労働者福祉運動の理念と歴史(伊東熱海地区版)

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Transcript 労働者福祉運動の理念と歴史(伊東熱海地区版)

労働者福祉運動の
理念と歴史、そして課題
連帯・協同でつくる安心・共生の福祉社会へ
2014年1月24日
伊東・熱海地区労福協新春のつどい
労働者福祉中央協議会
(中央労福協)
アドバイザー 高橋 均
1
1.中央労福協の歴史と理念~忘れつつある歴史~
敗戦から復興へ~ 占領統治下の日本



窮乏生活にあえぐ国民…深刻な食糧危機
占領軍の民主化政策…民主化5大政策 1945年10月
①女性の権利拡大…婦人参政権付与
②社会の民主化…労働法制定(労働組合結成の奨励)
③教育の民主化…教育基本法制定(義務教育9年)
④政治の民主化…治安維持法廃止(思想・言論統制の廃止)
⑤経済の民主化…財閥解体、独禁法、農地解放
労働組合法・1945年…新憲法制定(1946年)より早く制定
• 1945年
昭和20年12月
労働組合法
• 1946年
昭和21年 9月
労働関係調整法
• 1947年
昭和22年 4月
労働基準法
2
~労福協の誕生;忘れつつある歴史~
労働組合が社会の一大勢力に
相次ぐ労働組合の結成
飢餓とインフレを背景に、「食料よこせ」「仕事よこせ」の
騒然とした情勢から労働運動は尖鋭化。労働組合は社会の一
大勢力に!

労働争議の頻発
・1947年(昭和22年)
・1949年(昭和24年)
・1952年(昭和27年)
・1952年(昭和27年)
・1954年(昭和29年)
・1960年(昭和35年)

2.1ゼネスト「明日働けるだけの食い物よこせ」
東芝争議
血のメーデー
電産・炭労スト⇒スト規制法
近江絹糸争議 「人権闘争」
三井・三池闘争「総資本と総労働の戦い」
戦前組織人員40万人〈7%〉⇒戦後660万人〈50%〉
・総同盟の再建
1946年
・産別会議の結成 1946年
・総評結成と分裂 1950年~1953年
*1964年 日本の労働界のナショナルセンター
総評、同盟、中立労連、新産別
3
~労福協の誕生;忘れつつある歴史~ 労働組合と生活協同組合の連携
生活物資の共同調達がはじまり
労務用物資対策中央協議会の結成 〈中央物対協〉
1949年
労働組合と生活協同組合が連携…労働団体(総同盟、産別会議、全労連)、各産別組織、生協(のちの日本生協連)
など36団体がスクラム
「この協議会を産業別単産および単産の上部組織(中央労働団体)の枠を超えたものとし…労働者の生活福祉問題解
決の組織として…」
⇒生活必需品、労務者用物資の確保を目指す整合性ある運動を
労働組合福祉対策中央協議会へ 〈中央福対協〉
1950年
労働組合活動での「生活・福祉活動」の比重を集中的に高めるために
「われわれはこの際、全国的労働団体の福利厚生部門の力を統一結集し、強力な連絡調整、指導のための機関として、
ここに労働者福祉対策中央協議会を設け…」
⇒物価の安定、社会保障の確立、住宅政策の推進、労働者の生活改善、レク活動の普及に向けて
⇒生協活動の拡大、働くものの銀行、共済制度の設立を運動課題に
労働者福祉中央協議会へ改変 〈中央労福協〉
1964年
中央福対協活動の広がりを受けて、更に福祉に対する労働者の主体性を明確にする
⇒労働組合と協同事業団体が共同し、統一した組織体として運動の(事業)展開へ
⇒生協、労働金庫、労働者共済など、協同事業団体が次々に誕生。そして全国的な広がりと発展へ
4
~労福協の誕生;忘れつつある歴史~
中央物対協の画期的な合意
歴史に残る日本の労働者福祉運動の原点
☞この合意こそ、その後の労働者福祉運動の基本的な道筋を示す!
この協議会を産業別単産及び単産の上部組織(中央労働団体)の枠を超えたもの
とし、各単産の福祉対策諸活動を連絡調整しあって、意思統一をはかると共に、互
助共済機能の活発化による福祉の増進、社会保障制度の確立、労働者の生活福
祉問題解決のための政治的結集をはかる組織とする。

