教育専門監トレタテ情報 生活単元学習ABC

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Transcript 教育専門監トレタテ情報 生活単元学習ABC

「生活単元学習ABC」
~計画から授業づくりまで~
1 生活単元学習とは
2 授業づくりの実際
3 実践例の紹介
A 生活単元学習とは
児童生徒が生活上の課題処理や課題解決のための一連の目的活
動を組織的に経験することによって、自立的な生活に必要な事
柄を実際的・総合的に学習する「各教科等を合わせた指導」の
一つの指導形態
~特別支援学校学習指導要領解説~
生きる力➟ 考える力・意欲を伴う主体的行動
・各教科等の内容を習得するための手段ではない
(結果として各教科等の内容が習得できた)
・寄せ集め学習ではない
本物の活動を繰り返す
成功体験で終わる
A
生活単元学習とは
~単元のタイプ・テーマ~
1 行事単元:運動会
2
学園祭
季節単元:新しい学級
修学旅行
母の日
宿泊学習
秋を探そう
クリスマス
3 生活課題単元:町を探検しよう 買い物に行こう
先生の結婚 友達の病気 被災地への募金
4
制作・生産単元:栽培活動
パンを作ろう 遊具づくり
テーマに関連をもたせる
A
生活単元学習とは
~単元の組み方~
・生活の中の遊びを中心とした単元
・活動自体に楽しみがあり、満足感の得られる単元
・活動の繰り返しや連続性、発展性のある単元
・興味・関心を拡大し、生活に広がりをもたせる単元
・自主性・主体性が発揮できる単元
・実際の社会や地域とのつながりのある単元
・これまで培われた力が十分に発揮できる単元
子どもの実態や生活年齢を考慮す
る
A
生活単元学習について
「小学部段階で踏まえたいこと」
家庭という狭い世界から、より広い世界に、生活の場が広げら
れる。全て支援される生活から、自分の力で生活に関わる第一
歩を踏み出す。 ヘルプからサポート
1 遊びを中心とした単元づくりから始める
・低学年は子どもたちが楽しんでできることを学習として組
織し、その子なりの興味で取り組んで活動できることを中
心とした生活を用意する
2 楽しんで活動することを基盤に、単元をつくる
・高学年は子どもたちが学校生活の経験を土台として取り組
める活動や、身近で興味のもてるものを作ったりする活動
を中心とする(家庭➟学級➟学部➟学校➟地域へ)
3 活動のつながりと発展を生み出すようにする
・同じような活動を繰り返し経験する(長い単元計画)
A
生活単元学習とは
~中学部段階で踏まえたいこと~
家庭と学校という2つの世界から、さらに外の世界に向
かって興味は拡大される。将来、自分が生きていく社会
を意識し、自分の力でできることを増やす。
1 関心を広げ、関わる世界を広げていく
・家庭や学校の枠を越えて、地域社会に関心を広げられる
ような活動も単元に取り入れる(より本物の活動へ)
2 主体的に活動に取り組めるようにする
・生徒自らがやってみたい思いを形にして、実際的・必然
的な活動を展開する
3 学部間のつながりを意識した計画を立てる
・学級、学年の枠を越えた単元を計画し、同じテーマ・目
標を掲げて縦割りグループで行う
A
生活単元学習について
~高等部段階で踏まえたいこと~
学校という枠に限定せず、学習の場を地域社会に広げていく。
自立と社会参加ができるように、実社会との触れ合いの濃い生
活をつくる。最小限の支援で最大限の力を発揮する。
1 身近な活動から、実社会へつながる活動に発展させる
・地域社会とつながりをもって展開される単元や、卒業後の
生活を踏まえた単元を計画する
2 培われた力を発揮できるようにする
・子どもたちに任せる部分を多くして、相談しながら自分た
ちで活動が進められるような場の設定や役割分担をする
A
生活単元学習とは
~望ましい条件~
ア 実際の生活から発展し、児童生徒の知的障害の状態等や興味などに応じ
たものであり、個人差の大きい集団にも適合するものであること
イ 必要な知識・技能の獲得とともに、生活上の望ましい習慣・態度の形成
を図るものであり、身に付けた内容が生活に生かされるものであること
