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At研は、宇宙の始まりから現在まで137億年の歴史を、理論・大規模シミュレーション・観測・ データ解析などあらゆる手法を駆使して解明・理解しようとする研究室です 宇宙暗黒時代のシミュレーション 宇宙が生まれてから1億6千万年後 1億8千万年後 宇宙晴れ上がりの時代(宇宙年齢にし て約40万年)はCMBで観測される。一 方、宇宙年齢で約8億年以降は銀河な どで満ち溢れる銀河宇宙として、やはり 観測されている。この両者の間の時代 はまだ観測されていない時間、空間で あり、宇宙暗黒時代と呼ばれる。 現在の宇宙に満ち溢れる様々な天体の 祖先はこの暗黒時代に生まれたはずな ので、きわめて重要な時期である。 1億9千万年後 2億1千万年後 4 0 万 歳 観測される形 宇宙に大きなサッカー ボールがあるとする 観測 ? 左図は、宇宙暗黒時代の天体形成シミュ レーションの一例である。星が生まれ、そ の周りの中性水素を次々に電離して電離 領域を広げていく様が手に取るようにわか る。 宇宙大構造 深宇宙の観測による構造の歪み 観測者 実空間 スローンデジタルスカイサーベイ(SDSS)と呼ばれる宇宙の3次元 地図を作る日米独共同プロジェクトが現在進行している。100万個 に及ぶ銀河の空間的な位置が観測され、宇宙の大構造の詳細が 明らかになる。 深宇宙の観測では、 宇宙の幾何学と物質 の量(宇宙論パラメー タ)によって、実際の 構造とは異なって見 える。つまり、この歪 みを測定することによ って宇宙論パラメータ を決めることができる。 30億光年 彼方 縦方向と横方 向で歪み方が 違う SDSS分光サーベイの銀 河のスライス地図 赤方偏移空間 8 億 歳 ジーナス統計:構造のトポロジーの定量化 構造のトポロジーを特徴づける、ジーナス(定義:穴の数ー孤立した領域の数)と呼ばれ る量を導入。銀河数密度の高い領域から順に、体積を増やしながらジーナスを計算し、 観測とモデルの予測とを比較。LCDMモデルのほうが観測とよく合っており、SCDMよ (例)下の構造のジー りふさわしいモデルであると言える。 ナスは? 観測 宇宙マイクロ波背景放射と大規模構造 ~ダークエネルギー~ 宇宙創成(ビッグバン)から40万年が経過すると、宇宙の温度が下がってきてこれまで電子に散 乱されていた光子が自由に伝播できるようになります。これを宇宙の晴れ上がりといいます。こ の時の光子を観測したものが宇宙マイクロ波背景放射(CMB)と呼ばれるもので、ほぼ完全で一 様な黒体放射から僅かだけゆらぎ(ムラムラ)が存在していることが近年の詳細な観測により明 らかとなりました。下の図1はWMAP衛星により観測されたCMBの温度揺らぎの様子で一様分 布からのずれは僅か10-5[K]であることが確認されました。さて、晴れ上がり以降CMBの光子 は我々に向かって伝搬してくるわけですが、その間に大規模構造のデコボコの重力ポテンシャ ルの中を縫うようにやってくるのです。光子がこの重力 ポテンシャルを通過する間に 現 在 体積比率5 0% 重力レンズ効果 体積比率9 3% 遠方の天体から出た光が間の天体によって曲げられる現象 (光学的なレンズの重力版)。この現象を観測しモデル化するこ とで、銀河や銀河団の質量分布を調べることができる。 特に、ダークマター(暗黒物質)と呼ばれる光で見えない物質の 分布も直接検証することができる現象として注目されている。 宇宙モデルとN体シミュレーション 宇宙モデル、すなわち、宇宙の物質の組成や曲率の大きさ、によって現在観測され る宇宙の様子は大きく変わってくる。したがって、銀河分布を詳細に観測することで、 逆に宇宙モデルの情報を得ることができる。 図1WMAP衛星によるCMB温度揺らぎのマップ http://lambda.gsfc.nasa.gov/ N体シミュレーションによる銀河分布の予測 しかしながら、この未知なるエネルギーはまだ まだ謎に満ちておりほとんど何も解明されていない と言って過言ではないでしょう。このトピックは これからの宇宙論の最も熱い分野の一つとなるで しょう。 l(見込み角の逆数) 図2Padmanabhan et al.2004 ジ ー ナ ス 穴が2個の構造 が1つなので、2 -1=1 密度 低 2003年に発見された銀河団による重力レンズ効果。背景の1つ クェーサーがA,B,C,Dと4つに見えている。 LCDM(宇宙項入りの冷たい暗黒 物質)モデルの場合 密度 高 全体積に対する割合 SCDM(宇宙項なしの冷たい暗黒 物質)モデルの場合 体積比率 7% Counts-in-Cells解析におけるwindow functionの最適化 半径Rの球の中に銀河が何個入るかを調べることで、宇宙論パラメータを 見積もる事ができる(Counts-in-Cells解析)。しかし、単純な球ではなく ある特殊な「球」を使うことで、より精確に測定できることを発見した。 the m-weight Epanechnikov kernel 相関の強さ ポテンシャルに時間的な変化が起こ れば、光子のエネルギーすなわち温 度が変化することになるのです。すな わちCMBの温度揺らぎは晴れ上がり の時の重力ポテンシャルの揺らぎだ けでなく、大規模構造によっても作ら れる訳です。ということは、CMBの温 度揺らぎのパターンと大規模構造の パターンには何らかの相関があると 考えられるのです。相関があるという のは例えばCMB温度の高いところに大規模構 造の物質が統計的に多く存在するということです。 そして実際にCMB温度揺らぎと銀河分布の観測 データを用いて相関を計算すると左下の図のよ うにl=20に僅かながら相関のシグナルが出てい ることが分かります。さて、このような現象は大規 模構造の重力ポテンシャルに時間変化が起こる 場合にのみ起こるわけですが、その重力ポテン シャルの時間変化は未知のエネルギーである、 ダークエネルギーによってもたらされるというの が現在最も有力な説です。従って逆に言えば、 左下の図の相関が得られたということは、未知 のエネルギー成分であるダークエネルギーが存 在するということを証明していることになるのです。 観測 LCDM LCDM SCD SCD MM