る。 ⇒例. MRTの延長工事が 進み、沿線の土地への 需要が拡大すると、消 費者の土地の需要曲 線はD1からD2へとシフ トする。 ●地価と土地の需給 図1-4 ⇒MRT沿線の地主が土 地を売り惜しまない場 合は、地価がp1からp2 へと緩やかに上昇する。 1.2. 価格変動と需要・供給曲線のシフト ●地価と宅地の需給 図 1-5 ⇒例. MRTが淡水駅から 淡海の方へ延長される 計画がある。淡海の近 くには、台北湾という住 宅地の開発が始まって いる。 ⇒住宅地の開発は進むで あろうか? 1.2. 価格変動と需要・供給曲線のシフト ●地価と宅地の需給 図 1-5 ⇒例. MRTが淡水駅から 淡海の方へ延長される と、この近辺の宅地へ の需要が拡大する。 ⇒すると、需要曲線は破 線のD線から実線のD 線へとシフトする。 ●地価と宅地の需給 図1-5 ⇒地価が上がっても地主 が土地を売り惜しむ場 合は、宅地供給が減少 する。 ⇒このとき、宅地の供給 曲線は右下がりとなる。 ⇒したがって、地主が土 地を売り惜しむ場合は、 需要が拡大し、地価が 上昇しても宅地の開発 は進まない。 1.2. 価格変動と需要・供給曲線のシフト ●地価と宅地の需給 図1-5 ⇒MRTの延長工事が進んでも、地主が地価の上昇を 期待し、土地を売り惜しむ場合は、沿線の宅地開発 の進行が阻害される。 ⇒譲渡所得税は、土地を売ると課税される。 ⇒しかし、土地を売らない場合は課税されない。 ⇒したがって、譲渡所得税は売り惜しみを助長させる 効果がある。 ⇒土地を売り惜しみさせない政策として、土地の含み 益に課税させる方法がある。 ⇒参照 台湾の土地増値税 2.1. 需要曲線の構造 ●図2-1 ⇒一般的に価格が下落すると、需要量は増加 する(需要の法則)。 ●図2-2 ⇒価格がp1からp2に少し下落しただけで、需要 量がX1からX2に大きく増加している。 ⇒このような需要曲線を弾力的な需要曲線とい う。 2.1. 需要曲線の構造 ●図2-2 ⇒価格がp1からp2に大きく下落しても、需要量 はX1からX2に少ししか増加していない。 ⇒このような需要曲線を非弾力的な需要曲線と いう。 2.1. 需要曲線の構造 ●需要の価格弾力性 ⇒価格が1%変化した場合、需要量が何%変化 するかを需要の価格弾力性という。 ⇒需要の価格弾力性 =ー(需要量の変化率/価格の変化率) 2.1. 需要曲線の構造 ●需要の価格弾力性と支出額 問題. 価格が下落すると消費者の支出額は減少しま すか? ⇒農産物の場合、需要の価格弾力性は小さい。 ⇒すなわち、価格が1%下落しても需要量は1%未満し か増えない。 ⇒支出額 = 価格 × 需要量 0.5%減少 1%下落 0.5%増加 ⇒消費者の支出額は農家の収入であるから、農家は 豊作などで価格が下落すると収入が減少する(豊作 貧乏)。 2.1. 需要曲線の構造 ●需要の価格弾力性と支出額 問題. 価格が下落すると消費者の支出額は減 少しますか? ⇒工業品の場合、需要の価格弾力性は大きい。 ⇒すなわち、価格が1%下落すると需要量は1% 以上増える。 ⇒支出額 = 価格 × 需要量 0.5%増加 1%下落 1.5%増加 ⇒工業品の価格が下落すると、消費者の支出 が増加し、企業収入が拡大する。 2.1. 需要曲線の構造 ●差別価格 問題. なぜ学割があるのですか? ⇒鉄道や映画館などでは学生と大人では価格 が異なる。 ⇒なぜか? ⇒学生と大人では、需要の価格弾力性が異な るからである。 2.1. 需要曲線の構造 ●差別価格 問題. なぜ学割があるのですか? ⇒学生と大人では、需要の価格弾力性が異な るからである。 ⇒大人は普段は働いているので、価格が下落 しても鉄道や映画館の利用があまり増えない。 ⇒すなわち、大人の需要曲線は非弾力的であ り、需要の価格弾力性は小さい。 2.1. 需要曲線の構造 ●差別価格 問題. なぜ学割があるのですか? ⇒学生と大人では、需要の価格弾力性が異な るからである。 ⇒一方、学生は自由時間が多いため、鉄道や 映画館の価格を下落させると、これらの利用 が大きく増える。 ⇒すなわち、学生の需要曲線は弾力的であり、 需要の価格弾力性は大きい。 2.1. 需要曲線の構造 ●差別価格 問題. なぜ学割があるのですか? ⇒需要の価格弾力性の低い大人に低い価格を 設定すると、企業の収入は減少する。 ⇒需要の価格弾力性の高い学生に低い価格を 設定すると、企業の収入は増加する。 *収入(=支出額)=価格×需要量 ⇒したがって、需要の価格弾力性の高い(低い) 消費者には低い(高い)価格を設定した方が いい。