労働運動
労働組合間に、組織的競合の発生の危惧

労働者福祉運動
組織の枠を超え、全労働者的視点に立って、
福祉の充実を生活向上を目指すという一点
で統一し結集する。
“福祉はひとつ”
中央労福協創業の精神
5
~労福協の誕生;忘れつつある歴史~
労働者福祉運動の基本理念確立
1974年…労働者福祉要求の実現をつうじて、労働者・家族の生活向上と安
定を図り、真に平和で豊かなくらしを保障する社会をつくる
(第26回総会・基本理念)
☞運動の原則
①労働者福祉運動は、“労働運動”の一環
②労働者の自発的・自主的な要求・活動
③社会保障拡充、企業内福祉、自主福祉活動の総合的な展開
④地域を活動の拠点にとし、組織・未組織を問わず結集
⑤協同組合の理念・原則に基づく協同事業活動
☞その任務
①すべての労働者が共同して闘う政策の立案と実践活動の組織化
②労働組合団体の意思統一のための連絡、調整
③協同事業団体への運動指導と協同事業団体相互の協同の促進
④労働組合団体、協同事業団体相互の連携と協力関係の強化
⑤地域への普及、家族の運動への結集を日常化
6
~労働金庫・労働者共済の誕生;忘れつつある歴史~
労働金庫
労働者を質屋と高利貸しから解放を
労働者のお金は労働者の手で、労働銀行の設立を!
1949年11
総同盟第4回大会で自主的な共済事業と労働銀行創設を決議…相互扶助
の精神で労働者のお金は労働者の手で管理・運営する。
1950年 9
岡山県勤労者信用組合(現中国労金岡山県本部)、生協主導型で誕生
12
兵庫県勤労者信用組合(現近畿労金兵庫県本部)、労組主導型で誕生
1951年 2
総評第2回大会、労働銀行設立決議
「豊富な闘争資金を持ちながら金融機能を持たない…いわんや
労働者個人の生活資金に至っては銀行に預金を持ちながら…高
利の質屋・やみ金にたより益々生活の困窮に拍車をかけている」
労金法制定の
1953年
原動力に!
労働金庫法制定…全国的な誕生へ
労福協を中心に、労働者協同組合運動(ろうきん運動)が「労働運動の
一環」として取り組まれてきたのが大きな流れ!!
7
~労働金庫・労働者共済の誕生;忘れつつある歴史~
全労済
労働者の手で共済を!
支え合い・助け合い(連帯・協同)の実現を!
戦後の日本協同組合同盟(会長賀川豊彦)結成を機に、保険事業参入を強く主張す
るが保険会社等の反対から実現に至らず。その結果、農協法や生協法で「共済事
業」とされる。1950年前後から労働組合と生協関係者から共済事業への関心が強ま
り、中央福対協は「共済専門委員会」を設置。これを機に本格的な運動へと進む。
1947年
農協法
いずれも保険事業ではなく「共済事業」とされる
1948年
生協法
1951年
中央福対協第3回総会「共済事業活動の具体化」を決議
1954年
大阪で火災共済事業はじまる
1955年
新潟から翌年には富山・長野・北海道・群馬・福島へと広がる
1958年
全国労働者共済生活協同組合連合会(労済連)に
1955年に発足した新潟では、その5カ月後に大火災に遭遇。「共済は信用が第一」の信念のもと、
全国の労働組合の協力で掛金収入を上回る給付の支払いを実現。連帯と協同の力が、事業の危機を
乗り越え、労働者共済事業の社会的評価をかち取る歴史に残る一歩を標した!
借りた金はいつか返せるが、失った信用は二度と取り戻せない!
8
~労働金庫・労働者共済の誕生;忘れつつある歴史~
労働運動分立の産物 ふたつの労金、全労済と県民共済



1946年 8月 総同盟再建
産別会議結成
1950年 7月 総評結成
10月 総評全国金属結成(総同盟全金解散)
11月 総同盟分裂(第5回大会)
1951年 2月 総評大阪地評結成(総同盟、海員組合脱退)
3月 総同盟解散、総評合流
6月 全金同盟(総同盟刷新派が総同盟再建…大阪、神奈川、埼玉 )
二つの労金誕生
県民共済誕生


