医学における因果関係の推論

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Transcript 医学における因果関係の推論

岡山市疫学研修会
医学における因果関係の推論
ー疫学を心底から納得していただけるためにー
疫病物産本舗
Commodities on Diseases and Contagion
津田敏秀
人はどのように因果を考えてい
るか?認知してゆくか?
子どもはRCT
で因果関係を
認知していく
のだろうか?
物理学の「因果関係」?
クワイン経験主義の二つのドグマ

科学を包容する全体的概念図式に、二つの競合
する概念図式がある・・・


1.現象主義的ドグマ
2.物理主義的ドグマ



クワインはこちらを「神話」と呼んだ。神話の形成を待つ時間
は、食中毒の疫学にはない
物理学自身は「因果関係」という言葉をあまり使
わない。しかし、他の学問分野では、物理学的概
念図式を科学的と信じているケースを見かけるこ
とがある。責任の所在は、いったいどこに?
大事なのは役に立つこと(実用主義:プラグマティ
ズム)!
疫学理論・生物統計学・因果推論



馬場園明(九州大学健康科学センター)の分類
これに、様々なテーマを付け加えたのが、
疫学の応用研究(Applied Epidemiology)
食中毒の疫学・臨床疫学・環境疫学・職業
病の疫学・遺伝疫学・分子疫学・感染症の
疫学など

今では医学分野なら何でも「……疫学」
食中毒の疫学の基礎


2000年夏、大阪での事件
次のスライドで何が問題か?


病因物質・原因食品・原因施設
「原因物質」というと混乱する
雪印事件(2000)公表までの経過

27日午前11時


午後4時半ごろ


「食中毒症状が出ている」と、病院から保健所を通じ、
大阪市生活衛生課に連絡が入る
兵庫県西宮市の主婦が市内の保健所に下痢などの
症状を訴え、検査を依頼する
夕方

大阪市が市環境科学研究所に、残した牛乳の検査を
依頼

28日午前10時半



28日午前11時半


雪印西日本支社で「緊急品質管理委員会」が開かれ、
対応が協議される
午後1時半


兵庫県西宮市で低脂肪乳を飲んだ3人が食中毒の症
状を起こしていると、同県から工場所在地の大阪市に
連絡が入る
午後1時ごろ


雪印が札幌市内で株主総会を開く
大阪市北保健センターに、5人が食中毒の症状を起こ
していることを告げる電話がかかる
大阪市が雪印大阪工場を立ち入り検査
午後9時15分ごろ

雪印西日本支社にも同様の被害4件が寄せられてい
ることが判明

28日午後9時半ごろ


29日午前8時


大阪市環境保健局が最初の記者会見
午後9時45分


大阪市、公表の方針決める
午後4時


雪印が回収を決める
午前9時ごろ


大阪市が同工場に製造・販売の自粛と自主回収を指
示
雪印西日本支社が記者会見
午後11時

症状を訴える人が200人を超える
雪印事件(2000)の公表後(1)

2000年6月29日の午後4時、大阪市の環境
保健局は「雪印低脂肪乳」を飲んだ人が、
嘔吐や下痢、腹痛などの症状を訴えており、
製造・販売の自粛と製品約12万5000本の
自主回収を指示したと発表。大阪市は「同
じ銘柄の牛乳で、ほぼ同時に発症しており、
何か入っていたのは間違いない」とコメント。
雪印事件の公表後(2)

翌30日の朝刊、「原因施設」の雪印大阪工
場(大阪市都島区都島南通)が明記され
「原因食品」である雪印低脂肪乳の写真が
掲載されている。


和歌山市衛生研究所は30日、患者の飲み残しや回収した未開
封分の計3検体から、黄色ブドウ球菌毒素を出す遺伝子を検出
したと発表した。毒素そのものは検出されておらず、同研究所は
原因と断定していないが、黄色ブドウ球菌による食中毒の可能
性も出てきた。なお症状は明らかに…
30日の夕方、大阪市は工場に対し、食品
衛生法に基づく「回収命令」
雪印事件(2000)の公表後(3)


30日までは自主回収を指導していたが、命令により行政当局が最終処
分まで立ち会うなど対応が強化された。
7月2日、食品衛生法に基づき雪印乳業大
阪工場を無期限の営業禁止処分とした。

