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乳幼児は抗ヒスタミン剤で
けいれんすることがある
市立豊中病院小児科
松岡 太郎
自経例の呈示ー1
《症例》 8カ月、女児
《主訴》 けいれん
《家族歴》 けいれん性疾患なし
《既往歴》 けいれんの既往なし、発達の遅れなし
自経例の呈示ー2
《現病歴》
A院にてアトピー性皮膚炎と診断され、外用剤の他に、X-1年
12月(生後4カ月)からケトチフェンの内服を、さらにX年2月から
はケトチフェンに加えてヒドロキシジンとクロモグリク酸の内服
を続けていた。X年3月19日(生後8カ月)と3月21日に各1回、さ
らに3月24日に2回、それぞれ3分から10分持続し、二次性全般
化を伴う複雑部分発作を認めた。発熱や下痢はなかった。3月
25日に精査加療目的に当科に入院となった。
自経例の呈示ー3
《入院時現症》
一般理学的、神経学的に異常所見なし
《入院時検査所見》
血液生化学、脳波、頭部CT、頭部MRIに異常所見なし
DQ(津守・稲毛式)=110
自経例の呈示ー4
《入院後経過》
入院後直ちに全ての内服薬を中止し、けいれんの再発なし。4月6日に退
院した。
X年6月22日に鼻汁と咳嗽が出現したため、「市販の感冒薬」を内服したが
喘鳴が増強した。6月27日にB院にてエリスロマイシン、ケトチフェン、メチル
エフェドリン、リン酸コデイン、乳酸菌製剤を処方され内服したところ、6月30
日に3月のと同様の発作型のけいれんが4分間の持続で1回出現した。直ち
に内服を中止して再発はなかった。
7月6日に脳波を再検して異常所見なし。
以後、抗ヒスタミン剤を禁忌としてけいれんの再発なし。
「抗ヒスタミン剤とけいれん」の報告ー1


Churchill JA, et al. The effect of antihistaminic drugs on
convulsive seizures. J Amer Med Assoc 1949; 141: 18-21.
欠神てんかんの患者さんにジフェンヒドラミンを投与す
ると脳波所見が悪化し、けいれんが出現した。
「抗ヒスタミン剤とけいれん」の報告ー2


Yokoyama H, et al. Proconvulsant effect of ketotifen, a histamine H1 antagonist,
confirmed by the use of d-chlorpheniramine with monitoring
electroencephalography. Meth Find Clin Pharmacol 1993; 15: 183-8.
難治性てんかんとアレルギー性鼻炎が合併した5歳の男児。3
剤にて抑制されていたけいれんが、ケトチフェンの投与後悪化し
た。ケトチフェンの中止にて再発はない。脳波記録中のクロル
フェニラミンの静注にて突発波が増加した。
「抗ヒスタミン剤とけいれん」の報告ー3


Yasuhara A, et al. Infantile spasms associated with a histamine H1 antagonist.
Neuropedaitrics 1998; 29: 320-1.
アトピー性皮膚炎のため生後2カ月からケトチフェンを内服した4
カ月男児と喘息性気管支炎のため生後3カ月からケトチフェンを
内服した5カ月男児。共に内服開始後1週間から1カ月でけいれ
ん発作と脳波上ヒプサリスミアが出現した。ケトチフェン中止後
もけいれんは残った。
なぜ乳幼児は抗ヒスタミン剤で
けいれんするのか?



生後30日までのマウスはH1受容体をブロックすることでけいれ
んの閾値が下がるが、生後30日以降のマウスでは影響がな
かった。
脳内ヒスタミン神経系は、ヒスタミンH1受容体を介してけいれん
の抑制系として作動している。
幼若な脳(けいれん性疾患の患児の脳)では、脳内GABA神経
系がけいれんの抑制系として充分作動していないので、成熟脳
に比べて脳内ヒスタミン神経系の重要性が増す。
抗ヒスタミン剤〜第1世代
一般名
当院採用
商品名
当院院内
採用剤形
禁忌
クロルフェニラミ
ン
ポララミン
錠、注
低出生体重児
新生児
ジプロヘプタジン
ペリアクチン
錠、散
シロップ
低出生体重児
新生児
アリメマジン
アリメジン
シロップ
クレマスチン
タベジール
錠
慎重投与
重大な
副作用
けいれん
(頻度不明)
乳・幼児
けいれん
(頻度不明)
てんかん等のけい
れん性疾患、また
はこれらの既往歴
のある患者
けいれん
(頻度不明、
乳・幼児で
は特に注意
する)
抗ヒスタミン剤〜第2世代
一般名
当院採用
商品名
当院院内
採用剤形
ケトチフェン
ザジテン
カプセル
ドライシロップ
シロップ
メキタジン
ニポラジン
錠、
小児用細粒
オキサトミド
セルテクト
ドライシロップ
セチリジン
ジルテック
錠
アゼラスチン
アゼプチン
錠
エピナスチン
アレジオン
錠
ドライシロップ
エバスチン
エバステル
OD錠
オロパタジン
アレロック
錠
フェキソフェナジン
アレグラ
錠
禁忌
慎重投与
重大な副作用
てんかん等のけいれん
性疾患、またはこれらの
既往歴のある患者
けいれん(頻度不明、
乳・幼児では特に注意
する)
幼児
けいれん(0.1%未満)
市立豊中病院小児科における
抗ヒスタミン剤処方ガイドライン(私案)



抗ヒスタミン剤の内服は、3歳以下の乳幼児やけいれん
性疾患の患者さんにはできるだけ避ける。
患者さんの訴えに抗ヒスタミン剤が有効かどうか、他の
解決策はないか、と考える(例:乳幼児の鼻閉には?湿
疹の痒みには?)。
どうしても抗ヒスタミン剤が必要なら、ケトチフェン以外
の第2世代から選択する。