腰椎椎間板ヘルニアの手術を受られる患者様へ

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Transcript 腰椎椎間板ヘルニアの手術を受られる患者様へ

岡山大学医学部歯学部附属病院整形外科
腰椎椎間板ヘルニア
の手術を受けられる患者様へ
腰椎椎間板ヘルニアとは
腰椎椎間板ヘルニアとは腰の椎間板というクッションの役割をした
軟骨が加齢や運動によるストレスで裂け目ができて、飛び出して
足にいく神経を圧迫して腰痛や足(下肢)の症状をだすという病気です。
腰椎椎間板ヘルニアの発生頻度、原因
この病気の頻度は 全人口の 1 - 3% ぐらいで非常に多い病気と言えます。
肉体労働や激しい運動をするためか男性が1.3から2倍多い病気です。
よく起こる部位はL4/5(50%)、L5/S(45%)の順で、好発年齢は20 -40歳代 です。
腰椎椎間板ヘルニアの症状
腰痛、坐骨神経痛、足のしびれ、脱力、歩きにくい、尿や便がでにくいなどの症状
が出現することが多いようです。
腰椎椎間板ヘルニアのタイプ
画像診断
腰椎椎間板ヘルニアの治療法
手術適応 : 高度の下肢麻痺(足首が上がらないなど)、尿が出にくい、
手術以外のあらゆる治療を2ヶ月の行っても良くならない下肢痛
予防的手術: 痛くなりそうだから早めに手術ということは決してありません。
手術方法 : 経皮的ヘルニア摘出術、レーザー蒸散法、
肉眼的手術、顕微鏡的手術、内視鏡手術
などがあります。
経皮敵ヘルニア摘出術、
レーザー蒸散法
利点 全身麻酔がいらない
欠点 治療効果が不十分
肉眼的手術、
顕微鏡的手術
利点 多くの施設で可能
欠点 傷が大きく、
すぐに動けない
内視鏡ヘルニア摘出の術後
手術の当日 ベッド上安静(座位も可能)です。
場合によってはトイレ歩行も可能です。
手術の翌日 コルセットをつけて歩くことができます。
手術の4-5日目 歩いて退院が可能です。。
皮膚の傷は2cm以下
内視鏡手術
利点 傷が小さく、
すぐに動ける
欠点 手技がやや難しい
予定されている手術の名称と方法
1. 麻
酔:
全身麻酔
2. 手術名: 内視鏡的ヘルニア摘出術 (MED)
3 方
法: 背中の後方を縦に約2cmだけ切開します。
内視鏡を使用して飛び出した軟骨(ヘルニア)を切除して、
皮膚を専用のテープで固定します。
手術に伴い期待される効果と限界
1 効 果: 下肢の不全麻痺が軽減されることが期待されます.軽減しない場合でも,症状の悪化を
くいとめることが期待できます.坐骨神経症状の軽減が期待されます(約70%)
2 限 界: 平均改善率をみると70〜80%です.症状の一部が残存する可能性があります.
とくに,しびれ感は残存する可能性があります.また、術後早期には腰部の痛みやこわばり
感ずる場合があります(約40%) .通常、時間の経過とともに軽快していきます.
再手術(再発)が必要となる患者様が約5-10%ぐらいいらっしゃいます。
手術を受けない場合に予測される病状の推移と可能な他の治療法
1 予測される病状の推移:腰痛、下肢痛、しびれなどが持続することが予測されます。
2. 可能な他の治療法:腰椎の安静、鎮痛剤、神経ブロック、牽引などが考えられます。
予測される合併症とその危険性
1 麻酔に伴う合併症: 稀ではありますが、心筋梗塞、脳梗塞、脳出血、麻酔薬の
アレルギー(悪性高熱)、気管の腫脹,血圧低下などの可能性があります.
2 手術操作によって,神経を障害する可能性があり,麻痺の悪化もありえます(1%以下).
3 感染症(1%以下) :手術では最大限清潔な操作を行っておりますが、感染の危険はあります.
4 血栓症(1%以下) : 術後に足の静脈内で血が固まり詰まることがあります。この場合は足がむく
むだけでなく、 血の固まりが心臓や肺などにとぶ可能性があります。心臓や肺などの血管が
詰まると命にかかわります。定期的に検査を行って、この徴候が見られたら固まりを溶かすよ
う点滴を行います.
5 輸血に伴う合併症:手術中、あるいは手術後に必要になった場合、輸血する可能性がありますそ
の場合、輸血による副作用が出現する可能性があります.
76 その他: 硬膜外血腫・脊髄液漏出術中の体位(腹臥位)による皮膚圧迫(顔面,眼球,胸部,
骨盤部など)・大腿皮神経麻痺(大腿前面のしびれ感)長期的に硬膜周囲の瘢痕,硬膜内の
神経癒着,脊椎の不安定性など.
腰椎椎間板ヘルニア Q & A
Q 1 この病気は遺伝しますか?
A 1 この病気は遺伝病ではありません。
Q 2 この病気は手術しないとだんだん悪くなりますか?
A 2 その可能性はむしろ少ないと考えるべきです。約90%の人が手術なしで
まずまずの結果を得ています。
Q 3 この病気はレーザーがよく効くと聞いたのですが?
A 3 この病気はレーザーによってよくなる場合はごく限られた場合のみと考えた方が良
いでしょう。多くの大学病院や脊椎の専門施設はレーザーによる治療を積極的には行って
はいません。保険が利かないという側面はありますが、効果が不十分だからです。
Q 4 この病気になるともうスポーツはできませんか?
A 4 そんなことはありません。しかし、激しいスポーツをする人ほど再発率は高くなると
考えた方が良いでしょう。実際にはこの病気で手術をしてかなり高いレベルの
スポーツ選手もいらっしゃいます。
Q 5 この病気は予防的手術が勧められますか ?
A 5 この病気は予防的手術は現時点では勧められません。
再度痛くなったその時に手術を考えればよいのです。
Q 6 この病気の手術は大変ですか ? 歩けなくなることがあると聞いたのですが?
A 6 この病気の手術成績は比較的良いといえます。しかし、どの手術もそうですが、手術には
危険のない手術というものはありません。手術後に症状が悪化する確率は数%程度です。
歩けなくなることはごくまれな場合を除いては通常は起こりえません。
また、手術後症状が非常によくなったと感じるのは半年が目安です。