大阪市が食中毒と断定したのは、和歌山市衛生研究所が被害
者6人の飲み残した低脂肪乳5検体から、黄色ブドウ球菌が作る
毒素のエンテロトキシンを検出したという説明である。菌そのもの
は検出さ黷トいないが同研究所は「製造工程で、高温殺菌する前
に存在していた黄色ブドウ球菌が毒素を出し、殺菌後も、毒素だ
けが残ったままパック詰めされた」との見解を示した。
大阪市が事件後発表した情報
公開の「基準?」

条件1 複数グループから相当数の被害者
が発生していて、疫学的分析結果が一致
しいる。
条件2 原因食品が推定できる。
条件3 被害の拡大が予想される。


上記の三条件をすべて満たして、蓋然性が高
い場合は公表する。
食品衛生法はこのようなことを要求してい
ないはず…。
ロンドン・コレラ事件(1854-55)



ロンドンの麻酔科医、ジョン・スノーは、コッホが
1881年に病因物質コレラ菌を同定する約30年前
に、ロンドンのある水道会社の供給する水道が、
コレラの原因であるとしてその水道栓を閉じた。
その水道会社の取水口は、テムズ川において、
下水口より下流に開いていた。
1850年頃に、ウイリアム・ファーは標高が低いほ
どコレラの死亡率が高いことを明らかにしていた。
三重県・滋賀県にまたがる弁当
による集団食中毒事件(1998)


1998年7月7日、水口保健所は、某仕出し
屋が集団食中毒事件の原因施設であると
して、食品衛生法に基づく営業停止処分を
行う。病因物質不明。報道ではウェルシュ
菌かサルモネラ菌か?
翌々日、病因物質は腸炎ビブリオ菌と発
表。処分についての変化はなかった。
食中毒統計の三つの軸

病因物質


原因施設


判明すれば「営業停止」
原因食品


細菌性・化学性・動物性・植物性・ウイルス性
判明すれば「製品回収」
どれが判明すればactionにつながるか?
「病因物質」と、「原因施設・原因
食品」の組み合わせ
原因施設・食品
(伝播原因)
病因物質
伝播原因判明 伝播原因
未判明
病因物質
判明
抄録①
抄録③
病因物質
未判明
抄録②
抄録④
Goodmanら(1990)の提言
伝播原因
伝播原因
判明
伝播原因
未判明
病因物質
病因物質
判明
調査+
対策+++
調査+++
対策+
病因物質
未判明
調査+++
対策+++
調査+++
対策+
問題の所在


「病因物質」判明は対策実行のための必
要条件か?
例





水俣病事件(昭和31年、1956年から)
浜松アサリ貝事件(昭和17-22年)
雪印事件(平成12年、2000年)
ロンドンコレラ事件(1854-55年)
滋賀県・三重県の集団食中毒事件(1998)
水俣病事件の経過(公開されたものだけ
で、工場側は事実が分かっても秘密にしていた)






1956年5月1日、奇病としての届け出
1956年11月3日、熊本大学医学部、水俣湾産の
魚介類の摂取による食中毒と発表
1958-9年頃、有機水銀説が浮上
1961年、熊本大学医学部、入鹿山グループが、
メチル水銀を同定・分離に成功
病因物質=メチル水銀、原因食品=水俣湾産の
魚介類、
この間に、水俣湾から不知火海に汚染拡大し患
者発生も広がった
浜松アサリ貝事件の経過




昭和17年頃から、浜名湖のアサリ貝を喫
食した者に死亡者を含む
昭和22年、病因物質不明のまま、静岡県
知事が食品衛生法を適用
原因食品は、浜名湖のアサリ貝
後に病因物質はベネルピンとのこと
DNAの判明の必要性について

イクラしょうゆ事件:富山県衛生研究所が、北海道の
業者の「イクラ醤油漬(1997年9月15日製造)」から腸
管出血性大腸菌感染症[血清型O157:H7、VT1(+)・
VT2(+)]を検出し、DNA解析の結果、患者由来株と
DNAパターンが一致した。このため、本件の感染症
は「イクラ醤油漬」と確定した(感染症・食中毒集団
発生対策研究会2000)、という表現をおこなった。


誤解を招く表現である判断はDNA結果以前に行
うべきでDNAは単に判断を指示する材料の1つ
に過ぎないと考えるべきであろう。
科学の進歩が、対策を遅らせることになるのは
疑問
中間まとめ