1952年1月
1952年7月
1952年3月
1953年8月
1953年11月
総評加盟組合を中心に大阪労金(大阪勤労信用組合)
大阪総同盟を中心に関西労金(大阪労働信用組合)
神奈川労金(神奈川勤労信用組合)
…労金法制定…
神奈川総同盟が友愛勤労信用組合
1952年12月 4単産声明=総評批判(全繊、海員、日放労、全映演)
1953年12月 全繊総評脱退1953年
全金同盟が総同盟金属共済(単産共済)
1972年
全金同盟埼玉金属が県民共済(地域共済)

1954年 4月 全労会議結成(総評批判グループ)

1964年11月 同盟結成(労働4団体時代へ)
9
銀行と金庫?
なぜ労働銀行じゃなくて労働金庫?
■1951年(S26)市街地信用組合の銀行転換政策 ☛ 信用金庫に変更
信用銀行案を拒否された大蔵省は、政府機関しか使用していない“金庫”の呼称を提案
…当時の『金庫』は、国または地方公共団体の現金出納業務を取り扱う機関とされ、政府系金融機関の
みが使用
■1953年(S28)信用金庫法改正以降、「金庫」の名称使用を禁じる
↴
…1951年(S26)総評第2回大会で≪労働銀行設立に関する件≫を決議
…1951年(S26)労働省の肝いりで≪労働金庫設立促進連絡会議≫が発足
…1953年(S28)労働金庫法制定
労働金庫は、信用金庫法改正(今後、信用事業に「金庫」名の使用を禁じる)
直前だったので「金庫」名を使用することが出来た
■戦後の政府金融機関は「金庫」ではなく「公庫」を名乗る
10
「保険」と「共済」
何が違うの?
1
協同組合保険実現に向けた戦前戦後の動き


明治33年「産業組合法」 ☞ 日本で最初に協同組合を規定した画期的な法律
「産業組合中央会」 ☞ 大正13年大会「生命保険開始の件」決議…保険業法第3条の壁
… 「保険事業は…株式会社または相互会社に非ざれば之を営むことを得ず」
☞ 昭和17年「共栄火災保険会社設立(買収)」

昭和21年、第1次金融制度調査会・保険業法改正専門委員会
…「現行保険業法に規定する保険業の形態に株式会社・相互会社のほか協同組合組織のものも認める」
大蔵省も条件付きながら認めるも、翌年の最終答申には反映されず削除
11
「保険」と「共済」
何が違うの?
2
保険から共済へ~ なぜ共済となったのか
農業協同組合法制定の過程と重なる

大蔵省とGHQ(経済科学局)が反対
当初、GHQ(天然資源局)が農水省へ示した案には協
mutual relief に変更、大蔵省はこれを、
同組合にも「組合員の損害を保険する事業(business
「共済」と訳す
of insuring) を認めていた。農水省はこれを、
背景に、明治40年の鉄道庁現業員にはじま
mutual insurance = 相互保険に修正して提案
る海軍・陸軍・印刷局、逓信など「共済組合」
と称する組織があった。
共済の語源はどこに!

