ギガビット観測システムによる長基線測地 VLBI 実験

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ギガビット観測システムによる長基線測地 VLBI
竹内央、中島潤一、木村守孝、近藤哲朗、小山泰弘、市川隆一、関戸衛、 川合栄治、
大崎裕生、久保木裕充(通信総合研究所 鹿島)、徂徠和夫、住田桜子(北海道大学)
1.はじめに
通信総合研究所では、測地VLBI観測における受信帯域を広帯域化して観測精度を向上させるために、ギガビット観測
システムの開発を行っている。観測帯域の増加により観測精度が向上すると、従来に比べ小口径のアンテナでも測地実
験に参加する事が可能になる。また、多チャンネルサンプリングで必要なビデオコンバータや位相補正信号が不要となり、
従来に比べ大幅にシステムが簡略化されるため、システムを安定的に運用する上でも大きな利点となる。
今回、K4 システムに比べ4倍の記録速度となる 1Gbpsでデータを記録するギガビット観測システムの性能を評価するた
めに、ギガビット観測システムによる長基線測地VLBI実験を行った。
2.実験概要
2003年7月16日に国土地理院が行った24時間国内
E/O O/E
測地VLBI実験(実験コードJADE-0306)の際に、鹿嶋
LPF
500-1000MHz
Post
amp
11mアンテナと苫小牧 11m アンテナにギガビット観測
LNA
450MHz
7600MHz
500MHz
システムを設置し、K4システムとの同時観測(実験
図1:アナログ系模式図
コードGEX-12)を行った。JADE-0306 の観測スケ
ジュールは、従来のデータレートで達成される感度を
Ch1
ftp
GBR-2000D
天体データ相関
DRA-2000-VSI
(Fringe Test)
VSI
基準にして各天体の観測時間が決められているため、
ADS-1000
(遅延追跡、フリンジ回転)
VSI
1Gbps Recorder
GBR-2000D
1Gsps
ギガビット観測システムにより観測をすると、必要以上
Ch2
1Gbps Recorder
A/D sampler
GBR-2000D
500MHzモニタ
に高いSNR が得られてしまう。そこで、各天体の観測
相関ブロック図
GICO-2
観測ブロック図
時間をギガビット向けに短くし、単位時間あたりの観
図2:デジタル系模式図
測天体数を増やしてスケジュールした実験を、
GEX-12 に先だち 7月15 日に行った(実験コード GEX-11)。 実験の系統図を図1及び図2に示す。ギガビット観測シス
テムは、1Gsps でデータをサンプリングする ADS-1000,1GbpsのVSIデータを記録するGBR-2000Dデータレコーダ,
相関器 GICO-2,遅延バッファユニット DRA-2000-VSIからなる(図2)。DRA-2000-VSIはデータを1秒間フリーズしFTP
により遠隔地にデータ転送する機能を有しており、今回の観測ではフリンジテストのために使われた。記録される受信
データにはダウンコンバータのローカル信号である 500 MHz (図1)が共に記録されているため、2局の位相安定度を
測定する目的で、フリンジ回転及び遅延追跡を行わない相関処理も行った。
3.実験結果
表1に GEX-11,GEX-12 の解析結果を示す。今回ギガビット観測システムは
X bandのみの観測であり電離層補正は行っていない。GEX-11 は ギガビット
用に最適化したスケジュールで行われており、GEX-12 に比べ観測時間は1/4
の6 時間であるが、観測数はほぼ同じ(180 観測)である。GEX-12より短時間
であるにも関わらず、同程度の r.m.s. で位置決定が行える事が実証できた。
また、GEX-12 のデータにK4 システムの観測で得られたS band のデータを繰
り込み、電離層補正を行った結果、K4システムによる多基線解とエラーバーの
範囲内で一致する事が示された。なお、本実験後の2003年9月26日に十勝沖
地震が発生した。国土地理院GEONETのデータによると苫小牧局の局位置の
10cm程度の変位が予想される。
図3:実験に用いられた1Gsps のA/D, ADS-1000
4.今後の課題と予定
500MHz の位相モニター結果(木村)によると、位相の温度依存性が顕著に見
られた。ギガビット観測においては、従来よりも厳重な温度管理が求められる。
また、S band のデータもギガビット観測システムで取得し、ギガビット観測シス
テム単独で測地解を出す実証実験を行いたい。今後、さらなる高精度化のた
めに、2Gsps や 4Gspsを視野に入れた、よりサンプリングレートの高いシステ
ムを開発していく予定である。
図4:solve 解析結果(GEX
11)
遅延時間残差(psec)
基線長(mm)
基線ベクトル(mm)
GEX-11(6時間)
GEX-12(24時間)
GEX12 + K4 S-band data K4 システム(多基線解)
81
749810998.9±5.0
x-3680586331.0±10.1
y: 2917515834.5±8.5
z:4300987705.3±10.7
138
749811039.6±8.8
x: 3680586312.2±18.9
y: 2917515785.0±16.1
z: 4300987716.8±19.7
89
120
749810980.44±7.3
749810979.86±4.4
x: -3680586346.2±17.3 x: -3680586342.0±9.3
y: 2917515802.98±15.1 y: 2917515815.1±7.7
z: 4300987669.9±16.2
z: 430098768.4±9.9
表1:ギガビット観測の calc/solve による解析結果