病因物質の判明は、対策実行のための必要条
件ではない。
毒物が入っている原因食品、それを流通してい
る原因施設が判明すれば、対策を実行するべき
である。
判明のための証拠は疫学的証拠である。
なお、病気の集団発生は、「感染症」、「食中毒」、
「薬害」、「公害」というようなラベルを付けて起こ
るわけではない。全て、健康障害がワッとわきで
てくるものであることに注意!
20
20
00
00
/8
/8
0
8
6
4
2
0
/5
/3
/1
/3
/2
/2
/2
/2
/2
/8
/7
/7
/7
/7
/7
/7
00
00
00
00
00
00
00
20
20
20
20
20
20
20
「報道患者数」と疫学曲線と症例
の定義の関係
50
45
40
35
30
25
20
15
10
5
0
増加分
期待値
1996年日本における腸管出血性大腸
菌O157:H7集団発生事件報告書概観
地域
症例の定義
疫学曲線
分析
+α
A県
△
○
△
×
B市
△
○(マップ)
×
×
C県
△
○
×
×
D町
△
○
△
△
E市
△-○
○
△
△
F市
△-○
○
×
×
G市(市)
△
○(マップ)
○
○
H市
△
○
○
△
I市
△-×
○
○
△
J県
?
?
?
?
原因と結果(曝露の測定と疾病の診断と,因果関係の
図)
実際の分析
3
1
推定さ れるべき曝露
推定さ れるべき因果関係
疾病の診断
疾病の誤分類
暴露の誤分類
曝露の測定
2
推定さ れるべき
疾病罹患
1,2,3それぞれのところで2かけ2表が
作られることに注意!
原因と結果2かけ2表・その1
____________________________________________________
Exposure
______________________________
Exposed
Non-exposed
____________________________________________________
Diseased
A
B
-----------------------------------------------------------------------------Base population
PY1
PY0
____________________________________________________
原因と結果2かけ2表
その2(曝露の測定・分類)
曝露感度と曝露特異度の説明の表
曝露有り
曝露無し
計
陽性
a
b
a+b
陰性
c
d
c+d
計
a+c
b+d
曝露測定
a+b+c+d
原因と結果2かけ2表
その3(疾病の測定・分類)
疾病感度と疾病特異度の説明の表
病気有り
病気無し
計
陽性
a
b
a+b
陰性
c
d
c+d
計
a+c
b+d
検査・診断
a+b+c+d
2かけ2表まとめ


再び、病気の集団発生は、「感染症」、「食中毒」、
「薬害」、「公害」というようなラベルを付けて起こ
るわけではない。全て、健康障害がワッとわきで
てくるものであることに注意!従って、「曝露」の指
標は、センスが必要である。
疫学は、「人ひとり分」が単位である。従って、2
かけ2表の各数字の単位は、ほとんどの場合
「人」である。
推定値
Humeの問題
David Hume の問題


必然性は心の中に存在する何ものかであって、
対象の中にあるのではない。もし必然性を物体
のなかにある性質と考えるなら、必然性のほん
のかすかな観念を全く持たないか、それとも必然
性は原因から結果へ、もしくは結果から原因へと、
経験された結びつきに従って移る思考の規定に
ほかならないか、そのいずれかである。
即ち、客観的因果律の否定。
Humeの問題を図で見てみよう
病気の発生●
人における時間の流れ
David Hume の問題
後悔と思い返し
人における時間の流れ
病気の発生●
David Hume の問題
この曝露が原
因じゃないか
?
後悔と思い返し
人における時間の流れ
病気の発生●
David Hume の問題
ところが原因と考えられる曝露は他にもある・・・・・
ということは、因果関係に関する合意はできないの?
この曝露が原
因じゃない
か?
後悔と思い返し
人における時間の流れ
病気の発生●
曝露群と非曝露群における病気の発生
非曝露群
曝露群
一定期間における疾患の発生
1,000人の人口集団
1,000人の人口集団
曝露群と非曝露群における病気の発生
非曝露群
○○
曝露群
○○
一定期間における疾患の発生
1,000人の人口集団
1,000人の人口集団
曝露群と非曝露群における病気の発生
曝露群
非曝露群
曝露群に曝露が加わると
○○●●●
●●●●●
●●●●●
○○
●●●●●
一定期間における疾患の発生
1,000人の人口集団
1,000人の人口集団
原因(曝露)による10倍の多発
曝露群と非曝露群における病気の発生
曝露群
非曝露群
曝露群に曝露が加わると
●●●●●
しかも白丸○と黒丸●の症例の臨
●●●●●
床的区別がつかないと結局・・・
●●●●●
●●
●●●●●
一定期間における疾患の発生
1,000人の人口集団
1,000人の人口集団
原因(曝露)による10倍の多発
曝露群と非曝露群の疾患の発
生率の違いを表現するために、