福沢諭吉 economy の訳「経済」、経世在民
世=くにを経=おさめ、民=たみを済=すくう
安田善次郎
明治13年「共済五百名社」
共立と経済の組み合わせ
共=ともに、済=すくう
安田生命保険の前身で初めて用いられた用語?
明治12年「共立商社」「大阪共立商店」
12
~労働金庫・労働者共済の誕生;忘れつつある歴史~
労働金庫・全労済
生みの親は労働組合と労福協
歴史的に、労働組合との関係は単なる業者の関係ではないのです!
全労済…火災共済事業にはじまり、1962年労済連元
受制度の生命共済、総合共済(慶弔共済)を開発。
1964年発生の新潟地震では新潟福対協と労済連
は総額で火災共済金の額に相当する給付をおこ
ない、保険と共済の違いを明確にしめし、今日の
礎を築いた。
労働金庫…小口の生活資金にはじまり、教
育ローンや自動車ローン、金融機関では
じめて住宅ローンを発売するなど労働者
の生活に密着した金融を展開、近年は多
重債務問題に注力し、ニッキン賞を受賞。
労働組合との関係は
ともに運動する主体
なのです!
13
~労福協の役割・機能;忘れつつある歴史~
運動スタイル“福祉はひとつ”社会運動のかすがい役に
画期的だった「貸金業法改正 2006年12月」
「割賦販売法改正 2008年6月」の取り組み
同質の協力は和にしかならないが、異質なものの協働は積になる
中央労福協創業の精神そのもの ⇒ 福祉はひとつ
労働運動・消費者運動・市民運動が融合~中央労福協はその「かすがい役」
「社会の不条理」に立ち向かう社会運動の積重ねが、共感の得られる「安心・
共生の福祉社会」にむすびつく。
14
2.労働運動をめぐる時代認識
~いま、どんな時代に生きているのか~
世界史的な時代の転換点
2012年 国際「協同組合」年
☞世界中に広がる貧困の克服にむけて、協同組合の枠組みは有
効…、各国政府に対して、協同組合への税制上の後押しなど法
律的な後押しを奨励。
2011年 国際「森林」年
2013年 国際「水」協力年
☞ 環境・循環型の社会を重要視する世界的な趨勢
15
~いま、どんな時代に生きているのか~
新自由主義の横行と品格なき拝金主義
自己責任・成果主義を強調した新自由主義政策
☞ 急速に広がった貧困・格差社会
社会保障制度が大きく揺らぎ、暮らしと労働の破壊が始まる。家族の絆
やコミュニティーが崩壊、職場の連帯・支え合いも劣化。
「貧乏物語」(1916年(大正5年);河上肇)
「食足らざるときは、土むさぼり民は盗す、争訟やまず、刑罰たえず、上(かみ)奢り下
(しも)へつらい風俗いやし…これ乱逆の端なり、戦陣をまたずして国やぶるべし」
「反貧困-すべり台社会からの脱出」(2008年;湯浅 誠)
働いても働いても貧困から這い出せないワーキングプア。一度転んだらどん底まですべり落ちていく。
日本社会は、誰でも、まちがえばこの斜面を転げ落ちる可能性を持ち合わせている。「すべり台社会」
からの脱出をめざすには、自己責任論の払拭が避けてはとおれない。
…100年近い時空を超えて、いまの日本は大正時代と同じ貧困・格差社会に!
16
~いま、どんな時代に生きているのか~ 新自由主義の横行と拝金主義
給与水準、労働条件の大幅な低下
1年を通じて勤務した給与所得者の給与実態
国税庁「民間給与実態統計調査」より (単位:千人)
* 給与とは、1年間の支給総額(給与・手当及び賞与の合計額、給与所得控除前の収入金額で通勤手当等の
非課税分は含まない。
2012 年(平成 24 年)
比率
給与所得者数
100 万円以下
計
1994 年(平成 6 年)
3,935
8,6%
比率
給与所得者数
0~200 万円
23.9%
7.9%
4,277
9.8%
7,045
16.1%
7,770
17.8%
6,340
14.5%
4,722
10.8%
3,129
7.2%
2,195
5.0%
1,436
3.3%
947
2.2%
1,863
4.3%
382
0.9%
100 万円超
200
〃
6,965
15.3%
200 万円超
300
〃
7,796
17.1%
300 万円超
400
〃
8,186
18.0%
400 万円超
500
〃
6.335
13,9%
500 万円超
600
〃
4,276
9.4%
600 万円超
700
〃
2.605
5.7%
700 万円超
800
〃
1,811
4.0%
4,416
800 万円超
900
〃
1,148
2.5%
800~1000 万
900 万円超 1,000
〃
775
1.7%
1,923
1,000 万円超 1,500
〃
1,295
2.8%
1,500 万円超 2,000
