大規模な開口亀裂

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Transcript 大規模な開口亀裂

道路斜面防災の新しい展開を模索する
ー新技術の開発と実際への適用ー
① GISを活用したハザード評価技術
② 岩盤内部構造の探査技術(エアトレーサ試験)
③ 岩盤崩壊のモニタリング技術
④ 光ファイバセンサを用いた斜面表層崩壊モニタ
リング技術
⑤ 事前通行規制・日常管理の高度化
⑥ 斜面崩壊リスクの評価・提示方法
(リスマネジメント技術)
岩盤斜面崩壊
豊浜トンネル災害
1997年2月10日、11,000m3
の岩盤が落下。20名が亡く
なった。岩盤背後に発達した
亀裂の剥離による。
豊浜トンネル事故現場の
岩盤亀裂
開口量は小規模だが連続
性の高い亀裂が現在も見
られる。
岩盤斜面調査の基本
・斜面形状(微地形)
・岩質と岩盤物性(強度など)
・亀裂や弱層とその物性
これらの3次元的な把握
岩盤斜面調査の問題点
・開口亀裂があるか ?
・連続性は? 分布は?
ボアホールTV ?
しか見えない
ボーリング孔付近
物理探査?
分解能が低い
エアートレーサー試験
エアートレーサー試験の概要
注入方法:
トレーサーの
流出
1.送風機による人工注入
2.自然の流れによる方法
緩みゾーン
ダブルパッカーによるトレーサー
の注入
エアトレーサー試
験機器
トレーサーの
流出
ボアホールTV
による観察
トレーサー: 煙、ガス、
熱気など
露頭の開口亀裂への直接注
入
ボーリング孔を用いたエアートレーサー試験
岩盤斜面表面でのエ
アートレーサー試験
(大型の送風機を用いた例)
エアートレーサー
試験機器の構造
(本試験法は特許公開中)
測定項目
送気点:
送気圧
送気量
流出点:
流出部の分布
移動時間と移動速度
流出量
濃度
etc.
調査個所一覧
(全国12箇所、うち1箇所(高
知)は事務所による実利用)
・岩手(茂師)
・山形(鯵ヶ埼)
・新潟(谷花)
・栃木(海尻)
兵庫(日ヶ奥) ・
奈良(人知) ・
・高知(橘)
・大分(天ヶ瀬)
・岐阜 ・静岡(富士川)
・千葉(元名)
(坂
・静岡(赤沢)
祝)
事例1
亀裂の比較的少ない軟岩
岩盤表面に開口亀裂
が見られる(図の赤線)
が、内部の連続性が不
明。
緩み
注入ポイント
煙は緩んだ岩盤を
取り囲むように流出
事例2
多くの亀裂が分布する中硬岩
当初、ボアホールTVや表
面の亀裂だけでは不安定
なブロックを識別すること
が困難であった。
エアートレーサー試験により推定された断面図
注
入
孔
Persistent open cracks clarified by air tracer test
太い黒線はエアートレーサー試験で連続性の高い開口亀裂。
この分布から、緩み範囲と、岩盤の主なゆるみ機構がトップ
リングである可能性が推定できる。
事例3:大規模な岩盤緩み
大規模な開口亀裂
独立岩峰の北側には大規模な開口亀裂がある。また西側には、
風穴が点在する。
緩み上部の開口亀裂(左図)とトレーサーの注入(右図)
トレーサーの流出状況
自然の空気の挙動
岩盤中の空気は、外気温と岩盤の温度差により、夏季
には上部から下部へ、冬季にはその逆に移動する。
自然の空気の流れを利用したエアートレーサー試験
自然の空気の流れを利用したエ
アートレーサー試験では、岩盤中
の空気の流れの「風上」にトレー
サーを注入して観測する。
エアートレーサー試験による緩みの解釈
流出範囲は?
広い(10m以上)
流出パターンは? 岩体を囲む形状
流出量は?
濃度は?
流出速度は?
狭い(1~2m)
面的
大量(煙突の煙)
濃い
スポット的
少量(タバコの煙)
薄い
距離・開口量の割に速い
遅い
(大規模緩みは例外)
緩み発達、危険度大
緩み未発達、危険度小
結論
1. エアートレーサー試験は開口亀裂の連続性
を確認できるユニークな手法である。
2. 本試験は人工的な送気法と自然の空気流れ
を利用した方法に分けられる。
3. 本試験により、緩み領域が明らかになり、岩
盤斜面の安定性の推定精度は向上する。
今後の課題
・試験結果の解釈(解析・評価)技術の高度化
・本試験法のマニュアル化
・微地形調査技術、岩質の調査技術等との融合に
よる岩盤斜面調査の高度化
岩盤斜面の評価に必要な技術
微地形調査判読技術
(空中から)
亀裂性状、すべり
面判別技術
ゆるみ範囲、すべり面の
連続性、せん断強度や変
形性、安定性等の推定
(データの統合による)
(ボーリングコア等)
開口亀裂や弱層の連続
性調査技術
(孔坑間等)
変形性等の物性
計測技術
(調査横坑等)
地下水挙動や残留
間隙水圧
(ボーリング孔等)
事例4:大規模な緩み岩盤斜面における
調査横坑でのエアートレーサー試験
トレーサーは25m離れた別の横坑から流出した。
エアートレーサー試験
1.目的
a. 岩盤中の潜在的な開口亀裂を検知すること
b. それらの亀裂の連続性を確認すること
c. 緩み領域を推定すること
d. 上記情報等から岩盤の安定性を評価すること
2.方法
煙やガス、熱気などのトレーサーを岩盤に送り込
み、亀裂からの流出を肉眼やビデオカメラ、ボア
ホールTV、及び各種センサーで観察する方法