引き算-発生率差
1,000人時分の18の多発
わり算-発生率比(相対危険度)
10倍の多発
医学における原因とは




そこで・・・原因の定義!
Cause: a factor is a cause of an event if its
operation increases the frequency of the
event.(Elwood 1988,1998)
訳:原因とは、それが働くことによって事象[注:こ
の場合疾患]の頻度が増加させられる場合、そ
の要因がその事象の原因である。
・・・と疫学原因モデルに基づいて定義。
「特異的な疾患」はあるか?
Figure 3 用の図
非暴露群からの疾患の
発生はない
非暴露群
暴露群
疾患の発生なし
●●●●●●●●
●●●●●●●●
●●
疾患の発生
疾患の発生
人口集団
人口集団
Figure 2 用の図
誤分類を考えれば
結局元の図に戻ってしまう
暴露群と非暴露群から以
下の白黒1例ずつを取り出
して、それぞれの症状に違
いがあるかどうかを比較し
ようとした。
○(違いがあるか?)●
非暴露群
暴露群
○○
○○●●●●●●
●●●●●●●●
●●●●
疾患の発生
疾患の発生
人口集団
10,000人年
人口集団
10,000人年
○:暴露がなくても生じた症例
●:暴露による増加分である症例
相対危険度10倍
因果推論の中間まとめ





因果関係は、浮かび上がらせて検証するもの。
構造を仮説として構築し、
それをデータで定量的に検証する。
時に、1回しか検証が許されないことがある。-
例えば食中毒の疫学など
医学の場合、検証する構造は比較的簡単である。
原因は曝露で、結果は自然数の病人である。
中間まとめその2:原因は多要因で
多レベルである

食中毒の疫学で、まず必要な「原因」とは
何でしょうか?


明らかに原因施設、そして原因食品
病因物質は後でも良い
Rothman
モデル(1976)

外徴基準と病因基準

医学医療におけるプラトン主義



イデア
プラトニック・ラブとプラトニック・セックス
トリアスの落とし穴


京都府立医大の大学祭は「トリアス祭」
再び「診断」と「因果関係」の区別
外徴基準と病因基準
疫学と臨床医学の図
遺伝子
遺伝疫学
環境
疫学
身体症状の発現
原因と結果(曝露の測定と疾病の診断と,因果関係の
図)
1
推定さ れるべき曝露
実際の分析
3
推定さ れるべき因果関係
疾病の診断
疾病の誤分類
暴露の誤分類
曝露の測定
2
推定さ れるべき
疾病罹患
1,2,3それぞれのところで2かけ2表が
作られることに注意!
メカニズム・ブラックボックスと要
素還元主義







メカニズムとは?
ブラックボックスとは?
遺伝疫学と分子疫学
要素還元主義のわな
科学の目的(「役に立つ」と「説明できる」)
物理主義的ドグマ(神話)と現象主義的ドグ
マ(Quine)
原因と結果の仮説を直接検証する
コホート研究におけるSource Populationと症
例対照研究における対照群
バイアス


データだけからは、バイアスの有無は分か
らない。しかし「方法」を見ると、何となく分
かる。従って、きちんとしたルールを踏まえ
ていればバイアスは何とかなる。
実際の場では、バイアスはそれほど問題
にはならない。データ入力、メインのパソコ
ンの管理の方が大事、でも知っておく必要
はある。
バイアス

情報バイアス-知られていないが結構大事






Differentialな曝露の誤分類-1
Non-differentialな曝露の誤分類-1
Differentialな疾病の誤分類-3
Non-differentialな疾病の誤分類-3
交絡バイアス
選択バイアス-症例対照研究の時に大事
原因と結果(情報バイアスから見た因果関係)
1
推定さ れるべき曝露
実際の分析
3
推定さ れるべき因果関係
疾病の診断
疾病の誤分類
暴露の誤分類
曝露の測定
2
推定さ れるべき
疾病罹患
1,2,3それぞれのところで2かけ2表が
作られることに注意!
第3要因もしくは交絡要因候補


曝露と同じように定義する
交絡要因の簡略なる定義




1.当該疾患のリスク要因である
2.調査集団において当該曝露割合と関連して
いる
3.当該曝露と当該疾患との因果連鎖の中間
要因ではない
図にして説明すると簡単です
交絡要因の図
交絡要因
2.
曝露
1.
疾病
選択バイアス-特に症例対照研究において