〃
260
0.6%
2,000 万円超
168
0.4%
148
0.3%
45.556
100.0%
43,726
100.0%
計
10,900
3,472
200~400 万
15,982
35.1%
400~600 万
10,611
23.3%
600~800 万
9.7%
4.2%
1000 万超
1,782
3.8%
0~200 万円
7,749
17.7%
14,815
33.9%
200~400 万
400~600 万
11,062
25.3%
600~800 万
5,324
12.2%
800~1000 万
2,383
5.4%
2,393
5.5%
1000 万超
※1 年間の支給総額(給料・手当及び賞与の合計額、
給与所得控除前の収入金額)
、通勤手当等の非課税分は含まない。
※給与所得者の平均年収 450 万円(1994)→408 万円(2012) ▲9.1%。正規労働者 468 万円、非正規労働者 168 万円
※名目GDPの推移
488 兆円(1994)→470 兆円(2011) ▲2.0%
17
~いま、どんな時代に生きているのか~
新自由主義の横行と拝金主義
権利意識の低下と労働条件低下は比例する
NHK放送文化研究所「日本人の意識調査」より
労働条件について強い不満が起き
労働組合を作る(団結権)ことが、 た場合どうしますか? 労働組合
憲法で国民の権利として保障され を作ると答えた比率。他に、しば
ているのを知っている
らく事態を見守る、上司に頼むの
選択肢あり。
組織率
1973年
39.3%
31.5%
33.1%
1978年
36.0%
30.7%
32.6%
1983年
28.9%
25.1%
29.7%
1988年
27.1%
22.0%
26.8%
1993年
25.5%
21.9%
24.2%
1998年
23.0%
20.5%
22.4%
2003年
20.4%
18.2%
19.6%
2008年
21.8%
17.8%
18.1%
18
~市場経済の暴走と崩壊
暴走をとどめる装置とその劣化
市場経済万能社会からの転換を~連帯経済が重視される時代へ
[経済社会の枠組み]
市場経済の暴走をとどめる
装置とその劣化
市場経済の領域
① 仕事・熟練を通した人間の信用⇒軽視
(市場におけるモノ、サービスの売り買い)
⑤自給経済の領域
⑥連帯経済の領域
⑦中央政府・自治体
=公共経済の領域
(自分で生産、修理する)
GDPにカウントされない
(生協、労金、全労済など
の協同組合やNPO、社会的
企業)
(医療や介護・子育てなど
社会保障や
いわゆる公共事業)
② 経営者の倫理観
⇒喪失
③ 法的規制(労働者保護規制)
⇒緩和
④ 労働組合の抵抗力(組織率)
⇒低下
⑤ 自給経済
⇒縮小
(自分で物を作り、修理する)
⑥ 連帯経済(温かいお金)
⇒劣勢
⑦ 中央政府・自治体=公共経済
⇒市場に丸投げ
⑧ストック経済(地域社会や家庭)
⇒崩壊
⑧ストック経済の領域
長い時間かけて蓄積された、人間関係や
地域社会における信用などGDPにあらわ
すことが出来ないが、しかし人間社会に
欠くことのできない部分=ソーシャルキャピタル
資本の資本による資本のための経済社会から
人間の人間による人間のための経済社会へ
*GDPにカウントされるのは太線囲み
19
~新しい時代の扉の前
市場万能主義からの時代の転換
三つのエピソード
☞
①1994年2月
舞浜会議(雇用か株主か) ⇒「新時代の日本的経営」
☞
②2005年9月
小泉郵政選挙
☞
③2007年5月
ホワイトカラーエグゼブションと解雇の金銭解決
“新しい時代の扉の前”で必要な時代認識
★他力本願では「すべり台社会」になってしまう!
★お任せ“民主主義”ではだめ!
労働組合・協同組合=自分たちがその主体にならなければならない
20
~市場経済の暴走と崩壊
暴走をとどめる装置とその劣化
暮らしと労働、家族、コミュニティの崩壊
市場経済の領域が膨張し、連帯経済の領域や自給経済の領域が削ら
れ、公共経済の領域も縮小してきた。
市場経済のなかに存在する暴走を抑止する“装置”が劣化した。
①職場の変化
▼仕事を通した人間関係、信頼関係の崩壊=「仕事」の軽視
▼成果主義と能力主義、経営者の倫理観の喪失
▼組織率の低下、労働組合の対抗力、労働法制の規制緩和
②地域社会の変化 ▽自給経済や協同組合経済、公共経済=市場経済がおしつぶす
▽お互いさまのおつきあい=煩わしさの敬遠
③絆の崩壊
▼「拠り所」の欠如、貧困(貧乏+孤立)社会の現出
21
~市場経済の暴走と崩壊
暴走をとどめる装置とその劣化
マネーゲーム化した資本主義への飽き