ウ 児童生徒が目標もち、見通しをもって、単元の活動に積極的に取り組む
ものであり、目標意識や課題意識を育てる活動も含んだものであること
エ 一人一人の児童生徒が力を発揮し、主体的に取り組むとともに、集団全
体で単元の活動に共同して取り組めるものであること
オ 各単元における児童生徒の目標あるいは課題の成就に必要かつ十分な活
動で組織され、その一連の活動は、児童生徒の自然な生活としてのまとま
りのあるものであること
カ 豊かな内容を含む活動で組織され、児童生徒がいろいろな生活単元を通
して、多種多様な経験ができるように計画されていること
特別支援学校学習指導要領解説
全ての子どもが参加できる生単
A
生活単元学習とは
~年間計画の立案~
・最初に決まっているもの(宿泊学習・学園祭)と、子どもの
興味・関心、生活年齢・経験、学校・地域の特色を生かした
ものに分けて設定する➟バランスと高次化
・前年度の計画を参考にする
・単元期間を1か月前後になるよう計画する(まとまりのある生活)
・偶発的な単元ができるように、少し余裕をもたせる
・全校を巻き込んだ活動や地域と関わる活動を計画する
・活動に繰り返しや連続性、発展性のある単元を計画する
・活動に必然性とつながりをもたせる
・学校で経験したことを地域・家庭でも行えるように計画する
・活動自体に楽しみがあり、満足感の得られる単元を計画する
年間計画は子どもの1年間の生活づくり
子どものニーズや興味は変わっていく
B
授業づくり
「単元名(テーマ)について」
・単元名は活動のシンボル、活動がイメージでき、
子どもにとって、わくわく・ドキドキ感がもてる
もの
・子どもがやってみたいと思える多様な活動が展開
できるもの
・子どもに親しみやすく、合い言葉にも使えるもの
(授業の始まりと終わりのあいさつ、保護者へのお
便りや単元通信のタイトルにも活用する)
「宿泊学習に行こう」→「楽しい宿泊学習」~自然にとびこめ~
たかが単元名、されど単元名
B
授業づくり
「ねらい(目標)の立て方」1
・単元(授業)が終わった後、子どもがどのように
変容するかを考える(モノクロではなくカラー)
・目標が具体的であれば軌道修正ができる(指導案と
子どもの反応にズレが生じたとき、素早く修正する
のが腕の見せどころであり、よい授業につながる)
・目標と学習活動が一緒になっていることが多い
・評価の基準を明確にしておく(誰が見ても分かるよ
うに・客観的に評価できるように)
目標の設定力を高める
B
授業づくり
「ねらい(目標)の立て方」2
自分から進んで取り組む 自分で考える
自分の役割が分かる 自分のできる活動を増やす
仲間と協力する 仲間と関わって~
友達と相談して~
意欲的に 集中して 精一杯活動して
達成感や満足感を味わう ~やり遂げる
子ども一人一人の目標は
「個別の指導計画」の目標を具体化する
単元の目標を一人一人の活動に即して具体化する
B
授業づくり
「活動内容の選択」
・単元のテーマをみんなで実現するために、子ども
一人一人がテーマに沿って、力を発揮できる状況
が必要(目標を達成する活動を選択)
1
テーマに沿った統一感のある活動
2
3
子ども一人一人に合った活動
みんなで協力できる活動
4 適切な課題解決を伴う活動
5 力を最大限発揮できる活動
6
やりがいと手応えを味わえる活動
B 授業づくり
~手立てを考える ~
例:職員室に配布物を取りに行く際の支
1
2
3
4
援
言葉や視覚的な情報(文字・絵カード・写真)で説明する
モデルを示す→教室や職員室で練習する(フェイドアウト)
すでに一人でできる友達と一緒に行く
「先生の机に行くんだよ」と言ってその方向を指さし身体的に
誘導する 直接言語+指さし+身体的ガイダンス
5 指さししながら「先生の机に行くんだよ」 直接言語+動作
6 「先生の机に行くんだよ」 直接言語
「どうやるのかな?」
間接言語
7 一人で取りに行く(分からないときは職員室の先生に聞く)
※ 挨拶の仕方 声の調整 ドアの開閉・・・
スモールゴールを増やしてラストゴールへ
B
授業づくり
「評 価」
授業の目標が実現できたかを、授業で講じた手立てに
