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和漢古典籍研究分科会研究発表
和漢古書の情報と補修
~書物の顔から刊年を探る~
2009.12.14
発表内容
分科会の目的
 活動内容
 古典籍の保存と補修
 書物の顔から刊年を探る

研究分科会の目的
日本や中国・朝鮮半島などで刊行された古典
籍資料について、大学図書館職員として必要
な書誌学の基礎知識・書誌作成の方法を習得
することを目指す。
分科会の活動内容
輪読
基礎知識を養うために、藤井隆著『日本古典書誌学
総説』(和泉書院)を選び、章節毎に担当を決め輪読、
その要約・発表を行った
調書作成
会員所属図書館の和漢古典籍を使って調書を作成
見学
会場校の図書館や貴重書庫、付属施設を見学
分科会の活動風景
中央大学
鶴見大学図書館貴重書庫
古典籍の保存と補修
保存・補修に関する質問項目
Q1 どのような装備を行っているか
Q2 どのように保存しているか
(配架の仕方、配架場所の温度・湿度等)
Q3 燻蒸を行っているか
Q4 虫食い・紙の劣化など補修が必要なものについ
て、どのように対処しているか
Q5 修復費用は予算化されているか
Q6 和装本の資料保存についての疑問点
Q7 和装本の資料保存について困っていること
Q1 どのような装備を行っているか
装備をしているかどうか
装備をしていない
装備をしている
装備の内容
・蔵書印
・請求記号貼付
・請求記号鉛筆書き
・登録番号貼付
など
Q2 どのように保存しているか

温度・湿度管理を行っている大学が大半
温度:20~25度
湿度:40~60%

文献における適正温度・湿度
温度:18~22度
湿度:45~50%
(『防ぐ技術・治す技術 紙資料保存マニュアル』(日本図書
館協会 2005)による)
Q3 燻蒸を行っているか
燻蒸を行っている大学が約半数
 燻蒸の頻度は1~2年に1回

Q4 虫食い・紙の劣化など補修が必要なも
の
について、どのように対処しているか
対処しているか
対処
していない
対処
どのように対処しているか
現状維持
業者に頼む
している
自館で簡単
な補修
Q5 修復費用は予算化されているか
予算化
予算化
されている
されていない
予算化されている
大学も、和装本だけ
の予算ではない・・・
Q6 Q7 和装本の資料保存についての
疑問点・困っていること
保存
 保存に適した書架、温度・湿度は?
 カビを発生させないようにするためにはどの
ようにしたらよいか?
補修
 どの程度まで修復したらよいのか?
(現状を維持するか、修復するかの判断)
 補修の知識(技術)を持った人材が少なくな
ってきている
古典籍の補修実習
古典籍の各名称
補修について
講師:松本研究室
裏打ち作業、虫食いの穴埋め作業、
四ツ目綴じの見学・実習
※虫食い穴が多くある書物は裏打ちが適切
※虫食い穴の少ない書物は穴埋めが適切
補修風景
松本研究室のみなさんと
和装本の補修開始
Ⅰ. 裏打ち


最終的に資料を元に戻す為、資料の現状を記録する
記録項目
資料の寸法、綴じ糸の太さ・色、中綴じの綴じ方、
角裂の有無と色、付箋の箇所、朱筆、丁付けの順
番等
丁寧に資料を解体
一枚ずつ丁寧に剥がす
 紙を傷めない程度に埃や虫の糞等を除く

渋紙の上で作業


濡らした渋紙の上に本紙の裏面を上にして
置き、水で濡らした刷毛で渋紙と本紙との
間の空気を除くようにする
ダマにならないように漉した薄めの糊を本
紙に塗る
裏打ち紙を貼る
本紙の目の通りに裏打ち紙をのせ、皺にな
らないように、刷毛で整える
 裏打ち紙の大きさは、本紙より四方が2cm位
大きいものが良い

化粧板に移す
化粧板

渋紙ごと裏にして化粧板に移す
渋紙をはがし、乾かす
渋紙を剥がしたら、本紙にもう一度
水刷毛を掛けてから乾かす
 渋紙はその都度洗う

Ⅱ.虫食いの穴埋め


本紙の裏から低温アイロンを掛け、皺を伸ばす
本紙の裏から補修する
筆に水分を含め、補修紙を穴埋めする穴の大きさより
2~3mm大きく切り取る
 補修紙は手で裂いて縁を毛羽立たせて使う

修補後
糊を付ける面に注意
 放射線状に糊を付けた後、くっついた
繊維が広がるのを少し待つ

Ⅲ.四つ目綴じ
中綴じ
見返しから中綴じの穴を利用し、紙縒で元
と同じような留め方で留め、留めた箇所を
叩いて抑える
 文鎮を利用すると動かなくて良い

四つ目綴じ
糸の長さは、資料の天地の長さ×3+斜め1本
分
 裏表紙を上にし、地から2番目の穴の数丁下
から針を入れ、玉を穴から少しずらし、天に
向かって綴じていく

書物の顔から刊年を探る
~漢籍と仏書を中心に~
表紙とは
本文の保護として外側に添えられたもの
 形状:巻子装では一枚
冊子装では二枚
 表紙の種類:紙表紙・布表紙・板表紙