対照の選び方-それぞれに長短あり

病院対照


友人対照


簡単だが曝露と友人が関係している可能性あり
隣人対照


簡単だが曝露と対照疾病が関係している可能性あり
簡単だが地域的曝露の場合、過小評価される
地域からの対照-住所や電話番号から抽出

結構、手間と時間がかかるが、ベスト
先送りの理由



ActionとInaction
「因果関係がある」、「因果関係が分からな
い」、「因果関係がない」
少数例での判断

DESとvCJD
DESと膣腺癌(Herbst et al. 1971)
膣の癌は珍しい。しか
も、ふつう50歳以上に
扁平上皮癌として起
こってくる。1966年か
ら1969年にかけて、
Boston のVincent
Memorial Hospitalで15
歳から22歳の膣の腺癌
(clear-cell or
endometrial type)が観
察された。
膣腺癌1例あたり4例
の対照症例を、各々の
患者が生まれた病院の
出生記録から選択した。
5日以内に生まれた女
性で同じタイプの病棟
から対照を選んだ。統
一した質問表を用いて、
質問者が母親からイン
タビューした。
症例番号
母親の年齢
症例 4 対照の平均
母親の喫煙
症例 対照
妊娠中の出血 以前の流産
症例 対照
症例 対照
1
2
3
4
5
6
7
8
合計
平均
p値
表の続き
症例番号
25
32
YES
2/4
NO
0/4
YES
1/4
30
30
YES
3/4
NO
0/4
YES
1/4
22
31
YES
1/4
YES
0/4
NO
1/4
33
30
YES
3/4
YES
0/4
YES
0/4
22
27
YES
3/4
NO
1/4
NO
1/4
21
29
YES
3/4
YES
0/4
YES
0/4
30
27
NO
3/4
NO
0/4
YES
1/4
26
28
YES
3/4
NO
0/4
YES
0/4
7/8
21/32
1
2
3
4
5
6
7
8
合計
p値
26.1
3/8
1/32
6/8 5/32
29.0
<0.05
0.50
< 0.01
妊娠中のエストロゲンの投与
症例 対照
母乳栄養か?
症例 対照
子宮内 X 線被爆
症例 対照
YES
0/4
NO
0/4
NO
1/4
YES
0/4
NO
1/4
NO
0/4
YES
0/4
YES
0/4
NO
0/4
YES
0/4
YES
2/4
NO
0/4
NO
0/4
NO
0/4
NO
0/4
YES
0/4
NO
0/4
NO
1/4
YES
0/4
YES
0/4
NO
1/4
YES
0/4
NO
0/4
YES
1/4
7/8
0/32
3/8
3/32
1/8
<0.00001
0.20
4/32
1.0
Herbst AL et al.: Adenocarcinoma of the vagina. Association of maternal stilbestrol therapy with
tumor Appearance in young women. NewEngl J Med 1971; 284: 878-881.の表2から改変
がんの疫学の位置づけ



国際がん研究機関(IARC)などの国際機関が、定
期的に会合を開いて発がん性に関する分類を
行っている。
物質(混合物もしくは曝露環境)など多岐にわ
たっている(HIVやヘリコバクターピロリもその対
象である)。
外に、国家毒性計画(NTP:米国)、ドイツ学術振
興会(DFG)、日本産業衛生学会などがある。
国際がん研究機関(IARC)の物質(混合物も
しくは曝露環境)の分類に関する考え方

グループ1(人体に対して発がん性がある)


グループ2A(人体に対したぶんprobably発がん性がある)




疫学研究がlimitedで、動物実験がsufficient
グループ2B(人体に対し発がん性がある可能性possibly)


疫学研究がsufficientで、動物実験その他の研究結
果に依存しない
疫学研究がlimitedで動物実験がlimitedからlack
疫学研究がinadequateかlackで、動物実験がsufficient
グループ3(人体に対して発がん性があると分類できない)
グループ4(人体に対してたぶんprobably発がん性がない)
IARCの発がん分類の目安
inadequat lack
動物実験 sufficient limited
e
疫学研究
sufficient グループ1 グループ1 グループ1 グループ1
limited
グループ2A グループ2B
グループ2B
グループ2B
inadequat グループ2B グループ3 グループ3 グループ3
e
グループ2B グループ4 グループ4 グループ4
lack
e.g.:sufficient(sufficient evidence for carcinogenicity
疫学者の居場所