日本社会の底流の変化
☞ お金の獲得を第一義とする競争至上主義から、日本社会が「落ち着いた社
会」を渇望し始めている
☞ 新自由主義経済から連帯経済社会へ、協同組合の価値の見直し
“扉を開けた先”にある新しい時代
安心して暮らせる社会にするためには、市場や国
家のみならず、連帯・協同セクターとの協働的な
ネットワークで問題を解決
連帯・協同でつくる
安心・共生の福祉
社会
22
3.当面する労働運動の課題
最低賃金1,000円の実現と組織化
すべての労働者のための運動へ
すべての人に働く場を保障し、公正な賃金と均等待遇、セーフティネットが組み
込まれた「働くことを軸とした安心社会」の実現。
組織率の低下は労働運動の社会的影響力を低下させている
非正規労働者は雇用労働者の1/3、年収200万円以下のワーキングプアは1,100万
人超。100人未満の中・小零細企業の組織率は1.1%、パート労働者は5%程度。
労働者福祉のウイングの拡大、塀の外へと運動と福祉を広げる
労働運動とNPOや市民団体との連携
労働者自主福祉事業の幅広い展開
23
最低賃金 1,000円
/
労働条件は低位に平準化する
Aさんの賃上げ
(正社員/組合員)
①ベア
①定期昇給+②ベースアップ
②定昇
金
額
最低賃金
Bさん(パート/非組合員)
@1,000円
29歳
年 齢
30歳
24
~塀の外へと運動と福祉を広げる
社会的労働運動へ
ビジネスユニオニズム
組合費を払っている組合員だけにサービスを提供する組合運動
ソーシャルユニオニズム
組合員以外の労働者・市民にも信頼され役立つ組合運動=社会的労働運動
働くひとの「拠り所」の創設
ライフサポートセンター
パーソナルサポートセンター
労働運動と労福協運動が役割分担しながら新たな運動の展開
25
連合運動と労福協運動との関連性
協
その他生活上
の課題
福祉事業団体
育成強化
多重債務問題
連合労働運動
雇用・労働条件・税・
社会保障
生活保護
消費者問題
高齢者課題
市民団体・NPO等とのネットワーク
26
4.労働者自主福祉運動の新たな展開
~あらためて考える、ろうきん・全労済~
あらためて、考える !!“忘れつつある歴史”
■ろうきん、全労済は協同組合だったの?
■労働組合・労福協・労働金庫・全労済と協同組合の
関係性!
①誕生(母体)
中央労福協=労働運動と生協
労働金庫=岡山(生協)、兵庫(労組)…労働運動、労福協
全労済=労働運動と労福協
②最良のビジネスパートナーのはずが!
ろうきんと生協の事業と運動の関係性の希薄…その原因は?
③最高の運動サポーターのはずが!
同根であった労働組合と生協の関係が疎遠に…その要因は?
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~あらためて考える、ろうきん・全労済
協同組合と株式会社、その違い!
配当の原理 ・株式会社は出資金に応じて配当
・協同組合は利用分量に応じて配当
株式会社
協同組合
利 益
100万円
1,000万円の資本金
株主A 600万円出資
1,000万円の出資金
一人 1,000円の出資金を1万人の組合員
株主B 400万円出資
一般消費者が購入
一万人の組合員が利用
出資額に応じて配当
一万人の組合員が
株主A 60万円
利用分量に応じて還元
株主B 40万円
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~あらためて考える、ろうきん・全労済
非営利とは?
非営利とは?(営利を目的としないの意味)
農業協同組合法 1947年(S22)11月19日
…営利を目的としてその事業を行ってはならない(第8条)
…not the paying of dividends on invested capital(同条・英文官報)
消費生活協同組合法 1948年(S23)7月30日
…営利を目的としてその事業を行ってはならない(第9条)
…not profit making (同条・英文官報)
今日的に定義すれば…
剰余金の処分は、利用高に応じた配分を第一義とし、出資金の配当は
しない、若しくは劣後にする
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~あらためて考える、ろうきん・全労済
“業者・お客様”の関係から共に運動する主体に
協同の思想の優位性の確立
「商品の優位性」をめぐる市場での対抗と「販売(普及)手法」の区別を明確に
協同組織の神髄は連帯・支え合い・助け合い。”困った時はお互いさま”とは!
非営利,,,暮らし,,,信頼,,,協同組合経済の特徴と優位性