主な表紙の色
①丹表紙
②栗皮表紙
③紺・藍色
④薄茶色(光沢)
⑤黄色
⑥朱色(厚手)
⑦柿渋色(厚手)
⑧官版
⑨嵩山房(小林新兵衛)
⑩本居宣長
⑪平田篤胤
その他諸々…
1
丹表紙
鮮やかな朱色(赤橙色)
 室町時代より江戸初期に集中する
 日本古典・和刻本漢籍などに使用

丹表紙(例)
古活字本『虚堂和尚録』
[慶長・元和年間(1596-1624)]刊
古活字本『虚堂和尚語録』
[慶長・元和年間(1596-1624)]刊
丹表紙(例)
古活字版『文選』
[寛永2年(1625)]刊
『新刊素問入式運気論奥』
慶長16年(1611)刊
2
栗皮表紙
栗色で光沢がある。
 慶長年間(1596~1615)の古
活字版から使用
 仏書、日本古典、和刻本漢籍など幅広
く使用
 正保年間(1644~1648)頃か
ら減少し、天和年間頃まで

栗皮表紙(例)
新刊錦繍段
元和2年[1616]刊
医方大成論
元和2年[1616]刊
栗皮表紙(例)
医方考(古活字版)
元和7年[1621] 刊
三体詩素隠抄
寛永3年[1626]刊
3
紺・藍色
光沢がある濃い藍色
 慶長年間(1596~1615)の古
活字版から使用
 日本古典を中心に、和刻本漢籍などに
使用
 江戸初期から江戸前期に集中して使用

紺・藍色(例)
太平記
寛永元年[1624]刊
新刊素問入式運気論奥
慶安2年[1649]刊
紺・藍色(例)
四書便蒙講述
慶安4年 [1651]刊
つれつれ草
寛文7年[1667]刊
4
薄茶色(光沢)
薄茶色(香色)で、光沢あり
 江戸時代前期にほぼ限定
 仏書・和刻本漢籍などに使用

薄茶色(例)
宗鏡録
寛永19年[1642]刊
増註唐賢絶句三體詩法
承応2年 [1653]刊
薄茶色(例)
五車韻瑞
万治2年[1659 ]刊
新刊素問入式運気論奥
貞享2年[1685]刊
5
黄色
江戸時代末期より明治時代まで
 仏書・和刻本漢籍などに使用

黄色(例)
明律國字解
江戸末明治初[18--]刊
世事要言
明治6年[1873]刊
黄色(例)
門跡傳
弘化2年[1845]刊
左繍
嘉永7年 [1854] 刊
6
朱色(厚手)
江戸末期から明治初期に使用
 仏書を中心に使用

朱色(厚手)(例)
『観音経和談鈔図会』
天保4年[1833] 刊
『浄土宗回向文和訓圖會』
弘化2年(1845)序
7
柿渋色(厚手)
厚手の芯紙を使用
 江戸末期から明治初期に使用
 和刻本漢籍に使用

柿渋色(厚手)(例)
『中庸』
[江戸末-明治]
『小学』
明治16年[1883]後印
8
官版
小豆色
 表紙に型押しがある
 江戸後期に昌平坂学問所で刊行
 明治時代の後印本にも使用

官版
方言藻
天保2年[1831]
自號録
(明治後印)
すう ざん ぼう
9
嵩山房(小林新兵衛)
屋号は「須原屋」
 主に薄茶色を使用
 原則として芯紙は使用せず
 例外として薄茶色以外や芯紙も使用
 江戸時代後期から明治にかけて使用
 主に和刻本漢籍に使用

嵩山房(小林新兵衛)
聖学問答
享保21年[1736] 刊
徂徠先生学則解
延享元年[1744]刊
嵩山房(小林新兵衛)
東江先生書唐詩選
天明4年[1784] 刊
御注孝經
慶応4年[1868]
10
本居宣長
縹色を使用
 表紙に芯紙を使用
 江戸時代後期から使用

本居宣長(例)
美濃の家づと折添
寛政9年[1797]
詞瓊綸
[江戸後期]
11
平田篤胤
縹色を使用
 表紙に芯紙を使用
 江戸時代後期から使用

平田篤胤(例)
霊能真柱
文化9年[1813]
神字日文傳
文政2年[1819] 刊
平田篤胤(例)
俗神道大意
万延1年[1860]序 刊
古史傳
明治20年[1887]
調査から発見した個別の事例①
~反故紙の裏張り~
反故紙の裏打ちの実例
『法華文句私志記』
寛永5(1628)年
反故紙の裏打ちの実例
『法華文句私志記』
寛永5(1628)年
反故紙の裏打ちの実例
調査から発見した個別の事例②
~無刊記本の刊行時期推定~
『遊仙窟』二種
『遊仙窟』二種
『遊仙窟』二種
調査から発見した個別の事例③
~薄茶色の替表紙(大田南畝所持本)~
狂雲集(寛永19年刊の後刷り)
狂雲集 刊記・奥書(大田南畝自筆)
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