Transcript 宗教改革の意義
2013現代文明論 5
近代化=西欧化(16-18世紀)←1492年
に始まる世界システム(前回の講義参照)
佐伯啓思『人間は進歩してきたのか』(PHP新書、
2003)による3つの革命
科学革命
市民革命
産業革命
近代の3つの原理
浜名優美による
1)宗教改革(16世紀)
1)宗教改革(16世紀)
2)科学革命(17世紀、デカルトに始まる心身
二元論:機械論)
1)宗教改革(16世紀)
2)科学革命(17世紀、デカルトに始まる心身
二元論:機械論)
3)資本主義(16世紀に始まる)
宗教改革
ルター(1483-1546)による「贖宥状」
の否定(16世紀)
1517年 「95カ条の論題」ー信仰によってのみ救わ
れる
3大宗教改革文書(1520)
「ドイツ国民のキリスト教貴族」
「教会のバビロニア捕囚」
「キリスト者の自由」
万人司祭主義
「われらはただ信仰によってのみ義とされる」という信
仰の内面性にもとづく「義認論」⇒修道院を否定し、
日常的、社会的な世俗生活、とりわけ日々の職業労働
が重視される
聖書のドイツ語訳
1522年 騎士戦争(ルターの改革を支持する)
1524年 ドイツ農民戦争(「神の前に万人が平等
である」
→個の自覚
1546-47年 シュマルカルデン戦争(旧教派とプロ
テスタント)
1555年 アウクスブルクの宗教和議(ルター派の
信仰を認める→領主の宗教がその領土で行なわれ
るという原則)
カトリックによる高利貸借禁止(中世以来)
厳しい経済倫理⇒プロテスタントの宗教改革に
よっていっそう徹底
禁欲的なプロテスタンティズム
イギリス:ピューリタニズム
北アメリカ:ピューリタニズム
オランダ:カルヴィニズム
フランス:カルヴィニズム
「現世的に禁欲して、ひたすら職業労働に励むこ
とが神に嘉せられる道である。」
宗教改革の意義
神中心の世界から人間中心への世界の転換(佐伯、
71ページ)
「宗教改革こそが、結果として近代的な、世俗的
な社会秩序を生み出した」(同上、72ページ)
宗教改革が生み出した
「国家」意識
1 領邦領主が神聖ローマ帝国の権力に反旗を翻し、
世俗主体が自立
2 ルター派が迫害されることで信徒がヨーロッパ
じゅうに拡がる→北のプロテスタントと南のカトリッ
クの対立(フランスの宗教戦争)
3 信仰の拠り所は聖書のみ。聖書がラテン語から各
言語に翻訳される。民族集団が形成され、「国民」が
誕生(グーテンベルクの印刷機の役割が大きい)
4 宗教と政治の混乱→(1618から1648の3
0年戦争、1648ウエストファリア条約で終結)
「重要なことは、ヨーロッパの「近代」は、宗教
的なもののなかからーまさに宗教的なものの原点
へ復帰しようとする動きのなかから生まれ出てき
たということです。宗教改革という名のキリスト
教の原理主義的な回帰から、宗教から自立した近
代的国家が成立し、世俗の領域が確立したという
ことなのです。」(佐伯、81ページ)
ファーガソン『文明』による
プロテスタントの意義
プロテスタントは西洋の人びとに働くこと
を奨励しただけでなく、節約し、読書する
ことを勧めた。産業革命は技術革新と消費
性向が作り出したものだ。だがそれは、貯
蓄と投資によって資本を蓄積し、労働に没
頭させ、労働時間の延長を要求した。とり
わけ、人的資本の蓄積に依存していた。プ
ロテスタントが推進した識字率の向上は、
すべての面においてきわめて重要だっ
宗教改革関連の参考文献
オリヴィエ・クリスタン「宗教改革」創元社
リュシアン・フェーヴル「マルチン・ルター」キリ
スト教新聞社、2001
山本義隆「16世紀文化革命」上下、みすず書房