自主福祉運動の推進
ろうきんや全労済は、単なる「出入業者」ではない
労働組合の議案書(運動方針)に「ろうきん運動・全労済運動」を掲げよう
労働組合も事業団体も設立時の初心に立ち返る努力を、そして運動の積重ねを
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~あらためて考える、ろうきん・全労済
協同事業の社会的価値と力量を高める
協同組合経済(血の通った温かいお金)の拡大
融資審査の姿勢とリスク管理の疑問…過度の優良性の強調は“貸し渋り”の危険
グッドマネー(意思を持ったお金)が社会を変える…SRI(社会的責任投資)
組合員、退職者の金融ニーズに適った支援を…多重債務は自己責任ではない
ろうきんの住宅ローンはピークアウト…骨太の血の通った融資政策
☞気づきのキャンペーンの再構築…なぜ気づきのキャンペーンをおこなったのか
☞労金法施行令第3条第8項…生協130億、社会福祉法人15.6億円、医療法人0円
NPO13億円の融資の現状をどう評価するか
☞公益追求のビジネスモデルを…団塊世代の老後の支援=バリヤフリー、高齢者向
け集合賃貸住宅(社福、生協、医療法人との連携)、資産管理をふくむ生涯取引
サービス(遺言、相続、成年後見人、リバースモーゲージ等々)の本格的な展開
全労済の「住まいと暮らしの防災、保障点検運動」から見えるもの
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~あらためて考える、ろうきん・全労済
彼らの教えに共通する精神とは
先人の教えに学ぶ①!
二宮尊徳、ガンジー、ケインズ、賀川豊彦
彼らの教えに共通する精神とは!
☞二宮尊徳(1787~1856年)の信用事業、五常講・報徳冥加金(みょうがきん)
「五常講」は原始的な信用事業で、いわゆる利息をとらない信用事業
たとえば100万円借りて5年で均等返済するとしよう。
当時の年利2割で計算すると毎年20万円ずつ返済しても、元本はいつまでたっても減らな
い。しかし、五常講では、毎年20万円返済すると5年で借金返済が完了する。
ところがこれには続きがある。毎年20万円ずつ返済しながら生活基盤を確立できたのは
周囲のおかげ、お礼にもう一年20万円出しなさい、と。これを報徳冥加金という。
結局6年で120万円返済することになるので、実質金利は年 6.2%。現在のろうきんマイ
プランの利率にほぼ該当することになる。
報徳思想
経済なき道徳は戯言であるが、道徳なき経済は犯罪である
(小田原市報徳二宮神社境内)
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~あらためて考える、ろうきん・全労済
彼らの教えに共通する精神とは
先人の教えに学ぶ②!
二宮尊徳、ガンジー 、ケインズ、賀川豊彦
彼らの教えに共通する精神とは!
☞ マハトマ・ガンジー(1869~1948年)の資本主義の七つの社会的大罪
1997年6月、オランダで開催されたOBサミットで、「大国や多国籍企業、国際的な金
融投機グループの横暴を憂うる」報告書が採択され、世界には、マハトマ・ガンジーが
指摘した7つの社会的大罪が今日でもはびこっている。これらを抑制し、自由と義務を
均衡させる手段の第一歩として、国連に対し『人間の責任に関する世界宣言』の採択を
求める」との提案が行われた。
1
3
5
原則なき政治
2 道徳なき商業 Commerce without Morality
労働なき富 Wealth without Work
4 人格なき学識(教育)
人間性なき科学
6 良心なき快楽 7 献身なき信仰
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~あらためて考える、ろうきん・全労済
彼らの教えに共通する精神とは
先人の教えに学ぶ③!
二宮尊徳、ガンジー、 ケインズ 、賀川豊彦
彼らの教えに共通する精神とは!
☞ ジョン・メイナード・ケインズ(1883~1946年)の「自由放任の終焉」
自由放任の終焉 1926年
資本主義は賢明に管理される限り、経済的目的を達成するうえで(最も)効率的なもの
だが、本質的には幾多の点できわめて好ましくない…(それは)資本主義の本質的特徴
が「個人の金儲け本能」および「貨幣愛本能」に依存している(からだ)。
市場経済(資本主義)は堕落する~社会は市場経済だけで成り立ってはいない
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~あらためて考える、ろうきん・全労済
彼らの教えに共通する精神とは