即して検証する(授業デザイン・実践チェックリスト)
・目標の設定(単元・題材の設定 学習のねらい)
・子どもの実態・様子(子ども理解 説明・教示・評価)
・教師の働きかけ(教師の基本姿勢 説明・教示・評価)
・活動の内容・選択(単元・題材の設定 学習活動の設定)
・活動の流れ(学習活動の設定 指導計画・内容)
・活動の仲間(グループ編成、子どもと教師、子どもの同士の関わり)
・教材教具の工夫(教材・教具等)
・場の設定(環境設定)
的確な実態把握と具体的な目標設定
B
授業づくりQ&A
「障害の重い子どもの進め方」
・話し合いや昨年度のビデオ視聴ではなく、栽培活動であれ
ばいきなり食べる活動から入っていく
・興味・関心ある活動、繰り返しのある活動、結果がすぐ分
かる活動等、多様な活動を用意する
・「一人でできる状況づくり」を設定して、満足感や達成感
を味わえるようにする(道具や補助具の工夫)
「子どもが考える(思考・判断)場面を増やす」
・「できました」→「塗り残しなく塗りました」
・「刷毛をどうすればよいですか」→「どうすればよいか、
自分で考えてみよう」と問いかける
子どもが自分で考えて洗ったときに、洗ってきたことより
も、自分で考えて行動したことを評価する→次から自分で
考えて行動するようになる
C
実践例
1 単元名「ぼくらの
アタックボートをつくろう」
・夏の遊びを膨らませた単元
・牛乳パックを利用したボートづくり
・全校にチラシを配付して牛乳パックの協力を呼びかける
・牛乳パックの口を開ける→新聞紙を入れる→テープで留める
という繰り返しの活動
・できあがっていく過程が分かるので達成感が得られる
・実際にプールに浮かべて乗ったとき、大きな歓声が上がる
全校や家庭を巻き込んだことで
子どものやる気が高まった
C
実践例
2 単元名「大根の種を育てて
プレゼントしよう」
・前単元とつながりをもたせる
・プレゼントされた大根の種を学級で育てて
収穫・調理・プレゼントする
・友達と協力して土を運ぶ道具を工夫する
・畝作りでは補助具を使って仕上げる
・水やり、除草の他に、看板やかかし作り、
お店屋さんの活動を盛り込む
栽培活動は
子どもが飽きない仕掛けが必要
C
実践例
単元名「町に花を届けよう」~プランター大作戦!~
・地域と関わる活動を取り入れたい
・生徒の得意な面を生かす
・地域性を考慮する(材木店が多い)
・まとまりのある生活にしたい
・地域を巻き込んで、子どもの意欲を高めるとともに、
理解啓発を図りたい
○木材を地元の会社からもらう(花の種は高等部から)
○多様な活動や共同で取り組む活動が用意できた
○お世話になっているお店、郵便局、駅、交流校に届けた
誰かの役に立たったと感じたとき
子どものやる気スイッチが「オン」にな
る
C
5
実践例
単元名「向能代駅リニューアル計画2000」
・卒業学年を意識して1年間、継続した計画
・いつも使っている最寄り駅に感謝を込めた活動を展開
・定期的に除草作業や待合室の掃除、待合室に作品を飾る
・単元名や合い言葉をプリントしたエプロンを製作する
・JR関係者や地域住民が大勢集まり、盛大に完成式典を行う
誰かのために、地域のために、
子どもの力を発揮させたい(理解啓発にもつながる)
大切にしたいこと
・T-T間の打合せをしっかり行う(ねらい・手立て・役割分担)
・インパクトのある導入を工夫する(単元・授業のスタート)
・子どもの活躍の場をたくさん設ける
・子どもの変化やつぶやきをキャッチして授業に取り入れる
・授業に関係のない刺激はシャットアウトする
・少ない支援で一人で、協力してできる状況を設定する
・指示、命令、注意、禁止に終始する監督者ではなく、子ども
と共に汗を流す仲間でありたい(子ども理解は、子どもと共
に活動することが一番の近道)
同じ目標に向かって一緒に進む仲間がいると
子どもは予想以上の力を発揮する
参考文献
・「実践
子ども主体の生活単元学習」
・「実践
学級でもできる新生活単元学習」
・「特別支援教育のための
Q&A」
知的障害教育・基礎知識
・「領域・教科を合わせた指導ABC」
・「キャリア教育を取り入れた特別支援教育の授業づ
くり」
・
特別支援学校学習指導要領