Passive surveillance


最前線は臨床医、疫学者はOffice
Active surveillance

臨床医は患者の治療へ、疫学者は?
01
-N
o
08 v
-N
o
15 v
-N
o
22 v
-N
o
29 v
-N
o
06 v
-D
e
13 c
-D
e
20 c
-D
e
27 c
-D
e
03 c
-J
a
10 n
-J
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17 n
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24 n
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31 n
-J
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07 n
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14 b
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14 r
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04 r
-A
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11 r
-A
p
18 r
-A
p
25 r
-A
02 pr
-M
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09 y
-M
a
16 y
-M
a
23 y
-M
ay
発症週別確認および疑わしいケース
Durba 、コンゴ民主共和国 、1999年
5月
Number of confimed and suspect cases
dead
9
7
(n = 53、21例は不明)
Week (starting date) of onset of illness
alive
8
Active surveillance commences
6
5
4
3
2
1
0
因果関係、Action と Inaction
(例えば回収命令の問題)



因果関係ありと判断-Actionへ
因果関係が分からない
-実際はInactionのままが多い
因果関係無しと判断-Inactionのまま



因果関係の判断と、Action・Inactionは、そのまま対
応しない事に注意!実際は、Actionをどう取るかが問
題である。
また、因果関係の判断は、しばしば遅れがちに
なることに注意!
Actionを間違えて選択した時のコストは、金銭問
題で、Inactionを間違えて選択した時のコストは、
金銭問題に加えて健康問題も加わる。
因果関係の方向性とCausalityの入り口

あれがこれを引き起こした


あれなければ、これなし


A causes B.
B would be false if it were not for A.
モデルの検証と確率


観察研究へ
私がこの一年間に進歩したのはこの部分だけ
医学における因果関係から
人工知能へ
-アダムとイヴの前は“出来事”だけだった
まとめ




曝露による影響は、私たちには、引き算かわり算
結果による連続量で知覚される。
最もよく使われるのはわり算結果で、曝露群非
曝露群の発生率の違いを、「何倍」として知ること
ができる。
曝露群と非曝露群の発生率の違いを求めるため
に、必ず、曝露の軸と病気の軸を持つ、2かけ2
表を作成しよう。
2かけ2表を作成するには「症例の定義」と「曝露
の定義」が必要である。
症例の定義と曝露の定義へ
*症例の定義は、疫学曲線(Epidemic Curve)を描
くためにも是非必要です。できるだけ具体的に定
義すること。曝露の定義も同様。
* 2かけ2表も作るためにも、症例の定義はなけれ
がなりません!
*ここから、具体的な症例の定義、2かけ2表の作
成、記述疫学の説明に入っていきましょう。
*症例の定義は、「任意に動かせる」ことに注意!
これこそが分析疫学の醍醐味になります。
残された問題



非曝露群の発生率と曝露群の発生率の違いが、
拮抗すればするほど、相対危険度は1に近づい
てくることに注意すること。
現在、我々は、どの程度の相対危険度を見知し、
その因果関係を論議しているのであろうか?
連続して認知される因果関係による影響の「線
引き」には、緊急性、結果の重篤性、対策費用
等々の価値観が加わってくる。例を挙げて説明し
よう。
連続して認知される因果関係に
よる影響の「線引き」の理由







米国の民事裁判-more than half
対策(法制化・政策誘導・教育)
対策のコストと対策による便益
曝露人口の割合の大きさ
結果(病気)の重篤さ
相対危険度
緊急度
Synergisticな影響(interaction)1
喫煙とアスベスト職業曝露(Hammond & Selicoff 1979)
------------------------------------------------------------------------------------------喫
煙
--------------------------------------------------------------------------アスベスト労働
-
+
-------------------------------------------------------------------------------------------
11.3*(1.00)**
122.6 (10.85)
+
58.4 (5.17)
601.6 (53.24)
------------------------------------------------------------------------------------------*100,000人年当たり
**「非喫煙かつ非アスベスト労働」者に基づいた死亡率比
Synergisticな影響(interaction)
2煙と曝露としてのじん肺(Hnizdo, Murray, Klempman 1997)
喫
------------------------------------------------------------------------------------------喫
煙
--------------------------------------------------------------------------じん肺
10パック年未満
10から29パック年
30パック年
-------------------------------------------------------------------------------------------
-
1.0*
5.1(1.2-22.4)
11.7(2.7-49.8)
+
4.1(0.3-52.3)
7.9(1.4-46.4)
48.9(8.5-281.4)
------------------------------------------------------------------------------------------*パック年:毎日何パックを何年吸ったかの延べ年数
**相対危険度(95%信頼区間)