先人の教えに学ぶ④!
二宮尊徳、ガンジー、ケインズ、賀川豊彦
彼らの教えに共通する精神とは!
☞ 賀川豊彦(1888~1960年)の協同組合中心思想7カ条
協同組合生みの親
利益共楽 生み出した利益はみんなで分かち合う
人格経済 強欲に走らない
資本協同 元手はみんなで持ち寄る
非 搾 取 誰も掠め取らない
権力分散 一人一票原則、現場の近いところで決めていく
超 政 党 政府や政党におもねることのない自立の精神
教育中心 これらを繰り返し伝え学び勉強する
理念・道徳と本音・本性、人間のこころはいつもその
間を揺れ動く!
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~あらためて考える、ろうきん・全労済
なぜ協同組合に税の優遇制度があるのか?
引き継がれてきた協同組合の税の優遇措置
協同組合には、事業分量配当の損金算入を始め法人税・
固定資産税・事業税・印紙税などに優遇税制が適用
☞日本の協同組合法制である産業組合法1900年(明治33年)成立に遡る
①日清戦争後の地方経済の維持・充実を背景に
②産業組合法の衆議院の法案審議…員外規制・県域規制と税の優遇措置は表裏
「産業組合法においては政府が保護する点は甚だ少ないから…所得税・営業税を免除
する位の保護を与えて然るべき」、「産業組合に所得税を課すということは一般公衆
に対しても営業をなすと見做してあるようで、組合員の範囲内で事業を行うというこ
の立法趣旨にもとる」、「相互の信用が能く密着して居る所の利便を図るという目的
で、なるべく一市町村に亘らせぬ方針」
イコールフッティング論の台頭
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労働運動・労働者福祉運動の課題
~最も共助を必要としている人々の参加~
連合の2013年新春アピール
「社会運動の核となり、格差、貧困など社会の不条理に敢然と立ち向かっ
ていく覚悟です。そのためには、労働金庫、全労済、労福協等と培ってき
た共助の輪に、非正規労働者、長期失業者など最も共助を必要としている
人々が参加できるよう、具体的な取り組みを進めなければなりません」
共益から公益へ
協同組合は「共益」組織であるが、「公益」に最も親和性のある組織
労働組合は社会的労働運動をすすめる使命をもつ
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~最も共助を必要としている人々の参加 労働運動・労働者福祉運動の課題
労働組合から公益を発揮する具体的な提案を
労働組合から共益組織としてはじまった労金や全労済に対して、一緒に公益に
うってでようと呼びかけよう
新しい公共
労働組合・協同組合に認められている優遇税制の一部を「公益」に
例えば、労働金庫の出資配当金、利用配当金の一部を利活用できないか?
労働組合の「闘争積立金」の一部を運用して、その利息を使わせてもらえないか?
経団連1%倶楽部のような発想を協同事業団体共有の目標にできないか?
TPP、イコールフッティングへの対抗軸に
①ICAの地域コミュニティーへの貢献の原則
②協同組合の特性と社会的役割(公益)を訴求し、金融・保険の競争条件(公的介入、
税制優遇)のイコールフッティング化に対抗
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~労働運動・労働者福祉運動の課題
民主制の担保とソロバン勘定
 ソロバン勘定をあわせることと理念の追求
両立させることの難しさは、協同組織として永遠の課題。
民主制こそ協同組合の特性であることの自覚
 事業と運動は車の両輪
片輪がはずれては、もやは労金運動や全労済運動に展望はない
労働運動、事業組織の役割分担の自覚と相互牽制の発揮を
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5.あらためて
「連帯」と「自由」の意味を考える
いまの日本社会は、貧乏プラス孤立の貧困社会
そこそこ食べられる連帯社会にするために、労
働組合・協同組合は役割を発揮しよう
労働運動がめざす「連帯社会」は、いい時も悪い
時も支え合う、お互いの違いを認め合い、他人と
の煩わしい関係も受け入れながら、みんなが少し
ずつ折り合いをつけながら生きていく社会なのだ
から。
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おわり
ありがとうございました
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